データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 21世紀に向けた日本とカナダの関係の強化

[場所] オタワ
[年月日] 1997年11月27日
[出典] 外交青書41号,361−362頁.
[備考] 
[全文]

 橋本総理大臣及びクレティエン首相は、日本とカナダが21世紀に向かうに当たり、日加関係を強化する決意を新たにするため、本日会談を行った。両首脳は、昨年11月に両首脳が東京で発表した「協力のためのアジェンダ」の実施について進展が見られることを歓迎するとともに、3つの主要分野、即ち平和及び安全保障の推進、経済関係の強化並びに青年交流の拡大の各分野において、新たなイニシアティヴをとることを決定した。

1.平和及び安全保障の推進

 両首脳は、日本及びカナダが国際的な平和及び安全保障に係る両国の協力の幅を広げることを確認した。クレティエン首相は、日本が来月オタワにおいて対人地雷禁止条約に署名する意向であり、また本年3月に「対人地雷に関する東京会議」を主催し、そこで地雷除去の及び犠牲者支援についてのガイドラインが国際社会によって策定されたことにつき、祝意を表明した。両首脳は、これらの問題及び条約実施上の問題に焦点が当てられることとなる次の段階において、緊密に協力する。この点に関連して、日本国政府は、「東京ガイドライン」の実施のフォローアップとして、5年を目途に100億円の協力を行うことを内容とする支援策を発表した。

 両首脳は、予防外交、紛争解決、平和維持活動及び紛争後の平和構築の分野における国連改革のための努力を強化するとの決意を新たにした。また、両首脳は、国連が地球的規模の課題に一層効果的に取り組むことのできる体制を整えるべく、国連改革に向けて努力するとの確固たる決意を新たにした。 

 両首脳は、本年9月に開催された第一回日加政治・安全保障協議が有意義な成果を挙げたことを歓迎した。この協議において、相互にとり都合の良い時期に平和及び安全保障に係る共同シンポジウムを開催すべくカナダ側が取り進めに当たることを決定された。これは、様々な問題についての対話を拡大するため双方の専門家が一堂に会する場となろう。

2.経済関係の強化

 両首脳は、貿易並びに互恵的な直接投資及び資産運用投資を含む、経済面での伸長が重要であることに留意した。両首脳は、貿易及び投資の拡大の方途を探求するため、1998年春に、カナダ側の上級ビジネス代表団が日本を訪問する予定であることを欣快とし、これに留意した。これは、日本からの経団連ミッションが昨年カナダを訪問したことに引き続いて実施されるものである。また、両首脳は、「日加租税条約」の改正に関して原則的に合意に達したことを発表した。この改正は、雇用及び商業上の諸条件を改善することとなろう。

 両首脳は、援助協調が、OECDパートナーシップ戦略実施のための相互支援、アフリカ、東南アジア及びボスニアにおける共同プロジェクトの急速な増加、並びに、1998年開催の「第2回アフリカ開発会議(於:東京)の準備委員会」に貢献するとのカナダ側の決意を含め、広範な活動に及んでいることを欣快とし、これに留意した。更に、両首脳は、昨年の「第三国協力」に関する発表により、第三国プロジェクトの可能性に関し日本側が開催したフォーラムへのカナダの参加が実現し、また、共同プロジェクトへの民間部門参加の可能性につき認識の向上を見たことについて満足の意を表明した。

3.青年交流の促進

 両首脳は、一層の協力及び理解を促進するため二国間の交流と対話が増大していることを歓迎した。この関連で、両首脳は、二国間の絆を強化するため両首脳が昨年設置した「日加フォーラム」の第一回会合が、ヴィクトリアにおいて8月に開催されたことを歓迎した。

 両首脳は、21世紀を迎えるに当たり、友好と理解の絆を強化する鍵として特に青年交流が重要であることを強調した。日本側は、「語学指導等を行う外国人青年招聘計画」(JETプログラム)を更に推進し、カナダからの草の根レベルの大使として活躍するカナダ人青年に日本での機会を引き続き提供できるようにする。また、「ワーキング・ホリデー制度」も強化される。日本側は、この制度の下に日本で提供される機会を改善するため及びそのような機会についてカナダ人青年の間での認識を高めるためのキャンペーンを実施する。5000名までの日本人青年が、明年この制度の下でカナダで休暇を過ごすことが期待される。日本人青年はカナダでの休暇の間、カナダの生活及び文化に触れるのみならず、その多くが英語又は仏語をパートタイムで学び、また、日本人観光客への便宜提供の手助けに当たることともなろう。