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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20 議長総括及び成果文書 第1回G20財務大臣・中央銀行総裁会議

[場所] インド・ベンガルール
[年月日] 2023年2月25日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文] 

全てのG20の財務大臣・中央銀行総裁はパラグラフ1、2及びパラグラフ5から17についてアネックス1、2とともに合意した。

1. 我々、G20諸国の財務大臣及び中央銀行総裁は、2023年2月24、25日にインドのベンガルールにて会合した。インド議長国のテーマである「一つの地球、一つの家族、一つの未来」の下、我々は、国際的な政策協力を強化し、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長の確保に向け世界経済を導くことにコミットする。

2. 我々は、2023年2月6日の壊滅的な地震による南東トルコ全域での悲劇的な人命の損失と破壊に深く心を痛めており、トルコ国民と連帯する。また、壊滅的な地震により同様に影響を受けたシリア国民に対しても、深い同情を寄せる。遺族に対しても弔意を示す。我々は、既に提供されている人道的支援を評価し、メンバーと多国間機関に対し、復旧と復興のためのあらゆる支援の提供を継続することを求める。

3. *1* 2022年2月以降、我々は、ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることも目の当たりにした。この問題に関して議論が行われた。我々は、多数決(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)により採択された2022年3月2日の国連総会決議ES-11/1において、ロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた自国の立場を改めて表明した。ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。G20が安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

4. 平和と安定を守る国際法と多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われている全ての目的及び原則を擁護し、武力紛争における市民およびインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取組、外交・対話が極めて重要である。今日の時代は戦争の時代であってはならない。

5. 2022年10月の前回の会合以降、世界経済の見通しは緩やかに改善してきた。しかしながら、世界経済の成長は鈍いままであり、インフレ率の上昇、パンデミックの再燃、多くの新興・開発途上国(EMDEs)における債務の脆弱性を悪化させうる金融環境のタイト化を含め、見通しに対する下方リスクは根強い。したがって、我々は、成長を促進しマクロ経済と金融の安定を維持するための、よく調整された金融、財政、金融規制・監督及び構造政策の必要性を再確認する。我々は、引き続き、マクロ政策での協力を強化し、持続可能な開発のための2030アジェンダに向けた進捗を支援する。バリで我々の首脳により合意されたように、我々は、政策対応において引き続き機動的かつ柔軟であることの重要性を再確認する。我々は、必要とされる場合には、下方リスクを防ぐためにマクロプルーデンス政策を用いる。我々は、中期的な財政の持続可能性を維持しつつ、脆弱なグループに対する一時的で的を絞った財政支援を優先する。中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている。中央銀行は、インフレ予想の安定維持を確保し、各国間への負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う。中央銀行の独立性は、政策の信認を維持するために極めて重要である。我々は、供給サイドの政策、特に、労働供給を増加させ、成長を押し上げ、インフレ圧力を緩和する政策の重要性を認識する。我々は、2021年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認する。我々は、成長及び雇用創出の回復における、世界貿易機関(WTO)を中心とした、ルールに基づく、無差別で、公正で、開かれた、包摂的で、持続可能で、透明な多国間貿易体制の重要性を再確認し、保護主義と戦い、WTOの改革のための協調した取組を奨励するためのコミットメントを再確認する。

6. G20バリ首脳宣言に基づき、我々は、国連食糧農業機関と世界銀行が現在行っている食料不安に関するマッピング演習に期待する。我々は、G20インド議長国下のフレームワーク作業部会に対し、食料及びエネルギー不安によるマクロ経済のシナリオ、結果、及び影響、並びに、これらの世界経済や政策の在り方に対するインプリケーションについて作業するよう求める。我々は、各国固有の状況を考慮した気候変動及び様々な移行政策から生じるものを含む、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長(SSBIG)に対するマクロ経済のリスクの評価に関するG20財務トラックでの政策議論を深めていくことに期待する。

