データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 首脳宣言:ピッツバーグサミット

[場所] ピッツバーグ
[年月日] 2009年9月25日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

前文

1. 我々は、危機から回復に至る重大な転換期のさなかに、無責任の時代から次に進み、21世紀の世界経済のニーズに見合う一連の政策、規制及び改革を採択するために、会合する。

2. 我々が前回4月に集まった際、我々は、世界経済に対する我々の世代で最大の課題に直面していた。

3. 世界の生産量は1930年代以来経験したことのないペースで縮小していた。貿易は急減していた。雇用は急速に消滅していた。我々の国民は、世界は恐慌寸前であると懸念した。

4. 当時、我々各国は回復を確実にし、金融システムを修復し、資本の世界的な流れを維持するために必要なあらゆる行動をとることに合意した。

5. それは成功した。

6. 我々の力強い対策は、世界的活動の危険で急激な縮小を食い止め、金融市場を安定化させることを助けた。工業生産は、現在、我々ほぼすべての経済において上昇している。国際貿易は回復し始めている。我々の金融機関は、必要な資本を増強しつつあり、金融市場は投資及び貸出しの意欲を示しつつあり、信認は改善した。

7. 本日、我々は、4月のロンドン・サミット以降の進捗をレビューした。成長を回復するという我々の各国内におけるコミットメントは、これまでで最大かつ最も調整された形で実施された財政及び金融刺激策を、結果としてもたらした。我々は、危機が世界に波及しないようにするために必要な資源を劇的に増加させるために共同して行動した。我々は、破たんした規制体系を修復する措置を講じ、金融上の行き過ぎが世界経済を再び不安定化させるリスクを減少するため抜本的改革を実施し始めた。

8. 正常化の感触は自己満足につながるべきではない。

9. 回復と修復のプロセスは未完了のままである。多くの国において、失業は容認できないほど高いままである。民間需要の回復のための条件は、まだ完全には整っていない。我々は、世界経済が完全に健全な状態に回復し、世界中の勤勉な家庭が人間らしい働きがいのある仕事を見つけることができるようになるまで休むことはできない。

10. 本日、我々は、持続力のある景気回復が確保されるまで、我々の強固な政策対応を維持することを誓約する。我々は、成長が戻ったときに雇用も戻ってくることを確保するために行動する。我々は、刺激策の時期尚早な撤回を回避する。同時に、我々は、出口戦略を準備し、適切な時に、財政責任に対する我々のコミットメントを維持しつつ、例外的な政策支援を協力的かつ調和した方法で元に戻す。

11. 景気回復に向けた作業を継続しつつも、我々は、21世紀の強固で持続可能かつ均衡ある成長のための基礎を築くために必要な政策を採用することを誓約する。我々は、最近の厳しい世界経済危機の遺産を克服し、人々が危機の結果に対処することを助けるために力強く行動しなければならないことを認識する。我々は、急騰と暴落との間を循環することがない成長と、無謀ではなく責任を育む市場を望む。

12. 本日我々は、以下のことに合意した。

13. 強固で持続可能かつ均衡ある世界の成長を生み出すために協働して行う政策及び方法を提示する枠組みを立ち上げること。 我々は、国民が必要とする適切な雇用を創出する持続力のある回復を必要とする。

14. 我々は、需要の源を公から民間に移行し、各国を通じてより持続可能かつ均衡ある成長のパターンを構築し、発展の不均衡を減少させる必要がある。我々は、資産及び信用価格における安定的でない急騰と暴落を防ぐこと、及び物価の安定と整合的に、適切で均衡のとれた世界需要を促進するマクロ経済政策を採用することを誓約する。我々はまた、民間需要を促進し、長期的な潜在成長力を強化する構造改革において決定的な進展を図る。

15. 強固で持続可能かつ均衡ある成長のための我々の枠組みは、各国の政策がどのように一致するかを評価し、それらが集合的に、より持続可能かつ均衡のとれた成長に整合的であるかどうかを評価し、我々の共通の目標に合致するよう必要に応じ行動をとるよう協働することにコミットする合意(コンパクト)である。

16. 銀行及びその他の金融機関に対する規制体系が危機へと導いた過度な行動を抑制することを確実にすること。 無謀な行動と責任の欠如が危機へと導いたところでは、我々は、通常の銀行業務に回帰することを許さない。

17. 我々は、資本基準を引上げ、過度なリスク・テイクへと導く報酬慣行を終了せることを目的とした強力な国際的な報酬基準を実施し、店頭デリバティブ市場を改善し、大規模な世界的金融機関が自らとるリスクへの責任を有するためのより強力な手段を創出するために共に行動することにコミットした。大規模な世界的金融機関のための基準は、当該機関の破たんのコストに見合ったものであるべきである。これらすべての改革について、我々は自分たちのために厳格かつ精密な予定表を策定した

18. 世界的なアーキテクチャーを21世紀のニーズに見合うよう改革すること。今次危機の後、我々が強固で持続可能かつ均衡ある成長の基礎を敷くために協力することを可能にするために、極めて重要なプレイヤーは、議論に参加し我々の機関に完全に帰属する必要がある。

19. 我々は、G20を我々の国際経済協力に関する第一のフォーラムとして指定した。我々は、主要な新興国を含める金融安定理事会(FSB)を設立し、金融規制の強化における進展について協調し監視する同理事会の努力を歓迎する。

20. 我々は、作業する基礎として現在のクォータ計算式を用いて、過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の、ダイナミックな新興国や途上国への国際通貨基金(IMF)のクォータ・シェア移転にコミットしている。本日、我々は、新しい拡大されたIMFの新規借入取極(NAB)に5000億ドル超を貢献するとの我々の約束を履行した。

21. 我々は、世界銀行において、各国の変化する経済的地位及び世銀の開発使命を主として反映し、過小代表国の利益となるよう、途上国、体制移行国の投票権の少なくとも3%の増加をもたらすダイナミックな計算式を採用することの重要性を強調する。過大代表国はこれに貢献することを認識しつつ、極めて小さな貧困国の投票権を保護することは重要となろう。我々は、世界銀行に対して、気候変動や食料安全保障といった、世界的に協調された行動が必要となる性質の問題への対応において、主導的な役割を果たすことを求めるとともに、世界銀行及び地域開発金融機関が、これらの課題に対処しそのマンデートを満たすために十分な資金を有するべきであることに合意する。

22. 違法な流出を取り締まりつつ、世界の最貧国において、食料、燃料及び資金へのアクセスを向上するための新たな措置をとること。 開発ギャップを削減するための措置は世界成長の潜在的な推進力となり得る。

23. 40億人以上の人々が十分な教育が受けられず、資本及び技術が身についておらず、世界経済との一体化が不十分である。我々は、途上国及び新興国の生活水準と生産性を先進国の水準に収れんさせることを加速するために必要な政策と制度的変更を行うために協働する必要がある。まず第一に、我々は、世界銀行に対し、昨年夏に発表した低所得国のための新たな食料安全保障イニシアティブを支援するための新たな信託基金を設立するよう求める。我々は、任意で、再生可能エネルギー拡大プログラムのようなクリーンで購入可能なエネルギーを最貧国にもたらすためのプログラムに対する資金を増加する。

