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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中国の禁漁区設置に関する近藤晋一情文局長談話,中共の禁漁区について

[場所] 
[年月日] 1957年8月24日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),818頁−819頁.外務省情報文化局「外務省発表集」第6号,34−5頁.
[備考] 近藤晋一外務省情報文化局長談
[全文]

 本件について,さきに八月十九日日本政府の見解を発表したところ,中共側の民間団体たる中国漁業協会の八月十日付書簡は,昨二十二日わが国の民間団体たる日中漁業協議会に接到し,中共側措置の内容が明瞭になつたが,これに対する日本政府の見解及び立場は左の通りである。

 領海の範囲について,わが国が三浬を堅持しているのは周知の通りであり,又広く国際的に意見の合致している限度は,沿岸から三浬までである。従つてここまでが現在国際法上確立した領海の範囲である。然るに,中共側の措置は右領海の範囲を遥かに越え,公海に及ぶものである。国際法上如何なる国と雖も,如何なる理由によるを問わず,公海上に,他国船舶の航行又は他国民に依る漁業等を制限ないし禁止する区域を一方的に設定し,これを強行し得ざることは,去る八月十九日の声明において明らかにした通りである。さればこそ,中共側も,その民間団体からわが民間団体に対し,民間のレヴエルで自主的に協調方を特に要請してきたものと思われる。

 中国漁業協会の今回の書簡に対し日中漁業協議会が如何なる回答をするにせよ,右はわが民間の任意の自主的措置であつて,政府を拘束しないことは勿論であり,特に領海三浬の原則及び公海自由の原則に関するわが国の主義上の基本的立場がこれにより何等影響されるものではない。