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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中友好協会訪中代表団と中国人民対外文化協会との共同声明

[場所] 北京
[年月日] 1961年5月14日
[出典] 戦後資料日中関係(1967),237頁.
[備考] 
[全文]

 日本中国友好協会訪中代表団宮崎世民団長以下10名は日中国交回復運動と日中友好運動が日本人民の手によって全国的にもりあがりつつあるさなかに,中国人民対外文化協会の招きをうけて,友好訪問のため,4月26日以来,中華人民共和国をおとずれ,北京のメーデー行事に参加するとともに,各地を参観した.この間に,中国の関係諸方面と接触をおこない,中国人民対外文化協会と,当面の国際情勢ならびに,日中両国関係の諸問題について,友好的な会談をおこない,完全に意見の一致をみた.

 中国人民対外文化協会(以下中国側と略称)は,近年来,日本中国友好協会によって,日本人民の間に広く展開された日中国交回復運動と日中友好運動に感謝するとともに,日本の広範な人民の間からおこされたこのような運動こそ,日中両国の真の友好の基礎であると表明した.中国側は,ここ2年余りの間に全世界をゆり動かした日本人民の新日米「安保条約」反対の闘争は,帝国主義と植民地主義に反対するアジアと世界各国の人民の闘いに限りない励ましをあたえ,アジアと世界の平和を守るうえにきわめて大きな貢献をするとともに,日中友好運動をさらに一歩大きく前進させたと考えている.中国側は,日本人民の独立,民主,平和,中立をめざす闘い,アメリカ軍事基地の即時撤去を要求し,日本の軍国主義化に反対する闘いに対して,改めて深い共鳴と断固たる支持を寄せるものである.

 日本中国友好協会訪中代表団(以下日本側と略称)は,中国人民が総路線,大躍進,人民公社の三つの柱によって社会主義建設を進め,また,2年来の自然災害によってもたらされた一時的な困難を,自力で成功裏に克服しつつあることに深い感銘をうけた.双方は一致してつぎのように認めた.アメリカ帝国主義は,武力をもって中華人民共和国の領土である台湾を強制占領し,また日本の領土である沖縄を占領している.アメリカの新大統領ケネディは就任後,このような状態をひきつづき保っていくとなにはばかることなく公言している.こうした事実は,アメリカ帝国主義が,日中両国関係改善の主な障害であり,アメリカ帝国主義が日中両国人民の共同の敵であることを完全に証明するものである.

 最近のコソゴ,ラオス,キューバに対するケネディ政府の露骨な武力干渉と侵略は,アメリカ帝国主義の侵略的正体をいっそうあからさまに暴露した.この事実は,ケネディ政権に対し,幻想を抱き希望をもっていた一部の人々の間にすら,失望と幻滅をひきおこしている.いまや全世界の人民は,アメリカ帝国主義を世界平和の最大の敵として一致して糾弾している.

 中国側はつぎのように指摘した.アメリカ帝国主義は,ますます露骨に「二つの中国」をつくる陰謀をすすめており,日本反動派はアメリカ帝国主義にそそのかされて,この陰謀実現のための手先となり,また「台湾独立」などという謬言をふりまいているが,これは一握りの日本軍国主義分子の台湾に対する野心を暴露しているものである.中国人民は米日反動派の「二つの中国」もしくは「一つ半の中国」をつくる陰謀活動に断固として反対する.

 日本側は,日本政府の中国敵視政策と「二つの中国」をつくる陰謀を粉砕し,「日台条約」を破棄し,日中両国の国交回復を実現するために闘うことが,とくに日本人民のきわめて重要な責任であるとの信念を表明し,また,「二つの中国」を作る陰謀を粉砕することなくして日中両国の関係を改善することは不可能であることを確認した.

 中国側はつぎのように指摘した.日本政府がひきつづきアメリカ帝国主義に追随し,中国を敵視し,積極的に「二つの中国」をつくる陰謀に加担する状況のもとにあっては,中国人民は政治3原則を堅持し,日本人民と日本政府とを区別して対処せざるを得ない.日中両国人民が各方面にわたる友好往来を強めてゆくことは,とりもなおさず米日反動派が「二つの中国」をつくり,日中両国人民の団結を破壊しようとたくらむ陰謀に手痛い打撃をあたえることになるであろう.

 双方は,日中両国人民が,2000年にわたる伝統的な友誼をもち,また共同の敵であるアメリカ帝国主義に反対する闘争において兄弟のような戦闘的友誼をうちたてたことは,いかなる力といえども破壊することのできないものと考える.双方は一致して,こんご日中両国人民間の友誼をますます強固にするため両国人民間の友好,平和,労働,青年,婦人の大衆諸団体および文芸,学術,体育など広範な交流をひきつづき強め,貿易3原則にもとづく両国人民間の経済交流を活発にするために努力する必要を認めた.

 日本側はより多くの日本人が中国を訪問できるように希望するばかりでなく,より多くの中国の友人たちが,日本を訪問することを希望した.双方は,上述の目的を実現するための具体的な計画については,別に協議することを約束した.

  1961年5月14日

 日本中国友好協会訪中代表団団長

 宮崎世民

 中国人民対外文化協会副会長

 陽翰笙