24. 最貧国に対し的を絞った支援を提供する一方で、中期的に、非効率な化石燃料に対する補助金を段階的に廃止し、合理化すること。 非効率な化石燃料への補助金は、不経済な消費を奨励し、我々のエネルギー安全保障を低下させ、クリーン・エネルギー源への投資を阻害し、気候変動の脅威に取り組む努力を損なう。

25. 我々は、エネルギー担当大臣及び財務大臣に対し、次回会合において、この極めて重要なコミットメントに見合うための行動に関する実施戦略及び計画につき我々に報告することを求める。

26. 我々は、過剰な変動を回避する我々の広範な努力の一環として、エネルギー市場の透明性及び市場安定性を促進する。

27. 我々の開放性を維持し、よりグリーンでより持続可能な成長を推進すること。

28. 我々は保護主義に対抗する。我々は、ドーハ・ラウンドを2010年に成功裏の妥結に導くことにコミットしている。

29. 我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)交渉を通じてコペンハーゲンで合意に至るための努力を惜しまない。

30. 我々は、前回会合で委任され、本日公表されたロンドン・サミットの議長による報告を温かく歓迎した。

31. 最後に、我々は、2010年6月にカナダで、また、2010年11月に韓国で会合することに合意した。我々は、その後毎年会合することを期待するとともに、2011年にフランスで会合する。

1.我々は、世界的危機への対処に関し共に達成した進展を評価し、回復が確実なものとなるまで経済活動を支援するために我々の措置を継続することに合意した。我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長を確保し、より強固な国際金融システムを構築し、発展の不均衡を減少させ、国際経済協力における我々のアーキテクチャーを近代化するために追加的な措置をとることに更にコミットした。

強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み

2.世界経済の成長及び昨今の経済危機に対する我々の協調した努力の成功は、より持続的かつシステマティックな国際協力の重要性を高めた。短期的には、回復が確実となるまでの間は、我々は経済活動を支援するための刺激策の実施を継続しなくてはならない。我々はまた、回復が十分確保された際に、財政政策、金融政策及び金融セクター政策での例外的な支援を戻すための透明で信頼性あるプロセスを作成することを必要としている。我々は財務大臣に対し、11月の会合において、IMF及びFSBからのインプットを活かして、プロセスの規模、タイミング及び順序が国又は地域及び政策手段の種類によって異なることを認識しつつ、協力的で調和した出口戦略の作成を継続することを指示した。期待を維持し、信認を強化するために、確かな出口戦略が策定され、明確に伝えられるべきである。

3.IMFは、世界経済の成長が本年中に再開し、2010年末までにはほぼ3%の成長となると予測している。したがって、我々の目標は、我々の潜在成長力及び雇用創出の能力を強化するための改革、並びに資産バブルの再発及び持続不可能な世界的な資金の流れの再現を防ぐための政策とともに、財政の責任と持続可能性に対する我々のコミットメントを維持しつつ、世界を高く持続可能で均衡ある成長の状態へと回帰させることである。我々は、これらの目標を達成するために必要な政策を導入することにコミットする。

4.我々は、世界的成長を更に均衡あるパターンにうまく移行させるよう協働することが必要となるであろう。今回の危機及び我々の初期の政策対応は、各国を通じて需要の成長パターンとその水準に既に重要な変化をもたらしている。多くの国は、国内需要を拡大するための重要な措置を既に講じており、世界的な活動を強化し、不均衡を軽減させている。幾つかの国では、現在増加中である民間貯蓄は、時とともに、公的貯蓄の増加によって更に増加される必要がある。強固な回復を確保するためには、適切かつ均衡のとれた世界的需要を促進するマクロ経済政策、並びに国内民間需要を促進させ、世界的な開発の格差を是正し、長期的な成長潜在力を強化する構造改革の大胆な進展が求められると共に、世界経済の異なる部分それぞれにおける調整が必要となる。IMFは、そのような調整や再編成によってのみ、世界的成長は強固で持続可能かつ均衡あるパターンになると予測している。各国政府は正しい方向に動き始めている一方で、共有された理解と深化された対話は、より安定し、継続し、持続可能な成長パターンを築くことに役立つであろう。新興国及び途上国における生活水準の引き上げも、世界経済の持続可能な成長の達成のため、極めて重要な要素である。

5.本日、我々は、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」を立ち上げる。この枠組み実行のため、我々は、目標を設定し、これらの目標を達成するための政策を推進し、共同して我々の進捗状況を評価するプロセスを作成することにコミットする。我々は、IMFに対し、各国及び地域それぞれの政策の枠組みをいかに集合として整合させるかに関する分析において支援することを求める。我々は、世界銀行に対し、世界の成長のリバランスの一部としての開発と貧困削減の進展について助言することを求める。我々は、財政、金融、貿易及び構造政策が集合的に、より持続可能かつ均衡ある成長の予測に整合的となることを確保するために協働する。我々は、貸付及び資産価格の循環が不安定化の要因とならないようにするためのマクロ健全性及び規制政策を実施する。新しく、持続可能な成長モデルの実施にコミットする上で、我々は、経済開発の社会的及び環境的側面をより良く勘案し得る計測方法についての作業を奨励する。

6.我々は財務大臣及び中央銀行総裁に対し、我々の政策の枠組みや、その世界の成長パターンと持続可能性に対する影響を相互評価する協力的なプロセスを始め、11月までにこの新たな枠組みを始動するよう指示した。我々は、定期的な協議、マクロ経済政策に関する強化された協力、構造政策に関する経験の交換、及び現在行われている評価によって、質の高い政策の採用が促進され、健全な世界経済が確保されると信じる。我々の合意(コンパクト)は以下の通りである。

・G20メンバーは、共通の政策目標に合意する。これらの目標は、状況の進展に応じて更新される。

・G20メンバーは、中期的政策枠組みを設定し、各国の政策枠組みの世界の成長水準とパターンへの集合的な影響を評価し金融の安定への潜在的リスクを特定するために協働する。

・G20首脳は、相互評価の結果に基づき、我々の共通の政策目標を達成する観点から何らかの措置を考慮、合意する。

7.このプロセスは、我々の政策に関する率直、公平でバランスのとれた分析により支持されることによってのみ成功するであろう。我々は、IMFに対し、G20の個々の国がとる政策が、世界経済のより持続可能かつ均衡ある成長への集合的な整合性に関する予測分析を行うことにより、相互評価のプロセスにおいて財務大臣及び中央銀行総裁を支援することを求めるとともに、世界経済の状況、成長のパターン及び政策調整の提案に関し、IMFの既存の二国間及び多国間のサーベイランスなどに基づき、G20及び国際通貨金融委員会(IMFC)双方に対して定期的に報告することを求める。財務大臣と中央銀行総裁は、11月の会議においてこのプロセスについて議論を深め、我々は、次回首脳会議において相互評価の結果をレビューする。

8.これらの政策は、我々が国際社会に対して負う、より強じんな国際金融システムの構築と発展の不均衡を減少させる責任を我々が果たす上で、助けとなるであろう。

9.適切性、健全性、及び透明性の中核的価値を含み、今後我々が作業を続けるメルケル首相が提案した憲章を踏まえ、本日、我々は、「枠組み」を支える「持続可能な経済行動のための中核的価値」を採択した。

