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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中覚書貿易会談コミュニケ

[場所] 北京
[年月日] 1971年3月1日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),472−474頁.外務省アジア局中国課「中共対日重要言論集」第18集,111−4頁.
[備考] 人民日報記事
[全文]

 中国中日備忘録貿易弁事処代表、日本日中覚書貿易事務所代表の会談コミュニケが3月1日、北京で調印された。

 郭沫若全国人民代表大会常務委員会副委員長・中日友好協会名誉会長が調印式に出席した。

 会談コミュニケにはつぎの人びとが調印した。

 中国中日備忘録弁事処代表劉希文、徐明、呉曙東、林波、丁民

 日本日中覚書貿易事務所代表岡崎嘉平太、古井喜実、田川誠一、松本俊一、渡辺彌栄司、大久保任晴。

 なお、中国人民対外友好協会の責任者王国権、日本日中覚書貿易事務所駐北京連絡所首席代表代理宮本治男および日本日中覚書貿易交渉代表団のメンバー河合良一、片岡清一、安田佳三の諸氏が調印式に出席した。

 会談コミュニケの全文はつぎのとおり。

 中日双方の備忘録貿易弁事処代表は、1971年2月15日から3月1日まで北京で会談を行なった。会談には、中国側からは、劉希文、徐明、呉曙東、林波、丁民が参加し、日本側からは、岡崎嘉平太、古井喜実、田川誠一、松本俊一、河合良一、渡辺彌栄司、大久保任晴、片岡清一、安田佳三が参加した。

 会談期間中、周恩来総理と郭沫若副委員長は日本日中覚書貿易代表団全員と会見した。代表団はまた、北京の工場、人民公社を見学した。

 双方は、1970年4月19日に双方が調印した会談コミュニケは全く正しいものであり、この1年の事実はさらにこの点を立証していることを一致して認めた。

 双方は、日本反動派がアメリカ帝国主義との結託を強め、日本軍国主義を復活させ、アメリカ帝国主義のアジアへの侵略と拡張に加担していることを一致して非難した。1年このかた、佐藤内閣は積極的に日米共同声明の路線にそって、日本をいちだんとアメリカ帝国主義のアジア侵略の基地にしている。佐藤内閣は、さかんに軍国主義の世論づくりをしているだけでなく、日米「安保条約」を「自動延長」し、「第4次防衛力整備計画案概要」と「防衛白書」を提起して軍備拡張に拍車をかけるとともに、アメリカのアジア侵略政策に協力し、ヴィェトナム、ラオス、カンボディアへの侵略戦争を拡大するアメリカ帝国主義に加担している。これらすべては、日本軍国主義の復活がすでに現実となっていることを物語っている。日本側は、さらに日本軍国主義の復活を排撃、粉砕するために、一層多くの努力を払う決意を表明した。

 中国側は、日本反動派が蒋介石、朴正煕かいらい集団との結託を強めて、東北アジア新軍事同盟をつくり上げ、侵略のほこ先を中国と朝鮮民主人民共和国に向けていることをはげしく非難した。さきごろ成立したいわゆる日蒋朴「連絡委員会」はこともあろうに中国に近い浅海海域の資源を「共同開発」することを決定したが、これは中国の主権に対する明らさまな侵犯であり、中国人民の絶対に容認できないものである。

 日本側は、中国側の厳正な立場を理解するとともに、いわゆる日蒋朴「連絡委員会」は日本反動派が日米共同声明の路線にそって結成した反動的組織であることを認めた。この「連絡委員会」が中国に近い浅海海域の資源の「開発」を決定したことは、中国の主権に対する侵犯である。日本側は、これらすべての反動的な活動に対し断固反対すると表明した。

 中国側は、次のように厳正に表明した。中国人民は必ず自己の神聖な領土台湾省を解放する。台湾省を解放するのは、全く中国の内政であり、いかなる国も干渉する権利はない。佐藤内閣は不法な日蒋「平和条約」にしがみつき、「国際信義を重んずる」などと強調しているが、それは、あくまで中国人民を敵として、中国人民の台湾解放をさまたげ、ひいては台湾を永久に侵略・占領しようとする野望をあますところなくばくろするだけである。

 日本側は、中国側の立場に全面的に賛同するとともに、中華人民共和国政府が中国人民を代表する唯一の合法政府であり、台湾省は中国の領土の切り離せない一部であって、いかなる形の「二つの中国」又は「一つの中国、一つの台湾」をつくる陰謀も許されず、いわゆる日蒋「平和条約」は元来不法であり、無効であって、廃棄すべきであると重ねてはっきりと表明した。

 双方は、政治3原則と政治経済不可分の原則は日中関係において遵守されるべき原則であり、われわれ双方の関係における政治的基盤であることを、重ねて強調し、確認した。これを基盤にして日中貿易の発展を促進するために、中国側は対日貿易の4項目の条件を提起した。つまり、中国側はつぎの状況の一つに該当するメーカー、商社、企業とは貿易取引を行なわない。

 1.蒋介石一味の大陸反攻を援助し、朴正煕集団の朝鮮民主主義人民共和国に対する侵犯を援助するメーカー、商社。

 2.台湾と南朝鮮に多額の資本投下を行なっているメーカー、商社。

 3.アメリカ帝国主義のヴィェトナム、ラオス、カンボディア侵略に兵器弾薬を提供している企業。

 4.日本にある日米合弁企業およびアメリカの子会社。

 日本側は、中国側の立場に賛同し、上述の4項目の条件が政治3原則と政治経済不可分の原則のもとに日中貿易を発展させる重要な条件であると認めるとともに、この4項目の条件の確実な遵守を確保するため努力することを表明した。

 双方は、佐藤内閣が一層輪をかけてアメリカ帝国主義に追随し、中国敵視政策をかたくなに推し進め、日中関係の正常化に新しい重大な障害を設けていることを一致してきびしく指摘した。日本側は、佐藤内閣の中国敵視政策に断固反対するとともに、佐藤内閣の設けた障害を排除し、日中関係の正常化と日中国交回復の促進のために新たな努力をつくす決意を表明した。

 双方は、一致して次のように認めた。日中両国は近隣であり、両国人民には伝統的な友情があり、日中両国人民の平和と友好を求める願望は、大勢のおもむくところであり、人心の向うところとなっている。日中友好を求め、日中国交の回復を促進する国民運動は、日本においてさかんな勢いでくりひろげられている。時代のこの流れは、いかなる人も阻むことができず、日中友好の前途は光明にみちている。双方は、両国人民の友好関係を増進し、両国関係の正常化を促進することは、日中両国人民の共通の願望にかなっているばかりでなく、アジアと世界の平和を守るうえにも有益であると考える。

 双方は、1971年度備忘録貿易事項などについて取りきめを行なった。

  中国中日備忘録貿易弁事処代表

   劉希文、徐明、呉曙東、林波、丁民

  日本日中覚書貿易事務所代表

   岡崎嘉平太、古井喜実、田川誠一、松本俊一、渡辺彌栄司、大久保任晴

        1971年3月1日北京にて