データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20 環境・気候大臣会合 成果文書・議長総括

[場所] インド・チェンナイ
[年月日] 2023年7月28日
[出典] 経済産業省
[備考] 
[全文] 

本成果文書は、議長総括に関するパラグラフ63-66を除き、全てのG20代表団が全会一致した文書で構成されている

前文

1. 我々、G20環境・気候大臣は、リオ3条約の目的達成の重要性を再確認し、気候変動、生物多様性の損失、汚染、砂漠化、森林減少、水質・利用可能性・アクセス性、土地・海洋の劣化を含む環境危機と課題に対処するための我々の行動を緊急に加速させ、この点において相補性を主流化し、拡大するために、2023年7月28日にチェンナイにて対面で会合を行った。我々は、これらの問題が相互に関連していることを認識し、したがって、経済減速、貧困、食料・エネルギーを含む商品価格の高騰と過度の変動、CoVID-19パンデミックの影響等、他の差し迫った喫緊の世界的課題に対処するための努力とともに、補完的な形で我々の行動を進めることにコミットする。

2. 現在及び将来の世代の繁栄とウェルビーイングは、我々の現在の開発の選択と行動にかかっていることを認識し、我々は、特に以下を達成するための我々のコミットメントと目標を認識し、環境的に持続可能で包摂的な経済成長と開発を追求することを決意する:2030年アジェンダとそのSDGs、パリ協定の目標、昆明・モントリオール生物多様性枠組の2030年ミッションと自然と共生する世界という2050年ビジョン、2030年までの土地劣化の中立性、適切な行動による汚染への対処、関連する多国間環境協定の目標、そしてこの文脈における孤立した行動を避けることを決意する。我々は、気候変動、生物多様性の損失、環境悪化に対処するため、政策を強化し、開発途上国への支援を大幅に拡大することを含め、予測可能で適切かつタイムリーな方法で、あらゆる資金源から資金を動員することが緊急に必要であることを認識し、科学的知識の共有、意識向上、能力開発に協力する。

3. 我々は、気候変動に対処し、環境の持続可能性を達成するために、過去の議長国の活動を基礎とする必要性を強調する。この精神に則り、我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとその持続可能な開発目標(SDGs)及びターゲット、アディスアベバ行動目標、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定、生物多様性条約(CBD)及び昆明・モントリオール生物多様性枠組、国連砂漠化対処条約(UNCCD)及びその戦略的枠組、並びに必要に応じてその他の多国間環境協定の目的に対する我々のコミットメントを再確認する。

4. 我々は、極度の貧困を含むあらゆる形態及び側面における貧困を根絶することが、持続可能で気候に対して強靭な開発への道筋及び、2030アジェンダ及び持続可能な開発目標並びに清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する人権に関する国連総会決議76/300において概説されている、包括的で、広範囲にわたる、人間中心とした普遍的かつ変革的な一連の目標を達成するために不可欠であることを強調する。さらに我々は、環境悪化と気候変動の影響は、世界中の個人と地域社会が感じている一方で、その影響は、既に脆弱な状況にある人々、女性と女児、地域社会、若者、子ども、高齢者、障害者が最も鋭く感じていることを認識する。このような状況において、我々は、彼らの権利を尊重し、意思決定における彼らの全面的、衡平、包摂的、効果的な代表と参加を確保するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、特に、先住民族の権利に関する国連宣言において確認されている、先住民族の権利と伝統知識の重要性に留意する。我々は、女性と女児に対する不釣り合いな影響に関するさらなる知識を蓄積することの重要性を強調し、この点に関して、より細分化されたデータの収集と利用を求める。

5. 我々は、歴史的な昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択と、生物多様性の損失を止めて反転させるための緊急の行動をとるための2030年ミッション、そして自然との共生という2050年ビジョンを強く歓迎し、その迅速、完全かつ効果的な実施にコミットし、他の国々にも同様のことを実施するよう促す。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下の、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する新たな法的拘束力のある国際文書が採択されたことを歓迎し、その早期発効と実施を全ての国に呼びかける。

6. 我々は、インドG20議長国としてのテーマである「一つの地球、一つの家族、一つの未来」への支持を表明する。我々は、シャルム・エル・シェイク実施計画で指摘された気候変動、汚染、砂漠化、及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った生物多様性の損失への取組において、持続可能なライフスタイル及び持続可能な消費・生産パターンへの移行の重要性に留意する。我々は、持続可能な消費と生産に関するSDG12達成の重要性を強調する。我々は、持続可能な開発のためのライフスタイルに関するG20ハイレベル原則に謝意を持って留意する。

7. 我々は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)議長国アラブ首長国連邦(UAE)、第16回国連生物多様性条約締約国会議(COP16)議長国トルコ、第16回UNCCD締約国会議(COP16)議長国サウジアラビアの取組に対し歓迎し、全面的な支持を表明する。また、我々は、第5回化学物質管理国際会議議長国ドイツ、第10回世界水フォーラム議長国インドネシア、2023年に4つの地域気候ウィークが開催されることも歓迎する。我々は、これらのイベントやプロセスにおいて、生産的、協力的、包摂的な方法で、これらの課題への対応に見合った野心的でバランスの取れた成果を目指していく所存である。我々は、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書の策定に向けた政府間交渉委員会において、2024年末までにその作業を完了するという野心を持って、その課題に見合った建設的な役割を果たすことにコミットする。

8. 我々は、国連総会決議76/185に沿って、環境に影響を与える犯罪を防止し、それと闘うための我々の努力を強化し、環境に影響を与える犯罪から派生する不正な資金の流れと闘うために、関係閣僚との協力を強化することを再確認すると共に決意する。

気候行動の加速

9.我々は、我々の主導的な役割に留意し、UNFCCCの目的を追求するに当たり、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映した形で、パリ協定及びその気温目標の完全かつ効果的な実施を強化することによって気候変動に取り組むという我々の確固たるコミットメントを再確認する。我々は、利用可能な最良の科学の知見を考慮し、パリ協定の全ての柱について野心的な行動をとることの重要性を強調する。

10.我々は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2°C高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5°C高い水準までのものに制限するための努力を追求するというパリ協定の気温目標を達成するには、気候変動に対処するための世界の野心と実施が不十分なままであるということに懸念をもって留意する。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の貢献及びその第6次評価報告書(AR6)を歓迎する。我々は、効果的な気候行動及び政策立案に対する利用可能な最良の科学の知見の重要性を認識し、適切な場合には、国の気候政策及び行動計画にそれを利用することを奨励する。

11.我々は、気候変動の影響は、1.5°Cの気温上昇の方が2°Cの気温上昇に比べてはるかに小さいことを認識し、気温上昇を1.5°Cに制限するための更なる努力を継続する決意を改めて表明する。さらに、我々は、国連環境総会決議5/5及びIPCC第6次評価報告書第2作業部会の貢献を考慮し、関連した社会・環境セーフガードを確保しつつ、それが適切な場合には、自然を活用した解決策(NbS)、生態系を活用したアプローチ(EbA)及び緩和及び適応対策のためのその他の管理・保全アプローチを実施するように努める。我々は、緊急かつ有意義で効果的な気候行動は、社会的または経済的な負の影響を最小化し、正の影響を最大化しつつ、公正かつ包摂的な方法で行われるべきであること、またそのような対策から生じうるコベネフィットを強化すべきであることを強調する。

12. 我々は、シャルム・エル・シェイク実施計画及び過去のCOPやパリ協定締約国会議(CMA)の関連成果を実施するための役割を十分に果たす。我々は、パリ協定の気温目標に国が決定する貢献(NDC)を整合させていない全ての国に対し、各国の異なる事情を考慮しつつ、2023年末までに、必要に応じて、NDCにおける2030年目標を再検討し、強化するよう求める。我々は、NDCの国が決定するという性質と、「先進締約国は、経済全体にわたる排出の絶対量における削減目標に取り組むことによって、引き続き先頭に立つべきである。開発途上締約国は、自国の緩和に関する努力を引き続き強化すべきであり、各国の異なる事情に照らして経済全体における排出の削減又は抑制の目標に向けて時間とともに移行することが奨励される。」という、パリ協定第4条4の規定を想起する。この文脈において、我々は、既にそうしている国々を評価し、他の国々にも、各国の異なる事情に照らして、次期NDCサイクルにおいて同様に取り組むよう奨励する。我々は、気候行動を強化する可能性を有するパリ協定第6条の実施の重要性を強調し、炭素市場の環境十全性を確保することの必要性及び特に途上国におけるその実施のための能力構築の必要性を認識する。我々は、さらに、COP27で決定されたシャルム・エル・シェイク緩和野心・実施作業計画(MWP)を歓迎する。同計画は、2023年には、公正なエネルギー移行のトピックに焦点を当てる。我々は、パリ協定第4回締約国会合決定第4号(4/CMA.4)のとおり、NDCが国別に決定されるという性質を再確認しつつ、野心の向上と実施の拡大に向け、有意義かつ建設的なMWPへの関与が行われることを期待する。我々は、パリ協定第4条19で言及される長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略(LT-LEDS)を数か国が提出したことを歓迎する。我々は、他の締約国に対し、2023年のパリ協定第5回締約国会合(CMA.5)までに、各国の異なる事情を考慮しつつ、今世紀半ば頃までに排出量のネット・ゼロ又はカーボン・ニュートラルへの公正な移行に向けたLT-LEDSを策定し、提出するよう奨励する。