国際金融規制体制の強化

10.規制と監督の大きな失敗に加え、銀行及びその他の金融機関による無謀で無責任なリスク・テイクが、現在の危機の実質的な要因となった危険な金融の脆弱性を作り出した。危機以前に幾つかの国で広まっていた過度なリスク・テイクへの回帰は選択肢ではない。

11.世界危機の発生以来、我々は、危機の根本原因に対処し、世界的な金融規制の体制を転換するための包括的な改革を策定し、実施し始めてきた。健全性監督の強化、リスク管理の改善、透明性の強化、市場の公正性の促進、監督カレッジの設置、及び国際連携の強化に関して多大な進展があった。我々は、店頭(OTC)デリバティブ、証券化市場、信用格付会社及びヘッジファンドに対するより厳格な規制を設けるなど、規制と監督の範囲を強化し、拡大した。我々は、FSBのロンドン・サミットでの設立に続いて、その憲章を通じた組織強化を支持すると共に、首脳及び大臣への報告書を歓迎する。FSBの進捗状況の監視に関する継続的な努力は、これら必要とされている改革の完全かつ着実な実施に不可欠である。我々は、FSBに対し、次の首脳会合の前に、G20財務大臣及び中央銀行総裁に対し、進捗を報告することを求める。

12.我々の仕事はまだ終わっていない。消費者、預金者と投資家を濫用的な市場慣行から保護し、質の高い標準を促進し、我々が見た規模の危機に世界が直面しないことを確保することを助けるために、更なる取組がなされる必要がある。我々は、公平な競争条件を確保し、市場の分断、保護主義、規制潜脱行為を回避するような方法で各国当局が世界基準を着実に実施できるよう、国家レベル及び国際レベルで共に基準を引き上げる行動をとることにコミットしている。不良資産を処理し、追加的な資本増強を奨励するための我々の努力は、必要に応じて継続しなければならない。我々は、厳格で透明なストレステストを必要に応じて実施することにコミットする。我々は、銀行に対し、貸出しを継続するために、必要な場合には、現在の利益についてより多くの割合を資本構築のために留保することを求める。証券化商品のスポンサー又は組成者は原資産のリスクの一部を保有すべきであり、もって、彼らに慎重な行動をとるよう奨励している。リスクを制御し、金融システムのマクロ健全性リスクの積み上がりを監視し評価するのに必要な手段を開発するため、マクロ健全性規制とミクロ健全性規制の適切なバランスを確保することが重要である。加えて、我々は、過度な一次産品価格の変動に対処するため、金融及び一次産品市場の規制、機能及び透明性を向上させることに合意した。

13.家計及び企業に対する貸出しを再開することを奨励するに当たり、我々は、今回の危機に導いた慣行への回帰へと駆り立てないよう注意を払わなければならない。現在我々がとっている措置は、完全に実施されれば、危機以前に存在していた体制に比べ根本的により強固な金融システムを結果的にもたらすであろう。我々すべてが協調して行動すれば、金融機関に対し、リスク・テイクに関するより厳格なルール、長期的なパフォーマンスと報酬を整合的にするガバナンス、及びその業務により高い透明性がもたらされる。破たんすれば金融の安定にリスクを与える可能性のあるすべての金融機関は、高い基準の一貫しかつ一体的な監督規制の対象となるべきである。我々の改革は多面的であるが、その中核は、過剰なリスク・テイクの慣行を抑制する明確なインセンティブで補完されたより強化された資本基準でなければならない。資本は銀行が回避することのできない損失に耐えることを可能にし、政府が破たんした金融機関を段階的に整理するためのより強力な手段とともに、資本を積ませることは、金融機関がとったリスクに責任を負わせるようにすることを助ける。「金融システムの強化に向けたさらなる取組に関する宣言」を踏まえ、我々は、財務大臣と中央銀行総裁に対し、以下の重要な分野における改革の国際的な枠組みに関し合意を達成するよう求める。

・質の高い資本の構築及び景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)の抑制:我々は、銀行資本の量と質の双方を改善し、過度なレバレッジを抑制するため、国際的に合意されたルールを2010年末までに策定することにコミットする。これらのルールの実施は、2012年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に行われることとなろう。バーセルIIの資本枠組みの要素である、質及び量共により高い所要自己資本、景気循環連動性を抑制する資本バッファー、リスクの高い商品やオフバランス取引への資本賦課の強化の各国における実施は、強化された流動性リスク規制及びフォワード・ルッキングな引当と共に、銀行が過度なリスクを負うインセンティブを減じ、負のショックにより耐え得る金融システムを創出する。我々は、バーゼル委員会の上位機関が最近合意した、銀行セクターの監督・規制強化のための重要な措置を歓迎する。我々は、適切な検討と水準調整に基づき、第一の柱の下での取扱いへの移行を視野に入れつつ、バーゼルIIの枠組みに対する補完的指標としてレバレッジ比率を導入することを支持する。比較可能性を確保するため、レバレッジ比率の詳細は、会計上の差異を完全に調整した上で、国際的に調和の取れたものとする。すべての主要なG20の金融センターは、バーゼルII資本枠組みを2011年までに採用することにコミットする。

・金融安定化支援のための報酬慣行の改革:金融セクターの過度な報酬が、過度なリスク・テイクを反映し、また助長してきた。報酬政策と慣行の改革は、金融の安定を向上させるための我々の努力にとって必須な部分である。我々は、(i)複数年に渡るボーナス保証を避け、(ii)長期的価値創造やリスクの時間軸に整合させるインセンティブを創出する限りにおいて、変動報酬の相当部分の支払いを繰延べ、業績に連動させ、適切な取戻しの対象とし、株式や株式類似の形態で付与されることを求め、(iii) 金融機関がさらされるリスクに重大な影響を与える経営幹部及び従業員への報酬が業績及びリスクと整合的であることを確保し、(iv)金融機関の報酬政策及び体系を、開示義務を課すことによって透明化し、(v)健全な資本基盤の維持と整合的でない場合には、純収入全体に対する変動報酬の比率を制限し、(vi)報酬政策を監視する報酬委員会が独立して活動することができるよう確保することを含め、報酬を過度なリスク・テイクではない長期的な価値創出と整合させることを目的とした金融安定理事会の実施基準を全面的に支持する。監督当局は、制度的及びシステミックなリスクを念頭におきながら金融機関の報酬慣行及び体系をレビューし、追加的なリスクを相殺するために必要があれば、健全な報酬政策と慣行を実施できない金融機関に対し、高い所要自己資本を課すなどの是正措置を適用する責務を負うべきである。監督当局は、破たんした又は例外的な公的介入を要する金融機関については、その報酬体系を修正する権限を持つべきである。我々は、金融機関に対し、これらの健全な報酬慣行を即時に実施することを求める。我々は、FSBに対し、FSBの基準の実施を監視し、必要に応じて、2010年3月までに追加的な手段を提案する任務を課す。

・店頭デリバティブ市場の改善:遅くとも2012年末までに、標準化されたすべての店頭(OTC)デリバティブ契約は、適当な場合には、取引所又は電子取引基盤を通じて取引され、中央清算機関を通じて決済されるべきである。店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関に報告されるべきである。中央清算機関を通じて決済がされない契約は、より高い所要自己資本賦課の対象とされるべきである。我々は、FSBとその関連メンバーに対して、実施状況及びデリバティブ市場の透明性を改善し、システミック・リスクを緩和し、市場の濫用から守るために十分かどうかにつき、定期的に評価することを要請する。

