データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 金融・世界経済に関する首脳会合 宣言

[場所] ワシントン
[年月日] 2008年11月15日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

1.我々、G20の首脳は、世界経済及び金融市場に対する深刻な挑戦の中、ワシントンにて、2008年11月15日に最初の会合を開いた。我々は、協力を強化し、世界経済の成長を回復し、世界の金融システムに必要な改革を達成するために、協働することを決意した。

2.この数ヶ月の間、我々は、世界経済を支え、金融市場を安定化させるため、緊急かつ例外的な措置をとってきた。この努力は継続しなければならない。同時に我々は、今回のような世界的な危機の再発防止の確保に資するよう、改革のための基盤を構築しなければならない。我々の作業は、市場原理、開かれた貿易・投資体制及び効果的に規制された金融市場が、経済成長、雇用及び貧困削減に不可欠なダイナミズム、技術革新及び起業家精神をはぐくむとの共有された信念に導かれるであろう。

現在の危機の根本原因

3.この10年弱の高い世界経済の成長、資本フローの伸び及び長期にわたる安定が続いた期間に、市場参加者はリスクを適正に評価せず、より高い利回りを求め、適切なデュー・ディリジェンスの実施を怠っていた。同時に、脆弱な引き受け基準、不健全なリスク管理慣行、ますます複雑で不透明な金融商品及びその結果として起こる過度のレバレッジが組み合わさって、システムの脆弱性を創出した。いくつかの先進国において政策立案者、規制当局及び監督当局は、金融市場において積み上がっていくリスクを適切に評価、対処せず、また金融の技術革新の速度について行けず、あるいは国内の規制措置がシステムにもたらす結果について考慮しなかった。

4.現下の状況をもたらした背後にある主な要素は、一貫性と十分な調整の欠けたマクロ経済政策と不十分な構造改革などであり、これらが世界的マクロ経済上の持続不可能な結果を導いた。こうした状況が、過剰を助長し、究極的には深刻な市場の混乱をもたらした。

とられた措置及びとるべき措置

5.我々は、これまでに、経済を刺激し、流動性を供給し、金融機関の資本を増強し、貯蓄と預金を保護し、規制上の欠陥に対処し、信用市場の機能を回復させるために、強力で重要な措置をとってきており、国際金融機関(IFIs)が世界経済のために重要な支援を提供することを確保するよう行動している。

6.しかし、金融市場を安定化させ、経済成長を支援していくためには、より多くのことを行う必要がある。経済のモメンタムは主要な経済国において大幅に減速しつつあり、世界経済の見通しは弱まっている。この10年間に世界経済の維持に寄与した新興市場国の多くは、依然として良好な成長を示しているが、世界規模の減速によって、次第に悪影響を受けつつある。

7.世界的な経済状況の悪化を背景として、我々は、成長を回復し、悪い波及効果を回避し、新興市場国と途上国を支援するために、より緊密なマクロ経済上の協力に基づいて、より広範な政策対応が必要とされていることに合意した。我々は、これらの目的を達成するとともに長期的な課題に対処するための喫緊の措置として、

○我々の精力的な努力を継続し、金融システムの安定に必要なあらゆる追加的措置をとる。

○国内の状況から適切と判断される場合には、金融政策による支援の重要性を認識する。

○財政の持続可能性を確保する政策枠組みを維持しつつ、状況に応じ、即効的な内需刺激の財政施策を用いる。

○流動性ファシリティ及びプログラム支援等を通じて、現在の困難な金融情勢の下における新興市場国や途上国による資金調達を支援する。我々は、危機対応における国際通貨基金(IMF)の重要な役割を強調し、その新たな短期流動性ファシリティを歓迎し、柔軟性を確保するためにその手段とファシリティについての継続中の見直し作業を促す。

○世界銀行及びその他の国際開発金融機関(MDBs)が、開発アジェンダの支援のためにその能力を完全に活用するよう奨励し、インフラと貿易金融の分野における世界銀行による最近の新ファシリティの導入を歓迎する。

