データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] カルドーゾ大統領主催午餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶

[場所] ブラジル
[年月日] 1996年8月26日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上)、230−231頁.
[備考] 
[全文]

カルドーゾ大統領閣下、

ご列席の皆様、

 今回のブラジル訪問に際し温かく迎えて下さいましたフェルナンド・ニンリケ・カルドーゾ大統領を始め、関係の皆様に心よりお礼申し上げます。

 私はこれまで何度か中南米に足を運んだことがありましたが、ブラジルの土を踏む機会には恵まれませんでした。南米の大国ブラジルを知らずして中南米を語ることは出来ません。今や民主化、経済自由化により大きく変貌しつつある中南米の中で、国際的にもひときわ光を放っている国がブラジルです。私はかねがね中南米地域を重視し、同地域、なかんずくその指導的国家であるブラジルを訪問したいと願っておりましたが、今回このようにして実現したことは、私にとって大きな喜びであります。ブラジリアに実際に来てみて、これまで話に聞いていただけの遷都がいかに大事業であったか、その大事業の成果が今日のブラジルに限りない活力を与えている様を直接見ることが出来ました。この事業を構想、遂行したブラジル人の先見性に改めて敬意を表したいと思います。

 去る三月、カルドーゾ大統領は令夫人ともども、国賓として日本においでになり、両国関係の進展のために大きな成果を挙げられました。その際には、私ども夫妻も同大統領ご夫妻の知己を得ることが出来、偉大な指導者として誉れ高いカルドーゾ大統領との個人的な信頼関係を深めることが出来たことを嬉しく思っております。

 カルドーゾ大統領は昨年一月の就任以来、これまで二年に満たぬ間に二十か国余りを訪問されたと伺っておりますが、国連の場はもとより地域レベルにおいてメルコスール設立やポルトガル語圏諸国共同体の発足にイニシアティブを発揮されるとともに、アジア諸国との関係を含め、ブラジルの歴史上これまで見られなかった程、多面的かつ積極的な首脳外交を展開されています。そこには、外交の幅を広げ、グローバルな責任を果たそうとのカルドーゾ大統領自らの強い意欲が感じられ、まさに新たな時代のグローバル・パワーを目指すブラジルの面目躍如たるものがあります。

 先程の首脳会談を通じ、このようなブラジルと、歴史的な友人としてのみならず新時代のパートナーとして、両国は互いに手を携え協力して行かねばならないことを改めて強く感じました。

 今回の訪問では景勝の地イグアス、経済の中心地サンパウロ、そして本日政治の中心地ブラジリアと、いわばブラジルを複数の角度から見る機会を得ました。大きく美しい国土と豊かな資源、その経済的活力を目の当たりにし、またカルドーゾ大統領の卓越した指導力を得た今、貴国の豊かで力強い将来を思わずにはいられません。貴大統領及び令夫人のますますのご健勝とご活躍、ブラジルの更なる繁栄、新たな百年にわたる強固で幅広い日伯友好協力関係の一層の強化を祈念しつつ、共に杯を挙げたいと思います。

 乾杯!サウージ!