・2010年末までの国境を超えた破たん処理とシステム上重要な金融機関の問題への対処: システム上重要な金融機関は、国際的に整合性がとれた、各社別の緊急時の危機対応計画及び破たん処理計画を策定すべきである。各国当局は、国境を越えて業務を行う主要な金融機関のための危機管理グループ及び危機の際の介入に関する法的枠組みを構築するとともに、市場の混乱時における情報共有を改善すべきである。我々は、金融機関の倒産による混乱を軽減し、将来のモラル・ハザードを減少させることに資するよう、金融グループの効果的な破たん処理のための手法と枠組みを策定すべきである。システム上重要な金融機関の健全性に関する我々の基準は、当該機関の破たんのコストに見合ったものであるべきである。FSBは、より強力な監督とこれら金融機関に対する追加資本、流動性及びその他の健全性規制を含む、実施可能な措置を2010年10月末までに提案すべきである。

14.我々は、国際会計基準設定主体に対し、その独立した基準設定プロセスの枠内において、単一の質の高い世界的な会計基準を実現するための努力を倍増すること、そして2011年6月までに収れんプロジェクトを完了することを求める。国際会計基準審議会(IASB)の制度的枠組みは、様々な利害関係者の関与をさらに向上すべきである。

15.非協力的な国・地域(NCJs)と闘うという我々のコミットメントは、目覚しい成果を上げた。我々は、タックス・ヘイブン、資金洗浄、汚職、テロ資金供与及び健全性基準への対応に関するモメンタムを維持することにコミットしている。我々は、途上国の参加も含め、透明性及び情報交換に関するグローバルフォーラムの拡大を歓迎し、ピア・レビューの効果的なプログラム遂行への合意を歓迎する。このフォーラムの取組の主たる焦点は、税の透明性と情報交換を改善することによって、各国がそれぞれの課税ベースを守るために税法を完全に執行できるようにすることである。また、我々は2010年3月からタックス・ヘイブンに対する対抗措置を使用する用意をする。我々は、資金洗浄とテロ資金供与に対する闘いにおける、金融活動作業部会(FATF)の取組による進展を歓迎し、FATFに対し、リスクの高い国・地域のリストを2010年2月までに公表することを求める。我々は、FSBに対し、2009年11月に、国際協力と情報交換に関し、NCJsへの対処の進捗を報告し、2010年2月までにピア・レビューの手続を開始することを求める。

16.我々は、IMFに対して、金融セクターが銀行システムの修復のための政府の介入に関係するいかなる負担に対し公平かつ実質的な貢献をどのようになし得るかについての各国がとってきた又はとることを検討している一連の選択肢に関し、我々の次回会合のために、報告書を準備するよう指示する。

現在の世界経済を反映した国際機関の現代化

17.国際金融機関と世界の開発アーキテクチャーの近代化は、世界金融の安定化を促進し、持続可能な開発と最貧層の生活を向上させるための我々の努力にとって極めて重要である。我々は、国際金融機関(IFIs)の対応力と適応力に関するレビューについてのブラウン首相の報告を心から歓迎し、財務大臣に対して、報告書の結論を考慮するよう要請する。

IMFの権限、任務、及びガバナンスの改革

18.IMFの資金基盤を増強するという我々のコミットメントにより、IMFは新興国及び途上国への危機の拡大を止めることができた。このコミットメント、及び資金が効率的かつ柔軟に使用されるために必要なファシリティを創設するためにIMFがとった革新的な措置により、世界的なリスクは減少した。資本は再び新興国に流入している。

19.我々は、IMFが利用可能な資金を3倍にするという約束を履行した。我々は、新しい拡大されたIMF新規借入取極(NAB)に対して、5000億ドルを超えるコミットをしている。IMFは、合計2830億ドル相当の特別引出権(SDR)を配分し、そのうち1000億ドル以上が新興国と途上国が現在有している準備資産を補完するであろう。IMFの合意された金の売却益は、IMFの新しい収入モデルと一致しており、並びに内部資金及びその他の資金はIMFの中期的な譲許的貸付能力を倍以上に拡大する。

20.我々の危機に対する共同の対応は、国際協力による利益と、IMFがより正当、かつ有効であることの必要性を強調した。IMFは、世界的な金融安定化を促進し、成長の均衡を回復する上で、極めて重要な役割を果たさなければならない。我々は、革新的なフレキシブル・クレジット・ラインの創設を含む、IMFの融資制度改革を歓迎する。IMFは、資本フローの急変による経済混乱、及び過度な外貨準備の蓄積が必要との認識を減少させ、加盟国の金融市場の変動への対処を支援する能力の強化を継続すべきである。経済回復が確実になるにつれて、我々は、世界経済と国際金融システムが直面するリスクの公平・率直・中立なサーベイランスを提供するIMFの能力の強化のために協働する。我々は、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」の下での我々の努力を、各国の政策枠組み及びその政策枠組みが金融の安定と世界的な成長の水準とパターンに与える集合的な影響についてのサーベイランスを行うことを通して支援することをIMFに要請する。

21.IMFガバナンスの現代化は、IMFの信頼性、正当性及び有効性を改善する我々の努力の中核的な要素である。我々は、IMFは引き続きクォータを基礎とする機関であり、クォータ配分は、ダイナミックな新興国・途上国の力強い成長にかんがみ、相当変化している世界経済における加盟国の相対的地位を反映すべきだと認識する。そのために、我々は、現在のクォータ計算式を用いて、過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の、ダイナミックな新興国・途上国へのクォータ・シェア移転にコミットしている。また、我々は、IMFにおける最貧国の投票権の保護にコミットしている。我々は、2011年1月に完了するIMFのクォータ見直しに基づき、その一部として、この見直しを成功裏に終了させるために作業を加速化することを強く促す。この見直しの一部として、出資比率変更を容易にする能力に関係するIMFのクォータ増資の規模、理事会の規模と構成、理事会の実効性の向上方法、IMFの戦略的な監督へのIMF総務の関与を含む他の多くの重要な問題が議論される必要があることに合意する。スタッフの多様性は増大されるべきである。包括的な改革パッケージの一環として、すべての国際機関の長及び上級幹部は、開かれた、透明で、能力本位の選任プロセスを通して任命されるべきであることに合意する。我々は、2008年4月に合意したIMFクォータ及び代表権改革のパッケージを早急に実現しなければならない。

国際開発金融機関の任務、権限及びガバナンスの改革

22.国際開発金融機関(MDBs)は、我々が4月に行った、世界の最貧国における危機の影響を緩和するための融資の加速、拡大の要請に対し、融資ファシリティの合理化、新しいツールやファシリティ及び短期間での融資の拡大をもって対応した。国際開発金融機関は、約束した1000億ドルの貸出増額を着実に実施中である。我々は、国際開発金融機関が引き続きバランスシートを最大限活用することを歓迎し、慫慂する。我々はまた、米州開発銀行(IaDB)が一部のドナー国グループからの随時償還可能な資本拠出を一時的に利用したように、追加的な措置がとられたことを歓迎する。我々の財務大臣は、必要となった場合に払込み請求が可能な資本を一時的に使用するといった仕組みが、将来危機の際に、MDBの融資拡大のためにどのように利用できるか検討すべきである。我々は、国際金融機関及び譲許的融資ファシリティ、特に国際開発協会(IDA)及びアフリカ開発基金が適切に資金を有することを確保するという我々のコミットメントを再確認する。

