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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20開発大臣会合 成果文書及び議長総括

[場所] インド,ヴァラナシ
[年月日] 2023年6月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

G20開発大臣会合 成果文書*1*及び議長総括

全てのG20開発大臣は、パラグラフ1から9、及びパラグラフ12から14について合意した。

 我々、G20開発担当大臣は、インドG20議長国のテーマである「一つの地球、一つの家族、一つの未来」の下、2023年6月12日にヴァラナシで会合を行った。

2. 我々は、人々、地球、繁栄、平和及びパートナーシップに影響し、持続可能な開発目標(SDGs)についての何年もの進捗を逆転させる、他に類を見ない多元的な危機と課題の中、会合を行った。我々は、誰一人取り残さない、持続可能な開発のための2030アジェンダの完全かつ効果的な実施とSDGsの達成に対する我々のコミットメントを強く再確認する。我々は、持続可能な開発を国際協力のアジェンダの中心に位置付けることにコミットする。

3. 2030アジェンダの普遍性、不可分性及び一体性並びにその包括的で、遠大かつ変革的なSDGsの目標とターゲットを再確認し、我々は、2030アジェンダの適時、完全かつ効果的な実施及びSDGsの達成に向け、軌道に戻し進捗を加速させ、グローバル公共財の提供を可能にすることに貢献する、既存及び新規のG20の共同的な行動を推進すること、すなわち、社会的保護を通じたものを含め、あらゆる形態と次元における貧困と不平等を終わらせ、強靭な経済及び強固で持続可能かつバランスのとれた包摂的な成長のために協働すること、そして、グリーン及びブルーエコノミー並びに海洋活用型経済を育成し、生物多様性の損失を阻止し反転させ、天然資源を持続可能的に管理し、農業・食料システムを持続的かつ強靭にすべく変革し、栄養価の高い食品と健康的な食事へのアクセスを改善し、ジェンダー平等を促進し、包摂的かつ公平な質の高い教育を確保し全ての人の学習機会を促進し、働きがいのある人間らしい質の高い雇用を創出し、包摂的かつ持続可能な産業化を促進するとともにイノベーションを推進し、保健システムを強化かつより強靭なものにし、誰一人取り残さず、持続可能で、包摂的かつ公正な移行を世界的に実行することにより、我々の共同の未来を支えることにコミットする。我々はまた、全ての人々に機会を創出し、開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)や小島嶼開発途上国(SIDS)が直面する構造的な脆弱性と不均衡に対処するために、野心的で具体的かつ共同的なG20の行動を呼びかける。我々は、2023年9月のSDGサミットと2024年の未来サミットの成功のために有意義な貢献をするための取組を強化する。

4. 我々は、社会的及び経済的な発展は、我々の地球の限られた天然資源の持続可能な管理に左右されていることを認識しつつ、経済、社会及び環境の3つの側面における持続的な開発の達成に向けた統合的なアプローチを構築するG20の取組を、バランスのとれた統合的な形で強化することにコミットする。我々は、地方政府及び地域政府を含む各国政府、国際機関、民間セクターその他の非国家主体及び個人に対し、知識、専門的知見及びベストプラクティスを共有し、あらゆる資金源からの十分で手頃でアクセス可能な資金を動員するための国際的な協力及びパートナーシップを強化するべく、特に持続可能な開発のためのライフスタイルを受け入れることによって、持続可能な消費及び生産のパターンを促進することを奨励する。我々は、気候変動、生物多様性の損失、砂漠化、土地の劣化並びに水ストレス及び汚染が人間の健康と環境に及ぼす影響に対処する、気候に配慮した農業生態学的アプローチを含む、ごみゼロ、循環経済、資源効率性、その他の革新的なアプローチを追求することにより、開発途上国の科学、技術、教育及びイノベーションにおける能力を強化し、より持続可能な消費及び生産のパターンに移行するための生産性を向上するために、技術支援の供与を促進する。

5. 我々は、ジェンダーの平等なくして、持続可能な開発の達成は不可能であることを認識し、また、女性及び女児がその権利及び平等な機会を否定され続けていることを考慮し、年齢、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、多様な状況や条件にある全ての女性及び女児が(i)あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力及び虐待を受けることなく生活すること、(ii)質の高い安全な教育、経済、デジタル及び保健資源並びに社会的保護への平等なアクセスを確保すること、(iii)ケア労働を平等に分配し、手頃な価格のケア・インフラの利用可能性やアクセスのために投資を促進し、不平等な無償ケア労働及び家事労働の是正に対処すること、(iv)教育、技能訓練、栄養及び働きがいのある人間らしい仕事のための平等な機会を提供し、気候変動の緩和・適応にかかる行動及び防災等における、あらゆるレベルでのリーダーシップその他の意思決定の役割を担えるようにすること、(v)有害なジェンダー規範及び固定観念と闘うこと、並びに(vi)ジェンダー平等及び持続可能な開発を進めるための重要な道筋の1つとして、女性の権利に関する組織を支援することを可能とする政策及びイニシアティブにコミットし、この文脈で、誰一人取り残さないため、証拠に基づく公共政策及びプログラムを策定・強化するための細分類されたデータを収集・分析及び普及させることの重要性を再確認する。

