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東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

[文書名] 日中民間漁業協定(1955年)

[場所] 北京
[年月日] 1955年4月15日
[出典] 日中関係基本資料集、65−77頁.
[備考] 
[全文]

 日本国の日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会との日中漁業会談に関する共同声明

 一九五五年一月十三日から四月十五日まで、日本国日中漁業協議会の七田末吉団長、村山佐太郎、山崎喜之助副団長をはじめとする代表団と、中華人民共和国中国漁業協会の楊●{火へんに日に立/ユウ}団長、高樹頤副団長をはじめとする代表団は、黄海・東海(注、いわゆる東支那海)における漁業間題について、友好的に、また相互に理解し合う精神をもって会談を行った。そして充分に協議した結果、ここに協定がまとめられ、四月十五日北京でその調印式をおえた。

 日本日中漁業協議会代表団と中国漁業協会代表団は、協定の中で、平等互恵、平和共存の原則にもとづき、日中両国漁業界の黄海・東海の一定海域における漁撈の問題について、合理的な措置を講じ、「漁船の操業秩序維持に関する規定」「漁船が緊急事故により寄港する際および海難救助後の処理方法に関する規定」「漁業資料の交換および技術の交流に関する規定」を定めた。この協定は日中両国漁業界の相互理解と友好協力の願いを表わしたものであり、また、日中両国関係の改善を促し、日中両国人民のよしみを深める上に役立つものである。

 日中両国間の正常な関係がまだ回復されていないので、日中両国の民間漁業団体によってとりきめられた漁業協定も、当然暫定的なもの、限度のあるものとならざるを得なかった。したがって、日本日中漁業協議会と中国漁業協会は、この協定を施行すると同時に、それぞれ自国の政府に対し、速やかに日中漁業会談を行い、日中両国政府間の漁業協定を結ぶよう促すことにつとめる用意をもつものである。 一九五五年四月十五日

 日本国の日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会との黄海・東海の漁業に関する協定

 日本国の日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会(以下双方『漁協』と略称する)の委任を受けた代表全員は、平等互恵、平和共存の原則にもとづき、黄海・東海の漁場を合理的に利用し、漁業資源を保護し、双方漁船の操業中の紛争を避け、これによって日中両国漁業界の友好協力を増進するため、協議の結果、次の通り協定した。

第一条 本協定を適用する海域(以下『協定海域』と略称する)は、北緯三十九度四十六分四十八秒・東経百二十四度十分の点、北緯三十七度二十分・東経二十三度三分の点、北緯三十六度四十八分十秒・東経百二十二度四十三分の点、北緯三十五度十一分・東経百二十度三十八分の点、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十三分の点、北緯二十九度・東経百二十二度四十五分の点を、順次に連ねて生ずる線の以東、北緯二十九度以北の黄海・東海の公海とする。

第二条1 双方漁協は、協定海域の六つの漁区について、それぞれ一定の期間内、日中双方の機船底曳網漁船(トロール漁船を含む、以下同じ)の実際に漁獲に従事する最高の隻数を規定するものとする。その方法は附属書第一号の通りとする。

   2 本条の規定は、協定海域における航行を制限するものではない。

第三条 日中双方の機船底曳網漁船は、機船底曳網漁船相互間または機船底曵漁船と他種漁船との間の海上における操業の安全をはかり、正常なる秩序を維持するため、附属書第二号の規定を遵守するものとする。

第四条1 日中双方機船底曳網漁船が、海難その他不可抗力による災害に遭遇し、または乗組員の重傷、急病により緊急避難もしくは救助の必要ある場合は、双方漁協および漁場にある機船底曳網漁船は、出来る限りその支援と救助に努めるものとする。

   2 双方の機船底曳網漁船は、緊急事故により、相手側の港に寄港する必要ある場合は、附属書第三号の規定を遵守するものとする。

第五条 双方漁協は、漁業資源を保護し、双方の漁業生産を発展させるため、漁業の調査研究および技術改善に関する資料を交換する用意がある。その方法は附属書第四号の通りとする。

第六条1 一方の機船底曳網漁船は、相手側の機船底曵網漁船が第一条の規定に違反する行為を発見した場合その所属側の漁協を通じて相手側の漁協に対し、これを処理するよう通知するものとする。通知を受けた側の漁協は第二条の規定に違反した機船底曳網漁船に対し、警告その他の処分を加え、その処理の結果を相手側の漁協に通知するものとする。