○IMF、世界銀行及びその他の国際開発金融機関(MDBs)が、引き続き危機克服においてその役割を果たしていくために十分な資金基盤を確保する。

金融市場の改革のための共通原則

8.上記の措置に加えて、我々は、危機の再来を防止するために、金融市場と規制枠組みを強化する改革を実施する。規制は、市場の不安定性を防止する第一次的な役割を持った各国規制当局の第一の最も重要な責任である。しかしながら、我々の金融市場が、世界的な規模であることから、国際金融の安定に悪影響を及ぼす国境を越えた地域的及び世界的な動向を防止するためには、規制当局間の強化された国際連携及び必要に応じた国際基準の強化とその一貫した実施が必要である。規制当局は、その措置が市場の規律を支え、規制逃れを含む他国への潜在的な悪影響を回避し、市場における競争、ダイナミズム、技術革新を支援することを確保しなければならない。金融機関もまた、混乱に対する責任を負わなければならず、損失を認識し、開示を改善し、及びガバナンスとリスク管理の慣行を強化すること等を含めて、混乱を克服するために役割を果たすべきである。

9.我々は、以下の改革のための共通原則と整合的な政策を実施することにコミットする。

○透明性及び説明責任の強化

  我々は、複雑な金融商品に関する義務的開示の拡大及び金融機関の財務状況に関する完全かつ正確な開示の確保を含め、金融市場の透明性を強化する。インセンティブは過度のリスク・テイクを回避するよう調整されるべきである。

○健全な規制の拡大

  我々は、規制枠組み、健全性監督、リスク管理を強化し、すべての金融市場、商品、参加者が状況に応じて適切に規制され、あるいは監督の対象となることを確保することを誓約する。我々は、合意され強化された国際的行動規範に整合的に、信用格付会社に対する強力な監督を実施していく。我々はまた、規則が効果的で、技術革新を抑制せず、金融商品とサービスの取引の拡大を促すことを確保しつつ、規制枠組みを景気循環に対してより効果的にしていく。我々は、我々の国内規制制度についての透明性の高い審査にコミットする。

○金融市場における公正性の促進

  我々は、投資家と消費者の保護を強化し、利益相反を回避し、不法な相場操縦、詐欺行為、濫用を防止し、非協力的な国・地域から生じる不正な金融リスクに対抗することにより、世界の金融市場における公正性を保護することにコミットする。我々はまた、銀行機密と透明性に関する国際的な基準にまだコミットしていない国・地域に関する観点を含む情報共有を促進する。

○国際連携の強化

  我々は、各国及び地域の規制当局に対し、その規則やその他の措置を整合的な形式で策定するよう要請する。規制当局は、国境を越える資本フローを含め金融市場のすべての部門において協調と連携を強化すべきである。規制当局及びその他の関連する当局は、優先的な課題として、危機の予防、管理及び破綻処理のための連携を強化すべきである。

○国際金融機関の改革

  我々は、ブレトン・ウッズ機関の正当性と有効性を高めるために、世界経済における経済的な比重の変化をより適切に反映することができるようこれらの機関の改革を推進することにコミットしている。この観点から、最貧国を含め、新興市場国及び途上国がより大きな発言権及び代表権を持つべきである。金融安定化フォーラム(FSF)は、加盟国をより広く新興市場国に早急に拡大しなければならず、その他の主要な基準設定主体は、その加盟国を迅速に見直さなければならない。IMFは、拡大されたFSF及びその他の機関と協働しつつ、脆弱性をより特定し、潜在的な緊迫を予測し、危機対応において重要な役割を担うよう速やかに行動しなければならない。

閣僚及び専門家への指示

10.我々は、これらの原則を実施するために、迅速に行動をとることにコミットしている。我々は、財務大臣に対し、G20の2009年の指導役(ブラジル、英国、韓国)の調整により、プロセス及びそのスケジュールを開始するように指示した。これらの原則を実施する具体的な措置の最初のリストが、2009年3月31日までに完結すべき優先的な措置を含め、添付の行動計画に規定されている。

我々は、他の経済国及び既存の機関と協議を行い、彼らが任命する、優れたかつ独立した専門家の提言を参考にしつつ、財務大臣に対し、以下の特定の分野において追加的な提言を策定するよう要請する。

○規制政策における景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)を緩和する。

○市場の混乱時において特に、複雑な証券について、国際会計基準を見直し、調整する。

○店頭(OTC)市場のインフラの改善を含む、信用デリバティブ市場の強靱性と透明性を強化し、システミック・リスクを軽減する。

○リスク・テイクと技術革新のためのインセンティブに関連していることから、報酬の慣行を見直す。

○国際金融機関の権限、ガバナンス及び資金需要を検討する。

○システム上重要な機関の範囲を定義し、それらに対する適切な規制又は監督を決定する。

11.金融システム改革におけるG20の役割にかんがみ、我々は、本日合意された原則と決定の実施をレビューするために、2009年4月30日までに、再び会合する。

開放的な世界経済へのコミットメント

12.我々は、これらの改革が、法の支配、私的財産の尊重、開かれた貿易と投資、競争的市場、効率的で効果的に規制された金融システムといった、自由市場原則へのコミットメントを基盤とする場合にのみ成功することを認識する。これらの原則は、経済成長および繁栄にとって不可欠であり、何百万人もの人々を貧困から救い上げ、世界的な生活水準を著しく向上させた。金融セクターの規制を改善させる必要性を認識しつつ、我々は、経済成長を阻害し、途上国などへの資金フローの収縮を激化させる過剰規制を回避しなければならない。

