データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議議長総括

[場所] 米国・ワシントンD.C.
[年月日] 2022年10月13日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

第1部−世界経済に関する議論の総括

1. メンバー達は、世界経済の回復は、リスクの顕在化が続く中で、更に減速したことに合意した。多くのメンバーは、ロシアのウクライナに対する戦争を強く非難し、また、ロシアのウクライナに対する不法かつ不当で、いわれのない侵略戦争が、世界経済の回復を損なっているとの見解を表明した。これらのうち少数のメンバーが、ロシアに対する制裁は食料を対象としていないことに言及した。G20の1メンバーは、ウクライナにおける戦争と制裁が世界経済に影響を与えたとの見解を表明した。G20の1メンバーは、制裁が世界経済への負の影響の主要な原因であるとの見解を表明した。ほとんどのメンバーは、肥料、食料、エネルギーの価格には依然圧力がかかっており、既存のインフレ圧力を悪化させ、食料及びエネルギー不安のリスクの上昇に寄与しているということに合意した。1メンバーが、化石燃料への投資の拙速な停止に対する警告を発し、気候変動に対応する、均衡ある公正な移行政策を求めた一方、多くのメンバーが、気候変動のような長期的な構造的課題に関する継続的な行動の重要性に言及した。数多くのメンバーが債務脆弱性に対処する必要性を強調した。

2. メンバー達は、7月15日の食料不安に対処するためのグローバルな協働の強化に関するハイレベルセミナー及び10月11日のG20財務・農業大臣合同会合で議論されたように、世界中で脆弱なグループの食料及びエネルギー不安が増大していることを懸念した。多くのメンバーは、最も脆弱な人々を支援するために実施した一時的かつ的を絞った措置に言及した。メンバー達は、国際通貨基金(IMF)の緊急融資制度の中の食料ショックウィンドウを歓迎した。

第2部−具体的な成果に関する合意

3. 共に回復し、より強く回復するという我々が共有する野心を支援するために、我々は、各国固有の状況を適切に検討し、よく調節され、よく計画され、よくコミュニケーションの取られた、持続可能な回復を支援するための政策に対する、我々のコミットメントを再確認する。我々は、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を支援するために、傷跡化する効果を緩和するための我々のコミットメントを確認する。我々は、財政政策の対応において引き続き機動的かつ柔軟であり、変化する状況に対して必要に応じて調整する用意がある。最も脆弱なグループの購買力の維持と、エネルギー及び食料価格を含むコモディティ価格の上昇の影響の緩和を支援するための、一時的な的を絞った措置は、高いインフレ圧力を助長しないようよく設計されるべきである。我々は、引き続き、マクロ政策での協力を強化し、金融の安定性及び長期的な財政の持続可能性を維持し、下方リスクと負の波及効果を防いでいく。マクロプルーデンス政策は、金融環境がタイト化するにつれて上昇するシステミックリスクを防ぐために、引き続き警戒する必要がある。我々は、より強固で、よりグリーンで、より均衡のとれた包摂的な世界の発展を達成するために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の推進にコミットする。財政政策は、グリーン、デジタル、サステナブルへの移行に必要な投資の増加を反映すべきである。我々は、成長及び雇用創出の回復における、世界貿易機関(WTO)を中心とした、ルールに基づく、無差別で、公正で、開かれた、包摂的で、持続可能で、透明な多国間貿易体制の重要性を再確認し、保護主義と戦い、WTOの改革のための協調した取組を奨励するためのコミットメントを再確認する。我々は、今年多くの通貨がボラティリティの増加を伴って大幅に変化したことを認識しつつ、我々の2021年4月の為替相場のコミットメントを再確認する。また、我々は、国際協力の重要性を再確認し、G20を通じた多国間主義の効果的なシステムを維持するための、G20議長国インドネシアの努力に対し、感謝の意を表する。

