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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日加経済協力大綱署名式における三木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1976年10月21日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,186ー187頁.
[備考] 
[全文]

 本日、ここに、トルドー首相をお迎えして、経済協力大綱の署名をつつがなく了しましたことは、私の深く喜びとするところであります。

 御承知のように、日加経済関係は、近年急速に拡大しつつある貿易を中心に緊密化の度合いを高めており、両国経済の相互依存関係は、ますます深まる傾向を見せています。また、両国は、本年六月、プエルト・リコで開催された主要国首脳会議に共に参加した先進工業民主主義国として、世界経済の運営とその抱える問題の解決に、強い関心と重い責任を分ちあう立場にあります。

 本大綱は、日加間の貿易・経済関係の今後の発展に確固たる指針を提供するものでありますが、これは日加両国間の協力関係の推進のみならず、世界経済全体の発展にとっても大きな意義を有するものであると考えます。

 本大綱の署名は、日加関係の歴史上新たな一頁を開くものと信じますが、このような文書に署名することが出来ましたことは、私個人としても忘れ得ない思い出となることでしょう。どうもありがとうございました。

 去る昭和四十九年の日加共同声明において、貴国とわが国との間の文化交流を一層拡大し、相互理解と友好関係を増進するため、両国間に文化協定を締結することが望ましい旨の合意がなされましたが、今般、同協定締結の交渉がまとまり、本日トルドー首相閣下の御臨席を得て無事署名が行われましたことは誠に喜ばしいことであります。

 日加両国の関係は、各般の分野に亘り、近年益々緊密の度を加えつつありますが、私はこの文化協定により両国民の相互理解を深め、日加友好親善の揺ぎないいしずえにして参りたいと考えます。

 同時に、私は貴国との文化交流を拡大強化することは、単に両国間の関係を増進するに止まらず、両国が共に深い関心を有するアジア・太平洋地域の平和と繁栄の基礎を築くものであり、その果たすべき役割には極めて大きなものがあると信じます。

 かような意味合いにおいて、私はこの協定の実施により、今後日本とカナダとの間の文化及び教育面での交流が飛躍的な拡大を遂げることを期待して止みません。