7. 国際開発金融機関(MDBs)は、開発資金において重要な役割を担っている。貧困削減やその他全ての持続可能な開発目標(SDGs)への焦点を維持しつつ、我々は、国境を越えた課題の範囲と複雑さ、それに伴う融資資源、知識支援、及び民間投資の促進に対する需要の増加を踏まえてMDBsが進化する必要性を認識する。我々は、この目的に向けて、MDBsの強化に取り組む。我々は、国別関与モデルの中で、ミッション、業務アプローチ及び財務基盤を進化させるための世界銀行のロードマップに留意し、他のMDBsに対し、同様の課題に対処するための取組について報告するよう求める。我々は、2023年の第3回会合におけるこの課題の検討のため、G20インド議長国から提案された専門家グループによる報告書を受け取ることを期待する。我々は、バリにおいてG20首脳から与えられたマンデートを前進させ、国際金融アーキテクチャー作業部会に対し、2023年春のMDBsからのアップデートに基づき、G20による「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告を実施するためのG20ロードマップをMDBsとともに策定するよう求める。我々は、2023年の第3回会合でロードマップを受け取ることを期待する。我々は、MDBsに対し、その長期的な財政的持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、自らのガバナンスの枠組の中で、勧告を実施するためのオプションを議論し、提案するための取組を強化することを求める。我々は、MDBsの、CAFパネルの勧告に沿った信用格付機関(CRA)との継続的な強い関与を支持する。我々は、国際復興開発銀行(IBRD)の2020年の投票権見直しに係る最終報告書を確認するとともに、2025年の投票権見直しを期待する。

8. 我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットを維持するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、IMFのクォータの十分性を再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに完了するよう、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でのIMFガバナンス改革のプロセスを継続する。我々は、強靱性・持続可能性トラスト(RST)の稼働と、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献によるRSTに対する約440億ドルに上るプレッジを歓迎する。我々は、SDRの自発的な融通あるいは同等の貢献による870億ドルに上る融資及び14億ドルのグラントのプレッジを歓迎し、最も資金を必要とする国々のために世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心を達成するため、全ての意欲ある国からの更なるプレッジを要請する。我々は、RSTの稼働とSDRチャネリングの進捗を引き続き監視し、脆弱国の高い借入ニーズを満たすため、貧困削減・成長トラスト(PRGT)の利子補給金や融資原資に対する更なるプレッジを要請する。我々は、予防的取極の見直しに期待する。我々は、IMFサーチャージ・ポリシーについて行われた議論に留意する。我々は、中央銀行デジタル通貨(CBDCs)の潜在的な導入や広範な普及のマクロ金融上のインプリケーションと、クロスボーダー決済及び国際通貨金融システムへの影響について、引き続き探求する。我々は、持続可能な資本フローの促進、及び現地通貨建て資本市場の発展によるものも含む、国際金融アーキテクチャーの長期的な強靭性を強化することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、資本フロー管理措置の活用のための国際枠組の整合的な実施について、その本来の目的に留意しつつ、国際機関との継続的な議論を期待する。我々は、その恩恵を活用し、波及効果から生じるものを含めてリスクを管理するため、資本フローのダイナミクスを引き続き監視する。我々はまた、気候変動関連政策が資本フローに与えうる影響に関する議論に期待する。

9. 我々は、低・中所得国の債務脆弱性に対処する緊急性を認識する。公的二国間債権者及び民間債権者による多国間の協調を強化することは、悪化した債務状況に対処し、債務破綻状態の国に対する協調した債務措置を促進するために必要である。我々は2020年11月13日に合意されたように、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」における、第2及び最終パラグラフのコミットメントを含む全てのコミットメントを守り、予測可能かつ適時に、秩序だった方法で連携して、共通枠組の実施を強化する。我々は、チャドに対する債務措置の妥結を歓迎し、ザンビアとエチオピアに対する債務措置に関する作業の迅速な妥結を要請する。我々はまた、要請された債務措置に取り組むために、ガーナの公的債権者委員会の迅速な立ち上げを期待する。さらに、我々はスリランカの債務状況の迅速な解決を期待する。我々は国際金融アーキテクチャー作業部会に対し、世界の債務状況に関するG20ノートを公平かつ包括的な方法で策定することを指示する。我々は債務の透明性の向上に引き続き取り組むための、民間債権者を含む全ての関係者による協働を歓迎し、国際金融機関へのデータ共有に関する自発的な確認作業の結果を期待する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECD共同のデータ保存ポータルにデータを既に提供している民間セクターの貸手の取組を歓迎し、他の債権者に自発的にデータを提供するよう引き続き奨励する。

