データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・中米共同記者会見

[場所] 首相官邸
[年月日] 2005年8月18日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【小泉総理】 本日、中米7か国首脳と、東京で初めてこのような会合を開くことができました。中米諸国首脳の来日を心から歓迎するとともに、このようなすばらしい会合を持てたことを喜んでおります。

 今年は、日本と中米交流年であります。現在もさまざまな分野で記念交流行事が開催されております。愛知の万博にも中米諸国が協力して参加していただいております。心から御礼を申し上げます。

 明日は、中米のナショナルデーだと伺っております。しかも今日は万博、3月から始まって9月に終わる6か月間でありますけれども、この6か月間で1,500万人の訪問を期待して、それを目標としておりましたが、今日、その目標の1,500万人を突破したということであります。こういう記念すべき日に中米諸国首脳との初めての会談ができたことを喜んでおります。また、実りよい会合でありました。

 中米は地域統合の進展に伴いまして、国際社会での発言力も強めております。日本にとっては大変たのもしいパートナーになっていくと期待しております。

 我が国は中米統合に積極的に支援していく考えでありまして、この中米統合が地域の安定と発展に貢献することを期待しております。

 日本は、人づくりといいますか、人材、これが財産であります。中米諸国が教育を重視していると、人づくりを重視しているというお話も今日も伺いました。これまでの二国間協力に加えまして、共通の開発課題を抱えている中米地域に対しまして、広域協力を強化して、更に教育とか人づくりにおきましても日本としてできることがたくさんあると思っております。

 経済交流、観光交流あるいは米百俵の精神が中米諸国でも共有されていると聞いて大変うれしく思っております。それだけ日本の教育に対しても関心を持っていただき、人づくり、教育が大事だという認識を強くされているんだと思いまして、日本としても今後5年間で中米より約千人の青年たちを招聘したいと思っております。

 また、日本と中米諸国との協力のみならず、国際社会において、国際間の協力をこれからしていかなければならないと。国連改革あるいはWTO、IWC、環境等、グローバルな課題に対して、日本と中米はともに協力していかなければならない、またできると思っております。

 国連改革、国連安保理常任理事国入りに対しまして、各国から温かい支援の表明がありまして、感謝申し上げたいと思います。

 本日、採択されました東京宣言、これは日本と中米、未来に向けた友情と題されております。この宣言及び行動計画を踏まえて、未来に向けて日本と中米の友好、協力関係を一層強化していきたいと思います。

 今日は皆さん本当にありがとうございました。

【リソ・ニカラグア副大統領】 ありがとうございます。皆様、こんばんは。

 日本と中米の外交関係70周年の年でありますけれども、この年に私どもは第2回の歴史的に重要なSICAと私たちの友好国日本との会合をすることができました。

 私たちと日本との関係、貿易、経済、投資関係を含めて、これは非常にポジティブなものであるということを確認いたしました。

 また、新しい環境というものがありますし、また政治学的に見ましても、また地域的に見ても、そしてまたグローバルに見ても新しい環境にある中でこれを強化していくことを考えております。

 そして、またSICA加盟国といたしましては、非常にポジティブな形で進展してきた日本から中米への御支援に対して深く感謝しておりますし、また、それは私たちの地域の社会、また経済の発展にとって非常に重要なものであったわけであります。

 それと同時に政治面での協力というものについての話もありました。国際場裡における協力であります。それによりまして、私たちのきずなというものをより深くすることができると思っております。

 また、同様に、私たちの合意した点というものは、自由貿易協定、ドミニカ共和国、中米、そしてまた米国との自由貿易協定でありますけれども、これはまさに中米との、CAFTA、それからまたCARICOMとの自由貿易協定とも相まって、私たち中米の中におきまして、自由貿易の地域というものを創設して、そしてまたEUも含めた形での交渉を開始する予定があります。

 その中で、私たちは中米の日本においての促進というものを考えてまいりました。また、私たちが合意した点というものは、特別なプロモーションの投資フォーラムを開催するということであります。

 愛知万博に参加するために、私どもは明日旅行をいたします。そして、私たちは中米のセレモニーに参加することになっております。私どもは地域として一致して、私どもの製品、そして私どもの持つ豊かな多様性を皆様方に説明しておりますし、また文化的な要素をお見せしております。

 私たちはこの日本におきまして、その自由と富を見せていただいております。その中で私どもは協力関係を誓い、既にもう存在する強いきずなというものを確認し、このグローバル化した、私どもが相互依存する国で今後ともしかるべき道を歩んでいきたいと思います。

【質問】 小泉総理へお伺いします。

 まず今年は日・中米交流年ですが、相互理解をどのように進めるとお考えでしょうか。次に、FTAについてです。メキシコに続いて中米とのFTA、自由貿易協定の締結の見通しをどのようにお考えでしょうか。

 あと1点。国連改革についてです。国連安保理常任理事国入りを目指す日本にとって、中米諸国はどのような重要性を持ち、そして日本の立場に理解が得られているとお考えでしょうか。

 以上です。

【小泉総理】 日本と中米との相互理解をどのように進めていくかということでありますが、今日の7か国首脳との会議。これは初めてですけれども、これまでも中米諸国と日本とは良好な関係を持ってきたと思いますが、まだまだ十分ではなく、潜在的な可能性のあるものがたくさんあるということであります。

