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日本政治・国際関係データベース
東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

[文書名] 台湾「外交部」による対日断交声明

[場所] 
[年月日] 1972年9月29日
[出典] 日中関係基本資料集、434−435頁.
[備考] 
[全文]

 日本総理田中角栄と中共偽政権頭目周恩来は、共同声明を発表し、双方は本年九月二十九日から外交関係を樹立したと表明し、同時に日本外務大巨大平正芳は、中日平和条約および中日外交関係はこれによりすでに終了した旨言明した。中華民国政府は、日本政府のこれら条約義務を無視した背信忘義の行為に鑑み、ここに日本政府との外交関係の断絶を宣布するとともに、この事態にたいしては日本政府が完全に責任を負うべきものであることを指摘する。蒋総統の指導する中華民国政府は、日本の敗戦後における降伏を受理した政府であるとともに、一九五二年サンフランシスコ条約に基づき、日本と平和条約を締結し、戦争状態を終結させ、両国の外交関係を回復している。かつ中華民国政府は一貫して本国領土上で、憲法に基づき主権を行使しており、中日平和条約締結の時から現在まで、両国間の情勢は何らの変化も発生していない。よって田中政府が一方的に中日平和条約を破棄し、中共偽政権と結託したことによって引き起こされるあらゆる行為で、中華民国の合法地位、領土主権およびすべての合法権益に損害を及ぼすものはすべて不法無効であり、これによって惹起する重大な結果もまた、いずれも当然日本政府が完全にその責任を負うべきものである。

 日本軍閥は中国征服の野心を遂行するため、数度にわたって中国で事変を製造し、ついに一九三七年に全面的な中華侵略の戦争を発動し、さらにこれを第二次世界大戦にまで拡大して、中華民国およびアジア太平洋地区を空前の災禍のなかに追い込んだ。中共匪賊はわが政府が軍民を動員し、全力を挙げて対日抗戦に当たっている隙に乗じ、戦力を拡充し、叛乱を拡大し、ついに大陸を不法占拠して、中国大陸の七億人民を水火塗炭のなかに置き、現在にいたったのである。これは実に日本軍閥の侵華罪行の造成した重大な歴史的錯誤であり、日本の絶対に回避できない責任である。

 蒋総統は中日協力と全アジアの安定平和の大計に立脚し、カイロ会議で極力日本の天皇制の保持を主張するとともに、日本の降伏を受理した後は、徳を以て怨に報いる政策を採り、日本俘虜二百余万人を安全に送還した。

 わが政府はさらに戦争損害賠償の要求および軍隊派遣による日本占領の権利まで放棄し、日本をして領土分割から免れさせるとともに、迅速な国家再建の機会を与えているのである。現在田中政府が事もあろうに一方的に中日平和条約を破棄し、中共偽政権を承認して中華民国政府と断交したことは、単にその忘恩背義行為が日本民族の恥であるにとどまらず、また実に日本の絶対多数国民の願望に違反し、さらには中日両国と全アジアの遠大な利益を侵害するものである。

 中共匪団の日本赤化とアジアの赤化、ないし世界赤化の目標は、従来から何ら変更されておらず、現在まさにアジア太平洋地区で積極的に浸透転覆を進め、いろいろ戦乱を製造している。

 この時に当たって田中角栄がついに狼を部屋に引き入れ、敵を友と認め、中共匪団の浸透転覆活動を助長することになったのは、日本およびアジア太平洋地区に限りない禍患をもたらすことは必至であろう。

 大陸を収復し、同胞を救済することは中華民国の基本政策であり、いかなる情勢下においても絶対に変更はあり得ない。中共偽政権はアジア禍乱の根源であり、この暴虐集団が転覆された後、日本およびアジアの安全自由と繁栄に初めて確実な保障が得られる。

 中華民国政府は、田中政府の誤った政策が何ら日本国民の蒋総統の深厚な徳意に対する感謝と思慕に影響を与えるものでないことを信じて疑わない。

 わが政府はすべての日本の反共民主の人士に対し、依然、引き続いて友誼を保持する。

(『中華週報』一九七二年六三八号)