   2 日中双方の機船底曳網漁船相互間、または機船底曳網漁船と他種漁船との間で、紛争の発生した場合は、出来得る限り現場において話合いの上解決するものとする。もし現場において解決困難の場合は、それぞれその所属側の漁協にこの旨を報告し、双方漁場がその実際の状況を調査した上解決するものとする。

   3 一方の機船底曳網漁船が第三条の規定に違反して、相手側の機船底曳網漁船または他種漁船に損害を与えた場合は、双方の漁船は、それぞれその所属側の漁協にこの旨を報告し、双方漁協は、実際の状況を調査したのちこれを処理するものとする。

第七条 本協定の附属書は協定本文と同等の効力を有するものとする。

第八条 本協定は、双方漁協が責任をもって、これを施行するものとする。

第九条 双方漁協は、それぞれ自国政府に対し、日中漁業問題の解決について速かに会談を行い、日中両国の間に漁業協定を締結するよう促すことに努めるものとする。

第十条1 本協定は、署名の日より起算し、第六十日から効力を発生するものとする。

   2 双方は署名の日より四十五日以内に必要な手続および準備を終り、相互に通知するものとする。

第十一条 本協定の有効期間は、効力発生の日より一ヵ年とする。一九五五年四月十五日北京においてこれに署名する。本協定書は二通あり、各通共に日本語と中国語により作成される。このニカ国語の条文は、同等の効力を有するものとする。

 日本国日中漁業協議会代表

  七田末吉、村山佐太郎、山崎喜之助、徳島岩吉、増田茂吉、梶山音治、丸亀秀雄、高橋熊次郎、中野源二郎、谷村高司、小川鶴太郎

 中華人民共和国中国漁業協会代表

 楊●{火へんに日に立/ユウ}、高樹頤、趙安博、舒光才、王震祥、張孑夫、侯連三、王野雨

(附属書第一号)

 漁区の呼称、位置、定めた期間および漁船の数に関する規定

 本協定第二条にもとづき、六つの漁区の呼称、位置、定めた期間および双方機船底曳網漁船の実際の漁獲に従事する隻数を次の通り規定する。

 第一漁区

1 漁区の位置は、北緯三十八度・東経百二十三度二十二分の点、北緯三十八度・東経百二十三度三十分の点、北緯三十七度・東経百二十三度三十分の点、北緯三十七度・東経百二十二度四十八分の点、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、三月一日より四月三十日まで、および十一月一日より十二月十五日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船四十六隻、中国漁船百十二隻とする。

 第二漁区

1 漁区の位置は、北緯三十七度・東経百二十二度四十八分の点、北緯三十七度・東経百二十三度三十分の点、北緯三十六度十五分・東経百二十三度の点、北緯三十六度十五分・東経百二十二度一分の点、北緯三十六度四十八分十秒・東経百二十二度四十三分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、二月一日より三月三十一日まで、および十二月十六日より翌年一月十五日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船六十隻、中国漁船百五十隻とする。

 第三漁区

1 漁区の位置は、北緯三十六度・東経百二十一度四十分の点、北緯三十六度・東経百二十二度三十分の点、北緯三十五度・東経百二十二度三十分の点、北緯三十四度・東経百二十一度三十分の点、北緯三十五度五十二分・東経百二十一度三十分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、八月一日より十月三十一日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船八十隻、中国漁船四十隻とする。

 第四漁区

1 漁区の位置は、北緯三十五度五十二分・東経百二十一度三十分の点、北緯三十三度四十八分・東経百二十一度三十分の点、北緯三十五度十一分・東経百二十度三十八分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、四月一日より十月三十一日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船五十隻、中国漁船五十隻とする。

 第五漁区

1 漁区の位置は、北緯三十二度・東経百二十二度三十七分の点、北緯三十二度・東経百二十三度十五分の点、北緯三十度四十四分・東経百二十三度四十分の点、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十三分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、五月一日より七月三十一日まで、および十一月一日より十一月三十日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船七十隻、中国漁船百隻とする。

 第六漁区

1 漁区の位置は、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十三分の点、北緯三十度四十四分・東経百二十三度四十分の点、北緯二十九度・東経百二十三度の点、北緯二十九度・東経百二十二度四十五分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。

