データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 別添 III : 国際金融機関の正当性,信頼性及び有効性の向上及び最も脆弱な人々のニーズに対する支援

[場所] トロント
[年月日] 2010年6月27日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

1. 世界的な経済・金融危機は,多国間行動を調整するための手段としての国際金融機関(IFIs)の価値を示した。これらの機関は,危機に対応するために前線に立ち, 9850億ドルの極めて重要な資金を動員した。加えて,国際社会及び国際金融機関は,2500億ドルを超える貿易金融を動員した。

2. 危機は,また,更なる改革を実施する重要性を示した。我々の協力の鍵となる基盤として,我々は,国際金融機関が,世界的な金融と経済の安定の維持に当たって我々を助け,すべての加盟国の成長と開発を支援できる機関であることを確保するため,国際金融機関の正当性,信頼性,及び有効性を強化することにコミットしている。

3. 国際金融機関の正当性及び有効性を強化するため,我々はロンドン及びピッツバーグにおいて,すべての国際金融機関の長及び上級リーダーに対する新しく開かれた,透明で,能力本位の選任プロセスを支援することにコミットした。我々は,より広い改革の文脈において,ソウル・サミットに至るまでの間にこれらのプロセスを強化する。

国際開発金融機関の資金

4. 世界的な金融危機が発生して以来,国際開発金融機関は世界的な対応で重要な役割を果たしており,国際開発金融機関は,2350億ドルの貸付けを供与し,我々のロンドンでのコミットメントを超えることで,世界的な対応で重要な役割を果たしてきた。その半分以上は世界銀行グループによるものである。民間セクターからの資金が消失していたときにおいて,この貸出しは世界的な安定に対して決定的に重要であった。今やかつてないほど,国際開発金融機関は多くの国にとって不可欠な開発パートナーである。

5. 我々は,アジア開発銀行(AsDB),アフリカ開発銀行(AfDB),米州開発銀行(IADB),及び欧州復興開発銀行(EBRD),並びに特に国際復興開発銀行(IBRD)及び国際金融公社(IFC)などの世界銀行グループを含む主要な国際開発金融機関の増資を通じ,国際開発金融機関が適切な資金を有することを確保するとのコミットメントを達成した。これらの機関の主要な出資国として,我々は他の加盟国と協働し,その資本基盤を85%,すなわち約3500億ドル増加させるために協働した。全体として,これらの機関の途上国への総貸出額は年370億ドルから年710億ドルに増加する。これは,これらの機関が増大する需要に短中期的に対応し,また,加盟国を支援するための十分な資金源を保有することを可能にする。我々は,これらの合意を可能な限り早急に実施する努力を支援する。

{表は省略}

*すべての数字はUSドル。

(a)2000-2008.   (b) 2012-2020.  (c)太宗が第4次資本レビュー(CRR4)期間の時限的な請求払い資本。  (d)米州開発銀行に対するハイチの債務免除の合意を含む。

6. 我々は,ミレニアム開発目標で最も遅れをとる地域であるアフリカにおける喫緊の開発ニーズを認識する。このため,アフリカ開発銀行は,この地域の長期的な成長と開発を支援する能力を強化するために,資本を200%増加させ,対応する年間の貸出量を3倍の水準に拡大できるよう大幅に増資される。

7. 国際金融公社(IFC)が,継続的な成長に必要な資金を確保するため,我々は,ボイス改革に関連した,先般合意された選択増資を補完する,出資国向けの長期ハイブリッド債及び収益の留保を検討する。

8. 低所得国を支援するため,より譲許的条件での借入れのニーズを考慮し,我々は,国際開発金融機関の譲許的融資ファシリティ,特に今年増資を行う,国際開発協会(IDA)及びアフリカ開発基金の野心的な増資を確保するとのコミットメントを達成する。我々は,多くのG20メンバーが,これらの機関にドナーとして参加するための重要な措置をとっていることを歓迎する。我々はより公正で幅広い負担の分担を支持することを改めて表明した。

国際開発金融機関改革

9. 我々はまた,これらの増資は,国際開発金融機関をより有効,効率的かつ説明責任を全うする組織にするために進行中の重要な機構改革が伴うことを確保するとのコミットメントを達成した。これには以下が含まれる。

・可能な場合には,国際開発金融機関の純益から,各機関の低所得国向け融資ファシリティに資金を移転し,低所得国及び辺境の地域における投資活動を増加させ,最貧国への更なる支援を財務上健全な形で行うとのコミットメント。これは,新規資本が低所得国及び中所得国に利益となることを確保する。

・より高い透明性,より強固な説明責任,改善された組織のガバナンス,より深い各国のオーナーシップ,更なる分権化及び適当な場合におけるカントリーシステムの活用,強化された調達ガイドライン,成果及び財政貢献を管理し追跡するための新しい手法,知識管理の強化,適切な多様性を有する適切な人材の確保,より良い環境・社会的セーフガードの実施,健全なリスク管理,融資金利を費用とリンクさせることによる財務の持続可能性確保,行政費用の継続的な削減及びその透明性の向上へのコミットメントに関する個別の行動。