13.我々は金融が不確実な時期において、保護主義を拒否し内向きにならないことの決定的な重要性を強調する。この観点から、今後12ヶ月の間に、我々は投資あるいは物品及びサービスの貿易に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限を課さず、世界貿易機関(WTO)と整合的でない輸出刺激策をとらない。さらに、我々は、野心的かつバランスのとれた成果をもたらす形で、WTOのドーハ開発アジェンダを成功裏に妥結に導くモダリティについて本年合意に到るよう努力する。我々は、貿易担当大臣に対してこの目標の達成を指示し、また必要に応じて直接支援を行う用意をしておく。我々はまた、我々の国々が世界の貿易体制に最も大きな利害関係を有しているのであり、したがってそれぞれが、このような成果の達成に必要な前向きな貢献をしなければならないことに合意した。

14.我々は、現下の危機が発展途上国、特に最も脆弱な国に与える影響に留意する。我々は、ミレニアム開発目標の重要性、我々がこれまでに行った開発援助のコミットメントを再確認し、先進国及び新興市場国の双方に対し、世界経済における役割にふさわしいコミットメントを行うよう促す。この観点で、我々はオーナーシップと開発のためのすべての資金源の動員を強調したメキシコのモントレーにおける2002年国連開発資金国際会議で合意された開発原則を再確認する。

15.我々は、エネルギー安全保障と気候変動、食料安全保障、法の支配、テロ及び貧困と病気との闘いといった重大な挑戦に対処することにコミットしている。

16.我々が前進するにあたり、我々は、継続的なパートナーシップ、協力及び多国間主義を通じて、これらの課題を克服し、世界経済の安定と繁栄を回復させる。

改革のための原則を実行するための行動計画

 本行動計画は、改革のための5つの合意原則を実行するために、包括的な作業計画を定めるものである。我々の財務大臣は、本行動計画で設定された課題が、完全かつ精力的に実行されることを確保するよう努める。財務大臣は、IMFや拡大された金融安定化フォーラム(FSF)、基準設定主体を含む関連する主体による進行中の作業に基づく、これらの提言の策定と実施に責任を持つ。

透明性及び説明責任の強化

2009年3月31日までの当面の措置

・世界の主要な会計基準設定主体は、特に市場の混乱時における、複雑な流動性のない商品の価格評価も考慮に入れて、証券の価格評価のガイダンスを強化するための作業を行う。

・会計基準設定主体は非連結特別目的会社のための会計及び開示の基準に関する脆弱性に対処するための作業を大きく進展させる。

・規制当局及び会計基準設定主体は、市場参加者に対する、金融機関による複雑な金融商品の義務的開示を強化する。

・金融の安定を促進する観点から、特に透明性、説明責任、及びこの独立主体と関係当局との適切な関係を確保するために、その構成員の見直しを含め、国際会計基準設定主体のガバナンスを更に強化する。

・私募ファンド及び・あるいはヘッジファンドに関するベスト・プラクティスを既に策定している民間団体は、一連の統一されたベスト・プラクティスの提案を提示する。財務大臣は、規制当局、拡大されたFSF、及びその他関連機関の分析に基づき、これらの提言の適切性を評価する。

中期的措置

・世界の主要な会計基準設定主体は、単一の、質の高い国際基準を創設することを目的に、精力的に作業を行う。

・規制当局、監督当局及び会計基準設定主体は、状況に応じ、質の高い会計基準の一貫した適用及び実施を確保するため、相互に、また民間セクターと継続的に協力して作業をする。

・金融機関は、必要に応じて、国際的なベスト・プラクティスに基づいて、財務報告において、リスク開示を強化するとともに、すべての損失を継続的に開示する。規制当局は、金融機関の財務諸表が、金融機関の活動(非連結の活動を含む)を完全、正確かつ適時に反映すること、また、財務諸表が、一貫して定期的に報告されることを確保するよう努める。

