データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「日中関係史の新たな一章」と題する人民日報社説

[場所] 
[年月日] 1972年9月30日
[出典] 日中関係基本資料集、446−448頁.
[備考] 
[全文]

 日本の田中角栄総理大巨は周恩来総理の招きで中国を訪問した。中国人民の偉大な指導者毛主席は田中総理大臣と会見し、真剣に友好的に話しあった。中日両国の総理と外相は終始、友好的な雰囲気のなかで真剣、率直に会談し、円満な成功をおさめた。双方は九月二十九日、両国政府の共同声明を発表して、中日両国間にこれまで存在していた不正常な状態を終結させ、外交関係を樹立し、できるだけ早く大使を交換することを宣言した。中日間の戦争状態の終結、国交正常化の実現は、両国関係の歴史に新たな一章をひらいた。中国人民はこのみのり豊かな成果に、心から祝賀の意をあらわすものである。

 中日両国はついに国交正常化を実現した。これは中国人民と日本人民が長期にわたってともに努力してきた結果である。中日両国人民は長い歴史をもつ友情で結ばれている。日本軍国主義者の中国侵略はかつて中国人民に大きな災厄をもたらし、同時に、日本人民にも大きな災禍をもたらした。中国人民は毛主席の教えにしたがって、広範な日本人民と極少数の軍国主義分子とを厳格に区別し、日本人民のうけた戦争の災禍に深い同情の気持をいだいている。中華人民共和国成立以来、われわれはずっと日本人民との友好関係を積極的に発展させてきた。日本人民も終始、中国人民との友好を願ってきた。日本の各階層の人民と友好人士は、政界、文化界、経済界の多くの良識ある人びとをもふくめて、絶えず日中友好促進のために積極的な努力をはらってきた。だからこそ、この二十余年らい、両国間の戦争状態の終結が公表されなかったにもかかわらず、中日両国人民の友好往来と経済、文化交流はずっと絶えたことがなかったばかりか、日ましに発展してきたのである。これが中日関係の正常化実現によい基礎をきずいたのである。

 中華人民共和国政府は、われわれと平和的につきあうことを望んでいるすべての国ぐにと、領土、主権の相互尊重と平等互恵の基礎のうえに、正常な外交関係をうちたてるという原則にのっとって、長年らい、中日関係の改善、中日国交正常化の実現をめざし、ずっと変わることなく努力してきた。われわれは、中日国交正常化三原則を提起した。中華人民共和国政府は中国を代表する唯一の合法政府である、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部である。「日台条約」は不法であり、無効であって破棄されなければならない、というのがそれである。この三原則は、日本国内で日ましに広範な共鳴と支持を得た。中日国交正常化の実現は、人心の向かうところ、大勢の赴くところとなり、すでにはばむことのできない歴史の潮流となった。田中内閣は成立するとすぐ、中日国交正常化の実現をその第一の課題とすると言明し、中国側の提起した国交正常化三原則への「十分な理解」を表明するとともに、両国関係の問題の解決をはかるため、思い切って多くの実際の段どりをとった。中国政府は時をうつさずこれに積極的に応えた。中日両国の指導者の成果に富む会談によって、両国関係の正常化はついに実現した。これは、中国人民と日本人民が、長い間その実現を望んでいた大きな事柄であり、また、アジアと世界の人民が喜びを覚える大きな事柄である。

 両国政府の共同声明で、中国政府は、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部であると重ねて表明した。日本政府は中国政府のこの立場を十分理解、尊重し、ポツダム宣言第八項にもとづく立場を堅持すると表明した。第二次世界大戦後、台湾はすでに中国に返還されているという事実が、こうしてさらに確認されたわけである。これは、「二つの中国」とか、「一つの中国、一つの台湾」などという謬論を鼓吹するものにとって、文字どおり真っ向からの痛撃である。

 中日共同声明は、双方は平和共存五原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立すること、平和友好条約の締結を目的として、交渉をおこなうことに合意したと宣言した。中日両国は社会制度を異にしているとはいえ、完全に友好的につきあうことができる。相互理解の精神にのっとって、小異をのこし、大同を求めさえすれば、両国間のいろいろな問題は解決することができる。両国関係の正常化と善隣友好関係の発展にともなって、両国人民の間の友好往来はかならずよりひんぱんとなり、経済・貿易関係はかならずいちだんと拡大され、文化交流はかならず日ましに広範なものとなるであろう。これらすべては、両国人民の根本的利益に合致するものである。

 中国と日本はアジア・太平洋地域の海一つへだてた隣国である。中日両国が平和に友好的につきあうことは、われわれ両国人民の利益に合致するばかりでなく、アジア・太平洋地域の各国人民の利益にも合致する。中日国交正常化は第三国にたいするものではない。中日両国政府は共同声明のなかで、両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対するとおごそかに宣言している。中日両国の善隣友好関係の確立と発展がアジアにおける緊張緩和と世界平和の擁護に大いに役立つのは、疑う余地がない。

 中国人民の偉大な指導者毛主席は、「日本人民と中国人民とは、よき友である」と述べている。中日両国は、二千年にわたる往来の歴史をもっており、半世紀の間、何度も戦争の災厄と災禍をこうむってはきたが、しかし、中日両国人民は長い歳月の間に、厚い友情を結んできた。時代は発展し、歴史は前進している。未来を展望するとき、中日友好には洋々たる発展の前途がひらけており、中日両国の偉大な人民はかならずさまざまな障害をのりこえて、子々孫々友好的につきあっていけるものと、われわれはかたく信じている。われわれは、日本人民とともに中日友好関係をひきつづき発展させるため、力をあわせて奮闘する決意である。

(『中日関係史の新たな一章』外文出版社)