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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フジモリ・ペルー大統領歓迎晩餐会における宮澤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1992年3月17日
[出典] 宮沢内閣総理大臣演説集,140ー141頁.
[備考] 
[全文]

 フジモリ大統領閣下、並びに御列席の皆様

 この度、貴大統領を我が国にお迎えし、今宵、和やかな晩餐の会を開催することができましたことは、私どもにとってこの上ない喜びであります。

 大統領閣下

 ぺルーは、我が国が中南米諸国の中で初めて国交を結んだ国であり、また、我が国からの移住者を最初に迎え入れた国であります。思えば九〇年以上も前の一八九九年に、日本人が初めてペルーの地を踏みましたが、爾来現地社会において、幾多の困難を乗り越えつつ、たゆまぬ努力を払い、ペルー国民としてペルーの発展に大きく貢献されてきました。これら日系人の方々に対し、私は、深い尊敬の念を抱くものであります。

 大統領閣下

 閣下が大統領に就任された当時、ペルーは深刻な経済状況をはじめ、様々な問題に直面する厳しい状況にあったと聞いております。閣下が、ペルーの国家再建を図るため国民と一体になって歴史的な諸改革に果断に取り組まれ、国際金融社会への復帰を果たされるとともに、国内経済の安定化に大きな成果を収められたことは、今では広く世界に知られるところとなっております。

 今日、中南米諸国においては、様々な諸困難を抱えながらも、民主化と市場経済に基づく経済改革が、大きな流れとなって進展しつつあります。このような中にあって、閣下がこれまで真摯な努力を傾注して成し遂げられた改革の成果は、志を同じくする他の中南米諸国の指導者にとっても大きな励みとなるものであると言えましょう。

 我が国国民は、閣下が推進されている国内改革が実を結ぶことを願っており、ペルーの将来は明るいものと確信しております。我が国政府としましても、今後とも引続き一層の支援を行っていく所存である旨、ここに改めて表明致します。

 大統領閣下

 私は未だ貴国の土を踏んだことはありませんが、ペルーがアンデスの美しい山並みから太平洋に至るまで変化に富んだこよなく美しい国であり、かつ、豊かなる資源に恵まれ、活力に溢れた国であると承知しております。さらに、ペルーはインカなどの諸文化に見られるように、優れた固有の文化を有する歴史と伝統の国でもあります。

 このようなペルーと我が国の関係は、古くから親密な交流を積み重ねてきておりますが、今日では両国関係は、単に経済関係にとどまらず、広く文化の分野に至るまで着実に交流を深めております。今般の閣下の訪日を契機に、今後両国関係が二十一世紀へ向けてさらに発展し、両国を地理的に隔てている太平洋を、両国の友好と発展の「連帯の海」とするよう努力していこうではありませんか。

 それでは、御列席の皆様、フジモリ大統領閣下のご健康、ご一行の皆様とペルー国民の皆様の一層のご発展、そして両国の友好協力関係の一層の進展を祈念しつつ、杯を上げたいと思います。

 サルー(乾杯)。