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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ムウィニ・タンザニア大統領及び令夫人訪日歓迎午餐会における海部内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1989年12月19日
[出典] 海部演説集,323−325頁.
[備考] 
[全文]

 大統領閣下及び令夫人,並びにご列席の皆さま

 このたびタンザニア連合共和国より,貴大統領及び令夫人とそのご一行をお迎えし,ここに歓迎午餐会を催しますことは,私の大きな喜びとするところであります。

 大統領閣下

 両国の三十年近くに及ぶ歴史を顧みるとき,貴国と我が国との間には,常に緊密かつ良好な関係が維持されています。特に一九八一年には当時のニエレレ大統領が国賓として訪日され,一九八三年には現在の天皇皇后両陛下が皇太子同妃両殿下として貴国を訪問されました。また,二月の昭和天皇の御大喪に際しては,ワリオバ総理大臣兼第一副大統領閣下の参列を頂き,この機会に日本政府及び国民を代表して改めて貴国のご懇切な友情に対しお礼申し上げます。

 大統領閣下

 貴大統領は,一九八五年に現職に就任されて以来,貴国民の絶大な支持を得ながら国政の安定を維持されると共に,強い決意と指導力をもって,多大な困難を克服しつつ貴国の経済開発のために邁進して来られたと承知しております。我が国が近代において経済の復興と国際社会における地位の向上を目指して多大な努力を行った時代を想起する時,貴大統領並びに貴国民のご努力に強い共感を覚えずにはいられません。それ故に,我が国は,貴国を対アフリカ経済協力の重点国と位置付け,農業,運輸,通信等の広範な分野において貴国の開発努力への支援を拡充しております。先程交換公文の署名が行われましたが,我が国が通常の各般のプロジェクトに対する無償資金協力に加えて,本年度に二十億円のノン・プロジェクト無償資金協力を行うのも,貴国が経済の自由化を進め,構造調整政策に取り組んでいることを評価するが故であります。

 また,私自身,青年海外協力隊の創設に携わりましたが,既に六百名にのぼる日本の若者が隊員として貴国発展のために貴国民とともに働いてきたと伺っており,私の撒いた種が両国間に実を結んだものと誠に喜ばしく感じます。更に我が国と貴国との間には,音楽,舞踊,映画,スポーツ等を通じて交流も活発であり,両国関係はまさに心と心の触れ合うものへと成長しております。今回の貴大統領訪日の機会に,日本・タンザニア友好議員連盟が発足したことはまさに時宜に適ったものであり,両国の友好協力関係に更に厚みを加えることを期待します。

 大統領閣下

 この平成の新時代の始めにおける国賓としてジンバブエ大統領に次いで貴大統領をお迎えすることに象徴される通り,我が国の対アフリカ外交は,今大いなる飛躍に向けて重要な転機にあると申しても過言ではありません。我が国は,アフリカ諸国の開発努力を支援するため,一九八四年から五年間でサハラ以南アフリカ地域に対する二国間政府開発援助を四倍近く増大させました。特に,南部アフリカについては,南アからの経済的自立を図らんとする周辺国の努力を引き続き支援していく考えであります。政治面では,アフリカ最後の植民地であるナミビアの制憲議会選挙に際し選挙監視要員を派遣しましたが,引き続きナミビアの早期独立のため国連の努力を全面的に支援していく考えであります。

 アパルトヘイトについては「改革」でなく「撤廃」されなければなりません。我が国は,南ア政府に対しアパルトヘイト撤廃に向けて実質的且つ具体的な行動を示すことを強く求めており,まず,非常事態宣言の撤廃,マンデラ氏を含む政治犯の釈放,反アパルトヘイト団体への規制撤廃等の措置をとり,人種主義を排した民主的な政府の樹立に向けて,黒人指導者との対話を早急に開始するよう呼びかけています。

 大統領閣下

 日・タンザニア関係,そして日・アフリカ関係は,大きな進展を見ております。そのような時に貴大統領をお迎えできることは大変意義深いことであり,今回の訪日の成果に基づき,これから貴大統領と協力していくことを楽しみにしています。

 ご列席の皆さま

 ではここに,ムウィニ大統領及び令夫人のご健康と,タンザニア連合共和国の繁栄,そして日本とタンザニアの友好協力関係の発展を願って杯を挙げたいと思います。