データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 田中総理の催した答礼宴会における周恩来総理挨拶

[場所] 
[年月日] 1972年9月28日
[出典] 日中関係基本資料集,426−427頁.
[備考] 
[全文]

 尊敬する田中角栄総理閣下

 日本の貴賓のみなさま

 友人のみなさま,同志のみなさま

 今晩,田中総理閣下は宴会を開いてわれわれを心からもてなしてくださいました。わたしはこの席にいる中国の同僚を代表して,また,わたし個人の名において,総理閣下ならびに日本の貴賓各位に深い感謝の意を表します。

 田中総理のこのたびのわが国訪問は,短期間ではありましたが,実りゆたかな成果をおさめました。

 田中総理は毛沢東主席と会見し,一時間にわたって真剣かつ友好的な談話をおこないました。

 われわれ双方は,数回にわたる会談をおこない,中日国交正常化の実現と双方がともに関心をもつ問題について,真剣,率直かつ友好的な話合いをおこないました。相互理解と小異をのこして大同を求める精神にのっとって,われわれは中日国交正常化に関する一連の重要な問題で合意に達しました。

 われわれはまもなく両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符をうつことになります。戦争状態の終結と中日国交の正常化という中日両国人民のこの長い間の願望の実現は,両国の関係に新たな一章を開き,アジアの緊張情勢の緩和と世界平和の擁護に積極的な貢献をなすでしょう。

 わたしは,われわれの会談の円満な成功を熱烈に祝うとともに,田中総理ならびに大平外相が中日国交樹立のためになされた重要な貢献を高く評価するものです

 われわれが成果をおさめることができたその功労は,われわれ両国人民に帰するべきです。両国人民はかならずわれわれの成果に大きな喜びを感じるものと,わたしは信じています。

 この歴史的な時点に,わたしは中国人民を代表して,長期にわたり中日友好の促進と中日国交正常化の実現のために貢献され,はては自己の命を犠牲にすることさえ惜しまれなかった日本各界の友人に心からの感謝と敬意を表したいと思います。

 中日両国は社会制度の根本的に異なる国です。しかし,われわれ双方の実りゆたかな会談が示しているように,双方が確信をもちさえすれば,両国間の問題は,平等な話合いを通じて解決できるのです。

 われわれ双方が平和共存五原則を遵守しさえすれば,われわれ両国の平和友好関係は,かならず絶え間なく発展し,われわれ両国の偉大な人民はかならず子々孫々友好的につきあっていくことができるものと,わたしは信じています。

 それでは,

 田中総理閣下のご健康のために,

 大平外相閣下,二階堂官房長官閣下のご健康のために,

 すべての日本の貴賓のみなさまのご健康のために,

 ここにおられる友人のみなさま,同志のみなさまのご健康のために,

 中日両国人民の偉大な友誼のために,

 乾杯しましよう!

(『中日関係史の新たな一章』外文出版社)