健全な規制の拡大

規制枠組み

2009年3月31日までの当面の措置

・IMF、拡大されたFSF、及びその他の規制当局・主体は、景気循環の増幅効果(プロシクリカリティ)を緩和するための提言をとりまとめる。右は、価格評価とレバレッジ、銀行の自己資本、役員報酬、引当金に関する慣行が景気循環のトレンドをいかに増幅させ得るかについての検討を含む。

中期的措置

・各国・地域は、現時点で実施していない限りにおいて、現在のより一層グローバル化する金融システムとの整合性を確保するために、自国の規制体系の構造及び原則を見直し、報告することを約束する。この目標に向けて、全てのG20参加国は金融セクター評価プログラム報告(FSAP)に着手することを約束し、各国の国内規制体系の透明な審査を支持することを約束する。

・適切な機関は、銀行、証券、保険セクターの規制の異なる性質を見直し、問題点を概説し、必要な改善のための措置を勧告する報告書をとりまとめる。金融規制の範囲に関する見直しは、金融システムにおいて重要なすべての機関への適切な規制を確保するとともに、現状規制の枠外となっている機関、商品、市場に重点を置きつつ、実施される。

・各国及び地域当局は、大規模かつ複雑な国境を越えて活動する金融機関の秩序だった整理が可能になるように、破綻処理制度及び破産法を検討する。

・一貫性のある資本算定及び適正資本を実現するため、資本の定義を調和させる。

健全性に関する監督

2009年3月31日までの当面の措置

・規制当局は、信用格付会社が、証券監督当局の国際機構の最も高い規範を満たすこと、また、信用格付会社が利益相反を避け、投資家及び発行体への開示を強化し、複雑な金融商品に関する格付を区別することを確保するための措置をとる。これは、信用格付会社が、偏りのない情報及び分析を市場に提供するという重要な役割を果たせるよう、適切なインセンティブと適切な監督を得られることを確保することに資する。

・証券監督当局の国際機構は、信用格付会社による規範の採用とその遵守を監視するメカニズムの採用を検討する。

・当局は、金融機関が信認を維持するために十分な量の資本を維持することを確保する。国際基準設定主体は、銀行の仕組み金融や証券化業務について、より厳しい資本要件を設定する。

・監督当局および規制当局は、いくつかの国においてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のための清算機関が間もなく開始されることを踏まえ、CDS及び店頭(OTC)デリバティブ取引のシステミック・リスクを低減させるための努力を加速し、市場参加者が、CDS契約のための取引所取引又は電子取引基盤を支持するよう要求し、OTCデリバティブ市場の透明性を向上させ、さらに、OTCデリバティブのためのインフラが、増加する取引高を支えられるものとなるよう努める。

中期的措置

・公開格付を付与する信用格付会社は登録される。

・監督当局及び中央銀行は、国境を越えて活動する銀行のために、強固で国際的に調和した流動性監督のためのアプローチ及び中央銀行による流動性供給のためのオペレーションを開発する。

リスク管理

2009年3月31日までの当面の措置

・規制当局は、銀行のリスク管理の慣行を強化するため、国際的なベスト・プラクティスに沿って、強化されたガイダンスを策定するとともに、金融機関が、内部管理を再検討し、より強力な、健全なリスク管理のための指針を実施することを促す。

・規制当局は、強力な流動性緩和策の策定によることも含め、金融機関が流動性リスクをより良く管理するための方針を実施することを確保するための手続を策定し、実施する。

・監督当局は、金融機関が、商品や地域毎に、リスクの集中や大規模なカウンターパーティ・リスクに関するポジションを適時かつ包括的に計測するための手法を策定することを確保する。

・金融機関は、ストレス時に備えるためのリスク管理モデルを再評価し、その取組を規制当局に報告する。

・バーゼル委員会は、必要に応じて、金融機関の新たなストレス・テスト・モデルの必要性を調査するとともに、その開発を支援する。

・金融機関は、安定を促進するための内部的なインセンティブを持つとともに、報酬体系が過度に短期的な利益追求またはリスク・テイクに報いるようなものとならないよう、自主努力又は規制措置を通じて、必要な措置がとられる必要がある。

・銀行は、仕組み商品及び証券化について有効なリスク管理及びデュー・ディリジェンスを行う。

中期的措置

・国際基準設定主体は、広範囲の国・地域及び他の適切な機関と協力し、規制に関する政策策定者が、金融市場と金融商品の発展と技術革新を理解し、迅速に対応できることを確保する。