13. 我々は、現在の適応のレベルと、影響に対応し気候リスクを軽減するために必要なレベルとの間に、ギャップが存在することを認識する。また、我々は、特に途上国にとって、分野横断的な適応を強化し、強靭性を構築することが、気候変動に直面する中で生活を維持し、開発の利益を守るための緊急の要件であることを認識する。我々は、グラスゴー気候合意が開発途上締約国に対する適応のための気候資金の提供を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進国締約国に求めたことを想起する。我々はまた、国際開発金融機関(MDBs)、国際金融機関(IFIs)、多国間基金等の全ての関連する金融機関に対し、適切な場合には改定され強化された2025年予測を発表し修正・強化した上で、野心的な適応資金目標を設定すること、及び、パリ協定第9条4を想起しつつ、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈も含みつつ民間セクターの参加強化を支援することを通じ、その努力を更に強化することを求める。我々は、気候変動に対して強靭な農業、物理的インフラ、統合された水資源、持続可能な冷暖房ソリューション、グリーンビルディング等の関連分野において、開発における適応の主流化が必要であることを強調する。また、これらの分野における取組を補完するために、必要に応じて、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチの潜在的な付加価値も念頭に置く。

14. 我々は、パリ協定で定められた適応に関する世界全体の目標(GGA)の達成に向けた行動及び支援を強化することの重要性を強調し、パリ協定第2条1(a)に規定された気温目標との関連において、持続可能な開発に貢献し、適切な適応策を確保する観点から、適応能力を強化し、強靭性を強化し、気候変動に対する脆弱性を低減するためのGGAに関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画の下での進捗を歓迎する。我々はまた、長期的かつ大規模で、地域主導のアプローチを効果的に実施することを含め、全ての適応行動を前進させる必要性を強調する。さらに我々は、CMA.5に対し、適応に関する世界全体の目標の達成に向けた枠組みを提供するよう求める。

15. 我々は、緩やかに進行する事象及び気象についての極端な事象に対する強靭性を構築し、気候変動の悪影響に伴う損失と損害を回避し、最小化し、対処するために緊急に行動する必要性を再確認する。この文脈において我々は、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国を支援するため、基金の設立を含む、損失と損害に対応するための資金面での措置に関するCOP27での決定を成功裏に実施するために取り組む。我々は、これに関連し、設置された移行委員会を支持し、基金を含む新たな資金面での措置の運用化に関するCOP28での勧告に期待する。我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な開発途上国において、損失と損害を回避し、最小化し、対処するためのアプローチを地方、国、地域レベルで実施するための技術支援を可能な限り早期に促進するため、サンティアゴ・ネットワークを完全に運用することを求める。我々は、これらの国々が現在利用可能な複数の支援手段を利用しやすくなるよう促進すべきである。我々は、異常気象や気候変動に対する早期警戒システムの普遍的な適用を通じて、地球上の全ての人々を保護するため、2027年までに「すべての人に早期警警戒システムを(Early Warnings for All)」という国連事務総長の呼びかけへの支持を表明し、適切な場合には、このイニシアティブに支援を提供することを奨励する。また、我々は、気候変動に対する強靭性に貢献する可能性を有する、G20防災作業部会の設立とその更なる議論を歓迎する。

16. 我々は、温暖化する世界で必要とされる緊急の気候行動を可能にする重要な要素として、実施手段に関する途上国支援を強調する。我々は、気候資金の定義の多様性に伴う複雑性に留意し、COP28までにUNFCCCプロセスにおいて検討される可能性のある、使用されている気候資金の定義の類型に関する資金常設委員会の作業の成果を期待する。我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性の下で、途上国のニーズに対応するため、2020年までに、及び2025年まで毎年、年間1,000億米ドルの気候変動資金を共同で動員するという目標に対する先進国のコミットメントを想起し、再確認する。先進締約国は、この目標が2023年に初めて達成されることを期待する。我々は、一部の締約国が隔年更新報告書(BUR)を提出していることに留意し、他の締約国に対し、実施努力に関して透明性のある報告を適時に行うよう推奨する。この文脈で、我々は、BURs及び隔年透明性報告書(BTRs)作成のための途上国への資金支援の重要性を強調し、特に地球環境ファシリティ(GEF)に対し、そのような支援をタイムリーに提供するよう促す。

17. 我々は、公的資金、無償資金、譲許的資金が引き続き重要であることを認識し、特に途上国において、増大する気候資金と投資のニーズに対応するため、目的に合った多様な資金源、手段、政策手段、チャネルを展開する必要性を強調する。さらに我々は、気候行動を可能にするため、MDBs、IFIs、民間セクター、及びその他の資金源からの加速的で、適切かつ追加的な気候資金の動員を求める。我々は、2023年に予定されている、パリ協定第2条第1(c)及び同規定とパリ協定第9条との補完性に関するシャルム・エル・シェイク対話を期待する。また我々は、UNFCCCの目的達成とパリ協定の実施に資する、COP21決定第1号(1/CP.21)に則った年間1,000億米ドルを下限とする野心的な新規合同気候資金数値目標に関する、途上国のニーズと優先事項を考慮した、2024年のCOP29までの継続審議を支持する。さらに我々は、2024-2027年のプログラム期間における緑の気候基金の野心的な第二次増資プロセスを求める。

18. 我々は、パリ協定の目的及び長期的な目標の達成に向けた全体としての進捗状況を評価し、各締約国が、自国が決定する方法によって自国の行動及び支援を更新し、及び強化するに当たり並びに気候に関する行動のための国際協力を強化するに当たり、締約国に対して情報が提供される、2023年のCOP28におけるグローバル・ストックテイクが極めて重要であることを強調する。我々は、緩和、適応、実施手段及び支援並びに国際協力の強化に係る気候行動の強化を推進する決定又は宣言を行うことを通じて、ドバイで開催されるCOP28での第1回グローバル・ストックテイクの成功裏の終了に貢献する。我々は、グローバル・ストックテイクの結果に基づき、次期NDCを提出する。我々は、パリ協定第4条3を遵守する。同規定は、「各締約国による累次の国が決定する貢献については、各締約国によるその直前の国が決定する貢献を超える前進を示し、並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力を考慮しつつ、各締約国のできる限り高い野心を反映するものとなる」と規定している。

19. 我々は、世界の温室効果ガス排出削減における需要側対策の可能性に関するIPCCAR6の統合報告書からの知見を認識する。我々は、持続可能な消費者の選択と嗜好の強化に関する国際協力と経験及び優良事例の共有を促進する。我々は、この点において、教育、訓練、啓発、参加及び情報へのアクセスが重要な役割を果たすことを認識する。私たちはまた、異なる政府制度を考慮しつつ、環境に配慮したライフスタイル、知識の共有、都市間連携の促進等、地域のニーズや環境条件に応じた気候行動と移行を行う上で、都市、地域、地方自治体が果たす重要な役割を認識する。