23.我々は、危機の影響を緩和するために取り組むとともに、世界の長期的課題に対応するための世界的な開発アーキテクチャーを強化し、改革しなければならない。

24.我々は、開発と世界の貧困削減が、国際開発金融機関の中核的使命の中心であることに合意する。世界銀行と他の国際開発金融機関は、我々が気候変動や食料安全保障など、グローバルな本質を有し世界的に協調した行動が求められる課題に対応するために共に行動していくにあたって、決定的に重要である。世界銀行は、地域開発金融機関及び他の国際機関とともに、以下を強化すべきである:

・関連する他の専門機関と密接に協力し、農業生産性の向上、技術へのアクセス及び食料へのアクセスを改善することを通じて、食料安全保障に対してより焦点を当てる。

・最も貧しくかつ困難な環境において、人的開発及び人間の安全保障に取り組む。

・最貧困層や、社会的及び経済的な参加の促進、経済成長のための機会を強化するため、民間セクター主導の成長及びインフラ整備を支援する。

・持続可能なクリーン・エネルギーの産出及び利用、エネルギー効率性、気候変動耐性に関する投資を通じてグリーン・エコノミーに移行するための資金の面で貢献する。これは、気候変動に関する懸念を中核的な開発戦略に一体化すること、改善された国内政策、及び気候に対する新たな資金源にアクセスすることに関する各国のニーズに対処することを含む。

25.世界銀行及び地域開発金融機関は、その有効性を向上させるため、機関間の協調、必要に応じ、他の二国間及び多国間機関との強調を強化すべきである。これらの機関は、戦略及びプログラムに対する被援助国のオーナーシップを強化し、適切に政策対応を行う余地を認めるべきである。

26.我々は、世界銀行及び地域開発金融機関が、2010年前半までに行う一般増資の必要性に関するレビュー等を通じ、上記4点の課題及び開発マンデートを達成するために十分なリソースを有することが確保されるようにする。追加的リソースは、これら機関の有効性を確保するために鍵となる機構改革、すなわち、更なる機関間の強調協力及び明確な役割分担、透明性・説明責任・良きコーポレートガバナンスへのコミットメントの強化、新しい手法を開発し具体的な成果を達成する能力の向上、最貧国のニーズに対する一層の配慮が伴わなければならない。

27.我々は、世界銀行の適切性、有効性、正当性を確保するための投票権改革を通じて、ガバナンスと業務の有効性に関する改革を追求することにコミットする。我々は、世界銀行において、徐々に衡平な投票権に移行することの重要性を強調する。これは、各国の経済的地位及び世銀の開発使命を主として反映し、過小代表国の利益となるよう、この重要な調整の第1段階における1.46%の増加に加え、次の株式保有シェアの見直しにおいて途上国、体制移行国の投票権に少なくとも3%の意義ある増加をもたらすダイナミックな計算式を利用することを通じて行われる。過大代表国はこれに貢献することを認識しつつ、極めて小さな貧困国の投票権を保護することは重要となろう。我々は、2010年春の会合までに合意に達することに改めてコミットする。

エネルギー安全保障及び気候変動

28.多様で、信頼でき、購入可能で、かつクリーンなエネルギーへのアクセスは、持続可能な成長にとり極めて重要である。非効率な市場及び過剰変動性は、生産者及び消費者の双方に対し、否定的な影響を及ぼす。世界のエネルギー安全保障の促進においてエネルギー生産国、消費国及び輸送国が共有する関心を認識する、世界エネルギー安全保障に関するサンクトペテルブルグ原則に留意しつつ、我々は、個別に及び集団で、以下にコミットする。

・完全に、正確に、かつ時宜を得て、石油の生産、消費、精製及び在庫レベルに関するデータを、2010年1月から理想的には毎月、定期的に適切な場合には公表することによりエネルギー市場の透明性及び市場の安定性を向上させる。我々は、国際エネルギー・フォーラム(IEF)によって管理される石油データ共同イニシアティブに留意し、天然ガスに関するデータ収集の拡大を検討するための彼らの努力を歓迎する。我々は、エネルギーに関するデータ収集における各国の能力を改善し、エネルギー需給予測を改善するとともに、国際エネルギー機関(IEA)及び石油輸出国機構(OPEC)に対し、係る能力の発展に関し関心のある国を支援するための努力を傾注することを求める。我々は、需給トレンド、価格変動を含む市場のファンダメンタルズに関する我々の理解を向上するため、対話を強化するとともに、IEF専門家グループによる作業に留意する。

・商品先物市場に関する証券監督者国際機構(IOSCO)の勧告を実施し、また、関連監督機関に対し、我々の国内の商品先物市場においてトレーダーの持ち高が石油に大きく集中していることに関するデータを収集するよう求めることにより、エネルギー市場に対する規制監督を改善する。我々は、関連規制当局に対し、実施に向けた進捗に関し、次回会合で報告するよう求める。我々は、関連規制当局に対し、店頭石油市場の関連データも収集するとともに、過度な価格変動につながるような市場操作に対抗するための対策を講じることを指示する。我々は、可能な限り国際的に調整され、より詳細かつ構成要素に分かれたデータの公表を通じることを含め、商品市場に関する情報を更に精査し、改善することを呼びかける。我々は、IOSCOに対し、各国政府によるこれらの政策の作成及び実施、過度の変動に関するものも含めた更なる分析の実施、特定の勧告の策定を支援し、また、進展につき定期的に報告することを求める。

29.エネルギー効率性の向上は、エネルギー安全保障及び気候変動との闘いを推進する上で、重要で積極的な役割を果たし得る。非効率な化石燃料に対する補助金は、不経済な消費を奨励し、市場を歪曲させ、クリーン・エネルギー源への投資を阻害し、気候変動に対処する努力を損なう。経済協力開発機構(OECD)及びIEAは、化石燃料に対する補助金を2020年までに撤廃することにより、地球の温室効果ガスの排出を2050年までに10パーセント削減されることを明らかにした。多くの国は、最貧困層に対する悪影響を阻止しつつ、化石燃料に対する補助金を削減している。これらの努力に基づき、また、びエネルギー貧困に苦しむ人々の課題を認識し、我々は、以下にコミットする。

・中期的に、不経済な消費を奨励する非効率な化石燃料に対する補助金を合理化し、段階的に廃止する。この実施に際し、我々は、的を絞った現金移転の利用及び他の適切なメカニズムを通じることを含め、必要とする人々に対し不可欠なエネルギーサービスを提供する重要性を認識する。この改革は、クリーン・エネルギー、再生可能エネルギー及び温室効果ガスの排出を飛躍的に削減する技術に対する我々の支援には適用されない。我々は、エネルギー担当大臣及び財務大臣に、各国国内の状況を基にして実施戦略及び時間的枠組みを作成させ、次回首脳会合において報告させる。我々は、国際金融機関に対し、このプロセスにおいて各国を支援するよう求める。我々は、係る補助金が全世界で段階的に廃止されるような政策を採用するようすべての国に呼びかける。

