データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中国代表権問題重要事項指定決議および中国外交部声明,中国外交部声明

[場所] 
[年月日] 1961年12月22日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),396−398頁.外務省アジア局中国課監修「日中関係基本資料集」,204頁.
[備考] 
[全文]

一,第十六回国連総会は最近,中国の国連における合法的権利回復の問題を討議した。米国政府は多くの国および全世界の公正な世論を無視して,国連の全機関から蒋介石グループを追放し中華人民共和国の合法的権利を回復するというソ連の提案を否決することを国連に強要し,中国の国連における合法的権利回復という手続き問題を総会の三分の二の多数を要するいわゆる「重要事項」に指定する米国とその追随国五ヵ国の提案を不法にも採択させた。中国外交部は,国連憲章をふみにじり,中国の主権を侵犯するこの決議が完全に不法無効なものであることを厳重に声明する。また中国外交部は国連が米国に強要されてとったこの行動に対し強く非難し抗議するものである。

一,中国はもともと国連の加盟国かつその創始者であり安保理事会の常任理事国である。一九四九年,中国人民は蒋介石グループの反動統治を打倒して中華人民共和国を成立させた。その後,中国の国連における一切の権利は当然中国人民の唯一の合法政府である中華人民共和国政府が享有すべきである。公認の国際法の基本原則および国連創立いらいの多くの実践によって,このような簡単な手続き問題は本来ずっと以前に解決されるべきであった。

一,だが十一年来,米国は中国の領土台湾を長期間占領するため,もはや中国人民に見捨てられた蒋介石グループを国連に居すわらせ中華人民共和国の国連における合法的権利をずっと奪ってきた。このような横暴なやり方によって,米国は日ましに人心を失い国連であやつることのできる多数がますます縮小した。このような不利な情勢のもとで米国は今国連総会ではこれまでずっともてあそんできた「討議引き延し」の古い手口を放棄し,国連憲章をゆがめる方法に改め,中国の国連における合法的権利回復の問題が国連憲章第一八条第二項に基づいて総会の三分の二の多数の賛成を必要とする重要問題であるといわざるをえなくなったのである。米国の意図は,多数支配が確実でない状況のもとで,三分の一の少数で引き続き中華人民共和国を国連から排斥しようとすることにほかならない。米国はこの陰謀実現のため,各種の卑劣な手段を用い,たえず多くの国をおどかし誘惑した。

一,米国代表は中国に対する最も悪らつな攻撃中傷に訴えさえして,世界の世論をまどわし,一部の国の支持を詐取しようとした。だが,多くのデマにもかかわらず米国の真の目的をおおいかくすことはできなかった。米国代表はその発言の中でも,米国が中国の国連における合法的権利の回復に反対しているのは中国の領土台湾を永久に占領するだけでなく,さらに,蒋介石グループの反動支配を中国大陸に回復することを通じて全中国を支配することをたくらんでいるためであることを公然と告白している。米帝国主義のこのような気違いじみた侵略の野心は強大な中国人民の前には永久に実現しないとはいえ,その重大な危険性は一切の平和愛好国および人民の警戒心を引き起こさざるをえない。

一,ソ連政府は,国連のあらゆる機関から蒋介石グループの代表を追放し,中華人民共和国の国連における一切の権利を回復するという提案を今国連総会に出したが,これは国連憲章の規定と,世界平和および国際協力強化の利益に完全に合致している。この提案は社会主義国および,中国に友好的な多くの国から広範な支持をえた。それらの国は中華人民共和国政府が中国人民を代表する唯一の合法的政府であり,米国が引き続き中国の国連における合法的権利を奪っていることに断固反対している。中国政府はそれらの国の正義の立場と積極的な努力に感謝する。

一,米国の圧力によって,あるいは米国の陰謀に対する十分な認識を欠いたため,若干の国は五ヵ国提案に賛成投票した。これに対しわれわれは遺憾の意を表明する。だがわれわれはそれらの国の立場を理解しており,それらの国が正義を堅持する立場に変わるよう希望する。真に甘んじて米国の陰謀のために奔走奉仕しているのはごく少数の国にすぎず,そのうち最も恥知らずに振舞っているのは日本政府代表である。だが,われわれはそれらの国の支配グループが米国の中国敵視に追随しているのは,それらの国の人民の意思とは完全に相反しているということをはっきりと知っている。

一,中国政府は重ねて厳かに次のように声明する。世界には一つの中国すなわち中華人民共和国があるだけである。台湾は中国領土の分割できない一部である。中華人民共和国の国連における一切の合法的権利は必ず回復されねばならず,中国の議席を不法に占拠している蒋介石グループ分子は国連のあらゆる機構から追放されねばならない。どのような方式であれ「二つの中国」をつくり,台湾を中国から分割する陰謀は中国人民が永久に同意できないものである。米国が引き続き国連に強要して中国の国際的地位を少しも傷つけることはできず,かえって国連の名声が日ましに損われ,米国が全世界の平和を愛し正義を守る国家と人民の反対のもとでますます孤立した立場に追いこまれるだけである。

一,こんどの国連総会は米国にあやつられて,中国の国連における合法的権利を引き続き奪っただけでなく,いわゆる「チベット問題」をも討議し,再び中国を中傷する決議を採択した。だれでも知っているように,チベットは中国の領土であり,チベットに関することがらはすべて完全に中国の内政問題であって,国連をふくむいかなる外国および国際組織もこれに干渉する権利はない。国連がいわゆる「チベット問題」を討議し,いかなる決議を採決しても,それはいかなる国に対しても本質的にその国の国内管轄事項に干渉することはできないという国連憲章の規定する根本原則に対する違反であって,不法であり,無効である。中国政府と中国人民は米国政府が再び国連に強要して中国の内政に対する横暴な干渉を行ない,反中国運動をあおり,国際間の空気を悪化させたその挑発行動に対し,大きな憤りと強い抗議を表明する。同時に,中国と国交を結んでいる若干の国が再び米国に追随し,中国人民に対しきわめて非友好的態度をとったことを指摘しなければならない。このことについて中国政府と中国人民は深く遺憾の意を表明せざるをえない。

一,中国政府は,引き続き一貫して平和外交政策を実行し,世界の平和を守り,人類の進歩をうながすため,しかるべき貢献をするであろう。中国人民は自国をいっそう立派な国に建設する十分な確信をもっている。中国が強大な平和愛好国として国際舞台でその役割を発揮するのを阻止できるような力は世界中どこにもない。米帝国主義の中国敵視政策はますますみじめな失敗に終るだけで,それ以外の結果はありえない。