データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中国交正常化問題に関する廖承志書簡

[場所] 北京
[年月日] 1959年6月21日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),925−926頁.「石橋湛山全集」第14巻,424−8頁.
[備考] 
[全文]

 石橋湛山先生

 閣下の六月四日周恩来総理宛の書簡は私がすでに総理にお渡しいたしました。一九五七年,東京で閣下と御会いいたしましてより,現在では閣下の御健康はすでに回復され,その上適宜な長途の旅行も可能な御様子を知り,大変喜んでおります。

 周恩来総理は閣下の御来訪を歓迎いたしております。

 閣下の訪華御予定が決まりましたならば,妥当な方法を通じて私どもに御知らせ下さいますようお願いいたします。それによつて周恩来総理が閣下に正式の招請書を御送りいたします。

 中日両国は歴史上悠久的な文化と経済交流の関係にありました。戦後,鳩山先生と閣下が日本の首相を担任されました時には,中日両国間の往来は一段と発展を見ました。このような状況は,本来ならばこのまま継続して行き,両国がバンドン精神と五原則の基礎の上に友好的共存で最終的には両国関係の正常化となるべきでありました。

 しかるに,その時より,まさに閣下が御指摘になりました如く,両国間の関係は却つて「甚しく悪化」いたしました。このことは非常に遺憾であります。このような事態になりました責任は,閣下も御明察の通り,決して中国側にあるのではありません。

 今日,閣下が再び両国関係の改進を望まれることを表示なされましたことは,私どもの歓迎いたすところです。私は閣下が我が国の首脳部と直接熱誠なる御交談をなされますことは,中日両国関係の改善に有益であることを信じてやみません。

 閣下の御健康を祈ります。

   一九五九年六月二一日 於北京

              廖 承 志