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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 周恩来中国首相と金日成北朝鮮首相の共同声明

[場所] 平壌
[年月日] 1970年4月7日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),957−960頁.北京周報,8巻16号,3−5頁.
[備考] 
[全文]

 中華人民共和国国務院総理周恩来同志は、朝鮮民主主義人民共和国内閣首相金日成同志の招きに応じて、一九七〇年四月五日から七日まで、朝鮮民主主義人民共和国に公式の友好訪問をおこなった。

 朝鮮民主主義人民共和国に滞在中、周恩来総理とその随員は朝鮮人民の熱烈な歓迎を受けた。これは、兄弟の中国人民にたいする朝鮮人民の厚い友宜{前1文字ママとルビ}の現われである。

 訪問中、中華人民共和国国務院総理周恩来同志は、朝鮮民主主義人民共和国内閣首相金日成同志と兄弟のような友好的空気のなかで会談をおこなった。

 この会談には中国側から、外交部副部長姫鵬飛同志、中国共産党中央機関の責任ある工作要員楊徳中同志、外交部アジア司副司長曹克強同志、外交部儀典司副司長韓叙同志、中国駐朝鮮大使李雲川同志が参加した。

 この会談には朝鮮側から、崔庸健同志、金一同志、朴成哲同志、外務省第一次官許●{金へんに炎}同志、朝鮮労働党中央委員会副部長金永南同志、朝鮮駐中国大使玄峻極同志が参加した。

 会談中、双方は中国人民と朝鮮人民のあいだの伝統的友好協力関係をいちだんと強化し、発展させること、およびその他双方がともに関心をもっている一連の問題について意見を交換した。

 朝鮮側は、中国人民が毛沢東同志を統帥者とし、林彪同志を副統帥者とする中国共産党の指導のもとに、資本主義を復活させる帝国主義と現代修正主義の陰謀を粉砕し、プロレタリア文化大革命を勝利のうちにおしすすめたこと、いままた全力をかたむけて、多く、はやく、りっぱに、むだなく社会主義を建設し、国防力強化のたたかいをくりひろげ、それによって自己の国家を日ましに強大になる社会主義国にしていることを祝った。

 朝鮮側は、中国人民がアメリカ帝国主義とその手先の侵略活動に反対し、工農業と科学、技術を発展させ、国家の防衛力をいちだんと強化し、台湾を解放するたたかいのなかで、こんごいっそう大きな成果をあげるよう願った。

 中国側は、朝鮮人民が金日成同志をはじめとする朝鮮労働党の指導のもとに、自力更生の革命精神を高度に発揚し、千里馬運動を大いにくりひろげ、短期間に自己の国家を、強固な自立した民族経済の基礎、強力な全人民的防衛体制、さんぜんと輝く民族文化をもつ発達した社会主義国に変えたことを祝った。

 中国側は、朝鮮人民がアメリカ帝国主義の日ごとに激化する新たな戦争挑発活動に直面して、経済建設と国防建設を同時にすすめている事業のなかで、また、アメリカ帝国主義侵略軍を南朝鮮から撤退させ、祖国の自主的統一を実現するたたかいのなかで、こんごいっそう大きな成果をあげるよう願った。

 双方は、鮮血でむすばれた中朝両国人民の戦闘的友宜{前1文字ママとルビ}と友好団結をいちだんと強固にすることが共同の事業の利益に完全に合致すると考え、かつ両国人民が帝国主義の侵略、戦争活動に反対する共同闘争をひきつづき強化し、各方面の互助協力関係をいちだんと発展させる確固たる決意と希望を表明した。

 双方は、当面の国際情勢がひきつづき、帝国主義、現代修正主義、各国反動派にとっては不利な方向に、世界人民の革命闘争にとっては有利な方向に発展していると考える。

 双方はとくにつぎのことを指摘する。アメリカ帝国主義が侵略と戦争に活路を求めて、その滅亡にひんした境地からのがれるため、よりずるがしこい、より陰険な手口をとっている。これにたいしては、当然もつべき警戒心を保持しなければならない。

 当面、アメリカ帝国主義は露骨な武力干渉と転覆活動に拍車をかけ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国人民の民族解放運動に野蛮な弾圧をくわえ、平和をゆゆしく破壊している。