4. G20の中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに強くコミットしている。このために、中央銀行は、インフレ圧力がインフレ予想に与える影響を注意深くモニタリングしており、景気回復の確保と各国間への波及効果の抑制に配慮しつつ、インフレ予想の安定維持を確保するよう、データを踏まえて明確なコミュニケーションを行いながら、引き続き、金融政策の引き締めペースを適切に調整する。中央銀行の独立性は、それらの目標を達成し、金融政策の信認を支えるために、極めて重要である。

5. 我々は、パンデミックを制御下におき、今後のパンデミックに対してより良く備えるために、共同かつ連携した行動を優先することを継続する。我々は、世界銀行が主管するパンデミックに対する予防、備え及び対応(PPR)のための金融仲介基金(FIF)の設立を歓迎し、PPRFIFの統治文書を採択したその理事会の設置に留意する。我々は、PPRFIFの包摂的なメンバー構成と低・中所得国、市民社会組織、ドナーからの代表性を歓迎し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャにおける世界保健機関(WHO)の指導的役割を反映する、この努力におけるWHOの技術的専門性と調整面での中心的な役割を認識する。我々は、国、地域及びグローバルなレベルでのパンデミックPPRを強化し支援する投資を実現するため、PPRFIFの初回プロポーザル募集が可能な限り早期に開始されることを期待する。我々は、PPRFIFの創設ドナーによる14億ドルを超える資金拠出を称賛し、自発的な追加拠出を奨励する。我々は、PPRFIFを通じて、途上国のパンデミックPPRの能力を向上させることにコミットし、PPRFIFがその統治文書に従って運営され、効果的にPPRの重要なギャップを埋め、また引き続きWHOが調整面での中心的な役割を果たし、G20との強いつながりを保ち、意思決定において低・中所得国及びG20以外のパートナーの視点に対し包摂的であることを確保するために、学んだ教訓を参考とし必要な変更を取り入れることを目的とした、初年度末のPPRFIFの総括的な見直しを期待する。我々は、グローバル・ヘルス・ガバナンス・システムの更なる重複や分断を避け、WHOの重要な指導的役割を維持しつつ、G20以外の国も含めうる、財務省及び保健省間の連携体制を構築すること等を目的とした、G20財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の作業の進捗に留意する。我々は、G20の財務大臣と保健大臣が、11月にガイダンスを提供することを含め、来年のJFHTFのマンデートに関する議論を継続することを期待する。

6. 我々はOECD/G20の2本の柱の国際課税パッケージの迅速な実施に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、第1の柱の進捗を歓迎する。また、我々は、共通アプローチとしてのグローバルなレベルでの一貫性のある実施への道筋をつける、第2の柱のグローバルな税源浸食対抗(GloBE)モデル法制の進捗を歓迎し、GloBE実施枠組みの完成を期待する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に対して、残された課題を含む、2023年前半における多国間条約の署名等による第1の柱の最終化、及び、第2の柱の租税条約上の最低課税ルール(STTR)の実施のための多国間協定の策定を可能とするためのSTTRの交渉の完了を求める。我々は、2022年7月の「税と開発に関するG20閣僚級シンポジウム」に照らし、税と開発アジェンダを強化する我々の目的を再確認し、我々は、「途上国と国際租税に係るG20/OECDロードマップ」に留意する。我々は、地域での取組を含む国際的に合意された税の透明性基準の実施における進捗を支持し、2022年7月のアジア・イニシアティブ・バリ宣言への署名を歓迎する。また、我々は、我々が両方とも自動的情報交換のための国際基準に不可欠な追加要素として認識している、暗号資産等報告枠組みと共通報告基準の改訂を歓迎する。我々は、OECDに対して、タイムラインの見込みを含む、実施パッケージに関する作業を完了することを求め、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムに対して、そのコミットメントやモニタリングプロセスに基づき、関係する法域による両方のパッケージの広範な実施を確保することを勧める。