30.IEA、OPEC、OECD及び世界銀行等の関連機関に対しエネルギー補助金の範囲に関する分析を提供し、このイニシアティブの実施に関する提案を行い、次回首脳会合において進展を報告するよう求める。

31.クリーンかつ再生可能なエネルギーの供給を増加させること、エネルギー効率性を改善すること、及び保全を推進することは、我々の環境を保護し、持続可能な成長を促進し、気候変動の脅威に対処するために決定的に重要な措置である。経済的に健全なクリーンかつ再生可能なエネルギー技術及びエネルギー効率性対策を加速的に採用することは、エネルギー供給を多様化し、我々のエネルギー安全保障を強化する。我々は、以下にコミットする:

・クリーン・エネルギー、再生可能なエネルギー及びエネルギー効率性への投資を刺激し、途上国における係るプロジェクトに対し資金及び技術支援を行う。

・共同研究の実施及び能力の構築を含むクリーン・エネルギー技術の普及又は移転を円滑化するための措置を講じる。この分野における貿易及び投資に対する障壁の削減又は撤廃は現在議論されており、任意に適当な場において追求されるべきである、

32.世界の主要経済国の首脳として、我々は、強じんで持続可能なかつグリーンな回復のために作業している。我々は、危険な気候変動の脅威に対処するために強力な行動をとるという我々の決意を改めて強調する。我々は、共通であるが差異のある責任を含め、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的、規定及び原則を再確認する。我々は、イタリアのラクイラにおける主要経済国フォーラムにおいて首脳により支持された原則に留意する。我々は、UNFCCC交渉を通じてコペンハーゲンで合意を達成するため、他の締約国と協力しつつ、我々の努力を強化する。合意は、緩和、適応、技術及び資金を含まなければならない。

33.我々は、財務大臣の作業を歓迎すると共に、彼らに対し、コペンハーゲンでのUNFCCC交渉において検討される材料として提供される、気候変動のファイナンスについての幅広いオプションが、次回会合において報告されるよう彼らに指示する。

最も脆弱な人々への支援の強化

34.多くの新興国及び途上国は、それらの経済が先進国の生産性のレベル及び生活水準に収れんしているため、生活水準の向上において急速に進展している。このプロセスは、今次危機により中断しており、実現にはまだ程遠い。最貧国は、特に金融危機が食料価格の世界的高騰の余波を受けた直後に発生したため、災難から脆弱な国民を保護する経済的クッションがほとんど無い。我々は、保健、教育、セーフティ・ネット及びインフラのような分野における極めて重要で中核となる支出を保護する低所得国(LICs)の能力に対する世界的な危機の悪影響に関し、懸念をもって留意する。国連の新たなグローバル・インパクト及び脆弱性に関する警戒システムは、最も脆弱な人々への危機による影響を監視するための我々の努力を支援する。我々は、金融危機の社会的影響を緩和し、世界のすべての部分が回復に参加することを確保するための集団的責任を共有する。

35.MDBsは、貧困との闘いにおいて鍵となる役割を果たす。我々は、最貧層に対する危機の影響を緩和するために、LICsに対し、加速的かつ追加的な譲許的資金支援の必要性を認識し、危機の間のMDBによる融資の増加を歓迎するとともに、最も脆弱な国に対する譲許的貸付の崩壊を回避するために必要な資金を有するMDBsを支援する。IMFはまた、危機の間、LICsに対する譲許的融資を増加した。新たな収入モデルと整合的なIMFの金売却による資金並びに内部及び他の財源からの資金は、IMFの中期的な譲許的貸付能力を倍増する。

36.幾つかの国は、自発的に、国の状況に整合性をとりつつ、最貧国に対するIMFの融資を支援するために既存のSDR資金を活用することを認めるメカニズムを創設することを検討している。我々は、危機の影響を緩和するために取り組むときでさえ、世界の長期的課題に対応するための世界的な開発アーキテクチャーを強化し改革しなければならない。我々は、関連する大臣に対し、低所得国を将来の危機から保護するためのIDAの新たな危機支援ファシリティの利益、及び保証の拡大利用を含む、中所得国の投資計画を危機発生時の中断から保護する際の金融制度の更なる利用を探求することを求める。

37.我々は、2010年及び2010年以降に向けてミレニアム開発目標及び貿易のための援助、債務救済、グレンイーグルスにおけるコミットメント、特にサブ・サハラアフリカに対するコミットメントを含む各国の政府開発援助(ODA)公約を満たすための、我々の歴史的なコミットメントを再確認する。

38.危機発生前でさえ、あまりにも多くの人々がいまだ飢餓及び貧困に苦しみ、更に多くの人々はエネルギー及び金融へのアクセスを欠いていた。危機がこの状況を悪化させたことを認識しつつ、我々は、貧困層のための食料、燃料及び金融へのアクセスを改善するための協力を誓約する。

39.持続的な資金及び的を絞った投資は、長期的な食料安全保障を改善するために早急に必要とされている。我々は、ラクイラにおいて表明された食料安全保障に関するイニシアティブ並びに農業及び食料安全保障のためのグローバル・パートナーシップを更に実施し、過度の価格変動に対処するための努力を歓迎し、支持する。我々は、世界銀行に対し、関心ドナー及び組織と協働して、低所得国に対する農業支援を拡大するための多国間信託基金を設立することを求める。このことは、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)を通じて発展したようなプログラムを含め、世界における栄養状況の改善及び持続可能な農業システムを構築するための革新的な二国間及び多国間の努力を支持することに資する。これは、アクラで合意された援助効果向上に関する原則を十分に尊重しつつ、各国のオーナーシップ及び迅速な資金の支払いを確保するために策定され、民間財団、企業及び非政府組織(NGOs)によるこの歴史的な取組への参加を円滑化するべきである。これらの努力は、国連の農業に関する包括的枠組みを補完すべきである。我々は、世界銀行、アフリカ開発銀行、国連、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連世界食糧計画(WFP)及び他の利害関係者に対し、食料不安に対処するための他の既存の多国間及び二国間の努力を補完し強化するために、国主導のメカニズムを通じることを含めこれらの努力と協調させることを求める。

40.エネルギーへのアクセスを向上するために、我々は、クリーンで、購入可能なエネルギー源を開発途上世界に展開することを促進する。我々は、再生可能エネルギー拡大プログラム及び貧困層へのエネルギー・イニシアティブ等の目的を達成するためのプログラムに、自発的に資金を提供するとともに、二国間の努力を強化しより緊密に調和させることにコミットしている。

41.我々は、貧困層のための金融サービスへのアクセスを向上することにコミットする。我々は、貧困層に届くような新たな金融サービスの提供を安全に、かつ健全に普及することへの支持に合意し、マイクロファイナンスの例を基にし、中小企業(SME)の資金調達に関し成功したモデルを拡大する。貧困層支援協議グループ(CGAP)、国際金融公社(IFC)及び他の国際機関と共に作業しつつ、我々は、G20金融包摂専門家グループを立ち上げる。このグループは、これらのグループに対する金融サービスの提供における革新的アプローチに関して学んだ教訓を特定し、成功した規制及び政策アプローチを促進し、金融アクセス、金融リテラシー及び消費者保護に関する基準を具体化する。我々は、持続可能かつ測定可能な形で、いかにして公的資金が民間資金の展開を最大化することができるかにつき、最良の提案を行うことを民間部門に求める、G20中小企業金融チャレンジを立ち上げることにコミットする。

