データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日系三団体共催レセプションにおける橋本内閣総理大臣の挨拶

[場所] メキシコ
[年月日] 1996年8月20日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),216−218頁.
[備考] 
[全文]

 本夕は、日系三団体共催レセプションにお招きいただき誠にありがとうございました。

 私にとりまして、メキシコの各界でご活躍されている皆様と、このように懇談の機会を持てましたことは、誠に喜びに堪えません。

 ご承知の通り、日本と中南米諸国は伝統的に緊密な関係にあり、今世紀末にかけて相次いで修好・移住百周年をいくつかの国で迎えます。その緊密度は近年ますます高まってきています。我が国にとりましては、とりわけ中南米の指導的国家のひとつであるメキシコとの協力関係の強化が重要であります。私は明日セディージヨ大統領にお会いしますが、白墨関係の一層の緊密化を図るため、幅広い意見交換を行いたいと考えています。

 なお、個人的なことになりますが、私自身、国会議員になる前に勤めていた会社がメキシコから綿花を買い、糸を紡ぎ布を織っていたこともあり、中南米地域に対しては一貫して関心を抱いてまいりました。今回中南米諸国を訪問することにしたものも、この中南米諸国の新しい実情を自らの目で確認し、そこで活躍される日系人・在留邦人の皆様からの生の声を聞くことができればと希望したことも、大きな動機のひとつでありました。

 さて、日墨両国は人的交流、経済交流、文化交流等あらゆる面で年々ますますその絆を深めつつあります。人的交流の面では、九二年には皇太子殿下の御訪墨があり、九三年にはサリーナス前大統領、九五年はAPEC大阪会合出席のためセディージョ大統領の訪日がありました。明年はセディージヨ大統領の国賓としての訪日が予定されております。

 しかしながら、このような日墨関係の順調な発展は、先人をはじめ本夕お集まりいただいた皆様、すべての日系人・在留邦人の皆様お一人お一人が、日常的にメキシコ社会に関わりながら獲得されてきた我が国と日本人全体に対するメキシコの信頼なしには実現し得なかったものであります。この機会に衷心から厚くお礼申し上げる次第です。

 日墨協会の皆様は、明年いよいよ移住百周年を迎えられます。これまで幾多の困難があったかと思いますが、見事克服され、今日の在墨日系社会の確固たる地位を築いて来られました。明年は記念式典をはじめ多くの記念行事が計画されていると承知していますが、この百周年を契機にして、日墨二国間関係が一層拡大することを念願してやみません。日系社会の皆様は、これからも日墨両国間の架け橋として非常に重要な立場におられます。我が国政府といたしましては、日系社会発展のために今後とも支援と協力を行っていく方針ですので、今後とも宜しくご協力の程をお願いいたします。

 メキシコ日本商工会議所の皆様には、九四年末の通貨危機以降の経済困難の下でいろいろとご苦労が絶えないことと思いますが、メキシコ経済は最近の貿易収支の黒字基調等、回復へ向けていくつかの好ましい兆候が出てきていると伺っております。一日も早いメキシコの経済回復を念ずるとともに、皆様のますますのご活躍とご繁栄を祈念申し上げます。

 明年創立二十周年を迎える日墨学院の皆様には、これまでの努力に深い敬意を表するものであります。個人の幸福も社会の発展もすべては教育に始まります。しかも、日墨両国の子弟が共に勉学に勤しむという日墨学院のシステムは、世界に例を見ないユニークな制度として注目を浴びています。私としましては、教育の重要性を強く認識しているだけに、将来、同学院から世界に羽ばたく有為の人材が陸続と輩出することを楽しみにしている次第です。今後ますますのご発展を念願する次第です。

 最後になりましたが、皆様お一人お一人のますますのご健勝とご繁栄を心より祈念して、私の挨拶とさせていただきます。本日お集りできなかった皆様にもくれぐれも宜しくお伝えください。