2 定めた期間は、三月一日より四月三十日まで、および十月一日より十一月三十日までとする。

3 漁船の数は、日本漁船七十隻、中国漁船四十四隻とする。

 本規定記載の漁船数は、機船底曵網漁船一隻をもって計算単位とし、トロール漁船一隻を機船底曳網漁船二隻と換算する。

(附属書第二号)

 漁船の操業秩序に関する規定

 本協定第三条にもとづき、日中双方の機船底曳網漁船(以下双方『機船』と略称する)の相互間または機船と他種漁船との間の海上における操業の安全をはかり、正常な秩序を維持するため、国際航行に関する一般慣例を遵守する他、左の規定に従うものとする。

一、標識および信号

1 双方機船は、船橋の両側の外壁に、船号または根拠地番号(漁船登録番号)を船首両舷に船名または船号を、船尾には根拠地名、船名または船号をそれぞれ明記するものとする。

2 船橋外壁を、日本機船は黄銅色に、中国機船は灰色に塗装するものとする。

3 双方機船は、曳網中、昼間はその見えやすい場所に『かご』一個を掲げるものとする。

 夜間は三色灯、白灯および船尾灯を掲げるものとする。

4 双方機船は、漁撈中、漁具が岩礁その他障害物にからみついた場合、またはその他の作業事故の発生した場合、昼間は『かご』を下し、船上の見えやすい場所に直径○・六一米以上の黒球一個を掲げ、夜間は三色灯、白灯、船尾灯と作業灯を点灯するものとする。

5 双方機船の夜間識別信号は船橋灯をもって行い、日本機船にあっては長光二回を、中国機船にあっては短光三回を点滅するものとする。

6 双方機船の針路汽笛信号は次の通りとする。

 短音一回は、針路を右に転じている時。

 短音二回は、針路を左に転じている時。

 短音三回は、機関を後進にかけている時。

7 夜間、船場において投錨中の双方機船は、見えやすい場所に停泊灯を掲げるものとする。

8 漁撈中の帆船(機関を有するも現に使用していないものを含む、以下同じ)は、昼間は船上の見えやすい場所に『かご』一個を掲げ、機船が近づくのを見かけた場合は、適当な信号で、漁具の延伸方向を示し、流網を延ばしている場合は、右の規定の他、流網の末端の浮標に赤旗一流を掲げるものとする。

 夜間は船尾の見えやすい場所に白灯一個を掲げ、機船が近づくのを見かけた場合は、さらに白光を発し、漁具の延伸方向を示すものとする。

二、操業中の遵守事項

1 双方機船は、曳網中の機船の正船首前方において、投網、投錨または該機船の操業を妨害する行為をしてはならない。

2 曳網申の双方機船は、前方を曳網中の機船を追越して、その正船首前方で曳網し、該機船の操業を妨げてはならない。

3 曳網申の機船の正後方およそ一、○○○米は、その漁具の延伸区とし、他の機船はこの範囲内において、投網または投錨もしくは該機船の正常曵網を妨げる行為をしてはならない。

4 二組(組とは、一流の網を操作する機船二隻をいう、以下同じ)の機船が並航して曳網する際は、相互にその間隔三〇〇米以上を保持するものとする。

5 機船の比較的集中している漁場における双方機船の曳網は、少数機船は多数機船の曳網方向に注意し、多数機船の曳網に困難または損害をあたえる行為をしてはならない。

6 機船の比較的集中している漁場においては、双方機船は曳網方向を一定に保持するものとする。風圧または潮流により、これに従う事が出来ない時は、汽笛信号を送り、転針を示すものとする。

三、避航に関する事項

1 曳網中の機船が真向に行き会った場合は、相互の距離五〇〇米以上の処において、それぞれ右に転針するものとする。殆ど真向の場合は、五〇〇米以上の処で、相互に針路をゆずりやすい方向にゆずり、同時に汽笛信号を発声するものとする。

2 二組の機船が互に針路を横切る時、相手船を右に見る方の機船は、相互の距離五〇〇米以上の処で、暫時曳網を停止するか、減速曵網を行うか、または右に針路を転じ、相手船の通過後五〇〇米以上になるまで、継続するものとする。