・持続可能で包括的な発展の極めて重要な要素として,より多くの民間部門業務及び投資を通じ,民間部門の発展をより深く支援すること。

・気候変動や食料安全保障等の国境を越えた問題に対する世界的な解決方法の提供において,その中核的な開発マンデート及びより大きな役割を果たすことへの改めてのコミットメント。

10. これらの改革のコミットメントにより,我々は単により規模が大きいだけでなく,貧困層の生活の向上,成長の支援,安全の促進及び気候変動や食料安全保障などの世界的な課題への対処により戦略的に焦点を当てた,より良い国際開発金融機関(MDBs)の構築を行っている。これらの改革の実施は既に始まっており,我々はこの作業が完了し,必要な場合には更なる改革が行われることを引き続き確保する。

世界銀行グループのボイス改革

11. 我々は,ピッツバーグ・サミットでの合意に沿った途上国・体制移行国の投票権を3.13%増加させる世界銀行のボイス改革の合意を歓迎した。改革の第一段階において合意された1.46%の増加と併せれば,これは合計4.59%の途上国・体制移行国への移転をもたらし,途上国・体制移行国全体の投票権は47.19%となる。我々は,各国の経済的ウェイトの変化や世界銀行の開発使命を主に反映するダイナミックな計算式への到達により,極めて小さな貧困国を保護しつつ,衡平な投票権へ徐々に移行し続けることにコミットした。我々はまた,合計6.07%の移転をもたらし,DTCの投票権を39.48%とする,IFCでのボイス改革を承認した。

ハイチの債務免除

12. 我々は,1月の地震によりもたらされた惨事からの回復に向けて努力しているハイチの人々と共に結束している。我々は,世界銀行,米州開発銀行,国連により設立されたハイチ復興開発基金を通じた支援を含め,この難局において他のドナーと共に支援の提供を行う。ハイチの回復に向けた努力を,その過去の債務よりも復興の行動計画に焦点を当てさせるため,我々の財務大臣は,4月,必要な場合には関連するコストの分担を含め,すべての国際金融機関に対するハイチの債務の全額帳消しを支援することに合意した。我々は,債務帳消しの枠組みがIMF,世界銀行,国際農業開発基金において合意され,米州開発銀行においてまもなく合意されることを歓迎する。我々は可能な限り早期に,関連コストを,公平な割合で貢献をする。我々はソウル・サミットにおいて進ちょくについて報告する。

IMF改革

13. 我々はIMFのマンデート遂行の成功を確保するため,IMFの正当性,信頼性,有効性の強化にコミットしている。危機発生以降,G20及び国際社会により,IMF加盟国の危機対応のための資金ニーズを支援するための7500億ドルの資金動員を含む,重要な措置がとられてきた。IMFは後に新規借入取極(NAB)の5000億ドルの拡充に組み込まれる,当面の二国間融資と債券購入契約を通じて2500億ドルを新規に調達した。IMFはまた,全加盟国の外貨準備を補強するための特別引出権(SDR)の2500億ドルの新規一般配分を実施した。新たな早期警戒機能及びフレキシブル・クレジット・ラインの創設といった新たな予防制度を含む,サーベイランスと融資に関する重要な改革とともに,これらの措置がIMFの危機対応能力を大幅に増強させた。しかしながら,IMFを十分に改革するために完了すべき重要な作業が依然として残っている。

14. 我々は,ピッツバーグでなされたコミットメントと整合的に,IMFがソウル・サミットまでにクォータ改革を完了し,並行してその他のガバナンス改革を実施するために,なお必要とされる多くの作業の加速を求めた。IMFのガバナンスの現代化は,IMFの信頼性,正当性及び有効性を改善する我々の努力の中核的な要素である。IMFは引き続きクォータを基礎とする機関であるべきであり,クォータ配分は,ダイナミックな新興国・途上国の力強い成長にかんがみ,相当程度変化している世界経済における加盟国の相対的地位を反映すべきと認識する。そのために,我々は,現在のクォータ計算式を用いて,過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の,ダイナミックな新興国・途上国へのクォータ・シェア移転にコミットしている。また,我々は,IMFにおける最貧国の投票権の保護にコミットしている。この過程の一部として,出資比率変更を容易にするIMFクォータ増額の規模,理事会の規模と構成,理事会の実効性の向上方法,IMFの戦略的な監督へのIMF総務の関与を含む他の多くの重要な問題が議論される必要があることに合意する。スタッフの多様性は増大されるべきである。

15. 我々は,IMFが世界経済においてその重要な役割を果たすことができるよう,必要な資金を有していることを確保するとの我々の決意を強調した。G20メンバーの大半は,2008年のIMFクォータ及びボイス改革を批准し,ロンドンでなされた重要なコミットメントを遂行している。いまだ批准していない国は,ソウル・サミットまでに批准することにコミットする。この措置は,途上国のボイス及び参画の向上により,IMFの正当性を高めるだけでなく,IMFに新たなクォータ資金として300億ドルを提供する。我々は,すべてのIMF加盟国に対し今年中に合意を批准するよう求める。