7. 我々は、持続可能な資本フローの促進及び現地通貨建て資本市場の発展などにより、国際金融アーキテクチャーの長期的な金融面での強靭性を高めるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、資本フローの自由化と管理に関するIMFの改訂版「機関としての見解」を歓迎するとともに、資本フロー管理措置の活用のための国際枠組を、それらの本来の目的に留意しつつ、整合的に実施することに関する、国際機関との継続的な議論を期待する。我々は、「統合的な政策枠組」の運用に関するIMFによる更なる進捗に期待し、国際決済銀行(BIS)のマクロ金融安定化フレームワークに関する報告書を歓迎する。我々は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が、国際通貨金融システムの安定性や完全性を維持しつつ、クロスボーダー決済を円滑化するよう、どのように潜在的に設計され得るかについての、継続的な探究を歓迎する。我々は、CBDCを実装するための最も実践的で実行可能な解決策に関する議論に貢献してきたものとして、BISイノベーションハブとの共同イニシアティブであるG20TechSprint2022が成功裡に完了したことを歓迎する。我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットを維持するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、IMFのクォータの十分性を再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でのIMFガバナンス改革のプロセスを継続する。

8. *1*我々は、すべての脆弱国が共に回復し、より強く回復することを支援するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献による816億ドルに上るプレッジを歓迎し、最も資金を必要とする国々のために世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心を達成するため、全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、適格性を満たす低所得国や小国及び脆弱な中所得国が、パンデミックや気候変動に起因するものを含むマクロ経済リスクをもたらす長期的な構造課題に対処することを支援するための、強靱性・持続可能性トラスト(RST)の稼働を歓迎する。我々は、RSTへの自発的な貢献を歓迎し、資金ニーズを満たすための広範な貢献者のプールを確保するため、RST及び貧困削減・成長トラスト(PRGT)、特にPRGTについては利子補給金に対する追加的なプレッジ及び時宜を得た貢献を求める。我々は、国内の法的枠組及びSDRの準備資産としての地位を保持する必要性を尊重しつつ、多国間開発金融機関(MDBs)を通じて各国がSDRを自発的に融通するための実現可能な選択肢を模索することに引き続きオープンである。我々は、バランスシートの最適化、その他の潜在的な手段を含め、MDBsの開発効果を最大化するための方法を引き続き探求する。我々は、早期の検討を歓迎するとともに、MDBsが、G20による「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組みの独立レビュー」の勧告を各MDBsのガバナンスの枠組みの中で実施するためのオプションについて議論を続け、2023年春に我々にアップデートすることを強く求める。これは、MDBsの長期的な財政的持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、勧告の実施に向けた実現可能なロードマップの継続的開発に情報を提供するものである。我々は、国際復興開発銀行(IBRD)の2020年の投票権見直しに係る最終報告書を確認するとともに、2025年の投票権見直しを期待する。このような困難な節目において、我々は、「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係る共通枠組」を、予測可能かつ適時に、秩序だった方法で連携して実施するための取組を強化することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、これに関して、ザンビアに対する資金保証の提供を含め、進展を歓迎する。我々は、債権者委員会によるこれまでの進展を歓迎し、チャド、ザンビアに対する、2023年の初頭までの、時宜を得た債務措置の妥結を奨励する。また、我々は、IMF支援プログラムの下でのエチオピアに対する債務措置の妥結を奨励する。我々は、いくつかの脆弱な中所得国の悪化した債務状況を懸念している。この問題は、こうした諸国の債務措置の要請に迅速に対応するための、全ての公的・民間の二者間の債権者を含む多国間の協調によって対処しうる。我々は、民間債権者及び他の公的な二国間債権者が、措置の同等性の原則に沿って公平な負担を確保するため、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することにコミットすることの重要性を強調する。我々は、債務の透明性の向上に引き続き取り組むため、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を確認する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECD共同のデータ保存ポータルに既にデータを提供している民間セクターの貸し手の取組を歓迎し、他の貸し手も自発的に貢献するよう引き続き奨励する。