土地劣化の防止・削減・反転、生態系の回復の加速化と、生物多様性の損失の阻止、反転

20. 我々は、気候変動、生物多様性の損失、土地劣化、汚染、食料不安、水不足等の重要な課題に取り組む上で、全ての健全な生態系が重要であることを強調する。健全な生態系は、人間、動物、植物の健康を守るだけでなく、人間の福利にも貢献する。我々は、生態系が、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及び全ての人々と自然の利益のためのその他の管理・保全アプローチを含み、 大気、水、気候の調節、土壌の健全性、受粉、疾病リスクの低減、自然災害からの防御を含む、これらに限定されない広範で貴重な生態系サービスを提供していることを認識する。我々はまた、他の全体論的アプローチの中でも、ワンヘルス・アプローチの実施の重要性を再確認する。また、我々は、各国の状況の違いを認識しつつ、持続可能な生産及び消費パターン並びに持続可能で強靭な食料システムの達成を促進することの重要性を再確認する。我々は、全ての人のための食料安全保障と栄養を達成するための重要な手段として、持続可能な農業開発及びその推進における途上国支援の重要性に留意する。

21. 我々は、2022年12月に開催された生物多様性条約COP15において、歴史的な「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」が採択されたことを強く歓迎する。我々は、世界中で生物多様性が人類史上前例のない速度で劣化していることに深刻な懸念を抱いており、そのため、生物多様性の損失を止めて反転させるというKMGBFの2030年ミッションと、自然との共生という2050年ビジョンを達成するため、KMGBFの全てのゴールとターゲットの迅速かつ完全な実施にコミットすると共に、緊急の行動をとる。

22. G20参加国のうち生物多様性条約の締約国は、2024年に開催される国連生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)までに、KMGBFとそのゴール及びターゲットと整合性をとる形で生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)を改定、更新及び提出すること、あるいは、NBSAPsの完全な提出に先立ち、必要に応じて、GBFの全てのゴール及びターゲットを反映した国別目標を伝達することにコミットし、また、KMGBFのゴール及びターゲットは本質的にはグローバルなものであり、各締約国が各国の状況、優先事項、能力に応じてその達成に向けて貢献することを認識した上で、他国にも同様の行動をとるよう求める。

23.我々は、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチを含む、保護、保全、持続可能な利用及び回復措置、気候緩和、適応及び災害リスク削減のための行動を通じて、統合的な行動を促進し、生態系の強靱性の強化にコミットする。我々は、共同の利益の最適化を含む、より大きな成果を達成するために、気候、生物多様性、土地に関する行動の一貫性と補完性を強化する。

24. 我々は、持続可能な開発目標(SDG)15.3、及び国連砂漠化対処条約の戦略的枠組に関し焦点となる土地劣化の中立性の達成に向けた努力と協力を強化する。また、我々は、気候及び環境目標を達成するために、土地劣化中立性目標達成の重要性を強調する。

25. 我々は、全ての生態系の保護、保全、持続可能な利用、管理、回復のための取組を拡大し、泥炭地、マングローブ、サンゴ礁、草原、森林、その他の生態系の破壊が、気候変動、生物多様性の損失、土地劣化に寄与していることを認識する。また、生物多様性の損失を止めて反転させるための取組を拡大し、森林減少、砂漠化、土地劣化、干ばつと闘うとともに、2030年までに土地劣化の中立性を達成するために、劣化した土地を回復させる。我々は、最貧困層が生物多様性の損失と気候変動の影響に対して最も脆弱であることを認識し、また、気候変動が森林だけでなく、森林地域の地域社会や先住民族にも影響を与えることを認識する。したがって我々は、地域社会と先住民族を支援し、彼らが森林を持続的に経営できるような条件を整え、国内法に従って合法的に伐採され、持続可能な形で生産された林産物の取引を促進することの重要性を強調する。さらに、森林減少の抑制を目指す政策は、地域社会や先住民族の社会的・経済的課題を考慮しなければならない。我々は、森林が人々にもたらす社会的、文化的、経済的、環境的な恩恵と、持続可能な開発のための森林の保全、保護、回復、持続可能な利用、持続可能な経営の貢献を強調する。我々は、森林が地球レベル及び地域レベルで環境と人々に重要な生態系サービスを提供し、地球規模の気候調節と生物多様性の保全に重要な役割を果たしていることを認識する。この観点から、我々は、国内、国家間、公共、民間の資源を含むあらゆる資金源から、革新的な資金調達スキームを含め、森林のための新たな追加資金を動員することに尽力する。我々はまた、森林の保護、保全及び回復を支援するための統合的な解決法を導くため、コミュニティベース及び先住民族主導の努力を含む共同の努力が重要であることを認識する。グリーン経済政策は、一方的措置も含めて、国際貿易における恣意的若しくは不公平な差別又は偽装された制限であってはならないことを確認する。我々は、2020年にサウジアラビア議長国の下で表明された、劣化した土地を減少させ、サンゴ礁の保全と回復を強化するという我々のコミットメントを再確認し、また、森林の保護、保全、回復、持続可能な経営におけるG20メンバーの最近の努力を賞賛し、森林減少への対処に効果的に取り組み、その環境的、社会的、経済的側面に対処する。

26.我々は、林野火災が地球規模の炭素排出と大気汚染の一因となっていること、また、甚大な林野火災が生態系及びその機能とサービスの保全と再生に影響を及ぼし、気候変動、土地の劣化、生物多様性の損失を悪化させる可能性があることを認識する。我々は、SDG15及びと地球規模の土地劣化目標を支援するために、林野火災を防止・管理し、林野火災の影響を受けた土地を適切に回復させることの重要性を認識する。従って、我々は、適切かつ実行可能な場合には、林野火災の防止、影響の軽減、及び影響を受けた土地の回復に関する、地方、地域、国際レベルでの協力と行動強化のための取組を拡大する。さらに、林野火災の影響を軽減し、自然資源をよりよく保全するための重要な戦略として、地域社会の参加と先住民族の知識・技術を活用した持続可能な林業を積極的に実施することを決意する。

27. 我々は、環境悪化に対処するために必要であり、土壌の形成、生物多様性の保全、炭素隔離、持続可能な森林経営、水資源の質と利用可能性の改善等のコベネフィットをもたらしうる、劣化した鉱区の修復と科学的根拠に基づく生態系の回復の重要性に留意する。我々は、鉱業が2030アジェンダ、特に持続可能な開発目標7と12の達成にとって重要である一方で、環境と気候に負の影響を及ぼしうることに留意する。我々は、適切な場合には、回復及び修復活動を含む、採掘場の適切な管理の重要性を認識し、そのような影響を最小化するために、違法採掘や、そこから派生する不正な資金の流れを含む、採掘のバリューチェーンに関連するその他の違法活動を撲滅することを含む、責任ある採掘慣行を奨励する。この観点から、我々は、UNEA決議4/19及びUNEA決議5/12を再確認し、全ての国に対し、官民双方から、鉱物及び金属の全ライフサイクルに沿って、鉱業慣行及び鉱業への投資を、持続可能な開発のための2030アジェンダに整合させることを奨励する。我々は、公衆及び地域社会の参加を通じて、人々を第一に考えることにコミットし、関連する国際文書に規定されている通り、人間の福祉に貢献し、人権と権利、及び劣化した鉱業地の修復及び回復において、UNDRIPに規定されている先住民族の権利及び伝統的知識を尊重、保護、促進する。我々は、途上国の人的、制度的、技術的能力の強化を支援する国際協力の役割を再確認する。

28. 我々は、関連するSDGs、KMGBF、UNCCDといった戦略的枠組、そして自主的にG20の目標達成に貢献するため、実行可能かつ適切な場合には、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチを通じて林野火災の影響を受けた地域や採掘により劣化した土地を回復することの重要性を認識する。

29. 我々は、「G20土地の劣化の減少及び陸域生息地の保全強化に関する世界イニシアティブ」(G20土地イニシアチブ)への支持を再確認し、サウジアラビア、イタリア、インドネシアを含む過去の議長国の作業を踏まえ、自主的に2040年までに土地劣化を50%減少させるというG20の野心への貢献を認識する。この文脈において、我々は、インド議長国によるガンディナガル実施ロードマップ(GIR)、ガンディナガル情報プラットフォーム(GIP)等の文書、及び大要の発表に留意する。我々は、このような文書やイニシアティブの作成におけるインド議長国の努力に感謝し、これらの議長国によるイニシアティブの実施のため必要に応じて自主的に貢献し得ることに留意する。

30. 我々は、生物多様性の損失を悪化させてきた望ましくない変化の要因が減少し、あるいは反転するような持続可能な開発を達成するために、世界的、地域的、国内的に緊急の政策行動が必要であることを認識する。この観点から、我々は、IPBESが2019年に発行した「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」で強調されている、生物多様性損失の直接要因(土地や海の利用の変化、生物の直接搾取、気候変動、汚染、外来種の侵入等)と間接的な要因に留意する。

