データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中覚書貿易取決めと日中政治問題に関する会談コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1969年4月4日
[出典] 外交青書14号,423−424頁.
[備考] 
[全文]

 中国中日覚え書き事務所代表と日本日中覚え書き貿易事務所代表は,1969年2月22日から4月4日まで北京で会談を行なつた。双方は当面する中日関係および双方が共通の関心を持つ問題について卒直に意見を交換した。

 双方は1966年双方が会談コミュニケを発表していらいの中日関係の情勢を回顧した。

 中国側は米帝国主義とそれに追随する日本の佐藤政府が中国敵視の政策をかたくなに推し進め,われわれの間の関係を含めた中日関係にさまざまな障害を設けたことを指摘した。

 日本側は日中関関係を悪化させているさまざまな原因が日本政府の側にあることを卒直に認め,当面する情勢への憂慮にかんがみて真剣に反省する角度からこれらの障害を取り除き,日中関係の正常な発展を促すために積極的な努力を行なう決意であることを表明した。

 双方は1968年に双方が確認した政治三原則((1)中国敵視政策をとらない,(2)「二つの中国」をつくる陰謀に参加しない,(3)中日両国の正常な関係の回復を妨げない)および政経不可分の原則が中日関係において守らなければならない原則であり,われわれの間の関係の政治的基盤であることを確認することを重ねて明らかにするとともに,上述の原則を遵守し,この政治的基盤を守るために引き続き努力する決意であることを表明した。

 中国側は,佐藤政府が中日関係において「政経分離」の政策をかたくなに堅持していることは中国敵視の政策であり,中国人民の断固反対するところであるときびしく非難した。

 日本側は日中関係において日本政府のとつている「政経分離」の政策が政治三原則および政経不可分の原則とあい対立し,日中関係の発展を妨げているきわめて大きな障害であり,したがつてこの政策をすみやかにあらためなければならないことを表明した。

 中国側は佐藤政府が米帝国主義への追随に拍車をかけ,「二つの中国」をつくる陰謀活動に参加して中国敵視の政策を露骨にとつていることを強く非難した。

 中国側はまた,台湾解放は中国の内政問題であつて中国人民は必ず台湾を解放するし,日本政府がすでに早くから中国人民に見捨てられている将介石一味と結んだいわゆる「平和条約」は中国人民を敵とし,不法な,中国人民の断固反対するものであることを重ねて明らかにした。

 日本側は中国側の厳正な立ち場に同意した。日本側はさらに,中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法的な政府であり,台湾省は中国領土の不可分な一部であり,こうした認識にもとづいて日中国交の正常化を促し,いかなる形であれ「二つの中国」をつくる陰謀活動に反対しなければならないことを明確に表明した。

 中国側は佐藤政府が米帝国主義のアジア侵略の政策に前にもまして激しく追随し,日本人民の願いにそむき日米「安保条約」を堅持していることをきびしく非難した。

 中国側はさらに,この条約は日本人民を圧迫するものであり,中国人民を敵としてアジア人民を敵とする侵略的な軍事同盟条約であり,それはアジアおよび世界の平和を大きく脅かしているばかりか日本人民にも大きな災いをもたらすものであり,中国人民は日米軍事同盟条約に断固反対することを表明した。

 日本側は中国側の立ち場に理解を表明するとともに,日米「安保条約」が中国に対する脅威,アジア各国人民に対する脅威であり,日中関係における大きな障害であることを重要視した。日本側はさらに,独立自主の立ち場に立つて日本を侵略戦争にまき込まないために,またこのような主権の重大な制限から脱却するために,積極的に努力することを表明した。

 双方は,中日両国が近隣であり,両国人民の間には伝統的な友情があり,両国人民の友好関係を増進し両国関係の正常化を促進することは中日両国人民の共通の願いにかなつているばかりか,アジアと世界の平和を守る上にも役立つものであると一致して考える。

 双方は1969年度の覚え書き貿易事項について取りきめを結んだ。