データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本平和委員会と中国人民保衛世界和平委員会との共同声明

[場所] 北京
[年月日] 1962年6月7日
[出典] 戦後資料日中関係(1967),245-246頁.
[備考] 
[全文]

 日本平和委員会会長平野義太郎は6月上旬に中華人民共和国を訪問し,北京において中国人民保衛世界和平委員会と意見の交換をおこない,当面の東アジアの情勢について次のように意見の一致を見た.

 東アジアの国際情勢は,アメリカ帝国主義の露骨な侵略と戦争政策によってますます重大な緊張状態に入って来た.

 アメリカ帝国主義のケネディ政府は,インドシナにハーキンズ大将を頭とする作戦司令部を設け,すでに数千のアメリカ将兵を投入して南べトナムで宣戦布告なき戦争を遂行している.アメリカはまた膨大な数にのぼる軍隊を派遣し,タイに出兵してこれを占領し,しかも更にタイより南ベトナムに増兵している.

 アメリカ帝国主義のこの武力侵略行動は,ひとり南ベトナムとラナスの人民の愛国運動を弾圧するばかりでなく,機あらばベトナム民主共和国を侵そうとしているものにほかならない.

 日米の反動勢力が急いでいる「日韓会談」も,ひとり「東北アジア条約機構」をつくる意図を有するばかりでなく,インドシナ半島の作戦と呼応してふたたび38度線に戦争をしかける意図を蔵している.

 アメリカ帝国主義はたえず蒋介石集団をそそのかして中国の沿海地方で攪乱工作をさせ,台湾海峡の緊張情勢を激化させている.しかも,アメリカ帝国主義の第7艦隊と海,陸,空軍は,沖縄と日本の内地の軍事基地を傍若無人に利用し,戦争の火をつけるためにいたる所で活動している.

 このように,南ベトナム,ラオス,南朝鮮,台湾海峡など東アジアのいたるところに緊張状態をつくりだしている張本人こそ世界の憲兵として振舞い横行するアメリカ帝国主義であることが誰の眼にも明らかになった.そしてこのような緊迫した事態こそ,日本人民,中国人民,朝鮮人民,ベトナム人民,ラオス人民,タイ国人民,すべての人民にとっての最大の脅威であるばかりでなく,実に世界平和への重大な脅威である。この東アジアに侵略と戦争をしかけているアメリカ帝国主義こそ日中両国人民の共同の敵,そして平和を愛好するアジア人民の共同の敵,世界人民の共同の敵に外ならない.

 日本についてみれば米軍が傍若無人に沖縄をふくむ在日軍事基地をこの侵略戦争に使っている.このことは,日米安保条約がアメリカ帝国主義と日本反動勢力との合作による侵略的本質をもつ軍事条約である事実をますます明らかにした.

 現に広はんにひろがりつつある日本平和運動,日米安保条約廃棄,基地撤去,沖縄の祖国復帰の闘争は,このアメリカ帝国主義に直接対決する日本全国民のたたかいであり,この日本人民のたたかいは,アジアに対するアメリカの侵略的戦略体制を打ちこわし,世界平和を守るうえで大きな貢献をなしている.

 中国人民は日本人民の米軍事基地撤去の要求と沖縄の即時返還,日米安保条約反対のたたかいを支持する.

 日本人民は,アメリカ帝国主義のもくろむ「二つの中国」の陰謀に反対し,中国人民の台湾解放のたたかいを支持する.

 日中両国人民は,アメリカ帝国主義に反対する朝鮮,ベトナム,ラオス,タイの人民の愛国主義のたたかいをつよく支持する.日中両国人民は,西イリアン解放をめざすインドネシア人民の正義のたたかいを支持する.

 東アジアが重大な緊急状態に入った現在,この日中両国人民の互いに手をとりあい連帯して進められるたたかいは,まさに両国人民の民族的利益を侵害する共同の敵に反対し,わけても現在,急速に進められつつあるアメリカ帝国主義の東アジア侵略戦争に反対する一大共同連帯行動に発展させねばならない.

 われわれは,ここに宣言する.東アジアのいたるところに火をつけまわっているアメリカ帝国主義の戦争と侵略の行為を打ち破ることが,東アジア諸民族の宿願とする独立と平和と統一を達成する道であり,全アジア,世界の平和を打ちかためる唯一の道である.

 ここに日中両国の平和委員会は事態の緊急に鑑み,このたたかいにおける共同の行動をいっそう強める決意をし,そして,団結して共同のたたかいをおこなうよう東アジアの諸国民,アジア,アフリカおよび全世界の人民に呼びかける。

 極東の事態は緊急である.平和を愛好するすべての人びとはいっせいに立ち上り,アメリカ帝国主義の戦争放火者を押しつぶし,世界平和のゆるぎない基礎を打ちかためるため団結して奮闘しよう.

  1962年6月7日 北京にて

日本平和委員会会長 平野義太郎

中国人民保衛世界和平委員会主席 郭沫若