31. 我々は、KMGBFに沿って、2030年までに、劣化した陸域、内陸水域、海域及び沿岸域の生態系の少なくとも30%の地域が効果的な回復下にあることを確保し、陸域及び内陸水域、並びに海域及び沿岸域の少なくとも30%が効果的に保全及び管理されることを確保及び可能にすること、その際、このような地域において適切な場合に行われる持続可能な利用は、保全の結果と完全に整合することを確保することについてのコミットメントを再度表明し、他の国々にも、同様のことを行うよう促す。我々はまた、KMGBFに沿って、侵略的外来種による生物多様性と生態系サービスへの影響に対処することにコミットする。我々は、あらゆる汚染源からの汚染のリスクと悪影響を、生物多様性と生態系の機能及びサービスに有害でない水準まで削減することにコミットする。我々は、科学に基づき、食料安全保障や生活を考慮しつつ、環境中に流出する過剰な栄養素と、農薬及び有害性の高い化学物質による全体的なリスクを少なくとも半減し、プラスチック汚染の防止、削減、除去に向けて取り組むことを含め、そうするためのKMGBFのコミットメントを想起する。我々は、KMGBFのコミットメント及び関連するCBDCOP15の決定を想起し、遺伝資源及び遺伝資源に関するデジタル配列情報の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を確保するために、適用される国際的な取得の機会と利益配分に関する文書に沿って、適切な場合には、あらゆるレベルにおいて、効果的な法律上、政策上、行政上の措置及び能力構築の措置をとる。我々は、生物多様性を向上させる持続可能な生物多様性に基づく活動、製品及びサービスと、地域社会及び先住民による慣習的な持続可能な利用の保護と奨励等を通じて、野生種の管理及び利用が持続可能であることを確保することによって、人々、特に脆弱な状況にある人々及び生物多様性に最も依存している人々に社会的、経済的及び環境的な恩恵をもたらすことにコミットする。KMGBFに沿って、我々は、農業、養殖業、漁業及び林業が営まれている地域が、持続可能な集約化やアグロエコロジー及びその他革新的なアプローチなどの生物多様性に配慮した活動の適用の大幅な増加などを含め、特に生物多様性の持続可能な利用を通じて、持続可能に管理されることを確保し、これらの生産システムの強靭性と長期的な効率性と生産性、また食料安全保障に貢献し、生物多様性を保全・回復し、生態系の機能及びサービスを含む自然の寄与を維持することにコミットする。

32. 我々は、2030年までに、生物多様性とその多様な価値が全てのセクターと政策にまたがって完全に統合されることを主流化し、確保し、全ての関連する公的な活動及び民間の活動と財政及び資金フローをKMGBFに徐々に整合させるというKMGBFのコミットメントを想起する。我々は、企業や金融機関が生物多様性の損失を止めて反転させるために果たすことのできる積極的な役割を認識する。我々は、KMGBFに沿って、企業が生物多様性への負の影響を漸進的に削減し、正の影響を増大させ、生物多様性に係るリスクを削減し、持続可能な生産パターンを確保するための行動を促進することを奨励及び実現することにコミットし、G20生物多様性条約締約国はさらに、大企業や多国籍企業、金融機関が、生物多様性へのリスク、依存関係、影響を、要求事項を含めて透明性をもって開示すること、持続可能な消費パターンを促進するために消費者に必要な情報を提供すること、アクセスと利益共有の規制と措置の遵守について報告することを確実にすることをコミットする。我々は、自然関連財務情報開示に関する作業の重要性を認識し、開示の枠組みを開発するための複数の努力に関心を持って留意するとともに、持続可能性の基準を精緻化するための協力を奨励する。特に、自然関連財務情報開示タスクフォースの活動に留意する。

33. 我々は、資源動員を迅速に開始し、持続させるとともに、枠組みの実施のために資源を拡大し整合させる必要性を再確認する。我々はG20のCBD締約国はCBD第20条に関連し、効果的で、適時かつ容易にアクセスできる方法で、国内、国際、公共及び民間の資源を含む、あらゆる資金源からの資金の水準を実質的かつ段階的に引き上げるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、KMGBFの資金に関するゴールとターゲットが達成されることを明確にするため、他の主体と同様にG20メンバー以外にもこの作業に貢献することを奨励する。G20のCBD締約国は、KMGBF及びNBSAPsのゴール及びターゲットを完全に実施するためには、2030年までに少なくとも年間2,000億米ドルを動員することが必要であることを再確認する。このゴール及びターゲットには途上国、特に後発途上国、島嶼国、及び経済移行国に対する、政府開発援助、及び先進締約国の義務を自主的に引き受ける国々からの生物多様性に関する国際的な資金を、2025年までに少なくとも年間200億米ドル、2030年までに少なくとも年間300億米ドルに増加させるコミットメントも含む。この文脈において、我々はさらに、民間資金を活用し、ブレンディッド・ファイナンスを推進すること、新規かつ追加的な資源の調達のための戦略を実施すること、民間セクターに対して、インパクト・ファンドや生態系サービスへの支払いを含むがこれに限定されない他の手段を通じて、生物多様性に投資することを奨励することにコミットする。我々は、あらゆる資金源からの貢献の重要性に留意しつつ、地球環境ファシリティ(GEF)内へのグローバル生物多様性枠組基金(GBFGBF基金)の設立を歓迎し、2023年8月の成功裏の立ち上げに向けて協力していく。また我々は、NBSAPアクセラレーター・パートナーシップ、自然と人々のための高い野心連合2.02.0、レガシー・ランドスケープ基金、昆明生物多様性基金、生物多様性日本基金、これらに限定されない新たなイニシアティブを歓迎し、生物多様性の資金ギャップを解消し、KMGBFの効果的な実施のために適切かつ予測可能な資源を適時に得て利用する観点から、官民のドナーにこれらへの貢献を奨励する。我々は、GEFの第8次増資を歓迎し、GEFに対し、容易かつ効果的な資金アクセス手続きの確立を含め、資金の充実性、予測可能性及び時宜を得た流れを確保するために、その運営を更に改革することを要請する。我々は、全てのCBD締約国と協力し、指標を含むKMGBFの計画、モニタリング、報告、レビューのメカニズムの完成を支援し、実施することにコミットする。我々は、CBDCOP決定書15/7において、途上国におけるKMGBFの実施、持続可能な開発及び公正な移行を支援する目的に適合したものとするため、グローバルな金融構造と国際金融機関の抜本的な変革を求めたことを想起する。我々は、SDGs達成に向けたMDBsの長期的支援の重要な役割を再確認する。

34.CBD締約国であるG20メンバーはまた、2025年までに補助金を含む生物多様性に有害なインセンティブを特定し、割合に応じて、公正、公平、効果的かつ衡平な方法で、それらを廃止、段階的廃止、または改革し、最も有害なものから開始し、2030年までに少なくとも年間5,000億ドルを大幅にかつ漸進的に削減し、生物多様性の保全と持続可能な利用のために有益なインセンティブを拡大するという我々のコミットメントを再確認する。

35. 我々は、途上国が直面する特有の課題を想起し、効果的な実施のためのニーズを、特に途上国において満たすために、南南協力、南北協力、三角協力などを通じて、能力の構築及び開発を強化し、イノベーション及び技術・科学協力の開発とアクセスを促進し、生物多様性の保護、保全、持続可能な利用及び回復のための共同技術開発及び共同科学研究プログラムを促進し、枠組みのゴールとターゲットの野心に見合った科学的研究とモニタリング能力を強化することに尽力する。G20のうちCBD締約国はまた、KMGBFのターゲット20に明記されているように、技術へのアクセスと技術移転を強化することに尽力する。

