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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 橋本内閣総理大臣とフジモリ・ペルー大統領の会談に関する共同記者発表

[場所] トロント
[年月日] 1997年2月1日
[出典] 外交青書41号,254頁.
[備考] 
[全文]

 橋本龍太郎日本国総理大臣とアルベルト・フジモリ・ペルー共和国大統領は、両国政府の合意に従い、1997年2月1日、カナダ国トロント市において会談した。

 会談の目的は、MRTAを自称するテログループにより引き起こされた在リマ日本大使公邸占拠事件を平和的に解決するために、率直かつ真剣な意見交換を行うことであった。

1.両首脳は、テロリストによって引き起こされた在ペルー日本大使公邸占拠事件は、日秘両国をはじめ国際社会全体が絶対容認し得ないものであるとして,これを強く非難するとともに、両国政府はテロリズムに決して屈しないことを再確認した。

2.両首脳は、人命尊重を最優先するとの立場に立って、事件の平和的解決と人質の早期全面開放に向けて一層の努力を傾注するとの意思を再確認した。

3.トロントにおける会談では,本事件の終結のため、両国政府間の極めて緊密な協力と調整の必要性が再確認された。かかる観点より、両首脳は、ペルー政府の対話者と日本大使公邸を占拠しているMRTAグループ代表との間における予備的対話の開始を進めることに合意し、遅滞なく実現することを期待する。

4.また、両首脳は、かかる対話がペルーの国内法及びこのような事例に適用される関連国際法を完全に尊重する枠組みの中で行われるべきであることにつき、意見の一致を見た。

5.上記に従い、橋本総理大臣は、現在収監中のMRTAのテロリストの釈放要求を拒否するとのフジモリ大統領の立場を支持するものであり、この立場は国際社会全体の意見と一致する。

6.日本政府は、平和的解決に向けての対話の進展のためには、人質の身体的及び精神的健康の維持が不可欠であるとするペルー政府の立場を支持する。

7.両首脳は、1997年1月28日に保証人委員会メンバーの会合が開催されたことを歓迎し、ペルー政府の対話者と日本大使公邸内のMRTAグループとの間の直接対話を実現させるために同委員会が行ってきた努力を高く評価する。保証人委員会の会合には、日本政府の公式オブザーバーとして寺田輝介大使の同席を得ることで合意した。

8.橋本総理大臣は、公邸占拠事件に関するペルー政府の取り組みに対する全幅の信頼を改めて表明するとともに、共通の課題である人質の全面解放実現のための努力に対し、日本政府としては引き続きあらゆる支援を行うことを確認した。

9.両首脳は、本会合の開催に当たりカナダ政府より提供された全ての便宜に対して深甚なる謝意を表明した。