9. 持続可能で、包摂的で、アクセス可能で、かつ負担可能な方法でインフラ投資を活性化することは、より強い回復を確実なものとする。我々は、持続可能なインフラ投資を拡大するため、民間部門の参加を最大限梃入れするためのG20とグローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)の枠組を支持する。これは、自主的で、義務的でなく、各国の状況を考慮しており、公共投資やMDBsによるファイナンスを含む他の資金源からの投資を補完する。我々は、2022年G20インフラ投資家対話の成果文書に留意する。我々は、社会的包摂を増進し、地域格差に対処するため、アジア開発銀行(ADB)の支援を受けて用意された、地域や都市における包摂的で質の高いインフラ投資のための資金動員に関するG20−OECD政策ツールキットを支持する。我々は、インフラのライフサイクルにおけるジェンダーへの配慮を促進するに当たり、インフラへの民間セクターの参加におけるジェンダー包摂的なアプローチについての暫定報告書に留意し、最終報告書に期待する。我々は、インフラに関する長期的な戦略と計画への洞察を提供することで、官民双方がポストコロナの社会変革的なインフラ投資に向かうことを可能にするインフラ・トラッカー2. 0を支持する。デジタルデバイドを縮小するため、我々は、G20デジタルインフラのファイナンスに関する課題、実践、イノベーションのケーススタディ集を支持する。我々は、G20のために作成された、質の高いインフラ投資(QII)指標集と関連のガイダンスノートが7月に支持されたことに留意する。これらは自主的で、義務的でなく、各国の状況を考慮している。我々は、QII指標をいかに適用できるかについての更なる議論を期待している。我々は、GIHのあり得べき新しいガバナンスモデルの策定に向けた、インフラ作業部会(IWG)の進捗を歓迎し、このプロセスを導く原則を最終化し、可能な限り早期に我々に報告することをIWGに求める。

10. 生物多様性の損失への対応を含む、気候変動や環境の悪化のような、喫緊のグローバルな課題への対処についての我々のコミットメントは、よりグリーンで、より持続可能で、より豊かで包摂的な経済・社会を実現するために引き続き極めて重要である。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の目標達成のための世界的な取組の強化と、COP26におけるコミットメントの遂行という文脈において、カーボンニュートラルとネットゼロに向けた我々の政策の組み合わせは、炭素に価格付けを行う仕組みや非価格的な仕組み、インセンティブの使用を適切に含めた、あらゆる種類の財政、市場、規制メカニズムを含むべきであり、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の段階的廃止及び合理化を図り、各国の状況に沿い、最も貧しく脆弱な層に的を絞った支援を提供しつつ、この目標にコミットするべきであることを、我々は再確認する。我々は、気候変動から生じるマクロ経済リスクを認識し、異なる移行の費用と便益についての議論を続ける。我々はまた、目的のために資金や技術にアクセスする際、多くの途上国が直面している課題を認識する。この点で、我々は、途上国のニーズに対応するため、意味のある緩和のための行動と実施の透明性の文脈において、2020年まで、そして今後2025年にかけても共同で毎年1,000億ドルの気候資金を動員するという目標に向けた、先進国によるコミットメントの達成を強く求める。

11. 我々は、UNFCCC、パリ協定及び生物多様性条約に沿った「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目的を達成するため、秩序ある、公正で、かつ、負担可能な移行を支援するための行動をとることに引き続きコミットする。我々は、自発的で柔軟性のある「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の優先事項への対応についての、G20、国際機関、その他の国際的なネットワーク及びイニシアティブ、並びに民間部門にわたる進展を歓迎するとともに、サステナブル・ファイナンスを拡大するロードマップで推奨された行動を推進するための更なる努力を求める。我々は、サステナブル・ファイナンス作業部会による、ロードマップにおける進行中及び今後の進捗を示すための、オンラインのダッシュボード及び関連する作業の保存を歓迎し、各国の事情を考慮しつつ、メンバーによる自主的な貢献を奨励する。我々は、トランジション・ファイナンスの枠組の開発、金融機関のネットゼロコミットメントの信頼性の向上、並びにアクセス可能性及び負担可能性の向上に焦点を当てたサステナブル・ファイナンス手段の拡大における各法域や関連するステークホルダーのための実務的で自発的な勧告を示す「G20サステナブル・ファイナンス報告書」を支持する。我々はまた、移行を支援するための資金調達及び投資を奨励する政策手段に関する議長フォーラムにおける価値ある議論を歓迎する。