 アメリカ帝国主義はとくに、侵略のほこ先をアジアに向けている。かれらは日本軍国主義勢力およびその他の従属国とかいらいをけしかけ、アジア人をアジア人とたたかわせる方法を用いて、アジアの社会主義国とこの地域の人民にたいする侵略を拡大している。

 アメリカ帝国主義はベトナム戦争の「ベトナム化」というスローガンのもとに、ベトナム人民を侵略する罪悪的戦争をいちだんと強化し、同時に、新たな戦争挑発活動を狂気のようにおしすすめて、朝鮮の緊張情勢を激化させ、またたえず中国人民にたいして侵略と挑発をおこなっている。

 これらすべては、アメリカ帝国主義が侵略と戦争の主要な勢力であり、世界各国人民のもっとも凶悪な共同の敵であることを立証している。奸智にたけたアメリカ帝国主義は、「平和」の看板をかかげてその侵略的本質をおおいかくそうとしている。しかし、世界人民はけっしてだまされるものではない。アメリカ帝国主義とは、かならず断固としてたたかいぬき、みじんも妥協してはならない。

 アメリカ帝国主義が侵略と戦争の活動に拍車をかけているのは、けっしてその「強大さ」を示すものではなく、逆にそのぜい弱さを立証するものにすぎない。

 双方は、すべての革命的人民が団結して、攻撃のきっ先をアメリカ帝国主義に向け、世界各地で強力な反米闘争をくりひろげさえすれば、アメリカ帝国主義はかならず滅亡し、人民の革命事業はかならず勝利する、と確信する。

 アメリカ帝国主義の積極的ひ護のもとで、日本軍国主義はすでに復活し、アジアの危険な侵略勢力となっている。かれらは、アメリカ帝国主義をうしろだてとし、アメリカ帝国主義とグルになって、「大東亜共栄圏」のふるい夢をもう一度みようと、アジア人民を侵略する道を公然と歩みだしている。双方は、このことをはげしく糾弾する。

 現在、日本反動派はアメリカ帝国主義の「新アジア政策」にもとづいて、国家のファッショ化と軍国主義化の実現に拍車をかけ、侵略的軍事力を急速に増強し、軍事基地を大量に増設し、戦争準備に拍車をかけ、それによって、対外拡張をはかっている。日本はすでに、アジアにおける新たな侵略戦争の前哨基地と拠点になっているのである。

 日本軍国主義者は直接、アメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争に奉仕し、朝鮮におけるアメリカ帝国主義の新たな戦争陰謀にすすんで参与するとともに、中国人民の神聖な領土台湾をかれらの勢力範囲にくみいれようと夢みている。

 もしも日本軍国主義のこのような大それた陰謀を見過ごすなら、かれらはかならずアジアと世界の人民にもう一度大きな災をもたらすであろう。

 日本軍国主義に幻想をもってはならないし、どんな期待もかけてはならない。

 日本軍国主義の危険性を見てとることができないで、佐藤政府と親交を結ぶことは、日本軍国主義の対外拡張をはげますことになり、アジアにおけるアメリカ帝国主義の地位を強めることになるのである。

 世界じゅうのすべての革命的人民は、一致した行動をとって、日本軍国主義の侵略的野望を制止し、粉砕しなければならない。

 双方は、当面の日本軍国主義反対の闘争は反米闘争の一部であり、また、アジアと世界の平和を守る闘争でもある、と考える。双方は、反米闘争をおしすすめると同時に、日本軍国主義反対の共同闘争をいちだんと強化する決意を表明する。

 朝鮮側は、アメリカ帝国主義が中国人民の神聖な領土台湾を不法占領し、その手先をそそのかして、たえず中華人民共和国にたいし侵略、挑発活動をおこなっていることをはげしく糾弾し、中国人民がアメリカ帝国主義の占領のもとから台湾を解放して領土の保全を実現するためにすすめている正義の闘争を全面的に支持する。

 アメリカ帝国主義は、国際舞台で中華人民共和国の合法的地位の回復に反対し、その影響を阻止し、「二つの中国」をデッチあげようとしているが、この陰謀はかならず恥ずべき破産をとげるであろう。

