データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20ニューデリー首脳宣言

[場所] インド・ニューデリー
[年月日] 2023年9月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

前文

1. 我々は一つの地球、一つの家族であり、一つの未来を共有している。

2. 我々G20の首脳は、「Vasudhaiva Kutumbakam(一つの地球、一つの家族、一つの未来)」というテーマの下、2023年9月9日及び10日にニューデリーで会合を行った。我々は、我々が今下す決断が、人々と地球の未来を左右するという、歴史の決定的な瞬間に集う。我々は、我々を取り巻く生態系と調和して生きるという理念と共に、地球規模の課題に対処するための具体的な行動にコミットする。

3. G20の協力は、世界の行く末を決定する上で不可欠である。世界経済の成長と安定に対する向かい風は続いている。長年にわたる連鎖的な課題と危機は、2030アジェンダ及びその持続可能な開発目標(SDGs)の成果を覆した。世界の温室効果ガス(GHG)排出量は増加し続け、気候変動、生物多様性の損失、汚染、干ばつ、土壌の劣化及び砂漠化が生命と暮らしを脅かしている。食料やエネルギーの価格を含む物価の高騰は、生活費を圧迫する一因となっている。貧困と不平等、気候変動、パンデミック及び紛争のような地球規模の課題は、女性や子ども、また最も脆弱な立場にある人々に不均衡に影響を及ぼしている。

4. 我々は共に、より良い未来を構築する機会を得ている。公正なエネルギー移行は、雇用や暮らしを改善し、経済的強靱性を強化することができる。我々は、いかなる国も貧困との闘いと地球のための闘いを選ばなければならないということがあるべきではないことを確認する。我々は、誰一人取り残すことなく、持続可能で、包摂的かつ公正な移行を世界的に実行する開発モデルを追求する。

5. 国際経済協力のプレミア・グローバル・フォーラムであるG20の首脳として、我々は、パートナーシップを通じて具体的な方法で行動することを決意する。我々は、以下にコミットする。

 a. 強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を加速させる。

 b. 持続可能な開発のための2030アジェンダの完全かつ効果的な実施を加速させる。

 c. 統合的かつ包摂的なアプローチを支持することにより、低GHG/低炭素排出で、気候変動に対して強靱で、環境面で持続可能な開発の道筋を追求する。我々は、開発と気候の課題に対処し、持続可能な開発のためのライフスタイル(LiFE)を推進し、生物多様性、森林及び海洋を保全するための行動を早急に加速させる。

 d. 将来の健康危機により良く備えるため、途上国において、感染症危機対応医薬品等へのアクセスを改善し、より多くの供給及び生産能力を促進する。

 e. 途上国における債務脆弱性に緊急かつ効果的に対処することにより、強靱な成長を促進する。

 f. SDGsの進捗を加速させるために、あらゆる資金源からの資金調達を拡大する。

 g. 気温目標を含むパリ協定の達成に向けた取組を加速させ、資源を拡充する。

 h. 開発効果を最大化し、地球規模の課題に対処するために、より良く、より大きく、より効果的な国際開発金融機関(MDBs)への改革を追求する。

 i. デジタル・サービス及びデジタル公共インフラへのアクセスを改善し、持続可能で包摂的な成長を促進するためにデジタル・トランスフォーメーションの機会を活用する。

 j. 持続可能で、質が高く、健全で、安全かつ有益な雇用を促進する。

 k. ジェンダー格差を是正し、意思決定者としての女性の経済への完全で、平等で、効果的かつ有意義な参加を促進する。

 l. 後発開発途上国(LDCs)、内陸途上国(LLDC)及び小島嶼途上国(SIDS)を含む途上国の視点を、将来のG20のアジェンダにより良く統合し、国際的な意思決定における途上国の発言権を強化する。

6. 今日のこうした行動を通じて、我々は、地球規模の課題に対処するために各国をより良く力付け、人間中心で、人類にウェル・ビーイングをもたらすシステムを構築している。

地球、人々、平和及び繁栄のために

7. 我々は、世界中の戦争及び紛争による甚大な人的被害及び悪影響を深い懸念と共に留意する。

8. ウクライナにおける戦争に関し、バリでの議論を想起しつつ、我々は、各国の立場や国連安保理及び国連総会で採択された決議(ES-11/1及びES-11/6)を再確認し、全ての国が国連憲章の目的及び原則に全体として整合的な方法で行動しなければならないことを再確認する。国連憲章に沿って、全ての国は、いかなる国の領土一体性及び主権又は政治的独立に対しても、領土取得を追求するための武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならない。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。

9. 我々は、G20が国際経済協力のプレミア・フォーラムであることを再確認し、G20が地政学的及び安全保障問題を解決するためのプラットフォームではないことを認識しつつ、これらの問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

10. 我々は、ウクライナにおける戦争の人的被害や更なる悪影響、特に新型コロナウイルスのパンデミック及びSDGsに向けた進捗を逸脱させた経済的混乱からいまだ回復途上にある途上国及びLDCsといった国々の政策環境を複雑化させる、グローバルな食料及びエネルギー安全保障、サプライチェーン、マクロ金融の安定性、インフレ及び成長に関する悪影響を強調する。この状況について異なる見解及び評価があった。

11. 我々は、世界市場へのロシア産の食品及び肥料の供給促進に関するロシア連邦と国連事務局との間の了解覚書及びウクライナの港からの穀物及び食料品の安全な輸送に関するイニシアティブ(黒海イニシアティブ)から成る、トルコ及び国連の仲介によるイスタンブール合意の取組を評価し、ロシア連邦及びウクライナからの穀物、食料品及び肥料/投入物の即時かつ妨害されない輸送を確保するために、これらの完全、適時かつ効果的な実施を求める。これは、特にアフリカにおける、途上国及びLDCsの需要を満たすために必要である。

12. この文脈で、食料及びエネルギー安全保障を維持することの重要性を強調し、我々は、関連のインフラに対する軍事的破壊又はその他の攻撃の停止を求める。我々はまた、紛争が市民の安全に対して悪影響を与え、それにより既存の社会経済的なもろさ及び脆弱性を悪化させ、また、効果的な人道面の対応を妨げる点について、深い懸念を表明した。

13. 我々は、全ての国に対して、領土一体性及び主権を含む国際法の諸原則、国際人道法並びに平和と安定を守る多国間システムを堅持することを求める。紛争の平和的解決、危機に対処する取組、並びに外交及び対話が極めて重要である。我々は、世界経済に対する戦争の悪影響に対処するための取組において団結し、また、「一つの地球、一つの家族、一つの未来」の精神による国家間の平和的かつ友好的な善隣関係の促進のため、国連憲章の全ての目的及び原則を堅持する、ウクライナにおける包括的で、公正かつ恒久的な平和を支持する全ての関連する建設的なイニシアティブを歓迎する。

14. 今日の時代は戦争の時代であってはならない。

A. 強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長

世界経済の状況

15. 連鎖する危機は、長期的な成長に課題をもたらした。ばらつきのある回復に直面し、長期的な成長を促進する必要性を認識する中、我々は、適切に調整されたマクロ経済及び構造政策を実施する。我々は、衡平な成長を促進し、マクロ経済面及び金融面での安定性を高めることを通じて、脆弱層を保護する。このようなアプローチは、生活費に関する危機を解決し、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を解放する上で助けとなる。

16. 世界経済の成長は長期平均を下回っており、依然として一様ではない。見通しの不確実性は依然として高い。債務の脆弱性を悪化させる可能性のある世界的な金融状況の顕著な引締め、持続的なインフレ及び地経学的緊張により、リスクのバランスは依然として下向きに傾いている。我々は、したがって、成長を促進し、不平等を縮減し、マクロ経済及び金融の安定を維持するために、十分に調整された金融政策、財政政策、金融規制・監督政策及び構造政策が必要であることを再確認する。我々は、マクロ政策協力を引き続き強化し、持続可能な開発のための2030アジェンダに向けた進展を引き続き支援する。我々は、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長(SSBIG)を達成するためには、関係当局による迅速な行動が金融の安定を維持し、波及効果を管理する助けとなった幾つかの先進国における最近の銀行混乱の際に証明されたとおり、政策立案者が政策対応において機敏かつ柔軟であり続けることが必要であることを再確認する。我々は、いかなる教訓がこの最近の銀行混乱から学び得るかを検討するために、金融安定理事会(FSB)、基準設定主体(SSBs)及び幾つかの法域で講じられた初期措置を歓迎し、進行中の作業の促進を奨励する。我々は、必要な場合には、マクロプルーデンス政策を用いて、下振れリスクを回避する。中央銀行は引き続き、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに強くコミットしている。中央銀行は、インフレ予想の安定維持を確保し、他国への負の波及効果の抑制に資するよう政策スタンスについて明確に意思疎通を行う。中央銀行の独立性は、政策の信認を維持するために極めて重要である。我々は、中期的な財政の持続可能性を維持しつつ、貧困層及び最も脆弱な人々を保護するために、一時的で的を絞った財政措置を優先する。金融政策及び財政政策のスタンスの全体的な一貫性の確保は引き続き重要である。我々は、成長を押し上げ、物価上昇圧力を緩和するために、供給サイドの政策、特に労働供給を増やし生産性を高める政策の重要性を認識する。我々は、財務大臣及び中央銀行総裁が行った2021年4月の為替相場のコミットメントを再確認する。

17. 我々は、成長を加速させ、持続可能な経済変革を推進する上で、民間企業の果たす役割が極めて重要であることを認識する。この目的のために、我々は民間部門と共に以下に取り組むことを決意する。

 i. 包摂的で、持続可能かつ強靭なグローバル・バリュー・チェーンを構築し、途上国がバリュー・チェーンの上流へ移行できるよう支援する。

 ii. 持続可能なビジネス・モデルに対する外国直接投資(FDIs)を含む投資を促進する。

 iii. 投資を動員するためにMDBsの専門知識を活用し、途上国において投資可能なプロジェクトの候補を考案する。

 iv. ビジネスのしやすさを促進し、コストを削減する。

18. 我々は、新興企業や零細中小企業(MSMEs)が成長にとって自然な原動力であることを認識している。それらは、イノベーションの推進と雇用の創出による社会経済的な変革の鍵である。我々は、インドのG20議長国下でのスタートアップ20エンゲージメント・グループの設立とその継続を歓迎する。