12. 我々は、より困難な世界経済・金融の見通しに直面する中において、グローバルな金融システムの強靭性を強化する必要性を強調し、金融安定理事会(FSB)及びIMFに対し、モニタリングの取組を継続するよう求める。我々は、政策措置の継続的な協調及び国際基準の実施等を通じ、グローバルな金融安定を維持することにコミットする。我々は、11月の首脳サミットに先立つ、金融セクターにおける出口戦略及び新型コロナウイルスの傷跡化する効果に関するFSBの最終報告書及びその金融安定上の課題に関する結論に期待する。我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)における特定された構造的脆弱性にシステミックな観点から対処することを含め、特にクロスボーダーな波及効果に対する強靭性を高めるためのグローバルな政策行動を強く支持し、オープンエンド型ファンドを含む、NBFIにおけるシステミックなリスクに対処するための政策提案を含むFSBのNBFI進捗報告書に期待する。我々は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)及び証券監督者国際機構(IOSCO)による証拠金の慣行の見直しに関する報告書を歓迎する。我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」を補完する、気候関連金融リスクに対処するための更新されたFSBロードマップの実施を前進させることを支持する。気候関連金融リスクに効果的に対処するためには、グローバルに一貫性のあるデータを要する。我々は、グローバルに一貫性のある、比較可能で信頼できる気候関連財務情報開示を支援するための、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による基準の最終化、及び気候以外の作業に期待し、開示枠組間の相互運用性の達成のための取組を歓迎する。我々は、グローバルに一貫性のある、比較可能な気候関連財務情報開示の実現に関するFSBの進捗報告書、及び気候関連リスクへの監督規制上のアプローチに関する最終報告書を歓迎する。我々は、各法域の気候シナリオ分析に関するFSB及び気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)による11月の報告書に期待する。

13. 我々は、いわゆるステーブルコインを含む暗号資産エコシステムが注意深くモニタリングされ、金融安定に対する潜在的なリスクを軽減するための強固な規制・監督・監視の対象となることを確保するための、FSB及び国際基準設定主体による進行中の作業を歓迎する。我々は、「同じ活動・同じリスクには同じ規制を確保する」との原則に基づく、暗号資産活動の規制のための包括的な国際的枠組を確立するためにFSBが提案したアプローチを歓迎する。我々は、「グローバル・ステーブルコイン」の規制・監督・監視に関するハイレベル勧告の見直しに関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。我々はまた、暗号資産の活動及び市場に対する規制監督上のアプローチの国際的な一貫性の促進に関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。イノベーションの恩恵を活用しながら、規制の成果を強化し、公平な競争条件を支援するため、リスクに関する公衆の認識を構築することは極めて重要である。我々は、「金融市場インフラのための原則」をシステム上重要なステーブルコインへ適用することを確認する、BIS・CPMI及びIOSCOによる最終ガイダンスを歓迎する。我々は、重要なパフォーマンス指標の当初推計の将来における提供、及び次の段階の作業の優先順位を示している「2022年進捗報告書」を含む、「クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップ」の継続的な実施を支持する。我々は、中央銀行、他の関係当局および決済事業者に対し、こうしたクロスボーダー決済を改善するための重要なイニシアティブについて、引き続き協働することを奨励する。我々は、クロスボーダー決済と相互運用性に関する議長国インドネシア、BIS・CPMI、及びBISイノベーションハブによるFEKDI2022での共同ワークショップで示された、決済システムのインターリンクとアプリケーションプログラミングインターフェースが担う役割についてのBIS・CPMIによる報告書を歓迎する。また、我々は、クロスボーダー送金のためのCBDCへのアクセスおよび相互運用性の確保に向けた選択肢についてのBIS・CPMI、BISイノベーションハブ、IMF及び世界銀行による共同報告書を歓迎する。我々は、サイバーインシデント報告における更なる収斂の実現に関するFSBの協議報告書を歓迎し、最終報告書に期待する。我々は、データギャップイニシアティブの第2フェーズ(DGI−2)の結果を歓迎し、パートナーと共に特定された残存課題に引き続き対処する。我々は、参加国との連携の下で、IMF、FSB、及び経済及び金融統計に関する当局間グループ(IAG)によって準備された、新たなデータギャップイニシアティブ(DGI)の作業計画を歓迎する。我々は、IMF、FSB、IAGに対し、目標が野心的であること、その提供において各国の統計キャパシティと優先順位、各国の状況を考慮する必要があることに留意するとともに国際的なレベルでの重複を避けつつ、これらのデータギャップを埋める作業を開始し、2023年後半に進捗を報告することめる。我々は、第2次報告書及び進行中の市中協議を含む「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しに関する作業の進捗を歓迎し、見直しに関する更なるアップデートを期待する。