3 曳鋼中の機船は、投網または投錨申の機船を避けなければならない。曵鋼中の機船は、揚網中の機船との距離五〇〇米以上の処で曳網針路を転じ、避航しなければならない。

 曳網中の機船は、投錨申の機船の後方を通過しなければならない。やむを得ずその前方を航行する時は、一、○○○米以上の距離を保持するものとする。

4 曳鋼中の機船は、その前方に漁具を喪失して捜索中の機船を発見したときは、適宜針路を転じ捜索機船に便宜をあたえるものとする。

5 曳網中の機船は、その前方に故障(ロープ切れ、漁具かかり、その他)により揚網中の機船を発見したときは、曳網針路を転じてこれを避ける他、該機船の信号に注意し、相互の漁具のからまぬように行動をとるものとする。

6 双方機船は、漁撈中の帆船およびその漁具を避けるようにするものとする。

7 航行中の機船は、漁撈中(投錨、曳網または揚網中)の機船の針路を避け、その近くを高速航行して相手の作業に困難を来たしてはならない。

8 航行中の機船は、投錨中の機船の後方を航行するものとする。やむを得ずその前方を航行する時は、一〇〇米以上の距離を保持するものとする。

四、双方機船は、漁場において投錨する場合、相互に他の組との距離、間隔それぞれ一、○○○米以上を保持するものとする。

五、双方機船は、以上各項の規定の他、切迫した状況の場合、衝突または漁具のからみを避けるため、臨機応変の措置をとり、不測の事故の発生を防止するものとする。

六、双方の機船は、操業の安全をはかるため、航行または漁撈中の当直見張および慣習上の予防措置を怠ってはならない。

(附属書第三号)

 漁船が緊急事故により寄港する際および海難救助後の処理方法に関する規定

 本協定第四条にもとづき、日中双方の漁船(以下『双方漁船』と略称する)が緊急事故により、相手側の港に寄港する場合および海難救助後の処理方法に関する規定を次の通り定める。

一、双方漁船は、次のいずれかの事由により帰港の間に合わない場合は、自力または曳航されて相手側の指定した港に寄港することができるものとする。

1 乗組員が速かに医療をうけなければならない重傷病に罹った場合(伝染病はこれに含まれない)。

2 機関または船体に重大な故障もしくは破損を生じた場合。

3 船体の重大な破損により浸水のため沈没の危険がある場合。

4 台風の襲来をうけた場合。

二、双方漁船は、本規定の『一』のいずれかの事由ある場合、日本の漁船は中華人民共和国側の指定した石島港、連雲港、呉淞口に寄港することができ、中国の漁船は日本側の指定した長崎港、五島列島の玉の浦港、鹿児島県山川港に寄港することができる。但し双方漁船は事前に港外の錨地に停泊し、当該地の相手側の港務機関に入港を要請し、その許可を得たのち、はじめて指定された地点に入って寄港することができるものとする。

三、双方漁船は、破損が甚しいため、全く航行能力を失い、また相手側の指定した港までこれを曳航する他船のない場合は、最寄の相手側の港に直接入港することができる。但し到着後は直ちに当該地の関係機関にこれを報告しなければならない。

四、寄港する漁船が相手側港務機関と連絡する方法は、自国の漁協より相手側の漁協を通じ、相手側港務機関に当該漁船の所属会社名、船名、根拠地名、屯数、船長氏名、乗組員数、寄港しようとする港名、到着日時および寄港の理由を通知して、寄港の許可を要請するものとし、相手側の港外の定めた路地に停泊したのちは、信号により当該地の港務機関と連絡をとるものとする。

 この信号方法は次の通りとする。

1 昼間は国際信号旗を掲げる。

2 夜間は発光信号を用いる。

五、双方漁船の寄港の期限は、修理または台風の期間中のみとする。もし当該地で修理できない場合は、寄港している漁船の所属側の漁協が責任をもって、十日以内に方法を講じて、寄港している漁船を本国に曳航するものとする。

