データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 総督代理主催午餐会における田中内閣総理大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 1974年9月24日
[出典] 田中内閣総理大臣演説集,522ー523頁.
[備考] 
[全文]

 ラスキン総督代理閣下、トルドー首相閣下並びに御列席の皆様

 本日は、私共一行のために、かくも楽しい午餐会を催しいただきまして、一同に代わり厚く御礼申し上げます。

 私にとり五回目のカナダ訪問において、カナダの指導者の方々と日加関係全般につき友好的、かつ、率直な意見交換をすることができましたことは私の欣快とするところであります。特に、私はカナダ建国時の旺盛なパイオニア精神が現代もカナダの指導者に脈々と生き続けていることに深い感銘を受けました。今日、世界で最も豊かな国の一つとなっているカナダを支えるものは、正にこのパイオニア精神を持つカナダ国民の優秀さにあるのだということを、私は、あらためて痛感しております。

 わが国もまた、生活の地平線を拡張しようとする国民のたゆまない努力を、国の発展の源泉としております。

 資源に恵まれない狭い国土に一億人を越す人口を抱えるわが国と、豊富な資源を秘める広大な国土にニ千万人の人口を有するにすぎないカナダとは、両極端として対比されがちであります。しかしながら、さきに述べたカナダ人の開拓の精神と日本人の勤勉さに着目するならば、両国とも基本的には同じ立場に立っており、両国間の協力の必要性及び可能性は非常に大きいものであります。したがって、歴史・文化的或いは、資源賦存上の両国の差異の如きものは、両国間の相互補完的協力関係を肉付けする以外の何ものでもありません。

 日加両国は、その共通の基盤及び相互依存関係を十分認識し、両国がおのおの有する潜在力を巧みに結合し、長期的展望及び世界的視野に立った共存共栄の基盤を築いて行こうとしております。私としても、その為の努力をおしまない所存であります。

 私のこのたびのカナダ訪問が、このような日加関係の新時代の発展に何らかの寄与をなしえたとすれば、私にとってこれ程の喜びはございません。

 最後に、カナダの繁栄を祈りつつ、皆様と乾杯いたしたいと思います。