42.我々が途上国への資本の流れを増加させるに際し、我々はまた、その違法な流出を阻止する必要がある。我々は、盗難資産の途上国への返還を確保するために世界銀行の不正蓄財回収(StAR)プログラムとともに取り組み、違法な流出を止めるための他の取組を支援する。我々は、FATFに対し、顧客デューディリジェンス、受益所有及び透明性に関する水準を向上するための取組を優先することにより腐敗による収益を探知し、阻止することを支援するよう求める。我々は、援助効果向上に関するパリ宣言及びアクラ行動計画の原則に留意し、2010年までに国際援助の流れの透明性を向上するために取り組む。我々は、OECD外国公務員贈賄防止条約等の国境を越えた贈賄に対する法の採用及び執行、G20による国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准及びドーハにおける第3回締約国会議の間に、効果的で、透明性が高く、その実施のレビューのために包含的なメカニズムの採択を求める。我々は、採取産業による政府への支払の定期的な公開及び政府に記録されている資金の受領に対する金額の一致を求める採取産業透明性イニシアティブへの自発的な参加を支持する。

質の高い仕事を回復の中心に置く

43.我々の国々の迅速で、力強くかつ継続した対応は、何百万の雇用を守り、又は創出してきた。国際労働機関(ILO)の試算に基づけば、我々の努力は、本年末までに少なくとも700万から1,100万の雇用を創出、又は守るであろう。力強い行動なしには、経済が安定化した後でさえ、我々の多くの国においては、国民の中で最も脆弱な層に対して過度な影響を与えながら、失業は増加し続けそうである。成長が回復するにつれて、すべての国は、雇用が迅速に回復することを確保するために行動しなければならない。我々は、人間らしい働きがいのある仕事を支援し、雇用の保全を助け、雇用の増加を優先する回復計画の実施にコミットする。加えて、我々は失業者と最も失業の危機にさらされている人々に対して、所得、社会的保護及び訓練支援を引き続き提供する。我々は、今回の危機が国際的に認知された労働基準を無視し、又は弱める口実にはならないことに合意する。世界的成長が幅広く利益となることを確保するため、我々は、ILOの労働における基本的原則及び権利と整合的に政策を実施すべきである。

44.強固で持続可能かつ均衡ある成長のための我々の新たな枠組みは、より包括的な労働市場、積極的労働市場政策、及び質の高い教育と訓練プログラムを作り出すための構造改革を必要とする。各国が、自国の政策を通じて、労働者が変化する市場の需要に適応し、技術革新、及び新たな技術、クリーン・エネルギー、環境、保健、およびインフラに対する投資から利益を受ける能力を強化する必要がある。労働者を彼らの現在の特定のニーズに見合うように訓練することはもはや十分ではなく、我々は、生涯にわたる技能の開発を支援し将来の市場のニーズに焦点を当てる訓練プログラムへのアクセスを確保すべきである。先進国は、この分野において途上国が能力を築き、強化することを支援するべきである。これらの措置は、新たな発明と成長への既存の障害が取り除かれることによる利益が広く共有されることが確実になることを助ける。

45.我々は、成長戦略と投資において、しっかりとした訓練を行う努力を支援することを誓約する。我々は、成果をもたらす雇用及び訓練計画は、しばしば雇用者及び労働者と共に策定されていることを認識し、ILOに対して、他の組織と協力しつつ、関係者やNGOを招集し、我々の検討のために訓練戦略を作成することを求める。

46.我々は、将来の経済成長のために、雇用指向の枠組みを構築することの重要性に合意する。この文脈において、ロンドン雇用会合(G20雇用専門家会合)、及びローマ社会サミット(G8労働大臣会合)の重要性を再確認する。我々はまた、最近採択されたILOの決議「危機からの回復:世界労働協定」を歓迎し、グローバリゼーションの社会的側面を向上させるためにその一般的枠組みの中の重要な要素を自国で採用することにコミットする。国際機関は、危機、危機後の分析、及び政策策定行動において、ILOの基準及び労働協定の目標を考慮すべきである。

47.雇用政策への継続的な焦点を確保するために、ピッツバーグ・サミット議長は、米国労働長官に対して、労働及び産業界と協議しつつ、また、雇用危機に関する、来るOECD雇用労働大臣会合を踏まえ、2010年の早い時期に各国の雇用労働担当大臣を集めて会合を開催することを指示した。我々は大臣に対し、変化する雇用情勢を評価し、我々が採用した政策の影響に関するILO及び他の組織からの報告をレビューし、更なる措置が望ましいかどうかについて報告し、並びに中期的な雇用及び技能開発政策、社会保護プログラム、労働者が科学技術の発展を活用する準備を確実に行えるようにするベスト・プラクティスを検討するよう指示する。

開放的な世界経済

48.世界貿易及び投資の回復が継続することは、世界の成長の回復に不可欠である。保護主義との闘いにおいて我々が結束することは極めて重要である。我々は2500億ドルの貿易金融イニシアティブの迅速な実施を歓迎する。我々は市場の開放と自由を維持し、ワシントン及びロンドンで採択されたコミットメントを再確認する。すなわち、投資あるいは物品及びサービスの貿易に対する障壁を設けたり新たな障壁を課したりせず、新たな輸出制限を課さず、世界貿易機関(WTO)と整合的でない輸出刺激策をとらず、そのような措置がとられれば是正していくことにコミットする。我々は、財政政策や金融セクター支援措置を含む国内政策措置が貿易・投資に与えるいかなる悪影響も最小化する。我々は、金融保護主義に逃避せず、特に世界の資本フローを抑制する措置、取り分け途上国への資本フローを抑制する措置に逃避しない。我々は、関連するあらゆる貿易措置について、WTOに迅速に通報する。我々は、WTO、OECD、IMF及び国連貿易開発会議(UNCTAD)による今般の共同報告書を歓迎し、これらの国際機関に対し、それぞれの権限の範囲内で引き続き状況を監視し、四半期毎にこれらのコミットメントへの遵守について公表することを求める。

49.我々は、さらなる貿易自由化に、引き続きコミットしている。我々は、モダリティーに関するものも含むこれまでの進展を基礎として、マンデートと整合的に2010年までにドーハ開発ラウンドの野心的でバランスのとれた妥結を追求することを決意している。我々は、WTOが多国間プロセスの中心であることに留意しつつ、残りの相違点を評価し、埋めていくために、各国が直接関与することが必要であることを理解する。我々は、交渉が2010年に妥結するためには、立場の相違が可及的速やかに埋められなければならないことに留意する。我々は、大臣に対し、デリー閣僚会合の後にジュネーブにおいて合意した作業プログラムの結果を考慮し、2010年の早い時期までに状況を評価し、農業及び非農産品市場アクセス、並びにサービス、ルール、貿易円滑化及びその他の分野につき進展を追求することを求める。我々は関与を継続し、次回会合において交渉の進展をレビューする。