六、一方の漁船が相手側の港に入出港する際および在泊中は、次の事項を守らなければならない。

1 相手国の関係法規を守り、当該地の関係機関の指示に従うと共に、その訊問と検査をうけること。

2 相手側の漁業禁止区域を通過するときは、本規定の指定した港に出入する上に必要な航路のみを通るものとし、迂廻針路をとってはならないこと。

3 入港した後は、相手側に関係書類を提出すると共に、入港の理由を説明すること。

4 測量、写図、撮影、偵察、気象記録、水深記録および業務と無関係の記録をしてはならないこと。

5 無線電信設備を使用してはならないこと。

6 当該地の関係機関の許可がない限り、乗組員は上陸してはならないこと。

七、寄港している漁船が食料品、飲料水、医療用品、その他必需品の補充を要する場合は当該地の漁協またはその他の関係団体は最善の配慮をあたえ協力するものとする。

八、一方の漁船が相手側の漁船を救助したときは、直ちに救助された漁船の所属会社名、船名、救助した日時、位置等を自国側漁協に報告すると共に、遭難船とその乗組員を現場で相手側の他の漁船に引渡すものとする。もし引渡不可能の場合は、双方の漁協が連絡をとり、その協議の結果によって、自国側漁協の指示に従い処置するものとする。

九、本規定『一』『三』の事由によらずに相手側の港に入港した漁船、または『六』の各項の規定を守らなかった漁船は相手国の関係法規に照して処置され、その責任は当該漁船自らが負わなければならない。

一〇、本規定を実行するに要した経費は、双方漁協がそれぞれ立替えて、一年に一度これを相殺勘定により決算し、負債は当該漁協が相手側に支払うものとする。

(附属書第四号)

漁業資料の交換および技術の交流に関する規定

 本協定第五条にもとづき、日中双方の漁協は、漁業資料の交換と技術の交流に関する事項を左の通り規定する。

一、漁業資源については

1 相互に黄海・東海の漁業資源の調査研究および統計に関する資料を交換するものとする。

2 相互に試験研究機関の施行する魚類標識放流業務に協力するものとする。

二、相互に漁撈の設備、技術および漁船機関の操作経験に関する資料を交換するものとする。

三、相互に水産加工技術に関する資料および加工見本を交換するものとする。

四、相互に水産養殖の試験研究および技術経験に関する資料を交換するものとする。

往復書簡

中国漁業協会代表団より

日本の日中漁業協議会代表団あて

 中華人民共和国の中国漁業協会代表団は、中華人民共和国政府の指示にもとづき、ここに日本国の日中漁業協議会代表団に次の事項を通知いたします。

一、中華人民共和国政府は、国防の安全と軍事上の必要により、中国沿岸一帯の海域について次の諸事項を規定いたしました。

1 北緯三九度四六分四八秒・東経一二四度一〇分の点から北緯三七度二〇分・東経一二三度三分の点に至るまで連ねて生ずる線以西の海域は軍事警戒区域であり、中国政府の関係部門の許可がなければ、日本漁船はこの区域に入る事はできません。

2 北緯三一度・東経一二二度の点、北緯三〇度五五分、東経一二三度の点、北緯三〇度・東経一二三度の点、北緯二九度三〇分・東経一二二度三〇分の点、北緯二九度三〇分・東経一二二度の点、この五つの点を連ねて生ずる線に囲まれた海域は航行禁止の軍事区域であり、日本漁船がこの区域内に立ち入る事は禁じられています。

二、北緯二九度以南、台湾周辺をふくむ中国大陸沿岸以東の海域は、今なお軍事作戦の行動が行われている状況の下にあるので、日本漁船がこの海域に入って操業をしないよう特に勧告いたします。もし、日本漁船がこの海域に入って操業したならば、それによって生ずる一切の結果については、当該漁船自らが責任を負わなければなりません。

三、中華人民共和国政府は中国沿岸の漁業資源を保護するため、北は北緯三七度二〇分・東経一二三度三分の点から、北緯三六度四八分一〇秒・東経一二二度四三分の点、北緯三五度一一分・東経一二〇度三八分の点、北緯三〇度四四分・東経一二三度二三分の点、北緯二九度・東経一二二度四五分の点に至るまでの五つの点を連ねて生ずる線以西の海域を機船底曳網漁業禁止区域と規定しており、中国の機船底曳網漁船がこの区域で漁撈をする事は禁止されています。同時に、日本の機船底曳網漁船もこの区域に入って漁撈をしてはなりません。

 ここに、中国漁業協会代表団は、日本の日中漁業協議会代表団に対し、同代表団が、前述の通知事項について最も深い注意を払い、日本の日中漁業協議会をして有効措置をとらしめすべての日本漁船が前述の規定を遵守することを保証するよう要請します。