・当局は、資産価値の大規模な変化及びそのマクロ経済と金融システムに対する影響を監視する。

金融市場における公正性の促進

2009年3月31日までの当面の措置

・各国及び地域当局は、地域及び国際レベルでの規制上の協力を強化するために協働する。

・各国及び地域当局は、市場の安定に対する、国内あるいは国境を越えた脅威に関する情報交換を促進するために行動し、各国(あるいは場合により地域)の法規定が、これらの脅威に対処するために十分なものであることを確保する。

・各国及び地域当局は、また、特に相場操縦と詐欺行為から市場及び投資家を守るため、公正取引規則を見直し、不正を行う主体から国際金融システムを守るため、国境を越えた協力を強化する。不正に対しては、然るべき制裁制度が存在する。

中期的措置

・各国・地域の当局は、国際金融システムを、不正な金融活動のリスクをもたらす非協力的で不透明な国・地域から守るよう、国内及び国際的措置を実施する。

・金融活動作業部会(FATF)は、マネーロンダリング及びテロ資金に対する重要な作業を継続する。我々は、世界銀行及び国連の取組である奪われた財産の回復(StAR)イニシアティブを支持する。

・税務当局は、経済開発協力機構(OECD)等の関連機関の作業に依拠しつつ、引き続き、税務情報の交換を促進するための努力を継続する。透明性の欠如と税務情報の交換の不備は精力的に解決される。

国際連携の強化

2009年3月31日までの当面の措置

・監督当局は、国境を越えて活動する金融機関のサーベイランスを強化する取組の一環として、国境を越えて活動する主要な金融機関のすべてに監督カレッジを設置するために協力する。国際的に活動する主要な銀行は、監督カレッジと定期的に会合し、金融機関の活動と直面するリスクに対する評価について、包括的な議論を行う。

・規制当局は、相互に、また他の適切な当局と協力、連絡するといった、国境を越えた危機管理体制を強化するために必要なすべての対策を講じる。また、包括的なコンタクト・リストを作成し、状況に応じ、シミュレーションを実施する。

中期的措置

・当局は、特に規制当局の作業に依拠しつつ、会計基準、監査、預金保険といった規制上の慣行の統一化が進行している、あるいは加速させる必要のある分野や、統一化が進む可能性のある分野についての情報を収集する。

・当局は、安定と信認を回復するための一時的な措置が、最小限の歪みを伴うものとなること、そして、それらが、適切な時期に、適切な順序で、調整された方法で解消されることを確保する。

国際金融機関の改革

2009年3月31日までの当面の措置

・FSFは、加盟国をより広く新興市場国に拡大する。

・IMFはサーベイランスに焦点をあて、拡大されたFSFは基準設定に焦点をあてて、協働を強化し、規制上及び監督上の対応をマクロ健全性政策の枠組みに組み入れるとともに、早期警戒を実施する。

・IMFは、その普遍的なメンバーシップと中核的なマクロ金融上の専門性にかんがみ、FSF等と緊密に連携しながら、その権限に沿って、現下の危機から教訓を引き出すために指導的な役割を果たす。

・我々は、IMF、世界銀行グループ、その他の国際開発金融機関の資金基盤が十分であるかどうか見直し、必要な場合には、資金基盤を増加させる用意がある。国際金融機関(IFI)はまた、引き続き加盟国のニーズを十分に満たすべく、その融資手法を見直し、適応させるとともに、現下の金融危機にかんがみ、融資に関する役割を改変する。

・我々は、新興市場国及び途上国の信用へのアクセスを回復し、進行中のインフラ投資を含め、持続的な成長と開発に決定的に重要な民間資金フローを再開させるための方法を探求する。

・厳しい市場の混乱により、景気循環を緩和させるための財政政策に必要な資金へのアクセスが制限される場合には、国際開発金融機関は、良好な実績と健全な政策を有する国に対して、必要に応じて支援を行う仕組みが整っていることを確保する。

中期的措置

・我々は、ブレトン・ウッズ機関が、世界経済における経済上の比重の変化をより適切に反映し、将来の課題により適切に対応したものになるよう、包括的に改革されるべきであると強調した。新興市場国及び途上国は、これらの機関において、より大きな発言権と代表権を有するべきである。

・IMFは、金融セクターにより注意を払い、IMF/世界銀行共同の金融セクター評価プログラムをそのサーベイランスにより組み入れるとともに、すべての国に対して精力的かつ中立的にサーベイランスに取組む。これに基づき、マクロ金融政策についての助言を与える上で、IMFの役割は強化される。

・先進国、IMF、及びその他の国際機関は、新興市場国及び途上国のために、国際基準と整合的な、新たな重要な規制の策定と実施に関する能力構築プログラムを提供する。