成長のための貿易の解放

19. 我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とする、ルールに基づく、無差別的で、公正で、開かれた、包摂的で、公平で、持続可能かつ透明性のある多角的貿易体制が不可欠であることを再確認する。我々は、貿易及び投資が全ての人のための成長及び繁栄の原動力として機能することを可能にする政策を支持する。本日、我々は以下を行う。

 i. 全ての人々にとって好ましい貿易及び投資環境を醸成するため、保護主義及び市場歪曲的慣行を阻止することにより公平な競争条件及び公正な競争を確保するとのコミットメントを新たにする。我々は、包摂的な加盟国主導のプロセスを通じてWTOの全ての機能を改善するためにWTO改革を追求する必要性を再確認し、全ての加盟国が利用できる、完全に、かつよく機能する紛争解決制度を2024年までに実現することを目的として議論を行うことに引き続きコミットする。我々は、第13回WTO閣僚会議(MC13)における前向きな成果を確保するため、建設的に取り組むことにコミットする。

 ii. 中小零細企業が特に途上国において直面する情報へのアクセスについての課題を認識し、したがって、中小零細企業の国際貿易への統合を促進するための、中小零細企業の情報へのアクセスを強化するためのジャイプール行動要請を歓迎する。

 iii. G20メンバーがリスクを特定し、強靱性を構築することを支援するための、G20グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)マッピングのための包括的枠組みの採択を歓迎する。

 iv. 貿易関連文書のデジタル化のためのハイレベル原則を歓迎し、実施を奨励するために取り組み、他の国々にもこの原則を検討するよう奨励する。

 v. 貿易及び環境政策が、WTO及び多国間環境条約と整合的な形で、相互に補完的であるべきことを確認する。

 vi. 途上国、特にLDCsが、現地での価値創造の強化を通じたものを含め、世界貿易に効果的に参加することを可能にするWTOの「貿易のための援助」イニシアティブの重要性を認識する。我々は、この点について必要な資源を動員する全ての取組を歓迎する。

働き方の未来に備える

20. 我々は、スキルギャップに対処し、働きがいのある人間らしい仕事を促進し、全ての人にとって包摂的な社会的保護政策を確保することにコミットする。この目的に向けて、我々は以下を行う。

 i. よく統合され、十分な技能を有する労働者は、出身国及び移住した国に同様に利益をもたらすことを認識し、適切に管理された、規則的で、技能に基づく移住のための道筋の確保に取り組むことにコミットする。

 ii. 世界的なスキルギャップをマッピングする取組及び世界的なスキルギャップに対処するためのG20の政策優先事項の策定を歓迎する。これには、各国の統計データ管理の更なる強化や、適切な場合には、ILO及びOECDの雇用のための技能データベースの対象範囲となる国々の拡大が含まれる。我々は、持続可能かつ包摂的な経済発展のために、グローバルな技能に効果的に取り組むことにコミットする。

 iii. 技能及び資格の国家間の比較可能性及び相互承認を促進するため、技能及び資格要件による国際的な職業参照分類の策定を検討することにコミットする。

 iv. デジタルのアップスキリング及びリスキリング・プログラムを設計し、導入するための適応性のある枠組みを備えた包括的なツールキットを歓迎する。

 v. 二国間及び多数国間協定を通じて、持続可能な形で資金供給を受けた普遍的な社会的保護を達成することを目指し、社会保障給付のポータビリティを検討する。

 vi. 公正な移行のための雇用及び社会的保護の国連グローバル・アクセラレータの進捗を支援する。

 vii. 包摂的成長、持続可能な開発及び働きがいのある人間らしい仕事を支援するための、文化及びクリエイティブ部門の経済的意義及び社会的価値を認識する。

 viii. ギグワーカー及びプラットフォームワーカーに十分な社会的保護と適正な労働条件を確保する。

 ix. グローバル・バリュー・チェーンにおける児童労働及び強制労働の撤廃に向けた取組を強化する。

金融包摂の推進

21. 我々は、G20送金目標に向けた2023年首脳向け進捗アップデートを歓迎し、中小零細企業(MSMEs)のデジタル金融包摂強化に向けた規制上のツールキットを支持する。我々は、デジタル公共インフラを通じた金融包摂の推進及び生産性向上のための自発的かつ法的拘束力のないG20政策提言を支持する。我々は、包摂的な成長及び持続可能な開発を支える金融包摂の推進を助けるためのデジタル公共インフラの重要な役割に留意する。我々はまた、最後の1マイルの金融包摂及び送金コストの削減に向けた進捗を達成するために、革新的な決済システムを含む技術革新の継続的な発展及び責任ある利用を奨励する。我々はまた、デジタル金融リテラシー及び消費者保護を強化するための継続した取組を支持する。我々は、G20及びそれを超えた国における個人及びMSMEs、特に脆弱で十分なサービスを受けられないグループの金融包摂を急速に加速させるための行動指向で先を見据えたロードマップを提供する2023年の「G20金融包摂行動計画(FIAP)」を支持する。

腐敗との闘い

22. 我々は、腐敗に対するゼロ・トレランスに向けたコミットメントを再確認する。

 i. 我々は、次の3つのG20ハイレベル原則を支持する。

  ・ 腐敗撲滅のための法執行関連の国際協力及び情報共有の強化

  ・ 腐敗撲滅のための財産回復メカニズムの強化

  ・ 腐敗の防止及び撲滅に責任を有する公的機関及び当局の清廉性及び有効性の促進

 ii. 金融活動作業部会(FATF)への支援やグローブ・ネットワークの稼働を通じたものを含め、国際的な義務や国内の法的枠組みに沿って、犯罪収益を差し押え、没収し、被害者及び国に返還するためのグローバルな取組を強化することへの支援を再確認する。

 iii. 国連腐敗防止条約(UNCAC)第16条に沿って外国公務員贈賄を犯罪化し、外国公務員贈賄防止法を執行することに向けた具体的な取組を示し、継続し、我々の行動に関する情報を共有するとのコミットメントを再確認し、この目標に向けた腐敗対策作業部会の取組を歓迎する。我々は、OECD外国公務員贈賄防止条約への参加を適切に拡大することを期待する。


B. 持続可能な開発目標(SDGs)の進捗の加速

23. 2030年を達成年限とするSDGsの中間年を迎え、世界全体のSDGsの進捗は軌道に乗っておらず、わずか12%のターゲットしか順調に進んでいない。我々は、我々の将来の世代が望む世界を形成するために、この「行動の10年」の間、2030アジェンダを完全かつ効果的に実施し、SDGsに向けた進捗を加速させるため、G20の結集力や共同の決意を活用し、適時に取り組んでいく。

SDGs達成への再挑戦

24. SDGsの進捗を加速させるために、我々は、G20ハイレベル原則を含む、SDGsに関する進捗の加速化のためのG20・2023アクション・プランを効果的かつ適時に実施するための共同の行動をとることにコミットする。我々は、誰一人取り残さないことを確保する。我々は、2030アジェンダの実施を加速させるための議長国インドの取組を称賛する。この目的のため、我々は以下を行う。

 i. デジタル・トランスフォーメーション、AI及びデータの進歩の役割並びにデジタル・デバイドに対処する必要性を認識する。我々は、開発のためのデータ活用(D4D)に関するG20原則を支持し、開発のためのデータ能力構築イニシアティブやその他の既存のイニシアティブを立ち上げる決定を歓迎する。

 ii. 我々は、2030アジェンダ及びアディスアベバ行動目標の実施に当たってのボトルネックに対処する途上国の国内の取組を支援するため、あらゆる資金源から安価で適切かつアクセス可能な資金を動員することに向けたコミットメントを再確認する。我々は、先進国に対し、官民、国内外を含むあらゆる資金源からの開発資金を補完し促すそれぞれのODAのコミットメントを適時かつ完全に履行し、途上国の資金ニーズへの対応に貢献することを求める。

 iii. 持続可能な社会経済開発及び経済繁栄の手段としての観光及び文化の重要な役割を強調し、SDGs達成のための手段の一つとしての観光のためのゴア・ロードマップに留意する。

 iv. 2030アジェンダの実施において直面する課題に対処するために、G20の協力及びパートナーシップを強化することにコミットする。我々は、SDGsの資金ギャップに対処するための事務総長による取組を含む国連におけるSDGs達成刺激計画を通じた継続的な取組を歓迎し、国連SDGサミット2023、国連未来サミット及びその他の関連するプロセスに全面的な支援を提供する。

25. 我々は、サステナブル・ファイナンスを拡大するために行動することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップに沿って、SDGsと整合的な資金調達のための分析枠組み、並びに、各国の状況を考慮しつつ現状分析を活用した社会的インパクト投資手段の導入拡大並びに自然関連のデータ及び報告の改善のための自発的な勧告を歓迎する。

飢餓と栄養不良の撲滅

26. 我々は、食料安全保障及び栄養に関するG20デカン・ハイレベル原則2023に沿って、全ての人のための世界の食料安全保障と栄養を強化することにコミットする。これを達成するために、我々は以下を行う。

 i. 我々は、雑穀、キヌア、ソルガム、並びに米、小麦及びトウモロコシを含むその他の伝統的作物といった気候変動に対して強靱かつ栄養のある穀物に関する研究協力を強化する取組を奨励する。我々は、第12回G20首席農業研究者会議(MACS)へのG20メンバーの関与の成果を歓迎する。

 ii. 現地の肥料生産の強化を通じたものを含め、肥料及び農業投入材へのアクセス、入手可能性及び効率的使用を向上させること、並びに、土壌の健全性を改善することの重要性を強調する。

 iii. より持続可能で気候変動に対して強靱な農業と食料システムを構築するため、農業生産性の向上、バリュー・チェーン全体にわたる食品ロス及び廃棄の削減並びにマーケティング及び貯蔵の改善に焦点を当てたイノベーション及び投資を加速させることにコミットする。

 iv. 食料安全保障の課題に対処する途上国の取組と能力を支援し、手頃な価格で安全かつ、栄養価の高い健康的な食生活へのアクセスを可能にするために共に取り組み、十分な食料への権利の漸進的な実現を促進することにコミットする。

 v. 関連するWTOルールに従い、開かれた、公正で、予見可能で、かつルールに基づく農業、食料及び肥料の貿易を促進し、輸出の禁止や制限を課さず、市場の歪みを削減することにコミットする。

 vi. 農業市場情報システム(AMIS)の肥料に関する取組及び植物油を含めるためのその拡大を支持しつつ、食料価格の変動を避けるための更なる透明性のために、また、早期警戒システムとの連携を強化するために、AMIS及び地球観測に関する政府間会合による全休農業モニタリング(GEOGLAM)の強化にコミットする。

