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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 鈴木総理大臣主催答礼宴における挨拶

[場所] 北京
[年月日] 1982年9月28日
[出典] 鈴木内閣総理大臣演説集,233−234頁.
[備考] 
[全文]

 趙紫陽総理閣下

 御在席の皆様

 今宵ここに,趙紫陽総理閣下及び貴国政府の要人の皆様の御出席を得て,答礼の宴を催すことができますのは,私共にとりまして欣快の至りでございます。

 私はまず,この席を借り,一昨日私ども一行が北京に到着して以来,貴国の皆様から寄せられた数々の心暖まるおもてなしとお心遣いに対し,心より厚くお礼申し上げます。

 御在席の皆様

 私は,貴地滞在中に趙紫陽総理との二回の会談をはじめ胡耀邦総書記及び●{とう/登におおざと}小平顧問委員会主任とも会談の機会を得ました。これらの会談において,私たちは,国交正常化以来十年を経た日中関係を振り返り,政治・経済・文化等の各分野でめざましい成果をあげていることに満足するとともに,今後の十年間が以前にも増して実り豊かなものになるよう努力すべく決意を新たにしました。

 日中両国友好の新しい木は,着実な成長をみせているとは申せ,まだ若木であります。夏の炎熱や冬の霜雪からこの木を守り,友好の水を注ぎ続けるならば,やがてこの木は如何なる風雪にも耐え,千年の齢を保つ大樹に成長するでありましょう。私の貴国訪問を機に,我々はこの木を大切にすることを誓い合いました。この木がやがて日中両国民の上に緑の葉を広げ,我々の子孫がその木陰で憩う日を楽しみに努力し合おうではありませんか。

 私は明日,いよいよ北京を離れ,古来我が国ともゆかりの深い杭州に発つ予定であります。北京滞在中皆様のいたれりつくせりの御厚遇を受け,十二分に「天高く気爽やか」な北京の秋を満喫することができました。多くの知己を得た矢先にこの地を去らねばならぬのは,誠に心残りでございますが,せめて今宵は皆様とともに盃を重ね,心ゆくまで別れを惜しみたいと思います。

 それでは,皆様との再会を期して,中華人民共和国の一層の繁栄のために,日中両国の末永い平和と友好のために,趙紫陽総理閣下の御健康のために,御在席の皆様の御健康のために乾杯いたしましょう。

 乾杯!