データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とハイティ共和国との間の協定

[場所] 
[年月日] 1958年12月17日
[出典] 外交青書3号,213−216頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びハイティ共和国政府は、

 両国間の通商関係の発展を容易にすることをひとしく希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

1 各締約国は、輸入若しくは輸出について若しくはそれに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるすべての種類の関税及び課徴金に関する事項、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関する事項、輸入又は輸出に関連する規則及び手続に関する事項、輸出貨物に対する内国税の適用に関する事項、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関する事項並びに自国の領域内における輸入貨物の販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関する事項のすべてについて他方の締約国に無条件で最恵国待遇を与えなければならない。

2 したがつて、いずれか一方の締約国の産品で他方の締約国の領域に輸入されるものには、前項に掲げる事項について、いずれかの第三国の同様の産品に課されているか又は将来課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

3 同様に、いずれか一方の締約国の領域から輸出され、かつ、他方の締約国の領域に仕向けられる産品には、1に掲げる事項について、同様の産品がいずれかの第三国に仕向けられる場合に課されているか又は将入課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品に同様の場合に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

4 1に掲げる事項についていずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又はその領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無償で与えられるものとする。

5 この条の規定は、いずれかの締約国が国境貿易を容易にするため隣接国に与えているか又は与えることがある特別の利益には適用しない。

第二条

1 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出に対し、なんらの禁止又は制限をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に禁止され、又は制限されている場合は、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、その対外財政状態及び国際収支を擁護するため必要な措置を執ることができる。

第三条

 両締約国は、相互の利益のため、両国間の通商を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として協力することを約束する。

第四条

1 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と同一の条件で、国際間の通商及び航海のため開放されている他方の締約国のすべての港、泊地及び水域に旅客及び積荷とともに入ることができる。これらの商船は、当該他方の締約国の港、泊地及び水域において、すべての事項に関して内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができる貨物及び人を輸送する権利に関して、当該他方の締約国によつて内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。これらの貨物及び人は、関税その他すべての種類の課徴金、奨励金及び関税の払いもどしその他この種の特権並びに税関事務に関して、当該他方の締約国の商船で輸送される同様の貨物及び人が与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の船舶に対し、難破、海上損害又は不可効力による寄航の場合には、同様の場合に自国の船舶又は第三国の船舶に与えると同一の援助、保護及び免除を与えるものとする。これらの難破し、又は損害を被つた船舶から救い上げられた物品は、すべて関税を免除される。ただし、それらの物品が国内消費のため搬入された場合には、所定の関税を支払わなければならない。

4 各締約国は、沿岸貿易に従事する権利を自国の商船のみに留保することができる。ただし、この制限がすべての第三国の商船に適用されることを条件とする。

 もつとも、いずれか一方の締約国の領域内の二以上の港向けの旅客及び積荷を外国で積載した他方の締約国の商船は、常に仕向国の法令に従い、それらの港の一つでその旅客及び積荷の一部を陸揚し、さらに、他の仕向港まで航海を続けてその港で残りの旅客及び積荷を陸揚することができる。同様の方法及び条件により、いずれの一方の締約国の商船も、外国向けの航海のため他方の締約国の二以上の港で旅客及び積荷を積載することができる。

第五条

1 両締約国政府は、両国間の通商関係の円滑なかつ漸進的な発展を確保するため協議することに同意する。

2 各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施に関して行う申入れに対して好意的考慮を払わなければならない。

第六条

 この協定のいかなる規定も、各締約国が次の事項に関して必要な措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。

(a) 公共の安全、国防又は国際の平和及び安全の維持

(b) 武器、弾薬及び軍需品の取引

(c) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護

(d) 美術的、歴史的又は考古学的価値を有する国宝の保存

第七条

1 この協定は、批准されなければならない。批准書は、できるだけすみやかにポルトープランスで交換されるものとする。

2 この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。この協定は、三年間効力を有し、その後は、次項に定める手続に従つて、終了するまで効力を存続する。

3 各締約国は、他方の締約国に対し少くとも三箇月前に文書による予告を与えることによつて、最初の三年の期間の終りに又はこの期間の満了後いつでもこの協定を終了させることができる。

 以上の証拠として、両政府の代表者は、このために正当に委任を受け、この協定に署名した。

 千九百五十八年十二月十七日に東京で、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。

日本国政府のために    藤山愛一郎

ハイティ共和国のために  J・Pダヴィッド

(沖繩に関する交換公文)

(日本側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された通商に関する日本国とハイティ共和国との間の協定に関して、同協定の最恵国待遇に関する規定が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条に掲げる地域との通商及び同地域の船舶に対し日本国が与えているか又は将来与える権利及び特権については、当該地域に対する行政、立法及び司法上の権力の行使に関して同条後段に定める状態が存続する限り、適用されないことを閣下に通報する光栄を有します。

 本大臣は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代つて確認されることを要請する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年十二月十七日

                  日本国外務大臣  藤山愛一郎

ハイティ共和国政府代表  ジャン・ダヴィッド閣下

(ハイティ側書簡)

(定訳)

 書簡をもつて啓上いたします。本代表は、本日付の閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

 本代表は、ハイティ共和国に代つて、日本国との平和条約第三条に掲げる地域との通商及び同地域の船舶に対する本日署名された通商に関する協定の適用に関し閣下の前記の書簡に述べられた了解を確認する光栄を有します。

 本代表は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年十二月十七日

              ハイティ共和国政府代表  J・P・ダヴィッド

日本国外務大臣 藤山愛一郎閣下