食料及びエネルギー不安のマクロ経済的影響

27. 世界の食料及びエネルギー価格は、ピーク時の水準から下落しているものの、世界経済の不確実性を考慮すると、食料及びエネルギー市場における高い水準での変動の可能性は残されている。この文脈において、我々は、食料及びエネルギー不安によるマクロ経済への影響及び世界経済への示唆に関するG20報告書に留意する。我々は、食料不安と闘う国際農業開発基金(IFAD)を支援するために、IFAD加盟国によるIFADに対する年末の野心的な増資に期待する。

グローバルヘルスの強化とワンヘルス・アプローチの実施

28. 我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成し、ワンヘルス・アプローチを実施し、パンデミックへの備えを強化し、既存の感染症サーベイランス・システムを強化するために、世界保健機関(WHO)を中核とする、グローバルヘルス・アーキテクチャーを強化し、より強靭、公平、持続可能で、かつ包摂的な保健システムを構築することに引き続きコミットする。これを達成するために、我々は以下を行う。

 i. 理想的には今後2年ないし3年以内に、プライマリー・ヘルスケア及び医療従事者を強化すること並びに必要不可欠な保健サービス及び保健システムをパンデミック以前よりも高い水準まで向上させることに焦点を当てるとともに、ポリオ撲滅に向けた進展を継続し、エイズ、結核、マラリア、肝炎、水媒介性感染症及びその他の感染症を含む流行中の感染症を終息させるとともに、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に関する研究の重要性も認識する。

 ii. 4つの国際機関によるワンヘルス共同行動計画(2022-2026年)に基づき、ワンヘルスに基づくアプローチを推進する。

 iii. 保健システムの強靱性を強化し、MDBsと協働して気候変動に対して強靱かつ低炭素な保健システムの開発を支援し、WHO主導の気候及び健康に関する変革的な行動のためのアライアンス(ATACH)の活動を支援する。

 iv. 研究開発、感染予防及び管理並びに抗菌薬消費量のサーベイランスを通じた各国の行動計画における抗菌薬適正使用を通じたものを含め、ワンヘルス・アプローチに従った薬剤耐性(AMR)に対する取組を実施し、優先させる。

 v. 特に低中所得国(LMICs)、LDC、SIDSにおいて、安全で有効、品質が保証された、手頃な価格のワクチン、治療薬、診断薬及びその他の感染症危機対応医薬品等への公平なアクセスを促進する。

 vi. 野心的で法的拘束力のあるパンデミックのPPR(予防、備え及び対応)に関するWHOの新たな法的文書(WHO・CA+)を2024年5月までに策定するための、政府間交渉会議(INB)で進行中の交渉や、国際保健規則(2005年)をより良く実施するための改正が成功を収めることを期待する。

 vii. エビデンスに基づく伝統及び代替医療の保健における潜在的な役割を認識し、WHOのグローバルな協力センター及び臨床試験登録を含むこの方向での国際的な取組に留意する。

 viii. ネットワークのネットワーク・アプローチを考慮し、現地や地域の研究開発及び製造能力を活用し、ラスト・ワン・マイル・デリバリーを強化しつつ、LMICsと他の途上国の効果的な参加を得て、感染症危機対応医薬品等の暫定的な調整メカニズムを構築するためのWHO主導の包摂的な協議プロセスを支援する。これは、WHO・CA+と整合的なものとなり得る。

 ix. 包摂的な形で、精神保健サービス及び心理社会的支援へのアクセスを促進し、改善する。

 x. 世界の薬物問題の公衆衛生上の側面を強調しつつ、合成薬物や前駆体化学物質を含む違法薬物の生産及び拡散をその仕出地、通過地及び仕向地で阻止するための情報共有及び能力構築を含め、不必要な制限を課さないながらも強力で国際的な薬物対策協力を求める。

財務と保健の連携

29. 我々は引き続き、財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の下、財政及び保健を司る省庁間の連携の強化を通じて、パンデミックへの予防、備え及び対応(PPR)のためのグローバルヘルス・アーキテクチャーを強化することにコミットしている。我々は、JFHTFの下で、低所得国の声を拡大するよう招待された主要な地域機関のタスクフォース会合への参加を歓迎する。我々は、世界保健機関(WHO)、世界銀行、IMF及び欧州投資銀行(EIB)の間の連携により創設された経済の脆弱性及びリスクに関する枠組み(FEVR)並びにパンデミックによる経済の脆弱性及びリスクについての初期報告書に関する議論を歓迎する。我々は、各国固有の状況を考慮しつつ、変化するパンデミックの脅威による経済の脆弱性及びリスクを定期的に評価するために、タスクフォースが複数年にわたる作業計画上でこの枠組みの改良を続けることを求める。我々は、将来のパンデミックへの我々の対応を支援するための財務及び保健セクター合同の備えに貢献する、新型コロナウイルス感染症における財政及び保健の制度的アレンジメントのベストプラクティスに関する報告書を歓迎する。我々は、WHO及び世界銀行によって作成されたパンデミックの対応のためのファイナンスの選択肢及びギャップのマッピングに関する報告書を歓迎し、他のグローバルなフォーラムにおける議論を十分に考慮しつつ、迅速かつ効率的に必要な資金を供給するために、ファイナンス・メカニズムをどのように最適化し、より良く調整し、必要な時には適切に強化し得るかについて、更なる検討を期待する。我々は、パンデミック基金による初回案件募集が完了したことを歓迎し、初回案件募集で得られた教訓に基づき、二回目の案件募集が2023年末までに行われることを期待する。我々は、新たなドナーと共同投資を確保する重要性を強調する。我々は、タスクフォースに対し、2024年に財務大臣及び保健大臣にその進捗を報告するよう要請する。

質の高い教育の提供

30. 我々は、脆弱な状況下にある人々を含む全ての人のために、包摂的で公平かつ質の高い教育及び技能訓練にコミットしている。我々は、人的資本開発を支援するための投資の重要性を認識している。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 教育や雇用のための主要な土台となる基礎学習(読み書き能力、計算能力及び社会情緒的能力)の重要性を認識する。

 ii. 全ての学習者のためにデジタル技術を活用し、デジタル・デバイドを克服するというコミットメントを改めて表明する。

 iii. AIを含む新興のトレンドや技術の進歩に遅れをとらないよう、教育機関や教員への支援を拡大する。

 iv. 質の高い職業技術教育訓練(TVET)へのアクセス拡大に重点を置く。

 v. 開かれた、公平かつ安全な科学的共同研究を促進し、研究機関や高等教育機関を越えた学生、学者、研究者及び科学者の移動を奨励するという我々のコミットメントを再確認する。

 vi. 特に脆弱なグループを対象としたスキリング、リスキリング及びアップスキリングに焦点を当てた生涯学習を可能にすることの重要性を強調する。

SDGsの変革を推進する手段としての文化

31. 我々は、本質的価値を有する文化をSDGsの達成に向けて変革を推進し実現する手段として全面的に認識し、保護することを求めるとともに、あり得べき2030年以降の開発アジェンダに関する今後の議論において、文化を独立した目標として含めることを推進する。我々は、国内法及び関連する国連教育科学文化機関(UNESCO)の条約に整合的な形で、文化外交及び文化間交流を強化する観点から、文化財の関連する原産国及びコミュニティへの返還及び回復を可能にするために、国内、地域又は国際的なレベルで文化財の不法な取引との闘いを強化するとの我々のコミットメントを再び表明し、その努力における持続的な対話及び行動を求める。我々は、知的財産を含め生きている文化遺産について、特にそのような生きている遺産の過剰な商業化や盗用が持続可能性や実践者、共同体の担い手及び先住民族の生活に及ぼす影響に関して、保護するよう国際社会に対して奨励する。

C. 持続可能な未来のためのグリーン開発合意

32. 現在及び将来の世代のウェル・ビーイングは、我々の現在の開発及びその他の政策的選択と行動にかかっていることを認識し、我々は、統合的、全体的かつ均衡ある方法で、環境的に持続可能かつ包摂的な経済成長及び開発を追求することを決意する。

33. 我々は、気候変動を含む環境危機と課題に対処するための行動を緊急に加速することにコミットする。我々は、気候変動の影響が世界全体で、特にLDCsやSIDSを含む最貧国及び最脆弱国で経験されていることを認識する。我々は、我々の主導的な役割に留意し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的を追求するに当たり、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映した形で、パリ協定及びその気温目標の完全かつ効果的な実施を強化することによって気候変動に取り組むという我々の確固たるコミットメントを再確認する。我々は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するための取組を追求するというパリ協定の気温目標を達成するには、気候変動に対処するための世界の野心と実施が不十分なままであるということに懸念をもって留意する。我々は、利用可能な最良の科学を考慮に入れつつ、パリ協定の全ての柱についての野心的な行動の重要性を強調する。我々は、気候変動の影響は、摂氏1.5度の気温上昇の方が、摂氏2度の気温上昇と比べてはるかに小さいという気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価に留意し、気温の上昇を摂氏1.5度に制限するための更なる取組を追求することへの決意を再び表明する。このためには、異なるアプローチを考慮しつつ、長期的な野心と短期及び中期的な目標とを整合させる明確な国家の方針の策定を通じて、また、持続可能な開発の文脈で、重要な要素としての資金及び技術を含む国際協力と支援や持続可能で責任ある消費及び生産を通じて、全ての国による有意義で効果的な行動及びコミットメントが必要である。我々は、地球温暖化を摂氏1.5度に抑えるには、2019年の水準と比して2030年までに世界の温室効果ガス排出量の43%の迅速で、大幅な、持続的な削減が必要であることを認識する。我々はまた、グローバルにモデル化された経路と仮定に基づいて、「オーバーシュートしない又は限られたオーバーシュートを伴って温暖化を1.5°Cに抑えるモデル化された世界全体の経路、また、温暖化を2°Cに抑え、即時の行動を想定するモデル化された世界全体の経路では、世界のGHG排出量は、2020年から遅くとも2025年までにピークを迎えると予測される。」と述べるIPCC第6次評価報告書(AR6)統合報告書の見解に留意する。この見解は、この時間フレーム内に全ての国においてピークに達することを意味するものではない。ピークに達する時間フレームは、持続可能な開発、貧困撲滅の必要性及び衡平性によって、また、各国の異なる事情に沿って形成され得る。我々はさらに、自発的かつ相互に同意された条件での技術開発及び移転、能力開発及び資金調達が、この点で各国を支援できることを認識する。