ピッツバーグからの道程

50.本日、我々は、G20を我々の国際経済協力に関する第一のフォーラムとして指定した。我々は、我々の代表者に、我々の協力の有効性をいかに最大化するかについての勧告を次回会合で報告することを求める。我々は、2010年6月にカナダで、2010年11月に韓国で、G20サミットを開催することに合意した。我々は、その後毎年会合を開催することを期待するとともに、2011年にフランスで会合する。

別添I:持続可能な経済活動のための中核的価値

1. 今般の経済危機は、責任に根ざした、持続可能で世界的な経済活動という新しい時代に向かうことの重要性を示した。現在も続くこの危機により、我々の成長と繁栄とが互いにつながっており、世界経済のグローバル化に壁を設けることができる地域は世界中のどこにもないという根本的な認識が、改めて確認された。

2. 我々各国首脳は、ピッツバーグ・サミットに集い、経済の再安定化と明日の繁栄のためには、協調行動が必要であることを認識した。我々は、消費者、労働者、投資家及び起業家といったすべての利害関係者が、バランスのとれ、衡平かつ包括的な世界経済に参加できることを確保するため、責任ある行動をとることを約束する。

3. 国家の内部及び国家を越えたバランスのとれた成長、一貫性のある経済、社会及び環境に係る戦略、並びに強固な金融システム及び効果的な国際的協調を通じ、我々の国民のためにより広範にわたる繁栄を促進するための包括的な目標を、我々は共有する。

4. 我々は、経済発展及び繁栄には異なるアプローチがあること、また、これらの目標に到達するための戦略は、各国の状況によって異なり得ることを認識する。

5. 我々はまた、一定の主要な原則が不可欠であることに合意し、この精神に基づき、以下の中核的価値を尊重することを約束する。

○ 我々は、長期的な経済目標に寄与し、持続不可能な世界的な不均衡の回避の助けとなる健全なマクロ経済政策を確保する責任を有する。

○ 我々は、あらゆる形態の保護主義を排斥し、開かれた市場を支持し、公平かつ透明性ある競争を発展させ、また、世界各地で起業家精神と技術革新を促進する責任を有する。

○ 我々は、適切な規則及びインセンティブを通じ、適切性、公正性、及び透明性に基づいて金融及びその他の市場を機能させることを確保し、並びに持続可能な経済活動のための効率的な資源配分を支えるためにビジネスを奨励する責任を有する。

○ 我々は、監督、透明性及び説明責任の強化により、家計、ビジネス及び生産性のある投資のニーズに応える金融市場を提供する責任を有する。

○ 我々は、環境を保全し気候変動の課題に対応した持続可能な消費、生産、及び資源の利用を通じて我々の未来を確実なものとする責任を有する。

○ 我々は、教育、職業訓練、適切な労働条件、医療保険及び社会的なセーフティ・ネット支援の提供を通じて人々に投資し、貧困、差別及びあらゆる形態の社会的疎外と戦う責任を有する。

○ 我々は、貧富にかかわらず、すべての国が、経済成長の恩恵が広範かつ衡平に共有される持続可能かつバランスのとれた世界経済を建設するためのパートナーであることを認識する責任を有する。我々はまた、国際的に合意された開発目標の達成について責任を有する。

○ 我々は、世界経済の変化及びグローバリゼーションの新たな課題に対応した国際的な経済及び金融の構造を確保する責任を有する。

強固で持続可能かつ均衡ある成長のためのG20の枠組み

1. 各国は、強固で持続可能かつ均衡ある成長を達成するための政策を採用するとともに、強じんな国際金融システムを促進し、開放的な世界経済の利益を享受する共有された責任を有する。この目的のために、我々の戦略は、各国ごとに異なりうることを認識する。強固で持続可能かつ均衡ある世界的成長のための我々の枠組みにおいて、我々は、

○ 短期的な柔軟性の考慮とより長期的な持続可能性確保の必要性に注意を払いつつ、責任ある財政政策を実施する。

○ 金融システムにおいて過度な貸出しの成長及び過度なレバレッジの再現を防ぐために金融監督を強化するとともに、貸出し及び資産価格の循環が不安定化の要因とならないようにするためのマクロ健全性及び規制政策を実施する。

○ 世界的な繁栄と成長の持続可能性を推進するために、より均衡のとれた経常収支を促進し開かれた貿易及び投資を支持するとともに、保護主義的な措置を積極的に拒否する。

○ 根底にある経済的なファンダメンタルズを反映して市場で形成される為替レートの下で、物価安定と整合的に金融政策運営を行う。

○ 潜在成長率を上昇させるための構造改革を実施し、必要な場合には、社会的セーフティ・ネットを改善する。

○ 開発の不均衡を減少させ貧困を削減するために、均衡ある持続可能な経済開発を促進する。

2. 我々は、より均衡ある世界経済の成長を確保するためのプロセスは秩序立てて行われる必要があることを認識する。すべてのG20参加国は、各々の経済の弱い部分に対応することに合意する。

○ 継続して大幅な対外赤字を計上するG20参加国は、開かれた市場を維持し輸出セクターを強化しつつ、民間貯蓄を支援する政策を実施し、財政再建を行うことを誓約する。

○ 継続して大幅な対外黒字を計上するG20参加国は、国内における成長の源を強化することを誓約する。各国の状況に応じ、これには、投資の増加、金融市場のゆがみの減少、サービス・セクターの生産性向上、社会的セーフティ・ネットの改善、需要成長への障害の除去、が含まれる。

3. G20参加国は、その経済の健全な運営について、一義的責任を負う。G20参加国はまた、世界経済全体の健全性を確保することについて国際社会に対し責任を負う。定期的な協議、マクロ経済政策に関する強化された協力、構造政策に関する経験の交換、及び現在行われている評価は、我々の協力関係を強め、質の高い政策の採用を促進する。我々の相互評価のプロセスの一部として、

○ G20メンバーは、共通の政策目標に合意する。これらの目標は、状況の進展に応じて更新される。

○ G20メンバーは、中期的政策の枠組みを設定し、各国の政策枠組みの世界の成長の水準とパターンへの集合的な影響を評価し、金融の安定への潜在的リスクを特定するために協働する。

○ G20首脳は、相互評価の結果に基づき、我々の共通の政策目標を達成する観点から何らかの措置を考慮、合意する。

4. 我々は財務大臣に対し、各国の国内政策が集合的に世界経済に与える影響を分析する相互評価のプロセスを構築するよう求める。その達成のため、IMFの支援を得て、財務大臣は以下を行うべきである。

○ 需給、貸出し、債務及び外貨準備高の成長のパターンが、強固で持続可能かつ均衡ある成長に資するどうかの評価を行うのに役立つ、G20の経済発展に関する将来予測の評価の枠組みを構築する。

○ 財政政策及び金融政策、貸出しの伸び及び資産市場、外国為替の状況、一次産品及びエネルギー価格並びに経常収支不均衡の影響及び整合性を評価する。

○ G20とIMFC双方に対して、世界経済の状況、重要なリスク、並びに需要成長のパターンに関する懸念及びG20に対し提言される個別の及び全体の政策調整に関して、定期的に報告を行う。