16. 多くのG20メンバーは,最近合意された,拡大されたNABの改革に既に公式に同意した。これは,危機に陥った国々へのIMF融資のために5000億ドル以上を確保し,IMFのクォータ資金にとっての多額の備えを提供する。他のG20のNAB参加国は,次回のG20財務大臣・中央銀行総裁会議までに同意プロセスを完了する。我々はすべての既存及び新規のNAB参加国に同様のことを行うよう求める。

17. G20メンバーは,IMFの新しい歳入モデルと整合的な,IMFの合意された金の売却による収益,並びに内部資金及びその他の資金の活用を通じて,最貧国に対するIMFの譲許的資金を60億ドル拡充することを確保することにコミットした。我々はそれを実施している。幾つかのG20メンバーは貧困削減・成長トラスト(PRGT)に対する追加的な融資原資及び利子補給金の貢献によってこのコミットメントを支援しており,他の幾つかの国々は今後数ヶ月以内に貢献することを計画している。

18. 我々は,資本フローの変動,金融の脆弱性に対処し,危機の伝播を予防するための国家的,地域的,国際的努力の必要性を認識する。我々は財務大臣及び中央銀行総裁に対し,ソウル・サミットにおける我々の検討のため,健全なインセンティブに基づき,グローバル・フィナンシャル・セーフティ・ネット強化のための政策の選択肢を用意するよう指示する。我々はまた,これらの努力と整合的に,IMFに対し,適切な場合には更なる改革を視野に入れつつ,融資制度の見直しを迅速に進めることを求める。並行して,それがいかなる場所にも存在しようとも,システミック・リスク及び脆弱性に焦点を当てるため,IMFサーベイランスは強化されるべきである。我々の目標は,より安定した強じんな国際金融システムを構築することである。

最も脆弱な人々のニーズに対する支援

19. 我々は,危機の間,最貧国への支援において重要な進展を成し遂げたところであり,最も脆弱な人々を支援するための措置をとることを継続しなければならず,世界的成長を回復するための我々の努力から最貧国も恩恵を得ることを確保しなければならない。我々は,この緊急性を認識し,2015年までにミレニアム開発目標(MDGs)を達成することにコミットし,このために,政府開発援助の活用を含む我々の努力を強化する。

20. 我々は,貧困層の金融サービスへのアクセスを改善し,途上国の中小企業(SMEs)が利用可能な資金を増加させるとの我々のコミットメントにおいて具体的な進展を図った。

21. 適切に資金供給を受けた中小企業は,特に新興国において,雇用創出及び経済成長にとり死活的に重要である。我々は,中小企業に融資をもたらす最も有望な官民連携モデルの発見を目的とした中小企業(SME)金融チャレンジを立ち上げた。我々は,MDBsの力強い支援を含んだ優秀提案の実施に必要な財源の動員を表明した。我々は,民間部門と連携したチャレンジからの提案を含む,大規模に実現可能で持続可能なSME金融提案のためのMDBsの力強い支援を歓迎する。我々は,SME金融チャレンジの優秀提案を発表すること及びソウル・サミットにおいて拡大し成功したSME金融モデルの推薦を受けることを期待している。

22. 我々は,革新的な金融包摂のための一連の原則を作成した。これは貧困層の金融サービスへのアクセスを改善するための具体的で現実的な行動計画の基礎を形成する。この行動計画はソウル・サミットにおいて公表される。

23. ピッツバーグ・サミットにおいて,我々は低所得国における長期的な食料安全保障を改善するための,持続的な資金供給及び的を絞った投資の重要性を認識した。我々は,農業生産性を改善し,地方での収入を増加させ,持続可能な農業システムを構築するための低所得国に対する予測可能な融資を提供する,世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)の立上げを歓迎する。我々は特に,この基金が,バングラデシュ,ルワンダ,ハイチ,トーゴ,及びシエラレオネに対する2億2400万ドルに上る贈与の開始を承認したことを歓迎する。我々はまた,貧困国の中小規模の農業ビジネス及び農家を支援するための民間部門の投資を増加させる,GAFSPの民間部門枠の発展を支援する。我々は,既に得た支援を歓迎するとともに,GAFSPの官民双方の枠への追加的なドナーによる貢献を奨励する。

24. 増大する需要と高まる環境負荷の中で,とりわけアフリカにおいて,農業生産性のギャップを埋めるため,地域の及び南南協力を通じてのものを含め,研究及び開発を加速する緊急性が依然存在する。民間部門は,現場で具体的な結果を提供する革新的な解決法の作成及び展開において極めて重要である。我々は,食料安全保障における形勢を一変させる革新及び貧困国における農業開発を達成するに際して,民間部門の創造力及び資金を利用するため,事前購入制度等の革新的で結果に基づいたメカニズムの可能性を検討することにコミットする。我々はソウル・サミットにおいて進ちょくについて報告する。