6. デジタル・トランスフォーメーション及びデータの進歩が、あらゆる形態及び次元における貧困の撲滅、妊産婦及び小児の死亡率の削減、持続可能で強靭な農業・食料システム及び働きがいのある人間らしい仕事の促進、並びに普遍的な読み書き能力の達成などに関する多くのSDGsの達成を推進・支援し及び加速させ得る重要な手段であることを認識し、我々は、デジタル技術の促進、手頃な価格の接続性及び技術機器への公平なアクセス、国家間及び国内のデジタル格差並びにジェンダー間のデジタル格差及びデータ格差の是正、リテラシー、職業技能及び能力開発プログラムを通じたデジタル包摂性の向上、女性や若者が生み出すデジタル・ソリューション、製品及びツールの奨励、デジタル経済及びデジタルインフラに対する投資などを通じた、途上国が開発のためのデータを活用できるようにするための能力開発の支援、並びに、関連する課題とリスクに対処しながら、包摂的、開発指向かつ非差別的なデジタル・トランスフォーメーションを促進する国際協力を強化することを奨励する。

7. SDGs達成刺激計画に関する国連事務総長の提案に関する議論が国連で進行中であること、及び新たな国際的開発資金取決めのためのパリ・サミットが開催されることに留意しつつもSDGsの資金ギャップを認識し、増大する債務脆弱性に対処し、ブレンディッド・ファイナンス、デリスキングの手段及びその他の持続可能性に関連した資金ツールのような革新的資金調達メカニズムを含め、官民、国内外のあらゆる資金源から資金調達し資源を動員するに際して開発途上国が直面するボトルネックを取り除くことが、2030アジェンダの実施及びSDGsの達成に重要であることを再確認する。この観点から、我々はまた、特に開発途上国が持続的な開発を達成するために必要な、長期的で、負担可能で、アクセスしやすく、持続可能で、包摂的で、及び譲許的なものを含む資金調達を強化するため、国際協力の強化、国境を越えた課題の範囲と複雑さを踏まえた国際開発金融機関(MDBs)の強化及び進化、並びに国際金融機関(IFIs)やMDBs、地域銀行、金融機関及び民間部門を含む国際機関及び地域機関とのパートナーシップを強化する呼びかけを、再確認し、強調する。我々は、債務の透明性及び持続可能性を高めること、並びに予測可能かつ適時に、秩序だった方法で連携した、G20の「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の下で協調した債務措置を実施することの重要性を強調し、この文脈において、関連するG20ワークストリームとの協力を通じたものを含め、G20の取組の強化を呼びかける。我々はまた、2030アジェンダ達成の進捗を測定するための任意の統計枠組みの一つである持続可能な開発のための公的総支援(TOSSD)の貢献を認識する。

8. 世界が現在及びその他の喫緊のグローバルな危機と課題に効果的に対処し、これらを克服し、及びこれらから回復する最善の方法としての国際協力、多国間主義及び世界的な連帯への我々の揺るぎないコミットメントを改めて表明し、我々は、特に、市民社会、民間セクター及び学術界を含む全てのパートナー及びステークホルダーの協力、パートナーシップ及び貢献の拡大の必要性を強調するとともに、この観点から、南北協力、南南協力及び三角協力の強化の必要性を強調しつつ、パートナー国、国連システム及びその他の関連する国際機関との国際的なパートナーシップの重要性を強調する。

9. SDGsの達成へのG20の貢献を進展させる上でのG20開発作業部会(DWG)の重要な役割を強調し、また、G20の他のワークストリームと協調して、我々は、インド議長国によって進められたDWGと他のG20作業部会との間の緊密な連携及び調整を歓迎するとともに、特にLDCs及びSIDSを含む途上国において、包摂的な回復を促進するためのG20の行動の継続性及び有効性を確保するため、過去のG20の成果及び既存のイニシアティブに立脚することの重要性を認識する。

10. ウクライナにおける戦争は世界経済に更なる悪影響を与えている。この問題に関して議論が行われた。我々は、2022年3月2日に賛成多数で採択された国連総会決議ES―11/1(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)においてロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾の意を表明し、同国のウクライナ領土からの完全なかつ無条件での撤退を要求している国連総会及び国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた自国の立場を改めて表明した。ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難するとともに、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大並びに金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。我々は、G20が安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。*2*

11. 平和及び安定を守る国際法及び多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われている全ての目的及び原則を擁護し、武力紛争における市民及びインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取組及び外交・対話が極めて重要である。今日の時代は戦争の時代であってはならない。

12. 開発大臣は、DWGにおける取組を支持し、以下の成果文書を全会一致で採択した。

・ SDGs達成に向けた進捗の加速化のためのG202023アクション・プラン

・ 持続可能な開発のためのライフスタイルに関するハイレベル原則本日採択された成果文書は、2023年9月9-10日にニューデリーで開催されるG20サミットの宣言の附属文書として、首脳による検討のため提出される。

13. 我々は、インドが2023年のG20を主導し、開発アジェンダを運営・強化することに感謝の意を表する。この観点で、我々は、参加した全ての国際機関‐アジア開発銀行(ADB)、国際労働機関(ILO)、国際電気通信連合(ITU)、経済協力開発機構(OECD)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連事務総長技術特使事務所(UNSG-OSET)及び世界銀行グループ(WBG)の貢献を認識し、感謝する。

14. 我々は、2024年のブラジルのG20議長国、2025年の南アフリカのG20議長国が、G20DWGの共同的アジェンダを推進することを歓迎する。


{*1* ロシアは、パラグラフ10及び11への言及を理由に、この文書の共同成果としての位置付けから離脱した。}

{*2* 中国は、開発大臣会合の成果物にウクライナ危機への言及を含めるべきでないと表明した。}