34. 我々は、国が決定する貢献(NDC)をパリ協定の気温目標に整合させていない全ての国に対し、各国の異なる事情を考慮しつつ、2023年末までに、必要に応じて、NDCにおける2030年目標を再検討し、強化するよう要請し、我々は既にそうしている国々を歓迎する。我々は、国が決定するというNDCsの性質と、パリ協定第4条4の「先進締約国は、経済全体にわたる排出の絶対量における削減目標に取り組むことによって、引き続き先頭に立つべきである。開発途上締約国は、自国の緩和に関する取組を引き続き強化すべきであり、各国の異なる事情に照らして経済全体における排出の削減又は抑制の目標に向けて時間とともに移行していくことが奨励される。」という規定を想起する。この文脈において、我々は、全てのGHGsを対象とする経済全体の排出削減目標をNDCに盛り込んだ国々を称賛し、他の国々も、各国の異なる事情に照らして、次期NDCサイクルにおいてこのような経済全体における目標を含めることが奨励される。我々は、ドバイで開催されるCOP28において、緩和、適応、実施手段及び支援に係る気候行動の強化を推進する第1回グローバル・ストックテイクの成功裏の終了に貢献する。我々は、最新の科学的発展を考慮しつつ、循環炭素経済、社会経済的、技術的、市場開発を含む異なるアプローチを考慮しつつ、最も効率的な解決法を推進し、各国の異なる事情に即して、今世紀半ば頃までに、世界のGHG排出量のネット・ゼロ又はカーボンニュートラルを達成するという我々のコミットメントを再確認する。

気候変動及び移行経路に起因するマクロ経済リスク

35. 気候変動の物理的影響がもたらすマクロ経済コストは総体的かつ国レベルで重大であり、不作為がもたらすコストは秩序ある公正な移行のコストを大幅に上回る。我々は、資金及び技術の分野を含む国際的な対話及び協力並びに各国固有の状況に沿った適時の政策行動の重要性を認識する。また、気候変動の物理的影響及び移行政策の双方が、成長、インフレ及び失業を含むマクロ経済に与える短期、中期及び長期の影響を評価し、考慮することも重要である。我々は、気候変動及び移行経路に起因するマクロ経済リスクに関するG20報告書を支持する。我々は、この報告書における分析に基づき、多様なステークホルダーからのインプットを活用し、特に財政及び金融政策に関連するマクロ経済的なインプリケーションに関する更なる作業を適切に検討する。

持続可能な開発のためのライフスタイル(LiFE)の主流化

36. 持続可能な開発のためのライフスタイルに関するG20ハイレベル原則に基づき、我々は、世界が持続可能な生産及び消費パターンを受け入れ、持続可能な開発のためのライフスタイルを主流化することを可能にする強固な集団的行動にコミットする。これに関する研究は、LiFEが世界のネット・ゼロの未来のために、2030年までに大幅な排出削減に貢献できることを示している。我々は、気候変動への行動のための持続可能なライフスタイルを促進するための、これを可能にする政策環境の構築を支持する。この目的に向けて、我々は以下を行う。

 i. 持続可能な開発のためのライフスタイルに関するG20ハイレベル原則の実施にコミットする。

 ii. 国際協力、財政支援並びに技術の開発、導入及び普及を通じたLiFEの実施を支持する。我々は、国際機関に対し、適切な場合には、LiFEハイレベル原則をそのプログラムに組み入れるよう奨励する。

 iii. 「LiFEのための旅行」の開設に留意し、責任ある持続可能なスマート・デスティネーションの開発を支援する。

循環経済の世界を設計する

37. 経済成長を支えながら、経済成長と環境劣化を切り離し、一次資源の消費を含む持続可能な消費と生産を強化することに努めるため、我々は、循環経済、拡大生産者責任及び資源効率性が、持続可能な開発を達成する上で果たす重要な役割を認識する。我々は、資源効率・循環経済産業同盟(RECEIC)を立ち上げた議長国インドに感謝する。我々は、環境上適正な廃棄物管理を強化し、2030年までに廃棄物の発生を大幅に削減することにコミットするとともに、ゼロ・ウェイスト・イニシアティブの重要性を強調する。

クリーンで、持続可能で、公正で、低廉かつ包摂的なエネルギー移行の実施

38. 我々は、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を可能にし、気候変動に関する目標を達成する手段として、多様な道筋を通じて、クリーンで、持続可能で、公正で、低廉かつ包摂的なエネルギー移行を加速させることにコミットする。我々は、途上国のニーズ、脆弱性、優先事項、各国の異なる事情を認識する。我々は、技術革新、自発的かつ互いに同意した技術移転、低コストなファイナンスへのアクセスを促進するための、強力な国際的及び国内的環境を支援する。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 開かれた、競争的で、非差別的かつ自由な国際エネルギー市場を促進しつつ、持続可能な開発と気候変動に関する目標に沿って、拡大するエネルギー需要を満たすための包摂的な投資を通じたものを含め、エネルギー安全保障と市場の安定性を強化する道を探り、様々な供給源、供給者、ルートからのエネルギーの流れを途切れさせることなく維持することの重要性を強調する。

 ii. 途上国の低炭素及び低排出への移行を支援する必要があることを認識し、途上国に対する低コストなファイナンスの促進に向けて取り組む。

 iii. ゼロ及び低排出技術から製造される水素及びアンモニアのようなその派生物について、自発的かつ互いに同意した基準の調和や、相互に承認され、相互運用可能な認証スキームを開発することにより、製造、利用、及び透明かつ強靱な世界市場の開発を加速することを支持する。これを実現するため、我々は、全ての国に利益をもたらす、持続可能かつ公平なグローバル水素エコシステムを構築するため、「水素に関するG20ハイレベル自主原則」を確認する。我々は、太陽に関する国際的な同盟(ISA)が主導するグリーン水素イノベーションセンターの設立という議長国のイニシアティブに留意する。

 iv. 我々は、途上国のために、既存及び新規かつ新興のクリーンで持続可能なエネルギー技術のために、並びに、エネルギー移行を支援するために、低コストなファイナンスへのアクセスを促進することに取り組む。我々は、議長国インドの下で作成された「エネルギー移行のための低コストなファイナンス」に関する報告書と、一次エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの高い割合と共に、世界は、年間4兆米ドル以上の投資を必要としているその予測に留意する。

 v. 2030年までに、各国の事情に沿って、既存の目標や政策を通じて再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にする取組を追求するとともに奨励し、排出削減対策技術及び除去技術を含む他のゼロ及び低排出技術に関しても同様の野心を示す。また、「普遍的なエネルギーアクセスを加速するための再生可能エネルギー促進のための自発的な行動計画」にも留意する。

 vi. クリーンで持続可能なエネルギー技術及び解決策の開発、実証及び展開のための協力イニシアティブ、並びにイノベーションのためのその他の取組を推進することを誓う。

 vii. 「2030年までにエネルギー効率の改善率を倍増させる自主的な行動計画」に留意する。

 viii. ゼロ及び低排出の開発戦略における持続可能なバイオ燃料の重要性を認識し、グローバル・バイオ燃料アライアンスの設立に留意する。

 ix. 供給源で加工された重要鉱物及び材料、半導体並びに技術を含むエネルギー移行のための、信頼性が高く、多様な、持続可能かつ責任あるサプライチェーンを支持する。我々は、議長国の「エネルギー移行のための重要鉱物に関する協力のための自発的なハイレベル原則」に留意する。

 x. 民生用原子力エネルギーの利用を選択する国は、自発的かつ相互に同意した条件に基づき、国内法に従い、研究、イノベーション、及び革新炉や小型モジュール炉(SMRs)を含む民生用原子力技術の開発と建設において協力する。これらの国は、グローバルに原子力の安全性を推進するための国際協力の強化を通じて、責任ある廃炉、放射性廃棄物及び使用済み燃料の管理並びに投資の動員を推進し、知識とベストプラクティスを共有する。

 xi. エネルギー安全保障を強化し、経済成長を促進し、万人のための普遍的なエネルギーアクセスを促進する上で、適用可能な場合は、系統連系、強靭なエネルギーインフラ、並びに地域及び国境を越えた電力系統統合が果たす役割を認識する。

 xii. 無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を中期的にフェーズアウトし、合理化するという2009年にピッツバーグで表明したコミットメントを実施する取組を強化し、最も貧しく脆弱な人々に的を絞った支援を提供しつつ、この目標を達成することにコミットする。

 xiii. 各国の状況に応じて、公正な移行に向けた支援の必要性を認識した上で、再生可能エネルギー及び省エネルギー措置を含むクリーン電力の導入の急速な拡大及び排出削減対策の講じられていない石炭火力発電のフェーズダウンに向けた取組の加速を含む低排出エネルギーシステムへ移行するための技術の開発、展開、普及及び政策の採用を加速することの重要性を認識する。

気候及びサステナブル・ファイナンスの実現

39. 我々は、各国の状況に沿った移行活動への支援を確保しつつ、気候資金のために適時かつ十分な資源の動員を支援するためのメカニズムに関するサステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)の勧告を歓迎する。我々はまた、各国の異なる状況を考慮しつつ、野心的な我々の国が決定する貢献(NDCs)、カーボンニュートラル及びネット・ゼロを達成するための適応及び緩和の双方の取組に均衡ある形で対応するために、ブレンディッド・ファイナンス手法、メカニズム及びリスク配分のためのファシリティを通じた、切望されている民間資金の活用といった気候に関する行動を実現する重要な手段として公的資金の重要な役割を認識する。我々は、気候資金の動員におけるMDBsの強化された役割を含む、ブレンディッド・ファイナンス及びリスク配分のためのファシリティの拡大に向けたSFWGの勧告を歓迎する。我々は、途上国によるパリ協定の実施を支援するために、多国間気候基金などの譲許的資金の効果を最大化することの重要性を強調するとともに、来るべき2024年から2027年のプログラム期間における緑の気候基金の野心的な二度目の増資を求める。我々は、多国間気候基金へのアクセスを促進し、民間資本の動員のためのレバレッジ及び能力を強化する作業を実施する。我々は、温室効果ガス排出を回避し、削減し及び除去し並びに適応を促進する初期段階の技術の商業化を支援する重要性を認識し、グリーン及び低排出技術の迅速な開発、実証及び展開のためのより多くの民間資金の流入を促進するための金融ソリューション、政策及びインセンティブに関する勧告に留意する。我々は、カーボンニュートラル及びネット・ゼロに向けた、適当な場合における、カーボンプライシング及びかかるプライシングによらないメカニズムとインセンティブの活用を含む財政、市場及び規制メカニズムからなる政策の組合せの重要性を再確認する。

