データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中共の核実験について外務省情報文化局長談

[場所] 
[年月日] 1969年9月30日
[出典] 外交青書14号,415−416頁.
[備考] 
[全文]

1.中共は昨年12月の核実験に引き続き,今回,第9回目の核実験を行なつた。世界唯一の核被爆国であるわが国は,従来より,中共を含むあらゆる国の核実験に対し,強い抗議の意を表明してきており,その都度,核実験を繰り返さぬよう要望してきた。今回,中共がまたも大気圏内核実験を行なつたことは,武力によらぬ真の平和の到来を希求するわが国国民はじめ全人類の悲願を無視するものであり,極めて遺憾な行為といわざるを得ない。

2.中共は目下,原・水爆をミサイル弾頭用に小型軽量化すること,ならびにミサイルの射程を長距離化することに開発の重点を指向しており,今回の実験はそのための一環であると考えられるが,中共周辺諸国はかかる動向を不安と危惧の念をもつてながめている。

3.わが国の安全は従来より,日米安全保障条約によつて確保されているため,中共の核実験が日本の安全保障に直ちに脅威を与えるものとは考えられない。しかし,今回の実験によつて,再び大気の汚染が始まり,中国大陸に近接しているわが国の国民生活に直接的な被害が及ぶ恐れがあるので,政府としては,あらためて中共の反省を強く促すとともに,中共が今後再びこのような核実験を行なわないよう切望する。