日本国日中漁業協議会代表団

七田末吉団長

村山佐太郎副団長

山崎喜之助副団長

中国漁業協会代表団

団長 楊●{火へんに日に立/ユウ}

副団長 高樹頤

一九五五年四月十五日

日中漁業協議会代表団より

中国漁業協会代表団あて

 日本国の日中漁業協議会代表団は一九五五年四月十五日、北京において締結された「日本国の日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会との黄海・東海の漁業に関する協定」に附随して発せられた、一九五五年四月十五日附の貴翰に対し、左の如く回答致します。

一、左記三つの軍事区について、我が代表団は、貴国政府の措置が、国籍の如何に拘らず総ての船舶に対し適用され、特に日本漁船のみを対象とするものではないとの理解のもとに、

1 北緯三十九度四十六分四十八秒・東経百二十四度十分の点、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分の点を連ねて生ずる線以西の軍事警戒区域については、貴国政府の関係部門の承認なくしては、日本漁船は立入らぬ事とします。

2 北緯三十一度・東経百二十二度の点、北緯三十度五十五分・東経百二十三度の点、北緯三十度・東経百二十三度の点、北緯二十九度三十分・東経百二十二度三十分の点、北緯二十九度三十分・東経百二十二度の点の五つの点を連ねて生ずる線に囲まれた軍事航行禁止区域については、日本漁船は立入らぬ事とします。

3 北緯二十九度以南の軍事作戦区域については、貴代表団の勧告の趣旨を諒とし、その旨を日本漁船に周知徹底させます。

二、貴国政府が、中国沿海の漁業資源を保護する目的を以て、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分の点、北緯三十六度四十八分十秒・東経百二十二度四十三分の点、北緯三十五度十一分・東経百二十度三十八分の点、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十三分の点、北緯二十九度・東経百二十二度四十五分の点の五つの点を連ねて生ずる線以西の機船底曳網漁禁止区域については、我が代表団は一国の国内法が、公海において、直ちに他国民を拘束することは出来ないものであると理解するものであるが、貴国政府が機船底曵網漁業禁止区域を設定した趣旨に注意を払い、日本機船底曵網漁船が右禁止区域において操業しないよう、自主的に制止することを約束します。

 我が代表団が貴代表団の勧告にもとづき、右措置を表明したのは、黄海・東海漁場における日中双方漁船の平和共存を保障し、日中友好の増進を念願する為であります。

 貴代表団は我が代表団の右念願が達成されるよう、あらゆる有効な御協力を特に希望するものであります、

一九五五年四月十五日 北京において

日本国日中漁業協議会代表団

団長 七田末吉

副団長 村山佐太郎

副団長 山崎喜之助

中華人民共和国中国漁業協会代表団

団長 楊●{火へんに日に立/ユウ}殿

副団長 高樹頤殿

備忘録

中国漁業協会代表団より

日本の日中漁業協議会代表団あて

 黄海中部における北緯三四度・東経一二三度の点、北緯三四度・東経一二四度の点、北緯三三度・東経一二四度の点、北緯三三度・東経一二三度の点を連ねて生ずる線に囲まれた海域は、キグチの密集する場所であり、毎年の十月、十一月ならびに翌年の一月、二月等の四カ月間中国からは常におよそ八十組の機船底曳網漁船が同漁場において操業し、又これと同じ時期に、日本からも多くの機船底曳網漁船が、この漁場において操業をおこなっています。それで中国漁業協会代表団は会談の過程において、中日双方の漁船の競合の激しい漁場に合理的な按配をおこなうという原則にもとづき、同海域を一つの漁区として区画し、この漁場およびその盛漁期における双方の操業船数を合理的に限定するようにと再三提案しました。

 しかし、貴方代表団は、同海域で操業する日本の機船底曳網漁船はおよそ五十組であり、中日双方の漁船で激しい競合は起らない等の理由を再三表明して同海域を一つの漁区として区画する事に同意しませんでした。同時に貴方代表団は、同海域において、中国漁業界の利益を考慮に入れ、漁場を独占せず、中国漁船の操業を排斥しないことを約束すると表明しました。上にのべたような状況にもとづきわが方代表団は日本漁業界との友好協力の願いから出発し、黄海・東海における中日双方の漁業問題の速やかな協議達成を促すため、暫時同海域を一つの漁区として区画しなくても良いと考えるに至りました。