10. 我々は、経済成長の核としての都市の潜在力を認識し、都市を、包摂的で、強靭で、持続可能なものにする必要性を強調する。我々は、将来の都市への資金供給のための共通理解を反映した一連の自主的で義務的でない原則を策定することに合意する。我々は、将来の都市を創造するためのインフラ資金ギャップに対処するために、民間部門の投資を拡大するための革新的な資金調達モデルの事例の共有に期待する。より良い都市インフラへの資金供給を促進するため、我々は、包摂的な都市の実現手段の大枠の提示と都市行政の能力強化のための枠組みの策定をインフラ作業部会に指示する。我々はまた、G20のために作成された、自主的で、義務的でなく、各国の状況を考慮した質の高いインフラ投資(QII)指標という進行中のアジェンダに引き続き取り組むことに合意し、QII指標をいかに適用できるかについての議論に期待している。我々は、グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIHub)のあり得べき新しいガバナンス・モデルの策定に向けた進捗を歓迎し、そのプロセスを導く原則をできるだけ早く最終化することをインフラ作業部会に求める。我々は、将来の都市への資金供給のための政策を策定する際の民間部門の視点を統合するための2023年に予定されているインフラ投資家対話に期待する。

11. 我々は、国連気候変動枠組条約及びパリ協定の完全かつ効果的な実施を強化するとの我々の確固たるコミットメントを再確認する。我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性の文脈において、途上国のニーズに対応するため、2020年までに、また2025年まで年間1,000億米ドルの気候資金を動員するとの目標に対する先進国のコミットメントを想起し、再確認するとともに、できる限り早く当該目標を達成する重要性を強調する。我々は、緩和と適応両方の取組に均衡ある形で対応するために、気候資金の規模拡大の重要性を認識する。野心的なネット・ゼロ排出目標を達成するためには、気候資金のための適時かつ十分な資源を動員することが必要である。我々は、代替的な資金源を含む、公的及び民間、二国間、多国間の様々な資金源からの資金を増加させることの重要性を認識する。我々はまた、気候技術に関する新興企業の強固なエコシステムに不可欠な、気候技術の迅速な開発、実証、展開のための資金動員に必要な金融ソリューション、政策、インセンティブを奨励する。我々は、各国の事情に沿った気候投資及び移行活動を支援するための一連のオプションの開発を期待する。オプションには、グリーン及び低炭素技術への投資のための民間資本を支援するための政策や金融手段のみならず、リスク配分のためのファシリティを拡大する方法が含まれる。我々は、カーボンニュートラル及びネット・ゼロに向けた、適当な場合における、カーボンプライシング及びかかるプライシングによらないメカニズムとインセンティブの活用を含む、財政、市場及び規制メカニズムからなる政策の組み合わせの重要性を再確認する。我々は、「持続可能な投資を支援する非価格政策手段」に関するワークショップにおける議論のとりまとめを期待する。

12. サステナブル・ファイナンスは、将来の世代が自らのニーズを満たす能力を損ねることなく、現在のニーズを満たす、持続可能、強靭、包摂的かつ公平な経済成長を達成するために極めて重要である。この目標の達成に向け、また、秩序ある、公正で、かつ、負担可能な移行を促進するために、我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」に沿って、気候及び気候以外を含むSDGsのための資金調達の強化を可能とするための行動をとる。官民のイニシアティブに基づき、我々は、サステナブル・ファイナンス作業部会が、SDGsに向けた資金調達を可能とするための分析枠組みを、自然関連のデータ及び報告や社会的インパクト投資に当初の焦点を当てて、各国の事情を考慮しつつ、策定するよう求める。我々は、メンバーに対し、各法域、国際機関及び民間部門によるSDGsのための資金調達に関するベスト・プラクティス集に向けて課題及び政策経験を共有することを奨励する。我々は、各国固有のニーズ及び状況に沿って、トランジション・ファイナンスの枠組みや気候及び持続可能性のデータといった分野を含む、サステナブル・ファイナンスにおける能力構築及び技術支援の規模拡大に向けた勧告を行うため、「G20サステナブル・ファイナンス技術支援行動計画」の策定に期待する。我々は、「技術支援行動計画」の基礎を築いた、サステナブル・ファイナンス作業部会の最初の会合の「能力構築に関するワークショップ」における価値ある議論を歓迎する。我々はまた、自発的で柔軟性のある「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の実施におけるメンバー、国際機関、国際的なネットワーク及びイニシアティブによる進展を歓迎し、トランジション・ファイナンスの枠組等を含め、ロードマップで推奨された行動を推進するための更なる取組を求める。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による気候関連財務情報開示基準の早期の最終化、及び気候以外の作業に期待する。

