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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 金融システムの強化に向けたさらなる取組に関する宣言

[場所] ロンドン
[年月日] 2009年9月5日
[出典] 財務省
[備考] 財務省仮訳
[全文]

我々、G20財務大臣及び中央銀行総裁は、過度のリスクの蓄積と将来の危機の発生を防ぎ、持続可能な成長を支えるために金融システムを強化するという我々のコミットメントを再確認した。

我々は、グローバルな規制と監督のための強固で包括的な枠組みを確立する、野心的な計画の実行において著しい進捗を示した。金融安定理事会(FSB)及び透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムはその役割とメンバーを拡大した。規制当局は、リスクの高いトレーディング、オフバランスシート項目及び証券化商品に対するより厳格な資本要件に合意した。また、景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)への取組みについて提言をまとめ、報酬及び預金保険に関する重要な原則を公表、30以上の監督カレッジを設置した。

しかし、モメンタムを維持し、システムをより強靭なものとし、競争条件の公平を確保するためには、以下の措置等がさらに必要である。

1.コーポレート・ガバナンスや報酬慣行における以下の枠組みの実行に関する、2009年中の明確ではっきりとした進捗。このことは、FSBの原則に基づき、その原則の適用を強化することで、国際的に整合性をもって、過度の短期的なリスクテイキングを防ぎ、システミックリスクを抑制する。

oリスクテイキングに重要な影響力を有する者の報酬の水準及び体系の開示及び透明性の向上

o報酬慣行が長期的な価値創造や金融安定と整合的であることを確保するための、支払繰延べ、実効的な取り戻し、固定報酬と変動報酬の関係、ボーナス保障を含む、報酬体系に関する国際基準

o報酬委員会の独立性や責任の強化を含む、取締役会による報酬とリスクに対する適切な監視を確保するためのコーポレート・ガバナンス改革

我々は、FSBに対し、ピッツバーグ・サミットにおいて、監督上の措置としてとりいれ得るこうした枠組みの構築及びその実施の厳重なモニタリングに関する詳細かつ具体的な提案について報告するよう求める。我々は、また、FSBに対し、変動報酬全体を制限するアプローチについて検討するよう求める。G20各国政府は、FSB原則の不遵守への取組みについても検討する。

2.システム上重要な金融機関の規制と監督の強化-破綻に伴うより高いコストを反映したより厳格な健全性要件の検討を迅速に進めること、システム上重要な金融機関に対して各社別に緊急時の対処計画の作成を求めること、破綻処理における国際的な連携の強化のために、国境を越えて活動する大規模な金融機関に関する危機管理グループを設置すること、危機時の介入及び破たん処理に関する法的枠組みを強化すること。システム上重要な金融機関の規制と監督の強化-破綻に伴うより高いコストを反映したより厳格な健全性要件の検討を迅速に進めること、システム上重要な金融機関に対して各社別に緊急時の対処計画の作成を求めること、破綻処理における国際的な連携の強化のために、国境を越えて活動する大規模な金融機関に関する危機管理グループを設置すること、危機時の介入及び破たん処理に関する法的枠組みを強化すること。

3.健全性規制の強化の検討を迅速に進める: 景気回復が確実になれば、銀行に対し保有自己資本の量と質の向上を求めること、景気循環抑制的なバッファーを導入すること、バーゼル規制の枠組みにおける要素としてのレバレッジ比率や質の高い流動性に関する国際的な最低限の量的基準を検討すること、バーゼルIIの枠組みにおけるリスク捕捉を引き続き改善すること、マクロ健全性に関する手法の検討作業を加速させること、コンティンジェント・キャピタル(強制転換条件付証券)の可能性について検討すること。我々は、銀行に対し、貸出増強が必要な場合には、資本を積むために、現在の利益についてより多くの割合を留保するよう求める。

4.非協力的な国・地域(NCJs)に対する取組み:ピア・レビュー、能力構築及び規制水準、資金洗浄・テロ資金供与対策及び税に関する情報交換基準を満たさないNCJsに対する対抗措置からなる効果的なプログラムの実施。2010年3月からタックス・ヘイブンに対する対抗措置を使用する用意をし、途上国が、多国間枠組を通じる可能性も含め、新たな税の透明性により恩恵を得ることを確保する。FSBに対し、2009年11月までに規制水準に係る評価尺度と遵守状況について報告するよう求める。

5.新たなリスクの発生と規制裁定行為を防ぐため、バーゼルIIを含め、特に、クレジットデリバティブの中央清算機関、格付会社及びヘッジファンドの監督、証券化商品に関する量的な保有要件に関し、国際基準を整合的に協調して実施。

6.金融商品、貸倒引当金、オフバランスシート・エクスポージャー、減損及び金融資産の評価に関する単一の質の高いグローバルな独立した会計基準への収れん。独立した会計基準設定プロセスの枠組み内において、国際会計基準審議会(IASB)は、バーゼル委のIAS39号(金融商品に関する国際会計基準)の見直しに資する基本原則、及び、金融危機諮問グループの報告書を考慮に入れることを慫慂され、また、その定款の見直しを通じ、健全性規制当局及び新興市場国を含む利害関係者の関与が改善されるべき。