データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] サンパウロ州政府・日系人団体共催歓迎レセプションにおける橋本内閣総理大臣の挨拶

[場所] ブラジル
[年月日] 1996年8月25日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上)、216−218頁.
[備考] 
[全文]

コーバス州知事閣下、山内会長、ご列席の皆様、

 只今は大変暖かい歓迎の言葉をいただき、誠にありがとうございました。

 日本とブラジルは昨年修好百周年を迎え、双方の国で四百件余りの記念行事が実施されました。当地でも日系社会やサンパウロ州のご協力により色々な行事が催されたと聞いております。私は今回の中南米訪問を通じ、新たな百年に向けての日本と中南米との友好協力関係強化のためのスタートを切りたいと考えておりますが、伝統的な友好国であり、天然資源と経済的活力に恵まれ、海外最大の日系社会を有するブラジルとの関係を特に重視しております。

 このような意味で、本年三月、国賓として訪日されたカルドーゾ大統領より天皇皇后両陛下のブラジル御訪問の招請がありましたことを受け、日本政府といたしましては、明九七年に両陛下にブラジルを公式訪問いただく方向で検討していることを皆様にお伝えしたいと思います。御訪問が実現すれば、天皇陛下の中南米御訪問は初めてのことであり、両陛下におかれては三度目のブラジル御訪問となります。私どもとしては、この訪問を通じ両国の友好の絆が更に一層強まることを期待しております。

 日伯関係を展望する上で、サンパウロ州の果たす役割は極めて大きいものがあります。その意味でブラジルを代表する政治家の一人であり、知日家でもあるコーバス州知事がこれまで両国間の友好親善促進のため大いにお骨折りいただいていることに感謝申し上げますとともに、今後とも日系社会と手を携え、日伯関係の一層の緊密化に貢献していただけることを念願してやみません。

 さて、本日は、日系社会の方々が多数ご出席されておりますので、コーバス州知事のお許しを得て、一言申し上げたいと思います。私は先程「開拓先没者慰霊碑」に献花を行い、また移民史料館を訪問させていただき、改めて先人のご苦労とご努力の程を偲ばせていただきました。今日、日系社会は揺るぎ無い確固とした基盤を有したものとなっておりますが、これは当国に日系移民を暖かく迎え入れてくれた寛容な社会が存在したことに加え、これまでの移住者やその子孫である皆様が、ブラジルの良き市民としてブラジル国民の信頼を勝ち得た結果であると思います。

 今後とも日本の文化と伝統を体現される皆様が、ブラジルの良き市民として一層活躍されるとともに、日本とブラジルとの友好協力関係の一層の増進のために、両国国民間の架け橋としての役割を一層積極的に担っていただけるよう期待します。このため、我が国政府としても、近年の移住者・日系社会における世代交代の進展など、環境の変化に目を配りつつ、移住者・日系人社会に対する協力・支援を継続してまいる所存であります。

 そのような施策の一環として「ブラジル日系人との交流を通じたふるさとづくり事業」を実施することとし、本年十一月ブラジルの日系人の方々五十名を訪日招聴する予定であることをこの機会にお知らせいたします。

 近年数多くのブラジルの日系人の皆様が日本に滞在されています。私は今回の訪日の前に東京において、皆様のお子さん、お孫さんに当たる若い世代の日系ブラジル人の若者から、直接お話を伺う機会を得ました。これらの日系人の方々がさまざまな困難を抱えつつも、祖父母の国である日本において、果敢な活躍をされていることに深い感銘を受けました。

 我が国政府としては、このような皆様の日本滞在の便宜を図るため、日系三世についての査証発給手続きを見直し、査証発給の迅速化を図ることといたしました。

 日本とブラジルは距離的には遠く離れておりますが、両国間の交流は、近年より幅の広いものになってきているものの、政治経済も含めたその交流のレベルはまだ両国の実力と潜在力を反映したものには至っていないと私は感じております。このため私は今回のブラジル訪問の成果を踏まえて日伯関係が少しでも深まり、日本と中南米との関係が一層緊密化するよう更に努力したいと思いますので、皆様方の相変わらぬご支援を今後ともお願いしたいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。