13. 我々は、財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の下、財務・保健省間の継続的な連携と対話の強化を通じて、パンデミック予防・備え・対応(PPR)のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャー(国際保健の枠組み)を強化することに引き続きコミットしている。我々は、JFHTFがグローバル・パンデミックPPRアーキテクチャーを補完し、グローバル・ヘルス・ガバナンス・システムの重複や分断が生じないことを担保するよう、引き続き、WHOと緊密に協力していく。我々は、JFHTFの2023年の作業計画、及び、低所得国の声を拡大するために、必要に応じ、選定された主要な地域機関をタスクフォース会合へ招待することを歓迎する。我々は、パンデミックによる経済の脆弱性とリスクについて、各国固有の状況を考慮しつつ、評価するための枠組みと報告書が、世界銀行やIMF、その他関連国際金融機関(IFIs)と連携のもとでWHOが主導し、策定されることを期待する。我々は、他の国際フォーラムにおける議論を十分に考慮し、将来のパンデミックに対するグローバルな対応を支援するために、ベスト・プラクティスの報告書やサージ・ファイナンス・メカニズムがどのように運用できるかを検討することを含め、財務・保健セクター合同の備えの指針となるJFHTFの自主的で、義務的でない戦略策定を歓迎する。我々は、大規模なパンデミック対応能力における重要な要素としての医学的対策に関して研究開発の取組と製造ネットワークの調整を行う保健ワーキンググループにJFHTFが関与することを奨励する。また、我々は、(パンデミック基金の)2023年3月の初回案件の募集の開始と、JFHTFによるパンデミック基金への継続的な関与を期待し、新しいドナーの資金拠出を通じ、パンデミック基金の強化、及び途上国のパンデミックPPRの能力向上に向けた取組を推奨する。

14. 我々は、21世紀の目的にかなった、グローバルで公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムのための協力を継続していく。我々は、OECD/G20の2本の柱の国際課税パッケージの迅速な実施に対して引き続きコミットしている。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(「包摂的枠組み」)に対して、2023年前半に多国間条約を署名できるよう、残された課題を含む第一の柱を最終化するよう求める。我々は、共通アプローチとしてのGloBEルールの実施を促進するGloBE実施枠組みの公表を歓迎する。我々は、各国がGloBEルールの実施のために講じた措置を歓迎し、包摂的枠組みに対し、多国間協定の策定を通じたものを含めた、第2の柱の租税条約上の最低課税ルール(STTR)の実施を可能とするためのSTTRの交渉を最終化することを求める。我々は、2本の柱の国際課税パッケージを効果的に実施するための能力構築に向けた協調した取組の必要性を認識する。我々は、2022年の「途上国と国際租税に係るG20/OECDロードマップ」に関するアップデートの報告を受けることに期待する。我々は、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(「グローバル・フォーラム」)に対し、「共通報告基準(CRS)」に基づく自動的情報交換(AEOI)の枠組みの導入を途上国に奨励する取組を含む、グローバル・フォーラムの「途上国の自動的情報交換の可能性を引き出すための2021年戦略」におけるロードマップの実施について、G20にアップデートすることを求める。また、我々は、OECDに対して、暗号資産等報告枠組及びCRSの改訂に係る実施パッケージに関する作業を完了することを求める。

15. 我々は、いわゆるステーブルコインを含む暗号資産エコシステムが注意深くモニタリングされ、金融安定に対する潜在的なリスクを軽減するための強固な規制・監督・監視の対象となることを確保するための、FSB及び国際基準設定主体による進行中の作業を歓迎する。我々は、分散型金融(DeFi)に関するFSBの分析報告書を歓迎し、いわゆるステーブルコイン及び暗号資産の監督・規制に関するFSBのハイレベル勧告のそれぞれを2023年の第3回会合までに期待する。我々はまた、「暗号資産のマクロ金融上のインプリケーションに係るIMFディスカッション・ペーパー」を歓迎する。我々は、暗号資産がもたらすあらゆる種類のリスクを含め、マクロ経済及び規制上の観点を考慮することにより、暗号資産に対する調和された包括的な政策アプローチを支援する「IMF及びFSBの統合報告書」に期待する。我々は、「G20セミナー『政策的観点:暗号資産に関する政策コンセンサスへの道を議論する』」に留意する。我々は、商品市場の金融安定的側面に関するFSBの報告書を歓迎する。我々は、ノンバンク金融仲介(NBFIs)における脆弱性にシステミックな観点から対処するFSB及び基準設定主体の作業を歓迎する。我々はNBFIの強靭性を高めるための強力でグローバルな政策行動を支援する。特に、我々は、オープンエンド型ファンドにおける構造的な流動性ミスマッチへの対処及び隠れたレバレッジによるリスクへの対処に関するFSBの勧告に期待する。我々はまた、中央清算市場及び中央清算されない市場における証拠金の慣行の改善に関する作業に期待する。我々は、サイバーインシデント報告の更なる収斂や関連する定義及び用語の共通化を通じたものを含む、金融セクターの強靭性を高めるための取組を継続する。金融セクターにおいて、BigTech及びFinTech提供者を含む重要な技術サービス提供者への依存度の高まりから生じる、金融機関のオペレーショナル・レジリエンスに対する課題に対処するため、我々は、金融機関のサードパーティーリスク及びアウトソーシングの管理に係る能力並びに金融当局によるサードパーティーリスクの監視の強化に関するFSBの市中協議報告書に期待する。我々は、より迅速で、安価で、透明性のある、包摂的なクロスボーダー送金のための「クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップ」の下での行動の適時かつ効果的な実施にコミットする。我々は、効率化されたより安全なクロスボーダー送金の確保に向けた、G20ロードマップに対する基準設定主体の支援を歓迎する。我々は、FSBが気候関連金融リスクに対処するための国際協調を支援する継続的な作業を行うことを歓迎する。我々はまた、G20の金融規制改革の有効性及び影響を評価するFSBの取組を歓迎する。我々は、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しに関する作業の進捗を歓迎し、見直しの最終化を期待する。