 中国側は、アメリカ帝国主義とその手先朴正煕かいらい集団が朝鮮民主主義人民共和国にたいして気違いのように新たな戦争挑発をしかけ、南朝鮮の革命者と愛国的人民にたいして野蛮な虐殺と空前のファッショ的暴力弾圧をおこなっていることをだんこ糾弾する。

 中国側は、アメリカ帝国主義が南朝鮮を不法占領し、侵略政策をおしすすめていることが朝鮮統一をはばむ基本的障害であり、朝鮮で戦争が勃発する経常的な根源である、と考える。中国側は、アメリカ侵略軍を南朝鮮から撤退させ、いかなる外国勢力の干渉もない状況のもとで朝鮮人自身が自主的に国家の統一を実現するという朝鮮民主主義人民共和国政府の正しい祖国統一の方針を全面的に支持する。

 双方は、ベトナム人民の英雄的な抗米救国闘争を全面的に支持し、声援することを表明する。

 アメリカ帝国主義は、南ベトナム侵略の戦争とベトナム民主共和国の主権と安全を侵害するすべての侵略行為をただちに停止しなければならず、南ベトナムにいるその侵略軍と従属国、南朝鮮かいらいの軍隊を無条件に完全撤退させなければならない。ベトナム問題は、ベトナム人民自身の願いに合致する状況のもとで解決されなければならない。

 ベトナム人民は、アメリカ侵略者をうち破り、自己の正義の事業を実現するたたかいのなかで、かならず最終的勝利をおさめるであろう。

 双方は、ラオスにたいするアメリカ帝国主義の侵略と武力干渉をだんこ糾弾し、ラオス人民がラオス愛国戦線党の指導のもとですすめている、アメリカ帝国主義とその手先に反対する正義の闘争をだんこ支持する。

 双方は、さいきん、アメリカ帝国主義のカンボジアでひきおこした反動的クーデターがカンボジア人民の真の利益とインドシナ三ヵ国の安全にたいする重大な脅威である、と考える。双方は、カンボジア人民に対するアメリカ帝国主義の罪悪的な破壊活動をはげしく糾弾し、国家の独立と主権をまもるカンボジア人民の闘争と、カンボジア国家元首ノロドム・シアヌーク親王が三月二十三日に発表した五項目の声明を支持する。

 双方は、日本人民が米日「安保条約」を破棄し、アメリカ帝国主義の軍事基地を撤去し、日本軍国主義の復活と再武装に反対し、国家の完全独立と民主的発展を保障するためにすすめている闘争を支持し、声援する。

 双方は、イスラエル侵略者がアメリカ帝国主義に直接支持されそそのかされて、ひきつづきアラブの領土を不法占領し、アラブ諸国への侵略を拡大している犯罪行為をだんこ糾弾し、アラブ人民が民族の独立と尊厳をまもり、占領されているアラブの国土を回復し、パレスチナ人民の解放事業を達成するためにおこなっている正義の闘争を全面的に支持する。

 双方は、当面、アジア、アフリカ、ラテンアメリカでめざましく発展している民族解放運動は、現代のもっとも強大な革命勢力の一つである、と考える。

 双方は、アメリカをかしらとする帝国主義と植民地主義に反対し、自由、解放、民族独立をめざしてたたかっているこれら地域のすべての国ぐにと人民をだんこ支持する。

 双方は、独立資本の搾取と抑圧に反対し、生存の権利と階級の解放をめざす革命闘争をすすめている資本主義諸国の労働者階級と勤労人民に、戦闘的支援をおくることを表明する。

 双方はつぎのように考える。当面、米日反動派の侵略と新たな戦争挑発が日ましに激化しているが、このような情勢は、中朝両国人民が団結し、共同して敵にあたることを要求している。これは、アメリカ帝国主義の侵略陰謀を制止、粉砕し、アジアと世界の平和をまもり、両国人民の革命と建設を力強くおしすすめるうえで、ひじょうに大きな意義をもっている。

 双方は、中華人民共和国国務院総理周恩来同志の朝鮮民主主義人民共和国訪問がマルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義の原則を基礎としてうちたてられた中朝両国人民の伝統的友宜{前1文字ママとルビ}と協力関係をいちだんと強化し、発展させるうえで、新たな貢献をした、と満足の意をもって指摘する。

 一九七〇年四月七日 平壌にて