持続可能かつ統合的な水資源管理

36. 我々は、気候変動がもたらす干ばつや洪水の増加や、持続不可能な水資源管理、持続不可能な需要、生態系の劣化、汚染、及びそれらが水への公平で持続可能なアクセスにもたらすリスクといった世界的な水ストレスの増大と水質の悪化に懸念を抱いている。我々は、国連総会決議76/153「安全な飲料水と衛生に対する人権」を想起する。我々は、また、水、公衆衛生、衛生が持続可能な開発の基本であり、経済発展、健康、女性のエンパワーメントに不可欠で、コミュニティを貧困から脱却させるために必要であることを認識している。我々は、水資源の持続的管理に関する世界的な取組が増加しているが、2030年までにSDG6の飲料水、公衆衛生、衛生の目標を達成するためには、加速的な行動が必要であることを強調する。私たちは、SDG6及び2030アジェンダの水関連目標を達成するための行動を強化し、SDG6グローバル・アクセラレーション・フレームワークのイニシアティブを高く評価しつつ検討することにコミットする。我々は、水資源の持続不可能な消費を防止し、持続可能な統合的水資源管理を実施するために行動をする。更に、河川及び湿地の回復、生物多様性の損失の阻止及び回復、土地の劣化への対処、水質の回復を通して、水に関連する生態系の劣化を防止し、回復させることを決意し、持続可能な農業や土地を利用するセクターの慣行の実施を推進する。我々は、地域社会や先住民族を含む包摂的な関与の必要性を訴えながら、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチ、及び持続可能な新技術の開発を通した、水質改善や水関連の災害や気候変動に関連するリスクを軽減するための行動を取ることにコミットする。

37. 我々は、水に関する地球規模の協力とセクター間の行動を強化することの重要性を強調し、202320232023年国連水会議での討議を歓迎する。我々は、世界の水問題の解決を目指した積極的な行動に貢献する国連水特使の早急な任命を求める。また、UNWaterの役割を強化し、国連による統合的なアプローチを確実にし、9月に開催予定の2023年SDGサミット、COP28、さらには今後の定期的な水に関する国連の会議等、関連する国連プロセスにおける水の主流化を加速させることの重要性を強調する。我々は、流域規模で適切な水準での持続可能で強靭な統合的水資源管理を強化するための優良事例とイノベーションの共有を含め、多様なパートナーやステークホルダーとの協力と連携を強化することを明言する。我々は、G20水対話を通じた知識の共有と協力の機会を特定させる支援をさらに拡大する。

38. 我々は、水、エネルギー、食料、生態系の相互関係の重要性を認識する。従って、我々は、河川流域レベルを含む全てのレベルにおいて、また、適切な場合には国家間の協力を通じて、セクターを超えた統合的な計画と水資源の持続可能な管理の必要性を強調する。この文脈において、我々は、水関連問題に対する協力の強化における国境を越えた対話の役割をさらに強調する。さらに我々は、流域規模を含む全ての適切なレベルでの協力、相互に合意された条件での情報交換、持続可能な水管理のための共同努力の拡大がもたらす利益を認識する。我々は、水資源を持続的に管理するための統合された分野横断的なアプローチのために、特に、女性と女児、先住民族、地域社会、不利な立場にある/恵まれないコミュニティ、若者、こども、高齢者及び障害者のために、パートナー及びステークホルダーの能力構築を促進する。我々は、気候変動と環境問題に対して強靭で包摂的な開発のために、共同での活動を表明する。我々は、異常気象による水資源と脆弱なコミュニティへの影響を緩和するための早期警戒システムと災害リスク軽減戦略の開発を提唱する。我々は、水管理改善のために持続可能なインフラの利点を強調する。この文脈において、我々は、先住民族や地域社会との包摂的な関与の重要性を改めて主張する。

39. 我々は、持続可能で統合的な水資源管理、食料・栄養・エネルギーの安全保障の強化、予防・緩和・適応を含む洪水・干ばつ管理、安全な飲料水の供給・衛生管理の確保を通じて、責任のある水管理を強化する必要があることを強調する。我々は、計測、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチ、持続可能な技術の採用、及び参加型アプローチを通して、水の利用効率を喫緊で促進させる必要性を重視し、それらの優良事例を共有することを促進する。さらに我々は、世界中の水が不足する状況下での水保全の重要性を再確認し、雨水利用、地下水の人工涵養、水域の保護・持続可能な管理と回復、帯水層管理、処理水の安全な再利用とリサイクル等の対策を促進する。

40. 我々は、G20における水に関する対話を進めるために、G20水プラットフォームを通して共有される、この分野におけるG20メンバーの優良事例をとりまとめた議長国に感謝する。

海洋の保護と保全、持続可能で強靭なブルーエコノミー/海洋を基盤とした経済の推進

41.我々は、クリーンで、安全で、健康的で、生産的な海洋と、回復力のある沿岸・海洋生態系とその生物多様性の重要性を強調する。我々は、健全な海洋が、特に沿岸地域や小島嶼開発途上国において、海洋に直接的または間接的に依存する少なくとも30億人に生計を提供する、持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済も提供することを認識する。

42.我々は、国連海洋法条約の下の国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する協定が採択されたことを歓迎し、その早期発効と実施を全ての国に求める。我々は、公海を含む国家管轄権外区域のガバナンスを強化する上で、本協定が重要であることを強調する。我々は、生物多様性の損失を阻止し反転させるという我々の集団的なコミットメントを達成するために、昆明・モントリオール生物多様性枠組及びその他の関連協定と補完的に、本協定が極めて重要な役割を果たすことを認識する。

43. 我々は、国際海底機構(ISA)の文脈において、ISA理事会決定ISBA/28/C/24を考慮に入れつつ、国連海洋法条約の下で求められているように、当該活動により生じ得る有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保する深海底鉱物の開発に関する明確かつ強固で効果的な規制の枠組みの策定に関与することにコミットする。

44.我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダの持続可能な開発目標14(SDG14)及びその他の関連する目標・ターゲットに反映されているように、海洋、海、海洋資源を保護、保全、回復、持続可能に利用するための取組を加速している。この点に関し、我々はさらに、持続可能な開発のための海洋、海、海洋資源の保護、保全、回復、持続可能な利用において大きな資金ギャップに直面していることに留意し、この文脈において、あらゆる資金源からの持続可能な資金を拡大する可能性と必要性を認識する。我々は、SDG14の包括的な実施を進展させ、国際的な舞台で海洋問題をさらに高めるため、2025年にフランスで開催され、コスタリカが共同議長を務める次回の国連海洋会議に期待を表する。

45.我々は、確固たる証拠と科学を活用し、沿岸・海洋生態系とその生物多様性を保護、保全、回復、持続可能な形で利用し、持続可能なブルーエコノミー/海洋経済への公正かつ包摂的な移行を支援するというコミットメントを改めて表明する。この観点から、我々は、各国の状況、それぞれの能力及び優先事項に合わせて、我々の取組を強化することをコミットする。我々は、2030年までに陸域、内陸水域及び沿岸・海洋地域の少なくとも30%が効果的に保全・管理されることを確実にし、可能とするための緊急行動をとること、並びに「国連生態系回復の10年」及び「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(2021〜2030年)を支援することを含む、昆明・モントリオール生物多様性枠組の下で設定されたミッション、目標及びターゲットを達成するための我々のコミットメントを再確認する。我々は、海洋及び沿岸の生物多様性と生態系の保護、保全、回復、持続可能な利用を改善し、これが、自然の炭素吸収源として気候変動に対する回復力を構築し、水質を改善による汚染レベルの低減等、複数の利益をもたらすことを認識する。

46.我々は、国際協力を強化し、科学のギャップに対処し、伝統知識の保護と包摂を促進しつつ、コミュニティの関与を主流化し、先住民族を関与させ、知識とデータの共有、能力強化、衡平な利益配分、技術開発・展開・普及を強化することを決意する。各国間の科学的協力のシナジーをさらに特定する。

47.我々は、『変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書』を想起し、海洋が世界の炭素循環に重要な役割を果たしていることを認識する。マングローブ林、海草藻場、サンゴ礁、コンブ場、泥炭地、湿地帯、干潟を含む健全な沿岸生態系及び海洋生態系は、生物多様性の損失を阻止し反転させるだけでなく、天然の炭素吸収源として、気候変動の緩和に不可欠である。さらに我々は、このような生態系が、高潮や高潮に対する自然の障壁として機能し、海水の浸入を抑制し、気候変動に対する強靭性と適応に寄与することを認識する。我々は、G20メンバー国及びその他の国が、これらの生態系の保全と回復を拡大・加速するための既存のイニシアティブに参加することを歓迎し、また、沿岸インフラ及びコミュニティの強靭性の強化を含む、生態学的及び社会経済学的な利益を認識した上で、他の国々が参加することを求める。我々は、海洋を活用した気候の緩和と適応のための研究開発及び技術革新に関する協力を強化することにコミットする。