40. 我々は、複数年にわたるG20技術支援行動計画(TAAP)及び気候投資に対するデータ関連の障壁を克服するために策定された自発的な勧告を支持する。我々は、関連する法域及びステークホルダーによる各国の状況に沿ったTAAPの実施を奨励する。我々は、自発的で柔軟性のあるG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの実施における進展に関する報告に期待し、特にトランジション・ファイナンス枠組みの実施を含むロードマップで推奨されたサステナブル・ファイナンスを拡大する行動を推進するための更なる取組を求める。我々は、2023年G20サステナブル・ファイナンス報告書に期待する。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)によって2023年6月に公表された、比例原則に対処するメカニズムを提供し、相互運用性を促進するサステナビリティ及び気候関連の情報開示基準の最終化を歓迎する。各国固有の状況を考慮するため、それらの基準の実施において柔軟性が保持されることが重要である。上記のとおり実施されるとき、それらの基準は、国際的に比較可能で信頼できる情報開示を支援することを助ける。

41. 我々は、パリ協定の気候目標を達成するために、グローバルな投資を拡大し、世界的に、あらゆる資金源から数十億ドルから数兆ドルへと、投資及び気候資金を急速かつ十分に拡大する必要性を認識する。この点に関し、途上国の優先事項とニーズを考慮に入れつつ、資金、能力構築、及び自発的かつ相互に同意された条件での技術移転を拡大しつつ、全ての関係する資金の流れをこれらの目的に整合させることが不可欠である。これを達成するために、我々は以下を行う。

 i. 特に途上国が自国のNDCsを実施する必要性から、途上国にとって、2030年以前の期間に5.8~5.9兆米ドルが必要とされること、及び2050年までにネット・ゼロ排出を達成するために、2030年までにクリーンエネルギー技術に年間4兆米ドルが必要であることに留意する。

 ii. 我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性の文脈において、途上国のニーズに対応するため、2020年までに、また2025年まで毎年、年間1,000億米ドルの気候資金を合同で動員するという目標に対する先進国の2010年のコミットメントを想起し、再確認する。先進国である貢献国は、2023年にこの目標が初めて達成されることを期待している。

 iii. 我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国を支援するため、損失と損害に対応するための、基金の設立を含む、資金面での措置に係るCOP27の決定を成功裏に実施するよう取り組む。我々は、この観点から、設置された移行委員会を支援し、COP28における基金を含む新たな資金面での措置の運用化に関する同委員会の勧告に期待する。

 iv. 締約国に対し、UNFCCCの目的の達成及びパリ協定の実施における途上国のニーズと優先事項を考慮に入れつつ、2024年に、野心的で透明性があり、捕捉可能な気候基金の新規合同気候資金数値目標(NCQG)につき、年間1,000億米ドルを下限として設定するよう求める。

 v. グラスゴー気候合意のパラ18を想起し、我々は、先進国に対して、拡大された資金源の達成という文脈において、適応資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にするコミットメントを履行するよう要請する。

 vi. MDBsや多数国間基金といった全ての関連金融機関に対し、野心的な適応資金目標を設定し、適切な場合には2025年予測を修正し、強化することを発表することも含め、取組を一層強化するよう求める。

 vii. 公的気候資金を補完する民間気候資金の重要な役割を認識し、途上国におけるプロジェクトに対するブレンディッド・ファイナンス、リスク回避手段及びグリーンボンドといった資金調達メカニズムの開発を奨励する。

生態系の保全、保護、持続可能な利用及び再生

42. 我々は、気候変動、生物多様性の損失、砂漠化、干ばつ、土地劣化、汚染、食料不安及び水不足に対処する上で、健全な生態系の重要性を強調する。我々は、劣化した全ての生態系の少なくとも30%を2030年までに再生させ、土地劣化の中立性を達成するための取組を拡大することにコミットする。これを達成するために、我々は以下を行う。

 i. 昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の迅速かつ完全で効果的な実施にコミットし、他国にも同様に行うよう奨励し、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるための行動を奨励する。また、我々は、あらゆる資金源からの資金調達の強化を求める。この目的のため、我々は、地球環境ファシリティ(GEF)内に最近設立された生物多様性枠組基金を歓迎する。

 ii. G20土地イニシアティブ(GLI)の下でコミットされた、自発的に2040年までに土地劣化を50%削減するというG20の野心を支持し、ガンディナガル実施ロードマップ及びガンディナガル情報プラットフォームに関する議論に留意する。

 iii. 森林が、地球レベル及び地域レベルで、環境、気候及び人間にとって、重要な生態系サービスを提供し、吸収源としても機能し気候変動に関する目的にも適うことを認識する。我々は、森林の保護、保全、持続可能な管理、森林減少との闘いのための取組を、国際的に一致したタイムラインに沿って拡大し、持続可能な開発に対するこれらの行動の貢献を強調し、地域社会や先住民族の社会的及び経済的課題を考慮する。森林の文脈において、我々は、WTOのルールと多数国間環境条約に整合的な、差別的なグリーン経済政策を回避する。我々は、特に途上国に対し、譲許的かつ革新的な資金調達を含むあらゆる資金源から、森林のための新規かつ追加的な資金を動員することにコミットしている。我々は林野火災の防止及び緩和並びに採掘で劣化した土地の修復にコミットする。

 iv. 水に関する世界的な協力の強化及びベストプラクティスの共有を求め、2023年国連水会議及び水に関するG20対話での検討を歓迎する。

海洋を基盤とした経済の活用と保護

43. 我々は、世界の海洋及び海洋生態系の保全、保護、再生及び持続可能な利用にコミットし、2025年の国連海洋会議に向け進捗を得るとともに、この観点から貢献することを期待する。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 持続可能で強靱なブルー/海洋を基盤とした経済のためのチェンナイ・ハイレベル原則を歓迎する。

 ii. 国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する法的拘束力のある新たな国際文書の採択に留意し、その早期発効及び実施を全ての国に求める。

 iii. 利用可能な最良の科学的証拠に基づき、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)条約地域の海洋保護区(MPAs)の代表システムを確立するために、南極条約体制の範囲内で、CCAMLRを支援する。

 iv. 国際法に従って、違法・無報告・無規制(IUU)漁業と破壊的な漁法を終わらせることへのコミットメントを改めて表明する。

 v. このアジェンダの達成に向けて進捗を得るために、オーシャン20対話の役割を支持する。

プラスチック汚染を終わらせる

44. 我々は、プラスチック汚染を終わらせることを決意する。この文脈で、我々は、2024年末までに作業を完了させるという野心をもって、海洋環境を含むプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を策定するための政府間交渉委員会(INC)を設立した決議(UNEP/EA.5/Res.14)を歓迎する。我々はまた、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンで示されたG20海洋ごみ行動計画を基礎に取り組んでいく。

将来の都市への資金調達

45. 我々は、将来の都市を包摂的で、強靱で、持続可能なものとするための取組において、資金の動員を強化し、既存の資源を効率的に使用する必要性を強調する。この目的のために、我々は、その性質上自発的で法的拘束力のない将来の都市への資金調達に関するG20原則を支持するとともに、資金調達戦略を提供し、革新的な都市計画及び資金調達モデルの事例集を提示する将来の都市への資金調達に関するG20/OECD報告書を支持する。我々は、開発金融機関及びMDBsを含むステークホルダーに対し、適切な場合に、都市インフラの計画や資金供給にこれらの原則を参考として活用する可能性を模索し、初期のパイロット事例から得られた経験を共有することを奨励する。我々は、包摂的な都市の実現手段についての大枠の提示における進展に留意する。また、我々は、公共サービスの効果的な提供のための地方自治体の総合的な制度上の能力を評価し、強化する際の指針となる、カスタマイズ可能な都市行政の能力強化のためのG20/ADB枠組みに留意する。我々は、自発的で法的拘束力のない質の高いインフラ投資(QII)指標の進行中の試行的な適用に留意し、個別の国の状況を考慮しつつ適用に関する更なる議論を期待する。

災害リスクの軽減と強靭なインフラの構築

46. 本年、G20議長国は、国連総会決議77/289で留意された災害リスク削減に係る作業部会(DRR)の制度化を通じて、G20における災害リスク軽減に向けた取組を促進した。我々は、仙台防災枠組(SFDRR)を再確認し、その完全な実施を加速することの必要性を認識する。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 国と地方の能力強化、革新的な資金調達ツール、民間部門投資及び知識の共有を通じて、早期警報及び早期行動の進展を加速するよう促す。

 ii. インフラシステムの災害と気候への強靱性を促進するため、新興国、特に途上国、LDCs及びSIDSを含む全ての国の能力強化を引き続き支持する。我々は、DRRのためのグローバル・プラットフォームを歓迎し、そのような連携と共有を促進するための災害に強靱なインフラのためのコアリション(CDRI)のようなイニシアティブに留意する。

 iii. 仙台枠組の全ての原則を適用した復興経験の相互学習を促進する。


D. 21世紀の多国間機関

多国間主義の再活性化

47. 第二次世界大戦以来、経済成長と繁栄、脱植民地化、人口ボーナス、技術的成果、新たな経済大国の出現及び一層深化した国際協力により、グローバルな秩序は劇的な変化を遂げてきた。国際連合は、全ての加盟国に応え、その創設目的と憲章の原則に忠実であり、そのマンデートの遂行に適合したものでなければならない。この文脈で、我々は、我々の課題は相互に結び付いており、再活性化された多国間主義、改革及び国際協力を通じてのみ対処できることを再確認した国連創設75周年記念宣言(UNGA75/1)を想起する。21世紀の現代の地球規模の課題に十分に対処し、グローバル・ガバナンスを一層の代表性、実効性、透明性及び説明責任のあるものにするために、再活性化された多国間主義の必要性が複数のフォーラムで訴えられている。この文脈で、より包摂的で再活性化された多国間主義及び2030アジェンダの実施に向けた改革は不可欠である。

