データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフリカ開発ニーズに関するハイレベル会合開会式における森政府代表スピーチ

[場所] 
[年月日] 2008年9月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 デスコト総会議長、潘基文事務総長、キクウェテ・タンザニア大統領閣下、各国、国際機関の代表の皆様

 <アフリカの状況>

 アフリカは、近年、未曾有の経済成長の達成と政治的安定の進展によって活気に満ちています。こうした状況は、アフリカ諸国が持続可能な真の経済成長を達成し、それによって貧困削減を実現する、その意味で、正に「アフリカ成長の世紀」という新たなページを開くための大きなチャンスを与えてくれています。

 しかし、同時に、アフリカは、現在、大きな課題と新たな挑戦に直面しています。貧困と失業問題、食糧価格の高騰、エネルギーへの不十分なアクセス、気候変動の深刻な影響、絶えることのない紛争と内乱、そして猛威を振るうHIV/エイズ等であります。先日発表された「2008年ミレニアム開発目標(MDGs)報告書」によれば、アフリカにおけるMDGsの達成は困難な見通しとなっています。

 こうした課題に対処しつつ、我々の前にあるチャンスを最大限活かし、アフリカの成長と安定を実現し、私自身2000年にこの場で開かれたミレニアムサミットで提唱した人間の安全保障を確立するため、今こそ国際社会が一致団結して、アフリカへの取り組みを強化する必要があると考えます。

 <TICAD IV及びG8北海道洞爺湖サミット>

 ご承知の通り、我が国は、本年5月にはTICAD IV(第四回アフリカ開発会議)を、また、7月にはG8北海道洞爺湖サミットを開催しました。

 TICAD IVには、51のアフリカ諸国、34の開発パートナー諸国及び77の国際機関の代表が参加しました。私は福田総理とともに共同議長を務め、今申し上げたような問題意識に立って、アフリカ諸国の首脳達と真剣に議論を行いました。

 具体的には以下の4点について中身の濃い議論を行い、これらを取り纏めた「横浜宣言」を発表しました。

 第一に、アフリカの成長という現在の流れを強化するべく、インフラ、人材育成、農業、貿易・投資等を支援する。そして、それによって成長を加速化させる。

 第二に、同時に、MDGsの達成に向け、コミュニティ開発、教育、保健、水・衛生などの分野におけるアフリカ諸国の取組みを引き続き支援していく。

 第三に、経済成長の大前提である平和の定着、経済成長の配当を貧困層にも配分するためのグッド・ガバナンスの促進につき、アフリカ諸国自身の努力を支援する。

 第四に、アフリカの成長を持続可能なものとするため、アフリカ諸国による環境・気候変動問題への対処を支援する。

 また、我が国は、こうしたTICAD IVの成果を、7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいて、首脳間の議論に反映させました。その結果、保健、水・衛生、教育に焦点を当てつつアフリカ支援の具体策を述べた、「開発・アフリカ」に関する首脳文書を発出することができました。

 <我が国の支援策とそのフォローアップ>

 我が国自身、このような支援を行うために、TICAD IVにおいて「2012年までに対アフリカODAを倍増すること」及び「同じく2012年までに対アフリカ民間投資を倍増するべく支援すること」等、今後のアフリカに対する支援策を発表しました。

 ここでTICAD IVの新機軸をご紹介します。アフリカ諸国からは、「これまで国際社会によって多くの約束がなされているものの、フォローアップが十分なされていない」との指摘がなされてきました。その様な声に謙虚に耳を傾け、TICAD IVでは、各国による支援策を「横浜行動計画」として取り纏めました。そして、その進捗状況を定期的に報告し、それを閣僚レベルで検討・評価し、新たな提言を行う「TICADフォローアップ・メカニズム」を創設しました。我が国は、支援策を実施していく上で、このメカニズムを最大限活用する考えです。

 今月、我が国は、早速TICAD IVの約束の一つを実行しました。それは、我が国とアフリカ諸国の間の貿易・投資の促進を目的に、官民合同ミッションをアフリカに派遣したことです。このミッションの狙いの一つは、アフリカの成長の加速化につながる貿易・投資の促進のために、ODAの活用を含め如何にして我が国政府として側面支援が出来るかを調査・検討することです。

 我が国としては、勿論、MDGs達成のための、保健、水・衛生、教育、食料等の分野における支援策についても、約束を着実に実行していきます。

 <オーナーシップとパートナーシップ>

 最後に、国際社会としてアフリカ開発に取り組んでいく上で、私自身が一番重要と考えることを申し上げたいと思います。それは、一言で申し上げれば、アフリカの「オーナーシップ」と国際社会の「パートナーシップ」、これを共に実現していくことです。これは我が国が対アフリカ支援において一貫して主張し、また実践してきたことであります。

 ドナー諸国であれ国際機関であれ、アフリカの開発パートナーによる支援は、アフリカの真のニーズに合致した支援でなければなりません。真のニーズにあった支援のためには、アフリカと開発パートナーの間の不断の対話が必要です。

 同時に、開発パートナーの支援をより効果的、効率的なものとするためには、アフリカ側の真剣な努力が不可欠です。健全な経済政策及び開発・貧困削減政策の実施、平和の定着、グッド・ガバナンスの実現等に、アフリカ各国は政治的意志を持って取り組まなければなりません。

 「オーナーシップ」と「パートナーシップ」、この両者の実現を目指しながら、我が国は、21世紀が本当の意味で「アフリカ成長の世紀」となるよう、皆様とともに取り組んでまいりたいと思います。

 <結語>

 本日の会議において、有益かつ建設的な議論が展開されることを心より期待し、私の発言を終えさせていただきます。

 ご清聴有り難うございました。