48.我々は、海洋ごみとプラスチック汚染を含む廃棄物の環境への流出が、特に沿岸及び海洋生態系とその生物多様性に重大な影響を及ぼすだけでなく、人間の健康に関連するリスクをもたらすことを認識する。我々はさらに、海洋ごみやプラスチック汚染の主な起源は陸域にある一方で、ゴーストギアとして知られる、放棄、遺失、その他の理由で廃棄された漁具を含む、海域を起源とするものについても対処されるべきであることを認識する。G20海洋ごみ行動計画、その実施枠組、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンに基づき、我々は、海洋ごみへの取組を強化することを決意する。我々は、インドが調整し、日本が支援したG20海洋プラスチックごみ対策実施枠組に関する第5次報告書を歓迎し、G20以外の国や他のパートナー、ステークホルダーと協力し、世界レベルで行動する我々のコミットメントを再確認する。我々は、海洋ごみの量と流れに関する確かなデータの作成と共有を通じて、透明性をさらに促進する。我々は、資源効率と循環経済アプローチ及び廃棄物の環境的に健全な管理を含む、プラスチックの持続可能な消費と生産を強化し、促進することにコミットする。

49. 我々は、プラスチック汚染を終わらせる決意を強固にし、2022年3月に採択されたUNEP/EA.5/Res.14決議を歓迎する。同決議は、海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を作成するため、政府間交渉委員会(INC)を設立した。我々はさらに、2024年末までに作業を完了するとの野心をもって、交渉において建設的かつ包摂的な役割を果たすことにコミットする。我々は、特に「環境と開発に関するリオ宣言」の原則や各国の状況や能力を考慮しつつ、プラスチックのライフサイクル全体に対処する包括的なアプローチを取ることの重要性を強調する。この点に関し、我々は、INCの第2回会合の結果と、委員会議長に与えられたマンデートを歓迎する。我々は、2023年11月にケニアのナイロビで開催される予定の第3回会合において、有意義で建設的、かつ包摂的な参加にコミットする。

50. 我々は、政府間海洋学委員会の「海洋空間計画に関するMSPグローバル国際ガイド」に留意し、適切な場合には、沿岸国の利益を考慮し、二国間及び多国間の協力を通じた包括的な海洋空間計画(MSP)の重要性を認識する、海洋・沿岸生態系の保全、保護、回復、持続可能な利用を確保し、海洋の気候適応・緩和の可能性を高める一方で、海運・港湾、沿岸・海洋観光、漁業、養殖業、洋上再生可能エネルギーに関連するようなブルーエコノミー/海洋経済活動のバランスをとる。我々は、持続可能な海運慣行を支援することの重要性を強調し、この観点から、船舶から排出される温室効果ガス削減に関する2023年IMO戦略を想起する。

51.我々はさらに、漁業者の安全、健康、福祉、及び海上における効果的なコミュニケーション・メカニズムを支持する。我々は、漁業における適正な労働条件を提唱し、生息地と種の両方を含む海洋生物多様性の保護、保全、回復、及び持続可能な利用に貢献する生態系に基づく漁業管理アプローチを通じて、漁業資源の持続可能かつ透明性のある管理を促進する。我々は、海洋環境に影響を与える犯罪を防止しこれと闘うこと、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止・抑止・排除、及び破壊的漁法を国際法に則り撲滅するための努力を強化することを決意する。我々はまた、持続可能な漁業と海洋資源の利用への貢献として、WTO第12 回閣僚会議において採択された漁業補助金に関する協定を歓迎すると共に、WTOの開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国に対する適切かつ効果的な特別かつ異なる待遇は、交渉の不可欠な一部であるべきことを認識しつつ、現行の協定の上に過剰能力と過剰漁獲に貢献する特定の形態の漁業補助金に関する追加的な規則を構築することを期待する。

52.南極条約体制との関連において、我々は、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の下で、利用可能な最良の科学的根拠に基づき、特に東南極、ウェッデル海、および南極半島西岸において、追加的な海洋保護区(MPA)を設置することを含め、CCAMLR条約地域に代表的な海洋保護区システムを確立するという長年のコミットメントを全面的に支持する。

53.我々は、2023年5月21日にムンバイにおいて、持続可能な海洋資源管理、海洋を活用した気候変動の緩和と適応、持続可能な金融の拡大における優先行動を強調するための「海洋20対話」が開催されることを歓迎する。我々は、沿岸・海洋汚染の防止と対策するにあたって、コミュニティの積極的な参加、自然資源の持続可能な管理と効率的な利用、持続可能なライフスタイルを促進する先住民の、また伝統的な知識システム、国際協力、科学コミュニティや民間セクターとの協力の重要性を認識する。また、G20議長国であるインドが主導し、2023年5月21日に実施された世界的な海岸清掃活動のような、実践的かつ行動指向のイニシアティブにより、国際協力を通じて、緩和と並行して提供されるデータ収集とモニタリングの貴重な機会を歓迎する。

54. 我々は、「持続可能で強靭なブルーエコノミーへの移行の加速」と題された技術的な研究開発における議長国の努力に感謝する。我々は、各国の状況や優先順位に基づき、G20メンバーが自主的に実施することができる別添の「持続可能で強靭なブルーエコノミー/海洋経済のためのチェンナイ・ハイレベル原則」を採択する。

資源効率性と循環経済の推進、汚染の防止及びそのリスクの最小化

55. 我々は、資源効率性と循環経済は持続可能な開発を達成するために活用できる重要なツールであり、持続可能な消費と生産及び気候変動、生物多様性の損失、土地劣化と汚染に対する取組に大きく貢献することを認識する。我々は、これらの環境目標及びSDG12とその他の関連する持続可能な開発目標を達成するため、本分野における行動を推進する2021年のG20ビジョンを想起する。このビジョンを実現するために、我々は国の優先事項と政策に応じて、関連する行動を後押しする。我々は、適切な行動をとり、持続可能な発展とライフスタイルを推進し、バリューチェーンにわたって持続可能な行動を拡大することの重要性を認識する。また我々は、UNEA4/1決議に言及されたとおり、経済成長から環境劣化及び一次資源消費を切り離すことを追求するため、関連する国家政策や持続可能な開発のための戦略及びセクター毎の政策等を策定する際、持続可能な生産と消費を実現するために方法や政策を検討する必要性に留意する。また、我々は、人々が持続可能な消費を選択することを推奨し、可能にできるよう、取り組んでいる。生物多様性条約の締約国であるG20メンバー国は、人々が、2030年までに持続可能な消費選択をし、公平なかたちで、消費による地球規模のフットプリントを削減できるよう、また推奨されるよう、確実にするとのコミットメントを再度強調する。我々は、この文脈において、途上国が直面する特定の課題を認識する。

56. 我々は、鉄鋼セクターは、特に発展途上国において包括的な経済発展に重要である一方、その環境フットプリントが関心事となっており、今後も関心事であり続けることを認識する。我々は、鉄鋼が毀損することなくリサイクル可能であり、民間セクターとの協力及びより体系的な鉄鋼のリサイクルを含む製品設計や材料効率の改善を実現することによって、更なる循環経済に貢献するために有用であることに留意する。従って、我々は、当該セクターからの温室効果ガス排出を削減し、環境への影響を低減するために、各国の事情を考慮しつつ、適切な行動をとる必要性を認識し、また適切な行動をとる。この文脈において、我々はこの分野の関連文書を作成した議長国に感謝する。

57. 我々は、国又は国内の状況に応じて拡大生産者責任(EPR)が導入される場合、EPRが循環経済を促進し、持続可能な開発目標を達成するための重要な手段の一つであることを認め、従って、我々は、適切な場合には国内のEPR制度及び関連する国内政策措置の実施を強化することを追求する。この文脈において、我々は、この分野における関連文書を作成した議長国の努力に感謝する。

58. 我々は、農業その他の有機性廃棄物、及び最も適切な回復手段である場合には劣化した土地での利用に適した植物を含む、循環型かつ持続可能なバイオエコノミーの推進に活用しうる、多様で持続可能なバイオ原料を認識する。この文脈において、我々は、この分野における関連文書の作成における議長国の努力に感謝する。

59. 我々は、資源効率性と循環経済を推進する上での産業界の役割を認識する。また、資源効率性と循環経済を強化する上で、ビジネスがそのバリューチェーンを通じて重要な役割を果たしうることを認識し、我々は、バリューチェーン全体にわたる関連情報の透明性を確実なものとするべく、自発的に、かつ/または、国又は国内の規則に従って、行動を拡大することの重要性を認識する。我々は、産業界における資源効率性と循環経済の推進のための、産業界により先導される資源効率・循環経済産業連盟(RECEIC)の立ち上げにおける議長国インドの努力に感謝する。我々は、シナジーを活用し、資源効率性と循環経済に関する行動を強化するために、RECEICとの連携を検討するようG20資源効率性対話に招請する。