 同海域の漁業資源を保護し、漁業上の紛争をさけるため、わが方は貴方代表団に対し、同海域に対するわが方代表団の見解に注意を払い、貴方漁船が同漁場において、中国漁船を排斥するような事が起らないよう適切な措置をとるよう希望すると共に、貴方漁船の乗組員にこの度の中日双方の民間漁業団体によって調印された協定の附属書第二号「漁船の操業秩序維持に関する規定」を確実に遵守するよう通告し、それによって、中日両国漁業界の友好と協力の増進をはかるよう希望いたします。

日本日中漁業協議会代表団

七田末吉団長

村山佐太郎副団長

山崎喜之助副団長

中国漁業協会代表団

団長楊●{火へんに日に立/ユウ}

副団長高樹頤

一九五五年四月十五日

日中漁業協議会代表団より

中国漁業協会代表団あて

 このたびの漁業会談において、貴方代表団が最後まで熱心に主張されたにかかわらず、日本代表団の反対によって決定を見なかった問題について、話合の経過を備忘録として交換したいという、貴方代表団の提案にもとづき、日本代表団は以下の如き見解を表明致します。

 日本代表団は、このたび貴方代表団との友好的な会談を通じて、相互に理解を深めると共に、幾つかの重要な問題についての一致を見ました。それは、漁業資源を保護し、漁場を合理的に利用し、紛争を避けつつ生産の発展をはかることが、両国漁業界の利益と繁栄に合致するという見解から、双方の間で、当面必要な、具体的かつ実行可能な方法を決定したものであります。

 しかし、日本代表団は、黄海・東海の中部の北緯三十四度・東経百二十三度の点、北緯三十四度・東経百二十四度の点、北緯三十三度、東経百二十四度の点、北緯三十三度・東経百二十三度の点を結んで囲まれた水域において、一定の期間に限り、双方のトロール漁船および機船底曳網漁船(以下単に「漁船という)の操業船数を、相互に自発的に限定したいという、貴方代表団の提案については、遺憾ながら同意致しかねたのであります。それについては日本代表団は次の如く主張しました。

 同方面の水域は、広い区域に亘る普遍的な漁場であるから、盛漁期であっても両国漁船の競合することはすくない。さらにこのたびの会談の結果、両国漁船の友好的な操業が可能になり、また日本漁業界に協定の趣旨が徹底すれば、日本漁船は漁場の選択に一層注意を払い、それぞれの漁場に広く分散することが予想される。

 諸般の状況から判断して、今後日本の漁船が前記水域で同時に操業する数は、五十組乃至六十組の程度であると思われるが、同方面の漁場の状態から見て、日本漁船が狭い区域に過度に集中するとは考えられない。従って、日本代表団は、貴方代表団の言われる如く、日本漁船が同水域の漁場を独占したり、中国漁船の操業を排斥したりするような事態は、事実上起らないと信ずる。

 これに対して貴方代表団は次の如く主張されました。

 日本代表団は五、六十組と言われるが、過去において日本漁船は一時に百組以上同水域で操業した事実がある。同水域は中国にとっても極めて重要な漁場であり、十月、十一月および翌年一月、二月の四カ月には、七十組乃至百組の中国漁船が出漁する。従って双方が何等の制限も加えないならば、必ず両国漁船が激しく競合し、競合による紛争発生の懸念があるのみでなく、中国漁船は優秀な日本漁船に圧倒され、その生産を遂行出来なくなる。このような懸念を無くするため、これを一つの漁区として区画し、双方漁船の数を合理的に按配すべきである。

 しかしながら、日本代表団は、前述の理由および国際的な影響を考慮して、これに同意し得なかったのであります。勿論日本政府代表団は、日中両国漁業界の友好増進の立場から、貴方提案の趣旨に充分の注意を払って居ります。

 更に日本代表団は、協定の附属書第二号、即ち「漁船の操業秩序維持に関する規定」を確実に遵守することにあらゆる努力を払うことを、特に申し添えます。同時に日本代表団は、単に前記の水域のみでなく広く黄海・東海のすべての漁場において、日中両国の漁船が、相互に信義誠実を旨として、操業上の規律を守り、秩序を維持することを信じて疑いません。

 日本代表団は、このたびの会議の経過に鑑み、貴方代表団と協力し、会談の成果を一層有意義なものとするよう、熱望するものであります。

一九五五年四月十五日 北京において