国際金融機関の改革

48. 21世紀はまた、途上国、特に最貧国及び最脆弱国が直面するニーズの規模やショックの深さを含め、目的に沿った国際開発金融システムを必要としている。我々は、オペレーティング・モデルの強化、対応力及びアクセス性の改善、並びに開発効果を最大化するためのファイナンス能力の大幅な強化を通じて、より良く、より大きく、より効果的なMDBsを実現するために取り組んでいる。開発資金を数十億ドルから数兆ドルへと飛躍的に増加させるために、より強固なMDBsは、あらゆる資金源から資金を動員する我々の取組にとって重要である。我々は、より効果的で、信頼性があり、説明責任のある正当な制度を実現するために、地球規模の国際経済及び金融制度に係る意思決定における途上国の代表制及び発言力を強化する必要性を強調する。国際金融システムは、途上国及びEMEsが貧困と闘い、地球規模の課題に取り組み、開発効果を最大化するのを支援するために、非常に多くの資金を提供しなければならない。

49. 我々は引き続き、低中所得国の開発ニーズへの対応に焦点を当て続けながら、21世紀の地球規模の課題に対処するために、MDBsを進化させ、強化する野心的な取組を追求することにコミットする。

50. 我々は、G20によるMDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー(CAF)の勧告を実施するためのG20ロードマップを支持し、MDBsのガバナンスの枠組みの中で、長期的な財務の持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を保護しつつ、その野心的な実施を求める。我々はまた、MDBs、専門家及び出資国に関与すること等を通じて順次行われる実施の進捗に関する定期的なレビューを求める。我々は、特にリスク選好度の定義及び金融イノベーションへの適応に関して、MDBsがCAFの勧告の実施を進めていることを賞賛する。我々は、グローバル新興市場(GEMs)データの適時の公表及び独立機関としてのGEMs2.0の2024年初頭までの立上げについてMDBs間で進行中の協働を評価する。我々はまた、将来に向けて、MDBsがハイブリッド資本、請求払資本及び保証といった分野において協力することを奨励する。我々は、MDBs、信用格付機関及び出資国の間の強化された対話を評価し、情報交換及び格付手法における継続的な透明性を奨励する。実施中及び検討中のものを含めた初期のCAF措置により、G20CAFロードマップで推定された通り、潜在的に今後10年間で約2,000億米ドルの追加的な融資余力が見込まれることに留意する。これらは勇気付けられる第一歩であるが、CAFの実施には、継続的かつ更なる推進力をさらに後押しする必要がある。

51. さらに、我々は、MDBsが持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進捗を加速させるというマンデート及びコミットメントに合致しつつ広範な地球規模の課題への対応においてその影響力を最大化するためのより良い準備を整えるよう、MDBsに対して、そのビジョン、インセンティブ構造、運営アプローチ及び財政能力を進化させるための包括的な取組を行うよう求める。我々は、世界銀行の世銀改革ロードマップにおける進捗を歓迎し、マラケシュにおけるIMF・世銀年次総会とその先の更なる進展を期待する。我々は、21世紀のためのMDBエコシステムの強化及び進化に向けた緊急の必要性を認識しつつ、MDBsの強化に関するG20独立専門家グループの第1回報告書の作成に係る取組を評価し、2023年10月に期待される第2回報告書と併せてそれが精査されることを期待する。我々は、第1回報告書の提言に留意し、MDBsは、MDBsの有効性の強化のため関連がありかつ適切な場合には、各機関のガバナンス枠組みにおいて、しかるべき時期にこれらの提言を議論することを選択できる。我々は、2023年10月の第4回G20財務大臣・中央銀行総裁会議のサイドラインで開催される来るべきMDBsの財務能力の強化に関するG20ハイレベルセミナーを支援する。開発のニーズと地球規模の課題に対処するための投資拡大には、大きな後押しが必要であり、この文脈で、我々は、IMF及び世界銀行に対して、関連する他の国際機関と協調しつつ、新興国及び途上国における国内資金の動員強化のための取組を支援するよう求める。我々は、MDBsに対して、開発効果を最大化するために、革新的な資金調達モデル及び新しいパートナーシップを通じて、民間資本を活用することも求める。我々は、その他の多国間の取組を認識し、新たな国際的開発資金取決めのための首脳会合に留意する。

52. 我々は、SDGsの達成が不可欠であることを認識しつつ、限られた譲許的資金を配分するための明確な枠組みに沿った形で地球規模の課題への対処に支援を必要とする低中所得国を支援するとともに、最貧国への強力な支援を提供するために、世界銀行の能力を押し上げるための更なる資金余力と譲許的資金を共同で動員する。したがって、我々は、IBRDの資金余力を強力に押し上げ、地球規模の課題に対処するための投資コストを削減し、IDAの危機対応ウィンドウの能力を向上させる選択肢を探求している。我々はまた、IDAのファイナンス能力を伸ばすための野心的な第21次IDA増資に期待する。我々は、国際復興開発銀行(IBRD)の2020年の投票権見直しに係る最終報告書を認識するとともに、2025年の投票権見直しに期待する。

53. 我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心に位置する、強固で、クォータを基礎とし、かつ十分な資金基盤を有するIMFへのコミットメントを再確認する。我々は引き続き、クォータの十分性を再検討することにコミットし、2023年12月15日までに結論が出されるよう、指針としての新たなクォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直し(GRQ)の下でのIMFガバナンス改革のプロセスを継続し、IMFの資金基盤におけるクォータの主要な役割を確保する。この文脈において、我々は、少なくともIMFの現在の資金規模を維持することを支持する。我々は、最も資金を必要とする国々に対するプレッジによる1,000億米ドルの自発的な貢献(SDR又は同等の貢献)という世界的な野心の画期的な達成と、26億米ドルのグラントのプレッジを歓迎し、プレッジの迅速な実施を求める。我々は、強靭性・持続可能性トラスト(RST)及び貧困削減・成長トラスト(PRGT)の下で達成された進捗を歓迎する。我々は、PRGTの利子補給金や融資原資に対する更なる自発的なプレッジを求め、RST支援プログラムの有効性を引き続き注視する。我々は、IMFが、増大する低所得国のニーズを今後数年間にわたって満たすことを目指して、PRGTを持続可能な基盤に据えるための多様な選択肢について暫定的な分析を実施することを期待する。G20は、G20アフリカとのコンパクトを通じたものを含むアフリカへの継続的な支援を再確認する。我々は、関係する法的枠組みとSDRの準備資産としての性格及び地位を保持する必要性を尊重しつつ、MDBsを通じたSDRの自発的な融通のための実現可能な選択肢の模索に関する更なる進捗に期待する。我々は、予防的取極めの見直しに期待し、IMFサーチャージ・ポリシーについて行われた議論に留意する。

グローバルな債務脆弱性の解決

54. 我々は、効果的で、包括的かつ体系的な方法で低中所得国の債務脆弱性に対処することの重要性を再度強調する。我々は、2020年11月13日に合意された、第2及び最終パラグラフを含む、DSSIを超えた債務措置に係る共通枠組においてなされた全てのコミットメントを引き続き守り、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で共通枠組の実施を強化する。この目的のために、我々は、共通枠組の実施に係る政策関連の課題について適切な提言を行うための継続的な議論を求める。我々は、ザンビア政府と公的債権者委員会との間の債務措置に関する最近の合意を歓迎し、迅速な解決を期待する。我々は、ガーナに係る公的債権者委員会の立上げを歓迎し、可能な限り早期の債務措置の合意を期待する。我々はまた、エチオピアに対する債務措置の迅速な妥結を求める。共通枠組のほかに、我々は、公的債権者委員会の立上げを含むスリランカの債務状況の適時の解決に向けた全ての取組を歓迎し、可能な限り早期の解決を求める。我々は、効果的な債務措置の促進に向け、共通枠組の内外の主要なステークホルダー間の意思疎通を強化し、共通の理解を促すための公的債務に係るグローバル・ラウンドテーブル(GSDR)参加者の取組を奨励する。我々は、民間債権者を含む全てのステークホルダーによる債務の透明性の向上に向けて作業を継続する共同の取組を歓迎する。我々は、国際金融機関へのデータ共有に関する自発的な確認作業の結果に留意する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECDの共同データ保存ポータルにデータを既に提供している民間部門の貸手の取組を歓迎し、他の貸手にも自発的に貢献するよう奨励する。


E. 技術の変化とデジタル公共インフラ

55. テクノロジーは、既存のデジタル格差を埋めるための急速な変革を可能にし、包摂的で持続可能な開発のための進歩を加速させることができる。デジタル公共インフラ(DPI)は、進化する概念であり、公的部門及び民間部門の双方によって構築され、活用される一連の共有デジタルシステムとして、安全で強靱なインフラに基づき、オープンソース・ソフトウェアのほか、オープンスタンダード及び仕様に基づいて構築することができ、社会的規模でのサービス提供を可能にする。デジタル公共インフラを相互運用可能にするための我々の自発的な取組において、我々は、適用可能な法的枠組みを尊重しつつ、信頼性のある自由なデータ流通及び国境を越えたデータ流通の重要性を認識する。我々はまた、開発のためのデータの役割を再確認する。

デジタル公共インフラの構築

56. 我々は、人権、個人データ、プライバシー及び知的財産権を尊重した安全、安心で、信頼できる、説明責任のある包摂的なデジタル公共インフラが、強靱性を醸成し、サービス提供とイノベーションを可能にすることを認識する。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. DPIの開発、展開及びガバナンスのための自発的で提案された枠組みであるデジタル公共インフラのためのG20枠組みを歓迎する。

 ii. G20メンバー及びそれ以外の国により自発的に共有されるデジタル公共インフラのバーチャルリポジトリであるグローバル・デジタル公共インフラ・リポジトリ(GDPIR)を構築し、維持するというインドの計画を歓迎する。

 iii. LMICsでDPIを実施するための能力を構築し、技術支援と適切な資金援助を提供することを目的とした自発的なイニシアティブであり、インド議長国下での提案である一つの未来アライアンス(OFA)に留意する。