60. 我々は、G20資源効率性対話(G20RED)へのコミットメントを再確認し、過去のG20議長国による関連イニシアティブに基づき、資源効率性及び循環経済に関する我々のコミットメントに鑑み、本年末までに2021-2023年のロードマップを更新するようG20資源効率性対話に要請する。

61. 我々は、廃棄物ヒエラルキーの適用や、不法な廃棄物の越境移動の防止等により、廃棄物の発生抑制、これが不可能である場合にはリデュース、リサイクル、リユースを通じ、2030年までに廃棄物の発生を大幅に削減するというコミットメントを再確認する。この文脈で、国連総会決議77/161に沿って、ゼロ・ウェイスト・イニシアティブにより生じた機会に留意する。また、我々は、環境上適正な廃棄物管理の拡大のための能力強化について、途上国を支援する必要性を認識する。

62. 我々は、均衡のとれたかたちで、人間の健康と環境を守り、持続可能な発展の実現を助け、自然と調和し生きるというビジョンを達成するため、汚染に取り組むことにコミットする。我々は、化学汚染を防止し、またこれが不可能である場合には関連するリスクを最小化するために、一層積極的に取り組む。UNEA決議5/7に沿って、我々は、ライフサイクル・アプローチと持続可能な消費と生産を達成する必要性を考慮に入れた上で、UNEA決議5/8に準じた科学・政策パネルの設立を目指し、またICCM5にて提示される枠組みの実施措置を取り入れ、野心的で改善された2020年以降の化学物質と廃棄物の適正管理ための枠組みの策定に向け、共に努力する。

63.G20メンバー間の討議では、IPCCの最新報告書の見解や世界的なモデル経路等、緩和に関する問題が取り上げられた。一部のG20メンバーは、遅くとも2025年までに排出量を世界的にピークアウトさせ、2019年比で2035年までに排出量を60%削減する必要性を強調した。気候シナリオとモデルのギャップ、枯渇しつつあるカーボンバジェット、歴史的排出量、現在の排出量、予測排出量が議論され、2030年までにメタンを含むCO2以外の温室効果ガスを削減するための行動の必要性が強調された。また、ネット・ゼロを達成するためのクリーンエネルギー技術への投資要件や、低炭素経済への世界的な転換についても議論された。さらに、途上国がNDCを実施するための資金需要、金融システムの変革、先進国からの支援に関するパリ協定第2条第1(c)と第9条等、資金調達の問題が議論された。また、一部のG20メンバーは、パリ協定の気温目標を達成するためには、排出削減と除去の両方が重要であると述べた。一部のG20メンバーは、先進国が2040年までにネット・ゼロを達成する必要性を述べた。

64. 2023年7月22日にゴアで開催されたG20エネルギー大臣会合を想起し、クリーンエネルギーへの移行に向けた取組を加速させることの緊急性が認識された。議論では、特に気候エネルギー・ネクサス、再生可能エネルギーの規模拡大の更なる加速、再生可能エネルギーキャパシティの3倍増、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズダウン、エネルギー効率の改善率の世界全体での2倍増、既に利用可能な低排出・ゼロエミッション技術の規模拡大、炭素除去・排出削減技術、エネルギーミックスの多様化、ネット・ゼロ・エネルギー・システム、低コストなファイナンスへの途上国のアクセス等、様々な問題が取り上げられた。G20の指導的役割の重要性、最近のCOP決定における緩和コミットメントの進展が、1.5℃を維持するという文脈で強調された。環境気候持続性作業部会がエネルギー問題を議論するマンデートについては、エネルギー移行作業部会が別個に存在することから、G20メンバー間で意見が分かれた。また、エネルギー移行の問題や、それをこの文書にどのように反映させるかについても、意見が分かれた。G20メンバーは、それぞれの立場を改めて表明した。

65. 一部のメンバーは、気候行動を理由とする偽装された貿易制限や炭素国境調整措置(CBAM)の問題について審議の必要性を表明し、数か国のメンバーは、同問題に関して意見が一致しなかった。

地政学的課題

66. ウクライナにおける戦争は世界経済に更なる悪影響を及ぼしている。この問題に関して議論が行われた。我々は、3月2日の国連総会決議ES―11/1(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)においてロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた自国の立場を改めて表明した。ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。G20が安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。*1* *2*

67. 平和と安定を守る国際法と多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われている全ての目的及び原則を擁護し、武力紛争における市民及びインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対する取組、外交・対話が極めて重要である。今日の時代は戦争の時代であってはならない。

結語

68. 2023 年におけるインド議長国の献身とリーダーシップに心から感謝の意を表する。全てのG20メンバー、招待国、国際機関の貢献に感謝する。我々は、ブラジルで再び会合し、2024年に予定されているG20議長国への全面的な支持を表明し、環境と気候の持続可能性の優先事項に関する作業を継続することを期待する。

{*1* ロシアは、パラ66と、様々な国の環境・気候政策及びその実施の道筋を反映していない不一致のパラグラフが含まれていることから、この文書が議長総括であると認識する。ロシアは全会一致した表現を支持する。ロシアは会合中、ウクライナ情勢、地政学的緊張、制裁、環境・気候に関する特定の議題について、独自の見解を表明した。}

{*2* 中国は、G20ECSWGは安全保障問題を扱う適切なプラットフォームではないとし、地政学的な内容を含めることに反対した。}



2023年G20環境・気候大臣会合成果文書・議長総括添付文書

持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済のためのG20ハイレベル原則

はじめに

持続可能な開発のための2030アジェンダ、特にSDG14、そしてUNFCCCとパリ協定、生物多様性条約、昆明・モントリオール生物多様性枠組、UNCLOSの下でのBBNJ協定、国連海洋会議のリスボン宣言、プラスチック汚染に関するUNEA決議、漁業補助金に関するWTO協定、持続可能でレジリエントなブルーエコノミーのためのG20ハイレベル原則」は、持続可能な経済成長、海洋環境の保護、保全、回復、持続可能な利用、社会的公平性、男女平等、人的発展に焦点を当てたものである。海洋とその資源の重要性を認識し、気候変動、海洋汚染、持続不可能な開発、海洋環境に影響を与える違法行為から、海洋環境と生物多様性への脅威が増大していることを踏まえ、G20ハイレベル原則は、途上国への適切な支援を考慮しつつ、各国の状況や優先事項に応じて、G20メンバーが自主的に実践するものである。

原則1. 海の健全性の優先:海洋汚染への対処、生物多様性の損失の阻止と反転、沿岸及び海洋生態系の保全

プラスチック、大気汚染物質、海洋部門に由来するものを含むその他の残留性汚染物質、海洋環境に影響を及ぼす持続不可能な開発及び違法行為、気候変動、外来種等、あらゆる原因による沿岸及び海洋汚染は、生態学的及び社会経済的に重大な結果をもたらす沿岸及び海洋の生物多様性に対する脅威を増大させている。持続可能で強靭なブルーエコノミー/海洋経済は、国の状況や能力に応じて、生物多様性に配慮した取組を増やすことを含め、海洋生物多様性と沿岸・海洋生態系の健全性の保護、保全、持続可能な利用、回復に貢献するものである。また、2030年までに陸域、内陸水域、沿岸域及び海洋域の少なくとも30%が効果的に保全・管理されることを確保し、それを可能にするための緊急行動をとること、及び国連海洋法条約の下での国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全と持続可能な利用に関する協定の実施等、昆明・モントリオール生物多様性枠組のゴールとターゲットの達成にも貢献するものでなければならない。持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済は、陸上及び海上での活動を含む、あらゆる種類の海洋汚染の削減にさらに貢献するものでなければならない。海洋環境等を含むプラスチック汚染に対する対策は、持続可能な消費と生産、経済における資源効率と循環性、科学的・社会経済的評価、廃棄物の環境的に健全な管理を含む包括的なライフサイクル・アプローチに基づいて行われるべきである。廃棄物の海洋投棄及び海洋排出は、海洋汚染防止のために適用される国際的義務と安全基準を厳守しなければならず、特に廃棄物の不法投棄及び海洋排出の防止と撲滅の重要性に留意する。

