データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連大学・ユネスコ国際会議 「アフリカとグローバリゼーション:過去に学びより良い未来を実現するために」

[場所] 国連大学ウ・タント国際会議場
[年月日] 2009年9月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

松浦事務局長、オスターヴァルダー学長、

ヌヨマ前大統領、コナレ前大統領、

エアネス元大統領、オバサンジョ前大統領、

クフォー前大統領、

ご列席の皆様

鳩山内閣の下で、この度、外務副大臣に就任した福山哲郎でございます。

グローバリゼーションが地球上のすべての人々に幸福をもたらすことを目指して始まったこの会議が、今回こうして第7回目を迎えることを心よりお慶び申し上げます。また、各分野において高い知見を有する方々が重要な問題について議論を展開されるこの国際会議が毎年日本で開催されることは、大変有意義なことであると感じております。

今日の会議では、過去50年のアフリカ開発を振り返り、今日のグローバル化した世界におけるアフリカ開発支援について議論されると伺っております。

50年前、アフリカと東南アジアを比較した場合、アフリカの方が、より発展性があるとの見方が多数を占めていました。アフリカの資源の豊富さ、適度の規模の人口が注目されていたのです。実際、70年代のアフリカ経済は順調な発展を続けましたが、その後は停滞を余儀なくされます。その原因については、本日、様々な角度から検討されると思いますが、例えば、再投資への資金配分の不足、インフラや基礎教育整備の遅れ、農業生産性の低迷、紛争の多発等が指摘されるのではないでしょうか。

2000年代に入り、アフリカは再び経済成長を始めます。過去10年間、平均で5.3%という非常に高い成長率を記録しています。これは、本日ご列席の方々を含む当時のアフリカ各国首脳が政治・経済改革に向けて発揮した強いリーダーシップの成果と言えます。

このようにアフリカが目覚ましい成長を遂げる中、我が国は、昨年5月に横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を開催しました。アフリカは依然、貧困、感染症、食料問題等の課題を抱えていましたが、我が国はアフリカを「機会と希望の大陸」と捉え、アフリカが持続可能な真の経済成長を実現するため、2012年までのアフリカ向けODA倍増、民間投資倍増支援を表明しました。そして元気なアフリカを目指して、1)成長の加速化、2)MDGsの達成、3)平和の定着、グッドガバナンスの促進及び4)環境・気候変動問題への対処の分野で、多数の支援策を「横浜行動計画」として発出しました。

また、我が国は今年7月にジュネーブで開催された第2回貿易のための援助グローバル・レビュー会合において、「開発イニシアティブ2009」を発表しました。3年間で120億ドルの二国間援助、4万人の技術協力等を通じて、途上国の貿易面での能力向上を支援いたします。

昨年秋以来の世界金融・経済危機により、先進国・新興国の景況は悪化し、アフリカを取り巻く状況は大きく変わりました。アフリカは、今、世界的な景気後退の影響に直面しています。

世界がグローバル化し、外部環境の変化がアフリカに大きな影響を与える今日、アフリカ開発支援は如何にあるべきでしょうか。我が国は、現下の危機の中でも、アフリカが引き続き世界にとって、「機会」であり「希望」であるとの考えに変わりはありません。元気なアフリカは、アフリカ自身のMDGsの達成のためにも、世界経済の回復のためにも大切です。

こうした認識に立ち、開発パートナーはアフリカ支援の決意を弱めるべきではありません。我が国は、TICADIVの約束を着実に実施し、アフリカを引き続き力強く支援していく考えです。

同時に、世界経済というアフリカの外部環境を健全なものとすることも重要です。我が国は、G8ラクイラ・サミットや、G20ピッツバーグ・サミット等での成果を踏まえて、金融規制や国際金融機関の改革、保護主義への対抗、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結といったグローバルな課題に引き続き取り組む考えです。

今回の会議の主催者である国連大学とユネスコの両機関においても、それぞれアフリカ支援をその活動の重点の一つとされていることを心強く思っております。国連大学におかれましては、これまでに築いてこられたアフリカにおける高等教育機関等との連携を基盤に、ガーナにある「アフリカ天然資源研究所(UNU-INRA)」と、本年1月にここ東京に設立された「サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)」とでツイン研究所を構築し、アフリカにおける共同研究教育を一層推進される計画であると伺っています。また、ユネスコにおかれましても、アフリカ支援をその政策の重点項目として強調してこられ、様々な分野、とりわけ教育分野では国連機関のリーダーとして、EFA(万人のための教育)をはじめ、その活動を展開しておられます。両機関に共通するのはグローバリゼーションの問題について知的な貢献を行う機関であるということです。我が国も国連大学およびユネスコの中心的な支援国として、両機関がこうした強みを最大限に発揮することを期待しております。

我が国の民主主義のダイナミズムを体現する鳩山新政権は、直面する外交の諸課題に全力で取り組む所存です。今般、鳩山総理は、国連総会において、我が国が世界の「架け橋」となって挑むべき挑戦の一つとして、平和構築・開発・貧困の問題を掲げました。そして鳩山総理は、国際機関やNGOとも連携し、途上国支援の質・量の両面において強化することを打ち出しました。さらに、新政権はTICADのプロセスを継続・強化すること、及びミレニアム開発目標(MDG)の達成と人間の安全保障の推進に向け、努力を倍加することを表明いたしました。こうした方針の下、鳩山内閣はアフリカ開発の問題にしっかりと取り組んでまいります。

今回の会議で、アフリカのより良い未来を実現するために、有益な議論が行われ、今後のアフリカ開発の望ましい方向性が示されることを心より期待しつつ、私のご挨拶とさせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。