デジタル経済における安全性、セキュリティ、強靱性及び信頼性の構築

57. それぞれの適用可能な法的枠組みを尊重しつつ、可能性を広げ、包摂的、開放的で、公正な、非差別的で、かつ安全なデジタル経済は、全ての国や利害関係者にとってますます重要になっている。我々は、安全で、安心かつ強靱なデジタル経済を構築するためのアプローチとグッドプラクティスを共有する。この範囲で、我々は以下を行う。

 i. 法的拘束力のないデジタル経済における安全性、セキュリティ、強靱性及び信頼性の構築における事業者支援のためのG20ハイレベル原則を歓迎する。

 ii. 児童及び若者のサイバー教育及びサイバー意識に関するG20ツールキットを歓迎する。

暗号資産:政策と規制

58. 我々は、暗号資産エコシステムにおいて急速に進展する動向のリスクを引き続き注意深く監視する。我々は、暗号資産の活動及び市場並びにグローバル・ステーブルコインの規制、監督及び監視に関する金融安定理事会(FSB)のハイレベル勧告を支持する。我々は、FSB及びSSBs(基準設定主体)に対して、規制の裁定を回避するため、一貫性のある形でグローバルにこれらの勧告の効果的かつ適時の実施を促進することを求める。我々は、FSB及びSSBsの暗号資産に関する共有された作業計画を歓迎する。我々は、あらゆる種類のリスク、新興市場及び発展途上経済(EMDEs)に固有のリスク並びにマネーロンダリング及びテロ資金供与リスクに対処するためのFATF基準の進行中のグローバルな実施を考慮した、調和された包括的な政策及び規制枠組みを支援するロードマップを含むIMF及びFSBの統合報告書を歓迎する。財務大臣及び中央銀行総裁は、2023年10月の会合において、ロードマップを前進させることについて議論する。我々はまた、「暗号資産エコシステム:主要な要素とリスク」に関するBISの報告書を歓迎する。

中央銀行デジタル通貨

59. 我々は、中央銀行デジタル通貨(CBDCs)の導入及び採用から生じる潜在的なマクロ金融上の影響、特にクロスボーダー決済や国際通貨及び金融システムへの影響に関する議論を歓迎する。我々は、CBDCsに関する教訓に関するBISイノベーション・ハブ(BISIH)報告書を歓迎するとともに、この問題に関する議論を進展させるため、CBDCsの広範な導入がもたらす潜在的なマクロ金融上の影響に関するIMF報告書に期待する。

デジタル・エコシステムの育成

60. 我々は、安全で強靱なデジタル・エコシステムの育成と、地球上の全ての市民が金融的に包摂されることの確保において、利用可能なあらゆるデジタル・ツール及び技術を導入し、努力を惜しまないことを決意する。これを支援するために、我々は以下を行う。

 i. 農家による責任ある、持続可能で包摂的なデジタル技術の利用を促進し、アグリテック新興企業やMSMEsのエコシステムを構築することにコミットする。

 ii. WHOが管理する枠組みの中で、それぞれのデータ保護規制を遵守した包括的なデジタルヘルス・エコシステムを構築するためのデジタルヘルスに関するグローバル・イニシアティブ(GIDH)の設立を歓迎する。

 iii. 文化及び文化遺産の保護及び促進のためにデジタル技術を活用し、文化並びに創造分野及び産業の発展のためにデジタル枠組みを採用する。

善のため及び全ての人のための、人工知能(AI)の責任ある活用

61. AIの急速な進歩は、世界のデジタル経済の繁栄と拡大を約束するものである。人々の権利及び安全を守りつつ、責任ある、包摂的な人間中心の方法で課題を解決し、公益のためにAIを活用することが我々の努めである。責任あるAIの開発、導入及び利用を確保するためには、人権の保護、透明性及び説明可能性、公正性、説明責任、規制、安全性、適切なヒューマン・オーバーサイト、倫理、偏見、プライバシー並びにデータ保護に取り組まなければならない。AIの潜在力を最大限に引き出し、その恩恵を公平に共有し、リスクを軽減するために、我々はAIのための国際的なガバナンスに関する国際協力及び更なる議論を促進するために協働する。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. G20AI原則(2019年)へのコミットメントを再確認し、デジタル経済におけるソリューションを支援するためのAI利用へのアプローチに関する情報共有に努める。

 ii. AIの利用の利益を最大化し、関連するリスクを考慮に入れた、イノベーションを促進する規制/ガバナンスのアプローチを追求する。

 iii. SDGs達成のために責任あるAIを推進する。


F. 国際課税

62. 我々は、21世紀のニーズに応じて、グローバルに公正で、持続可能かつ現代的な国際課税システムに向けた協力を継続していくことに対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2本の柱の国際課税パッケージの迅速な実施に対して引き続きコミットしている。多数国間条約(MLC)の条文の取りまとめ、利益B(国内の基礎的マーケティング及び流通活動に係る独立企業原則適用の簡素化及び合理化のための枠組み)に関する作業を含む第一の柱において、また、第二の柱における租税条約上の最低課税ルール(STTR)に関する作業の完了において、大幅な進展があった。我々は、包摂的枠組みに対して、2023年後半にMLCを署名できるよう準備するため、MLCに関するいくつかの懸案事項を速やかに解決することを求め、2023年末までに利益Bに係る作業を完了させることを求める。我々は、各国が共通アプローチとしてのグローバルな税源浸食対抗(GloBE)ルールの実施のために講じた措置を歓迎する。我々は、2本の柱の国際課税パッケージを効果的に実施するための能力構築に向けた協調した取組の必要性を認識するとともに、特に途上国に対する追加的な支援及び技術支援の計画を歓迎する。我々は、途上国及び国際課税に係るG20/OECDロードマップに関する2023年のアップデートに留意する。我々は、暗号資産等報告枠組(CARF)及びCRSの改訂の迅速な実施を求める。我々は、著しく多くのこれらの法域が2027年までにCARFによる情報交換を開始するという強い願望を踏まえ、税の透明性及び情報交換に関するグローバル・フォーラム(「グローバル・フォーラム」)に対して、関連する法域による情報交換を開始する適切かつ調整されたタイムラインを明らかにし、その作業の進展について我々の将来の会合に報告することを要請する。我々は、不動産に関する国際課税の透明性の向上についてのOECD報告書及び租税条約に基づき交換された税務情報の税以外での目的での使用の促進に関するグローバル・フォーラムによる報告書に留意する。


G. ジェンダー平等並びに全ての女性及び女児のエンパワーメント

63. G20は、ジェンダー平等が根本的に重要であり、全ての女性と女児のエンパワーメントに投資することが、2030アジェンダを実施する中で乗数効果をもたらすことを再確認する。

経済的及び社会的エンパワーメントの強化

64. 我々は、女性が率いる開発を奨励し、地球規模の課題に包摂的に取り組むための意思決定者として、また、社会のあらゆる領域、経済のあらゆる部門及びあらゆるレベルにおいて、積極的な参加者として貢献するために、女性の完全、平等、効果的かつ有意義な参加を推進することに引き続きコミットする。これは、ジェンダー平等の達成のためのみならずグローバルなGDPの成長に貢献する上で不可欠である。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 労働力参加における格差を削減するためのブリスベン目標を達成し、G20ロードマップ「ブリスベン目標に向けて、また、ブリスベン目標を越えて」の「25by25」(男女間の労働市場参加率の格差を2025年までに25%減少させるための取組)を実施するというコミットメントを再確認し、ILO及びOECDに進捗状況を毎年報告するよう要請する。

 ii. 幼少期から高等教育、生涯学習に至るまで、手頃な価格で包摂的、公平、安全な、かつ、質の高い教育への平等なアクセスを確保し、STEM分野及び新興デジタル技術における、障害を持つ者を含む全ての女性及び女児のより多くの就学、参加及びリーダーシップを支援する。

 iii. 男女間の賃金格差の是正と、働きがいのある人間らしい仕事と質の高い仕事への女性の平等なアクセスを確保することに重点を置き、雇用機会への包摂的なアクセスを可能にすることによって、変化しつつある仕事の世界で女性の完全かつ有意義な参加を促進するための措置を講じる。

 iv. 社会的保護の利用可能性及びアクセスにおける投資並びに有給及び無給のケア及び家事労働における不平等な分配に取り組み、教育や雇用への女性の継続的な参加を促進するための負担可能な介護インフラへの投資を促進する。

 v. オンライン及びオフラインの双方で、女性及び女児に対する性的暴行、ハラスメント、差別及び虐待を含むジェンダーに基づく暴力をなくし、ジェンダーに関して安全な職場を確保することにコミットする。

 vi. 特にデジタル金融及びマイクロファイナンスを通じて、女性の経済資源へのアクセスを強化することにより、女性の正式な金融システムへの包摂を促進する。

 vii. ジェンダーに関する固定観念や偏見をなくし、ジェンダーの不平等を永続化させる規範、態度及び行動を変える。

ジェンダー間のデジタル・デバイドを埋める

65. 我々は、2030年までにデジタル面におけるジェンダー格差を半減することにコミットする。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. デジタル技術のアクセス可能性、低廉性、導入及び利用におけるジェンダー規範及び障壁に取り組む。

 ii. デジタル・リテラシー及び技能の向上を含め、全ての女性及び女児が国家デジタル戦略の策定及び実施に積極的に参加できるような規制政策の枠組みを推進する。

 iii. デジタル・ツール及び技術におけるセーフティ設計アプローチの採用を奨励することにより、オンライン及びオフラインのあらゆる形態の虐待を含め、デジタル化の進展によって女性及び女児が直面する全ての潜在的なリスクを特定し、排除する。

 iv. 女性が主導又は所有するMSMEsを含むビジネスにとって、可能性を広げ、包摂的で差別のないデジタル経済を実現するために、ジェンダーに配慮した政策を推進し、実施する。

 v. 証明された解決策を特定し、それに資金提供して加速させることにより女性の生活及び所得保障を向上させるイニシアティブを奨励し、支援する。

 vi. デジタル経済における女性のエンパワーメントを支援するイニシアティブを歓迎する。

ジェンダーを包摂した気候変動への行動の推進

66. 気候変動、生物多様性の損失、砂漠化及び汚染が全ての女性及び女児に過度な影響を与えることを認識し、気候変動への行動の加速の中核には、ジェンダー平等がなければならない。その目的のために、我々は以下を行う。

 i. 気候変動の緩和及び適応並びに災害リスク軽減戦略及び環境問題に関する政策枠組みにおいて、女性の参加、連携、意思決定及びリーダーシップを支援し、増大する。

 ii. 気候変動及び環境悪化の影響に対する強靱性を構築するために、水と衛生(WASH)の課題に向けた解決策を含め、ジェンダーに配慮し環境的に強靱な解決策を支援する。