 たまたま愛知万博が開催されて、明日は中米ナショナルデーだと。万博を訪れた訪問客が今日、1,500万人を突破したと。そのうち150万人は中米諸国の共同館を訪問したそうであります。10人に1人が中米の共同館を見学して楽しんで、好評を博しているということを聞いております。

 今回の初めての東京における中米との首脳会議を契機にして、経済協力、文化交流、青少年の交流、あるいは観光。さまざまな面でいい意見を伺いました。

 このような交流を深めていくことによって、私は中米諸国と更に相互理解が深められるのではないかということを期待しております。

 FTAはどうかと言いますと、このFTAについては具体的な協議はしておりません。しかし、交流が進んでいけば、これはお互いの貿易においても投資においても更に発展していくでしょうし、この中米諸国の統合というのが全体に大きな影響力を持っていきますから、日本との協力は更に重要になってくると思います。今のところ、具体的なFTAの検討は進めておりません。

 国連改革についてでありますけれども、これは日本の立場については大変温かい支援をいただいております。これからも緊密に協力を進めていきたいと思っております。

【質問】小泉総理に質問です。

 小泉政権のホンジュラス政府及び中米諸国並びにそのほかの機関に対しての経済技術協力の支援はどのようなものでしょうか。これは例えば、投資なども含めてでありますけれども、それからまた貿易の均衡、不均衡を正すためにどのようなことをお考えでしょうか。

【小泉総理】 これからの経済技術協力についての話ですが、ホンジュラスといえば大統領閣下のお話にありましたけれども米百俵に感銘していただいて、この米百俵の物語を舞台にして、ホンジュラスの国民の皆さんが日本の米百俵の物語をホンジュラスで、各地域で展開して、大変好評だと聞いております。これはホンジュラスのみならず、周辺諸国も、なるほど、この米百俵の話はいいなということで、普及していきたいという動きがあるということを聞いております。

 やはり、教育の重要性というのは日本のみならず、今日の中米諸国の首脳からもそれぞれ指摘されましたので、職業訓練とか、あるいはIT分野の協力、インフラの整備、こういうことを進めることにおきましても、私は教育分野の交流と若い世代、青少年の協力というのは大変、今後、意味のあるものになっていくのではないかと期待しております。

 更に、これからの観光面におきましても、中米諸国は美しいカリブ海、更にはマヤ文明、文化遺産、そして環境のことを考えますと、日本は環境重視でありますけれども、中米諸国は貴重な動植物に恵まれた地域であります。そういう意味において、やはり経済技術協力、人の交流、お互いに持てる力を生かし合っていく、補い合っていくという面において、非常に楽しみな交流ができるのではないかと期待しております。

【質問】 リソ副大統領に伺います。

 中米の諸国は経済の統合が進んで、経済圏としての規模も拡大しているというふうに伺っておりますが、我々日本の国民にとりますと、残念ながら中米諸国は遠い国という印象がぬぐえません。アメリカとの自由貿易協定などを踏まえて、中米諸国は日本との経済関係、取り分け相互理解をどのように進めようというふうにお考えになっていらっしゃるのか。

 また、国連改革について伺いますけれども、日本の常任理事国入りについてどのようなお考えをお持ちでしょうか。そして、それは中米各国の中で足並みはそろっているのでしょうか。

【リソ・ニカラグア副大統領】 ありがとうございます。

 今日、現在、遠い国というのはないというふうに考えます。私たちは既にグローバル化の時代に入っているわけであります。したがいまして、私たちは本当に何千キロという距離があるといたしましても、それは救い難い障壁になるということはないというふうに考えております。

 その意味で、私ども非常に熱意を持っているわけでありますけれども、日本の投資というものは、このような中米の統合に対しても非常に大きな貢献をしてくださいました。中米諸国は統合というものに熱意を持っておりますし、また国連の改革につきましても、それから日本の常任理事国入りということも、大変それは正当なる考えであるというふうに考えております。勿論、それを支援するつもりでおります。

【質問】 こんにちは、リソ副大統領。

 この東京宣言というのは、非常に明確でありまして、日本の意思というもの、協力を継続する中米に対して、あるいは民間の投資を促進するという姿勢が非常に明確だと思います。

 しかしながら、今朝、企業の人たちとの話し合いがあったわけでありますけれども、この安定性あるいはガバナビリティーと、こうした政治的な安定性と、それから例えば中米の多くについては治安の問題があるわけでありますけれども、こういうものについてどういう評価をしていらっしゃいますか。

【リソ・ニカラグア副大統領】 確かに、今日の東京宣言の調印でありますけれども、私たちは非常に満足を覚えております。

 つまり、この会談というものが非常に叙情的なもの、あるいは形だけのものではなく、非常に実質的であり、私たちはつまり、東京宣言の後、次に何を実施するか。この東京宣言に伴う行動を、どのように私たちがその目的に到達するかということについても取り決められたわけであります。そういう意味で非常に評価しております。

 また、ガバナビリティーについてでありますけれども、我々の国々というものは、中米の安定性というものが非常に重要であると考えております。これは西半球のすべてにとって重要なことであり、世界平和にとっても重要なことであると考えております。

 したがいまして、このような精神をもって、私たちは、この中米と日本との関係の強化というものを今後も進めていくことに同意したわけであります。