16. 我々は、金融包摂の推進と、誰一人取り残されないことの確保にコミットしている。近年大きな進展はあったが、我々は、残された課題に対処し、個人及び中小零細企業、特に脆弱で十分なサービスを受けられない層向けの金融サービスのアクセス、使用及び質という3つの目標を達成するためには、取組の加速が必要であることを認識する。我々は、2023年2月に開催された「革新的で、強靭かつ包摂的な成長及び効果的なガバナンスのためのデジタル公共インフラ(DPIs)に関するG20ハイレベル・シンポジウム」における、特に金融包摂の推進に関する、DPIに係る生産的な議論を歓迎する。我々は、2023年の第3回会合までに、DPIの活用によって良く設計されたデジタル金融エコシステムを通じた金融包摂の急速な推進や生産性向上のための政策勧告を策定することを期待する。我々は、2020年の「G20金融包摂行動計画(FIAP)」の成功裏の完了を支援する。我々は、G20及びそれを超えた法域における金融包摂の推進のために、行動指向の「2023年G20FIAP」に向けた取組を、2023年の第3回会合までに進展させることを期待する。

17. 我々は、国際金融システムの健全性と強靱性を強化するために、国際社会がマネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融と効果的に闘うための取組を強化する喫緊の必要性を認識する。我々は、これらの脅威に対処するためのグローバルな行動を主導するために、金融活動作業部会(FATF)とFATF型地域体(FSRBs)の戦略的優先事項の実現についてのコミットメントを再確認する。我々は、犯罪収益を回復するグローバルな取組を強化するFATFの進行中の作業を支持する。我々は、不正資金を特定しターゲットとする各国の能力を向上させる、法人の実質的支配者の透明性に関する改訂されたFATF基準及びガイダンスを歓迎し、これらの基準の適時の実施にコミットする。我々は、法的取極めに関する基準と、グローバルな履行を促進するための関連するガイダンスを強化するFATFの作業の完了を期待する。我々は、基本情報及び実質的支配者情報に関して可能な限り広範な国際協力を行うことにコミットする。我々は、FATF基準に沿って、特にマネーロンダリング・テロ資金供与への利用を防ぐために、暗号資産についての効果的なマネーロンダリング及びテロ資金供与対策の規制と監視の確立が喫緊で必要であることを認識する。我々は、このセクターにおける基準実施を国際的に加速させるためのFATFの取組を支持し、「トラベルルール」を含むこれらのルールの適時な実施に再度コミットする。我々は、ランサムウェアによる資金調達に係るFATFのプロジェクトの完了を期待するとともに、テロのためのクラウドファンディング及びサイバー犯罪詐欺に関連するマネーロンダリング・テロ資金供与の分析や、財産回復に係る国際基準を強化する取組を通じて、犯罪者から不正な利益を奪うための効果的なグローバルな行動を喚起するFATFの進行中のイニシアティブを歓迎する。


{*1* G20バリ首脳宣言(2022年11月15、16日)から引用された、この文書のパラグラフ3と4 は、ロシアと中国を除く全てのメンバーによって合意された。}