データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 周恩来・中国首相逝去に当たって(三木内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 1976年1月9日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,71−72頁.
[備考] 
[全文]

 本日,中華人民共和国の周恩来総理閣下が逝去されたとの報に接し,驚きと深い悲しみにたえません。

 周総理は,中国の偉大な指導者であったばかりでなく,世界の代表的政治家の一人であり,その人を失ったことは,中国のみならず世界の大きな損失であります。

 思いおこせば,日中国交正常化の前夜の一九七二年四月,私は周総理の御招待により訪中し,長時間,膝をつきあわせて,日中関係を正常化し,両国永遠の友好の基礎造りの方途につき真剣に話し合いましたが,そのときの情景が今も鮮明にまのあたり浮かびます。

 周総理の高邁な識見と,子々孫々にわたる日中友好関係の発展に寄せられた並々ならぬ熱意に今も深い感銘を覚えます。

 周総理の御健在のうちに,日中平和友好条約の締結を果たしたいとの私の真情を,先般もお見舞いをかねて病床の同総理にお伝えしたばかりです。こんご,毛主席閣下のもと,周総理の後継者とともに,条約締結に向って私は最善の努力をいたします。

 ここに,周総理閣下の御冥福を祈るとともに,中国国民の皆様に対し,衷心より哀悼の意を表する次第であります。