原則2. 海洋・気候の関連性の認識と対処

健全な海洋とその沿岸及び海洋生態系は、気候変動との戦いにおいて非常に重要である。この点で、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全のアプローチは、気候適応のための解決策を提供し、自然の炭素吸収源としての役割を果たすことによって、異常気象や海面上昇に対処する等のコベネフィットを提供することができる。気候変動の現在及び予測される影響は、ブルーエコノミー/海洋経済のほぼ全てのセクターに悪影響を及ぼし、地球の気候を安定させる海洋とその生態系の能力にも影響を及ぼす。持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済は、海洋と気候の相互連関を認識し、特に沿岸及び海洋生態系の保護、保全、持続可能な利用、回復によって、持続可能な海洋に関する行動を通じた気候変動の緩和と適応の機会を認識することが重要である。自然エネルギーを含む低GHG及びゼロのエネルギー源の可能性を最大限に活用し、海洋を活用した産業の持続可能性を強化し、海洋を活用した二酸化炭素の除去及び隔離の安全かつ効果的な利用の可能性に関する研究を、潜在的な機会や環境への影響の可能なリスクの防止を含めて推進する。同時に、既存の不平等に対処し、異常気象に対して脆弱な沿岸地域のコミュニティを支援する必要性を考慮し、持続可能でレジリエントかつ包摂的なブルーエコノミー/海洋経済は、気候変動の影響に対する沿岸地域社会とブルーエコノミー/海洋経済の適応能力を強化するために、科学、先住民の知識、地元の視点に基づいた、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチ及びその他の管理・保全アプローチ、技術を含む適応策を取り入れるべきである。

原則3. 社会的・世代間公平性とジェンダー平等の推進

ブルーエコノミー/海洋経済の戦略と政策枠組みは、社会的公平性、世代間公平性、ジェンダー平等を促進することが極めて重要である。女性やコミュニティ、先住民族が、適切な能力開発を通じて、計画、意思決定、実施プロセスに完全かつ効果的に参加し、持続可能なブルーエコノミー/海洋経済が提供する経済的機会から利益を得られるようにするためには、透明で包摂的なアプローチが重要である。さらに、先住民族、若者、女性を含む全てのコミュニティと個人は、ブルーエコノミー/海洋経済の持続可能性に貢献し、沿岸・海洋環境への悪影響を軽減する持続可能なライフスタイルを採用するようエンパワーされるべきである。

原則4. ブルーエコノミー/海洋経済への統合的アプローチに資する海洋空間計画(MSPMSP)の利用推進

持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済には、あらゆるセクターのあらゆるパートナーやステークホルダーの効果的な関与と参加が必要である。漁業、養殖業、港湾・海運業、海洋科学技術、エネルギー、観光業、その他の新興部門等の海洋部門は多様なニーズ、野心、環境への影響を抱えている。MSPMSPMSPは、海洋空間を管理するための科学的根拠に基づいた、協力的かつ参加型のアプローチであり、生態系内のあらゆる相互作用を認識し、多様な人間による利用のバランスをとり、海洋保護と保全の必要性を考慮するものである。このような生態系に基づく参加型の空間的アプローチを、沿岸国の利害を考慮しながら、国、準国家レベル、地域レベルで採用することは、(i)増加する人間活動の数、多様性、強度と、海洋の健全性、ひいては生態系サービスを提供し維持する長期的な能力とのバランスをとること、(ii)適切な生態学的、経済的、社会的、文化的視点を取り入れること、(iii)生態系のスケールで調整された科学と情報に基づく管理を支援することに貢献することができる。長期的に有効であるためには、海洋空間計画が気候の変化を考慮に入れ、強靭性を構築し、生物多様性の損失を阻止し反転させ、汚染と闘うことに貢献することが重要である。

原則5. 科学、技術、イノベーションの活用

持続可能で強靭なブルーエコノミー/海洋経済を創造するためには、科学者、公共団体、企業、研究機関の国際協力を基盤に、科学、技術、イノベーションの支援に協調して焦点を当てることが必要である。確かな科学に裏打ちされた、既存の、そして新たな技術に基づき、生態系や自然を活用した社会的なイノベーションは、海洋部門や産業が気候や海洋・沿岸環境に与える悪影響を最小化するための新たな解決策を生み出し、実行するのに役立ち、持続可能性、資源効率、循環経済に貢献することができる。また、今世紀半ば頃までに世界の温室効果ガス排出量ゼロ/カーボン・ニュートラルを達成し、気候変動の悪影響に対する強靭性の構築をし、沿岸・海洋生態系の保護・保全・持続可能な利用・回復を確保し、生物多様性の損失を阻止し反転させ、汚染を削減し、繁栄と持続可能な生活のための機会を創出する。

原則6. 先住民及び伝統知識の認識、保護、活用

沿岸・海洋環境の効果的な管理には、適切な場合には、先住民の、また伝統的な知識、文化、慣習を尊重し、それらを取り入れることが必要である。先住民の知識、また伝統的知識は、人間と海洋、沿岸・海洋生態系の関係を認識しながら、環境の持続可能性と天然資源の責任あるスチュワードシップを促進することができる。先住民の知識と伝統的知識を考慮し、公正で衡平な利益配分を促進することは、コミュニティのスチュワードシップ、包摂、参加型の沿岸・海洋環境の保全と持続可能な管理を促進するはずである。

原則7. ブルーエコノミー/海洋経済のモニタリングと評価メカニズムの確立と実施

海洋の広大な面積と幅広い海洋活動や利害関係者は、ブルーエコノミー/海洋経済活動の持続可能性をモニタリングし、評価する上で大きな課題となる。さらに、気候変動、生物多様性の損失、汚染のペースや規模、それらが沿岸・海洋環境に与える影響に伴う不確実性は、ブルーエコノミー/海洋経済の実施戦略の定期的な再評価と再編成を必要とするかもしれない。海洋・沿岸環境への悪影響を評価し、最小化し、緩和することを目的とした効果的なモニタリングと評価のメカニズムを、既存のものを活用することも含めて確立し、実施することは、包摂的で持続可能かつレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済のための意思決定に情報を提供する上で重要である。

原則8.共有の海洋課題に取り組むための国際協力の強化

海洋空間は本質的に相互につながっており、海岸線沿い、一国の海洋水域内、あるいは公海上や深海底で発生する活動は、遠く離れた海岸線沿いの沿岸及び海洋環境に影響を与える可能性がある。したがって、健全な海洋とその資源の保全と持続可能な利用を確保するためには、海洋保護区の設置やそのネットワークに向けた調整、その他の効果的な区域ベースの保全措置、能力開発、知識の共有、技術、共通のプロジェクトや投資、優良事例等を通じて、あらゆる適切なレベルでの政府間及び関連する国際機関間の強力な協力が必要である。

原則9. 海洋ファイナンスの強化

海洋保護、保全、持続可能な利用、沿岸・海洋資源の回復は、大きな資金需要に直面している。確立されつつあるブルーエコノミー/海洋経済分野での持続可能な成長には、途上国を含め、国内・国際、民間・公的といった資金源からの資金アクセスの強化、及び、適宜、沿岸・海洋環境を脅かす補助金を含む有害なインセンティブの特定、排除、段階的廃止、改革が必要である。加えて、UNFCCC UNFCCC UNFCCC UNFCCC 、パリ協定、生物多様性条約等の既存のメカニズムを、それぞれのマンデートに沿って、海洋関連の行動のために効率的かつ効果的に活用することは、海洋の生物多様性と生態系の保護、保全、持続可能な利用、回復のため、また気候変動の緩和と適応のために不可欠であり、持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済に貢献する。


議長国文書リスト

1.G20グローバル・ランド・イニシアティブを強化するための議長国ガンディナガル実施ロードマップ(GIR)とガンディナガル情報プラットフォーム(GIP)

2.鉱業の悪影響を受けた地域の回復に関する優良事例集

3.林野火災被災地の回復に関する優良事例集

4.水管理の優良事例

5.持続可能で強靭なブルーエコノミーへの移行の加速に関する技術的研究

6.G20海洋プラスチックごみ対策報告書―G20実施枠組に基づく第5次情報共有

7.鉄鋼セクターにおける循環経済に関する知識交換

8.循環経済のための拡大生産者責任に関する知識交換

9.循環型バイオエコノミーに関する知識交換

10.資源効率・循環経済産業連盟(RECEIC)