データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第7回日加閣僚委員会共同声明

[場所] 東京
[年月日] 1975年6月24日
[出典] 外交青書20号,87−91頁.
[備考] 
[全文]

1.第7回日加閣僚委員会は,1975年6月23日及び24日東京において開催された。

2.日本側代表は宮澤喜一外務大臣(議長),福田赴夫経済企画庁長官(副総理),大平正芳大蔵大臣,安倍晋太郎農林大臣,河本敏夫通商産業大臣及び奈良靖彦駐カナダ日本国大使であつた。

 カナダ側代表は,アラン・J・マッカッケン外務大臣,ジャン・クレティエン内閣予算局長官,ドナルド・S・マクドナルド・エネルギー・鉱山・資源大臣,アラステア・W・ギレスピー通商産業大臣,ユージン・F・ウエラン農業大臣及びロス・キャンベル駐日カナダ大使であつた。

3.両国閣僚は,緊密かつ実りある両国関係が第6回日加閣僚委員会会合以来着実な発展を遂げ,なかんずく,1974年9月の両国首相の会談が,日加関係の基盤を一層幅広く,かつ,深みのあるものとする重要な契約となつたことに喜びの意を表明するとともに,友好と理解の精神の下に,両国が共通の関心を有する諸問題につき意見を交換した。

4.両国閣僚は,自由と民主主義に基づく政治経済体制を保持し,また,国際協調の下に世界の平和と繁栄に貢献していくとの共通の目標を有する日加両国が,現在の世界が直面する多岐にわたる新たな諸問題の解決のために両国間の協力及び協議関係を,経済面のみならず政治面においても一層拡充すべきである旨意見の一致をみた。

5.両国閣僚は,かかる協議の精神の下に,現下の国際情勢,なかんずくインドシナにおける武力紛争の終えん以降のアジア・太平洋地域の情勢について意見を交換した。両国閣僚は,域内各国の経済的,社会的基盤の強化を助けるとの目的を共有し,同地域内のすべての国々の間で安定的かつ建設的な関係のパターンがうち立てられることを期待した。両国閣僚は,地域的協議及び協力がとりわけ東南アジア諸国連合の場において進捗していることに留意した。朝鮮半島の情勢に関し,両国閣僚は,同半島の平和と安定の促進に貢献するために国際連合及びその他の場において一層の協力を行う可能性につき討議した。

6.両国閣僚は,核実験の継続及び核拡散の危険につき共に深い憂慮の念を示し,これらに関連する事項につき緊密,かつ,頻繁に協議することとしたいとの願望を再び強調した。両国閣僚は,1974年9月両国首相が核兵器保有国になることを排するとの両国政府の決意を確認し,かつ,軍縮,なかんずく核軍縮のためすべての国による献身的な努力が必要であることを再確認したことを想起し,原子力資材及び設備の移転は,受領国における有効な保障措置の下に行われるべきであるとの共通の考えを表明した。

7.両国閣僚は,長期的かつ広範な視野から,両国の経済情勢及び現在世界経済が直面する諸問題につき意見を交換した。両国閣僚は,国際協力の精神に沿つて,一般経済情勢,通商,国際金融,エネルギー,食糧,一次産品,対開発途上国協力等の諸問題に取り組むことが極めて重要であること,及びこのために日加両国が積極的な国際的役割を果たすべきであることにつき意見の一致をみた。

8.両国閣僚は,先進諸国において経済の顕著な回復が未だ見られない世界経済の現状について懸念を表明し,世界経済の健全な発展を達成するために,インフレ抑制の推進との調和を図りつつ,生産と雇用の回復を確保する努力の重要性を再確認した。

9.両国閣僚は,ガットの枠内で現在推進されている多角的貿易交渉が実質的段階に入ったことに満足の意をもつて留意し,1973年9月東京において採択された大臣宣言の目的と原則に従つて交渉を一層進展させるべきことにつき意見の一致をみた。両国閣僚はまた,1974年5月に採択された宣言を更に一年間延長することとした経済開発協力機構の第14回閣僚会議の決定に対する支持を再確認した。

10.両国閣僚は,国際通貨基金の石油融資制度の拡大,経済協力開発機構の金融支援基金の設立等の具体的成果を挙げるに至つた,世界経済の均衡ある発展を図るために国際社会が金融面で進めてきた協調的努力について喜びの意を表明した。しかしながら,両国閣僚は,多くの開発途上国が依然として経済的困難に直面していることに留意し,これらの国に対する資源の移転を増加するための協議が進められていることを歓迎した。

11.両国閣僚は,世界のエネルギー情勢の最近の進展につき意見を交換し,国際エネルギー機関の最近の閣僚会議の成果に留意した。両国閣僚は,産油国と消費国との間の対話の再開を促進するためにとられている措置を歓迎し,このための努力を続けるとの決意を表明した。両国閣僚は,消費国間の協力の重要性を認識するとともに,その産油国・消費国の対話との関係に留意した。

12.両国閣僚は,両国及び世界における農業,漁業及び食糧事情につき討議し,食糧品の市場を安定化し,かつ,食糧生産者を奨励するための措置をとることの重要性につき合意した。この関連で,両国閣僚は,市場へのアクセスの信頼性及びこれらの市場に対する供給の安定の重要性を強調した。