女性の食料安全保障、栄養及びウェル・ビーイングの確保

67. 女性の食料安全保障及び栄養は、女性の健康、その子どもや家族の健康、また共同体の一般的なウェル・ビーイングの基礎を築くものであり、個人及び共同体の発展の礎である。この目的のために、我々は以下を行う。

 i. 包摂的で、持続可能かつ強靭な農業及び食料システムへの投資を奨励する。学校給食プログラムにおいて、アクセスしやすく、手頃な価格で、安全かつ高栄養価の食料と健康的な食生活を支援する。女性農業従事者による、女性農業従事者のための、包摂的な農業バリュー・チェーン及びシステムのためのイノベーションを促進する。

 ii. 飢餓及び栄養不良を撲滅するため、革新的な資金調達手段及び社会的保護制度を活用することにより、ジェンダー及び年齢に配慮した栄養及び食料システムへの介入を支援する。

女性のエンパワーメントに関する作業部会の創設

68. 我々は、G20女性活躍担当大臣会合を支援するために、女性のエンパワーメントに関する新たな作業部会を創設することに一致し、ブラジルがG20議長国を務める期間にその第1回会合が開催されることを期待する。


H. 金融分野の課題

69. 我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)において進展しつつある動向を監視しつつ、システミックな観点からNBFIの脆弱性に対処し、その強靭性を向上するためのFSB及びSSBsの作業を引き続き強く支持する。我々は、オープンエンド型ファンドにおける流動性ミスマッチへの対処に関するFSBの2017年勧告の改訂についてのFSBの市中協議報告書及びNBFIにおけるレバレッジが金融安定に与えるインプリケーションについてのFSB報告書を歓迎するとともに、FSBマネー・マーケット・ファンド提案の実施を促進するための作業を支持する。我々は、FSBの、サイバーインシデント報告における更なる収れんの実現に向けた勧告、サイバーレキシコンの更新及びインシデント報告交換のためのフォーマット(FIRE)に係るコンセプトノートを歓迎する。我々は、FSBのFIREに関する更なる作業に期待し、FSBに対し、適切なタイムラインを伴った行動計画を策定することを求める。我々は、サードパーティーリスク管理及び監視の強化に関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。我々は、ツールキットが、金融機関のオペレーショナル・レジリエンスを高め、BigTechs及びFinTechsを含む重要なサードパーティーのサービス提供者への金融機関の依存度の高まりから生じる課題に対処するとともに、法域間及び金融サービスセクターの様々な分野での規制監督上のアプローチの分断を減少させるための取組を支援することを期待する。

70. 我々は、2027年までにより迅速で、安価で、透明性のある、包摂的なクロスボーダー送金に向けたグローバルな目標を達成するために、クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップの次の段階のための優先行動の効果的な実施へのコミットメントを再確認するとともに、この方向でSSBs及び国際機関が行ったイニシアティブを歓迎する。我々は、クロスボーダー送金の改善を目的とした革新的な解決策を促進する、BISイノベーション・ハブとの共同イニシアティブであるG20TechSprint2023が成功裏に終了したことを歓迎する。

71. 我々は、気候変動による金融リスクに対処するためのFSBのロードマップに関する年次進捗報告書を歓迎する。我々は、サステナビリティ及び資本市場からの資金へのアクセスを支え、ひいてはより広い経済の強靱性に貢献し得るコーポレート・ガバナンスのための政策及び規制枠組みを強化することを目的とする改訂されたG20/OECDコーポレート・ガバナンス原則を承認する。我々は、持続可能な資金フローを促進することへのコミットメントを再確認する。この目的のために、我々は、OECDの報告書「秩序あるグリーンな移行に向けて―投資要件と資本フローのリスク管理」に留意する。


I. テロ及びマネーロンダリングへの対抗

72. 我々は、平和に向けた全ての宗教の取組を認識しつつ、排外主義、人種差別及びその他の不寛容に基づくもの又は宗教若しくは信条を名目としたものを含め、あらゆる形態のテロ行為を非難する。それは、国際の平和及び安全に対する最も深刻な脅威の一つを構成する。

73. 我々は、重要なエネルギー施設を含む重要インフラ及びその他の脆弱な標的に対する全てのテロ行為を強く非難する。全てのテロ行為は、その動機にかかわらず、どこで、いつ、誰によって行われたとしても、犯罪であり正当化され得ない。効果的なテロ対策、テロ被害者のための支援及び人権の保護は、相容れない目標ではなく、補完的で相互に補強し合うものである。国際法に基づく総合的なアプローチによって、効果的にテロに対抗することができる。テロ集団の安全な逃避先並びに活動、移動及び勧誘の自由並びに財政的、物質的及び政治的支援を拒否するために、国際協力の効果を高める取組が強化されるべきである。

74. 我々は、小型武器の不法な取引や流用についても懸念を表明する。これらの事象と闘うためには、輸出入規制及び追跡を含む国家間の国際協力が重要である。

75. 我々は、金融活動作業部会(FATF)及びFATF型地域体の高まるリソースのニーズを支援することにコミットし、次期相互審査に向けたものも含め、他国に対し同様の行動を促す。我々は、犯罪者が不正に得た利益を隠匿し、洗浄することをより困難にするため、法人及び法的取極めの実質的支配者の透明性に関する改訂されたFATF基準を適時かつグローバルに実施することに引き続きコミットする。我々は、犯罪収益を回復するためのグローバルな取組を強化するためのFATFの進行中の作業、特に財産回復に関する国際基準の改訂に向けたFATFの進捗及びグローバルな財産回復ネットワークの強化を歓迎する。我々は、各国が、特にテロ資金供与、マネーロンダリング及び拡散金融リスクに関するFATF基準に沿って、暗号資産に関連するリスクを軽減するための効果的な規制及び監督の枠組みを策定し、実施することの重要性を再確認する。この点に関し、我々は、「トラベル・ルール」を含むFATF基準のグローバルな実施を加速するためのFATFによるイニシアティブ、並びに、分散型金融(DeFi)及び個人間で行われる取引を含む新たな技術やイノベーションのリスクに関する作業を支持する。


J. より包摂的な世界の創造

76. 我々は、アフリカ連合をG20の常任メンバーとして歓迎し、アフリカ連合をG20に迎えることは、現代の地球規模の課題への対応に大きく貢献すると強く確信している。我々は、インドがG20議長国である間に常任メンバーとしてのアフリカ連合の参加のための道筋を整えた全てのG20メンバーの取組を称賛する。アフリカは世界経済において重要な役割を果たしている。我々は、アフリカ連合との関係を強化し、アジェンダ2063の下での願望を実現するようアフリカ連合を支援することにコミットする。また、我々は、アフリカとのG20コンパクト及びアフリカ及びLDCsにおける工業化の支援に関するG20イニシアティブを含むアフリカへの強力な支援を改めて表明する。我々は、G20と他の地域のパートナーとの間の協力の深化に関する更なる議論を支持している。

77. 我々は、移民としての地位にかかわらず、人権及び基本的自由への最大限の尊重を確保するとともに、自国の政策、法制度及び状況に沿った形で、より包摂的な世界に向けた取組において、移住労働者及び難民を含む移民を支援するというコミットメントを再確認する。我々はまた、人道的な必要性及び避難の根本的な原因に対応しつつ、安全で、秩序ある、正規の移住に向けた包摂的なアプローチの一環として、非正規移住の流れ及び移民を密入国させることの防止の重要性を認識する。我々は、出身国、通過国及び目的地国の間の協力の強化を支持する。我々は、今後の議長国の下で、移住及び強制移送に関する対話を継続する。

78. 我々は、国連総会決議A/RES/77/318、特に宗教的及び文化的多様性の尊重、対話並びに寛容を促進するというそのコミットメントに留意する。我々はまた、信教又は信条の自由、意見又は表現の自由、平和的な集会の権利及び結社の自由に関する権利は、相互依存的で、相互連関性があり、相互に強化し合うものであることを強調し、これらの権利があらゆる形態の信教又は信条に基づく不寛容及び差別との闘いにおいて果たし得る役割を強調する。この点に関し、我々は、国内法的枠組みを害することなく、人々に対するあらゆる宗教的憎悪に関する行為並びに宗教的シンボル及び聖典に対するものを含む象徴的な性質を持つあらゆる行為を強く非難する。

79. 我々は、引き続き途上国の視点をG20のアジェンダに統合し、この点に関するG20メンバーのイニシアティブに感謝する。

結論

80. 我々は、インドが第18回G20サミットをニューデリーで成功裏に主催し、代表者を温かく歓迎し、G20の強化に貴重な貢献をしたことに感謝する。我々は、様々なG20作業部会及び閣僚会合が成功裏に終了したことを評価し、附属されているその成果を歓迎する。我々はまた、インドが2023年8月23日に成功裏に月に着陸したことに祝意を表する。


81. 我々は、グローバルな経済協力に関するプレミア・フォーラムとしてのG20と、コンセンサスに基づき、サミットを含む全てのイベントに全てのメンバーが対等な立場で参加する多国間主義の精神に基づくG20の運用への我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、次のサイクルの始めに、2024年のブラジル、2025年の南アフリカ、2026年の米国での再会を楽しみにしている。我々は、次のサイクルにおいてG20議長国となる順番を前倒しするというサウジアラビアの野心を歓迎する。また、我々は、全ての人々が参加する、平和、国家間の対話及び包摂性の象徴として、2024年のパリ・オリンピック・パラリンピックを楽しみにしている。

82. 我々は、国際機関の参加と支援に感謝する。我々は、B20、S20、SAI20、Startup20、T20、U20、W20、Y20、C20、P20及びL20の各エンゲージメント・グループ並びにEMPOWER、リサーチ・イニシアティブ、宇宙経済リーダー会合(SELM)、首席科学顧問ラウンドテーブル(CSAR)及びG20サイバーセキュリティ会合の各イニシアティブの貴重な提言に感謝する。

83. 我々は、これまでの世界的な危機を食い止めるための我々の共同の行動を想起し、世界を現在の難局から救い出し、我々の国民と地球のために、より安全で、より強く、より強靭で、包摂的で、より健全な未来を築くことを決意している。

G20ニューデリー首脳宣言の附属文書一覧(略)

(了)