データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 田中総理主催招宴における田中内閣総理大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 1972年9月28日
[出典] 田中内閣総理大臣演説集,42−43頁.
[備考] 
[全文]

周恩来総理閣下,並びに御列席の各位。

 本夕ここに,周恩来総理閣下はじめ,中華人民共和国政府首脳,並びに関係各位の御列席を得まして,私どもの感謝の気持を表わすための宴を催す機会を得ましたことは,私のまことに欣快とするところであります。

 このたび,私をはじめ,大平外務大臣,二階堂官房長官以下随員一同,及び報道関係者に対して,周恩来総理閣下はじめ,中華人民共和国政府首脳並びに関係各位から,暖かい歓待と心のこもった御配慮を示されましたことにつきまして,私は,改めて厚く御礼申し上げます。

 また,昨日私は,毛沢東主席閣下にお目にかかり,日中両国関係の将来,及びひろく国際の諸問題について御話合いをする機会を得ましたが,この会談は私にとり,極めて感銘の深いものでありました。

 私は,日中国交正常化という厳粛な使命を果たすため中国を訪問しました。これまで周恩来総理閣下をはじめ,貴国関係各位と親しくお目にかかり,終始友好的な雰囲気のなかで,極めて率直に意見の交換を重ねて参りました。その結果,いまや,国交正常化という大事業を成就できるものと確信しております。

 日中両国の首脳が,今回のように,膝を交えて友好的な話合いをするまでには,長い歳月と茨の道がありました。私は,日中間の対話の途を拓くため貢献された両国各方面の方々に対し感謝の意を表明するものであります。

 国交正常化は明日への第一歩であり,私は,歴史の大きな流れの中で,新しい展望を目指して進みたいと思います。今後,日中間には,なお解決すべき幾多の問題があります。しかしながら,両国が互譲の精神と相互信頼に基づいて対処するならば,これは決して超克できない問題ではないと信じます。

 かくして,これまでの両国間の不正常な状態に終止符がうたれ,両国国民の多年の願望である両国間の国交正常化が実現されるならば,これは,両国の歴史に新たな一章を開くのみならず,アジアひいては世界の平和に貢献するものと確信致します。

 私は,今回の私どもの訪中が契機となって,相互の間に,多方面にわたる交流がますます促進され,両国が,強い友好のきずなで結ばれるよう切望するものであります。

 この挨拶を了えるにあたり,私は御列席の各位とともに,盃をあげて,

 中国の偉大な指導者,毛沢東主席閣下及び周恩来総理閣下の御健康と御活躍のために,中華人民共和国の繁栄,日中両国民の末長き友好,アジアと世界の平和のために,

 乾杯したいと思います。

 乾 杯