14. 新型コロナウイルスのパンデミックは、特に女性、若者及び中小零細企業(MSMEs)といった、最も資金的に脆弱で十分なサービスを受けられないグループにとっての不平等を拡大させた。我々は、「G20の2020年金融包摂行動計画」に導かれた、生産性向上と、十分なサービスを受けられないグループのため持続可能で包摂性のある経済の育成を目的とする、「デジタル化の恩恵を活用するためのG20の金融包摂枠組」を支持する。この枠組は、「デジタル金融包摂のためのG20ハイレベル原則のための実務的な実施ガイド」、MSMEsへの信用にとどまらないデジタル及び革新的な金融商品・サービスに関する生きたデータベース、及びMSMEsのデジタル金融サービスへのアクセスに関する暫定的な規制ツールキットに基づいて構築されている。デジタル化及びサステナブル・ファイナンスの発展に対処し、金融包摂及び福祉を支援するため、我々は、更新された「G20/OECD金融消費者保護ハイレベル原則」を支持し、更新された「G20/OECD中小企業金融に関するハイレベル原則」を歓迎する。

15. 我々は、国際社会がマネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融と効果的に闘うための取組を強化する必要性を認識する。我々は、これらの脅威に対応するためのグローバルな行動を主導するために、金融活動作業部会(FATF)とFATF型地域体(FSRBs)の戦略的優先事項の実施についてのコミットメントを再確認する。我々は、暗号資産、特に「トラベル・ルール」、及び実質的支配者の透明性に関する国際基準の実施を促進するためのFATFによるイニシアティブを歓迎し、経済及び社会に重大な影響を与えるシステム全体に及ぶ腐敗行為及び環境犯罪との闘いにおける国際基準の役割を認識する。我々は、特に登録機関もしくは代替メカニズム等を通じた実質的支配者情報への効率的なアクセスを提供するという要件を通じて、法人の実質的支配者の透明性に関する国際基準を促進するためのFATFによるイニシアティブを歓迎する。我々は、国内の枠組みに沿って、犯罪収益を差押え、被害者及び国に資金を返還するためのグローバルな取組を強化するためのFATFによる進行中の作業を支持する。我々は、全てのG20メンバーがFATF基準を採用し、効果的に実施するために協力を強化することを奨励する。


{*1* 1メンバーが、パラグラフ8における債務問題について異なる見解を有し、MDBsのような多国間債権者による債務措 置の重要性を強調したことに留意。}