13.両国閣僚は,一次産品について新たな国際的関心が寄せられていることに留意し,国際的な一次産品貿易の不安定な状態から生産国及び消費国の双方に生じる問題に対する解決策が見出されることを希望する旨表明した。両国閣僚は,一次産品問題の解決策はケース・バイ・ケースの検討を通じてのみ見出されるであろうとの確信を表明するとともに,一次産品貿易の問題は,多くの開発途上国の経済にとつて特に重要であることを認めた。

14.両国閣僚は,最近の国際経済情勢の変動を通じ,あらためて開発途上国と先進国の間の緊密な相互依存関係が認識されたことに留意し,1975年の経済協力開発機構の閣僚会議において採択された開発途上国との関係に関する宣言を再確認し,世界経済における開発途上国の地位を強化するためにこれらの国に対する国際協力を一層促進することの緊急な必要性を認めた。両国閣僚は,両国がこの目的のために努力を強化することを確認した。

15.両国閣僚は,両国間の互恵的経済関係の推進が両国経済の健全な発展のためにきわめて重要であることを再確認した。両国閣僚は,田中総理大臣及びトルドー首相が,1974年9月にオタワで開催された会談において,日加間の広範かつ互恵的な経済関係の存在に留意し,両国間の経済面の協力を一層発展させるという問題について討議したことを想起した。両国閣僚は,変動する世界経済情勢の下に,両国間の関係を一層深め,かつ,幅広いものとする大きな可能性が存在することに意見の一致をみた。両国閣僚は,従つて,増大し,かつ,互恵的な経済面の協力にとつて,最も有望な日加両国の経済の分野を明確にするために,両国の政府関係者ができるだけ早く作業を開始すべきことに合意した。両国閣僚は,かかる作業が,製造業部門及びすべての分野にわたる資源部門を対象とすること,また互恵的な投資の拡大,合弁事業を含む社会間のより拡大された提携関係,科学技術交流,供給及び市場アクセスのよりよき保証を与えるような条件等の事項を含むであろうことに合意した。

16.両国閣僚は,両国政府関係者が昨年9月の日加首脳会談の成果をふまえ,通商に関する日本国とカナダとの間の協定の改訂につき探究を進めていることに満足の意を表明した。両国閣僚は,両国間の経済関係の発展のために一層確固たる法律関係上の基盤をもたらすようなより幅広くかつ広範な協定を作成するべく政府関係者がこの作業を進めるべきであることに意見の一致をみた。

17.両国閣僚は,両国間の貿易が急速に増大していることに満足の意をもつて留意するとともに,より自由な貿易を推進し,保護主義的動きを抑えるとの決意,及び資源,加工品,製品の輸出を含め,両国間の貿易関係の幅を拡大するとの目的を再確認した。

18.両国閣僚は,両国の経済における鉱物及びエネルギー資源並びに農林産品の重要性を再確認した。両国閣僚は,6月9日及び10日に東京で開催された日加資源小委員会における意見交換がきわめて有益であつたことに留意するとともに,安定的かつ互恵的な基礎の上にこれらの分野における両国間の関係の一層の発展を図ることに意見の一致をみた。両国閣僚は,農業及び食糧産品の両国の貿易が双方にとつて満足すべき形で行われることの重要性を強調するとともに,食糧及び農業問題に関する政府関係者の協議のための会合が継続されるべきであること及び次回会合が早期に開催されるべきことに合意した。

19.両国閣僚は,両国間の資本交流の増大が両国間の経済関係をより緊密かつ高度のものとしうることに留意し,両国の外資政策がそのような目的の達成を容易にするような形で運営されるべきであることに意見の一致をみた。

20.両国閣僚は,科学技術の分野での協力が拡大していることの最近の証左及び5月19日から22日まで東京で開催された政府関係者の会合によつて協力関係が一層増進されたことに満足の意を表明した。両国閣僚は,いくつかの科学技術協力計画がすでに実施に移されており,新しい計画の見通しは明るいことに満足の意をもつて留意した。

21.両国閣僚は,民間航空に関する現状に言及し,両国間の航空関係の互恵的な発展を進めることが必要であることに留意した。

22.両国閣僚は,近年増大しつつある両国民間のあらゆるレベルでの接触及び交流が両国間のきずなの強化及び多角化に資してきたことに留意し,両国間の知識及び理解の幅を,なかんずく文化交流を通じて広げることが基本的な重要性を有し,あらゆる可能な方途により奨励されるべきであることにつき意見の一致をみた。この関連で,両国閣僚は,1974年9月の両国首相間の共同声明に基づき現在行われている両国間の文化協定締結交渉の進展に留意し,その早期締結を希望した。両国閣僚は,また,1974年9月に両国首相が創設する意向を表明した学術上の関係を促進するための計画が現在活発に進展している事実に満足の意を表明し,同計画が効果的に実施されることを期待した。

23.両国閣僚は,日加閣僚委員会の第7回会合が,両国指導者間の個人的接触を確立する機会を拡大し,もつて相互理解及び信頼の一層の強化に大きく寄与したことを歓迎した。この関連で,カナダ側閣僚は次回の会合をカナダで開催するとのカナダ政府の招請を行い,日本側閣僚は喜んでこれを受諾した。