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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] パリ協定

[場所] パリ
[年月日] 2015年12月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳文
[全文]

 この協定の締約国は、

 気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「条約」という。)の締約国として、

 条約の締約国会議第十七回会合における決定第一号(第十七回会合)によって設けられた強化された行動のためのダーバン・プラットフォームに従い、

 条約の目的を達成するため、また、条約の諸原則(衡平の原則並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を含む。)を指針とし、

 気候変動という緊急の脅威に対し、利用可能な最良の科学上の知識に基づき効果的かつ進歩的に対応することが必要であることを認め、

 また、条約に定めるところに従い、開発途上締約国(特に気候変動の悪影響を著しく受けやすいもの)の個別のニーズ及び特別な事情を認め、

 資金供与及び技術移転に関する後発開発途上国の個別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮を払い、

 締約国が気候変動によってのみでなく、気候変動に対してとられる措置によっても影響を受けるおそれがあることを認め、

 気候変動に関する行動、気候変動に対する対応及び気候変動の影響と持続可能な開発のための衡平な機会及び貧困の撲滅との間に存在する内在的な関係を強調し、

 食糧安全保障及び飢餓の終了という基本的な優先事項並びに気候変動の悪影響に対する食糧生産体系の著しいぜい弱性を認め、

 自国が定める開発の優先順位に基づく労働力の公正な移動並びに適切な労働及び質の高い雇用の創出が必要不可欠であることを考慮し、

 気候変動が人類の共通の関心事であることを確認しつつ、締約国が、気候変動に対処するための行動をとる際に、人権、健康についての権利、先住民、地域社会、移民、児童、障害者及び影響を受けやすい状況にある人々の権利並びに開発の権利に関するそれぞれの締約国の義務の履行並びに男女間の平等、女子の自律的な力の育成及び世代間の衡平を尊重し、促進し、及び考慮すべきであり、

 条約に規定する温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫を保全し、及び適当な場合には強化することの重要性を認め、

 気候変動に対処するための行動をとる際に、全ての生態系(海洋を含む。)の本来のままの状態における保全及び生物の多様性の保全(「母なる地球」として一部の文化によって認められるもの)を確保することの重要性に留意し、並びに「気候の正義」の概念の一部に係る重要性に留意し、

 この協定において取り扱う事項に関するあらゆる段階における教育、訓練、啓発、公衆の参加、情報の公開及び協力の重要性を確認し、

 締約国のそれぞれの国内法令に従い、全ての段階の政府及び種々の関係者が気候変動への対処に従事することの重要性を認め、

 また、持続可能な生活様式並びに持続可能な消費及び生産の態様が、先進締約国が率先することにより、気候変動への対処において重要な役割を果たすことを認めて、

 次のとおり協定した。

  第一条

 この協定の適用上、条約第一条の定義を適用する。さらに、

 (a) 「条約」とは、千九百九十二年五月九日にニューヨークで採択された気候変動に関する国際連合枠組条約をいう。

 (b) 「締約国会議」とは、条約の締約国会議をいう。

 (c) 「締約国」とは、この協定の締約者をいう。

  第二条

1 この協定は、条約(その目的を含む。)の実施を促進する上で、持続可能な開発及び貧困を撲滅するための努力の文脈において、気候変動の脅威に対する世界全体による対応を、次のことによるものを含め、強化することを目的とする。

 (a) 世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏一・五度高い水準までのものに制限するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させることとなるものであることを認識しつつ、継続すること。

 (b) 食糧の生産を脅かさないような方法で、気候変動の悪影響に適応する能力並びに気候に対する強靱{じんとルビあり}性を高め、及び温室効果ガスの低排出型の発展を促進する能力を向上させること。

 (c) 資金の流れを温室効果ガスの低排出型の、かつ、気候に対して強靱な発展に向けた方針に適合させること。

2 この協定は、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映するように実施される。

  第三条

 全ての締約国は、気候変動に対する世界全体による対応への自国が決定する貢献(以下「国が決定する貢献」という。)に関し、前条に規定するこの協定の目的を達成するため、次条、第七条、第九条から第十一条まで及び第十三条に定める野心的な努力に取り組み、及びその努力について通報する。全ての締約国の努力については、この協定の効果的な実施のために開発途上締約国を支援する必要性についての認識の下で、時間とともに前進を示すものとなる。

  第四条

1 締約国は、第二条に定める長期的な気温に関する目標を達成するため、衡平に基づき並びに持続可能な開発及び貧困を撲滅するための努力の文脈において、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成するために、開発途上締約国の温室効果ガスの排出量がピークに達するまでに一層長い期間を要することを認識しつつ、世界全体の温室効果ガスの排出量ができる限り速やかにピークに達すること及びその後は利用可能な最良の科学に基づいて迅速な削減に取り組むことを目的とする。

2 各締約国は、自国が達成する意図を有する累次の国が決定する貢献を作成し、通報し、及び維持する。締約国は、当該国が決定する貢献の目的を達成するため、緩和に関する国内措置を遂行する。

3 各締約国による累次の国が決定する貢献については、各締約国によるその直前の国が決定する貢献を超える前進を示し、並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力を考慮しつつ、各締約国のできる限り高い野心を反映するものとなる。

4 先進締約国は、経済全体にわたる排出の絶対量における削減目標に取り組むことによって、引き続き先頭に立つべきである。開発途上締約国は、自国の緩和に関する努力を引き続き強化すべきであり、各国の異なる事情に照らして経済全体にわたる排出の削減又は抑制の目標に向けて時間とともに移行することが奨励される。

5 開発途上締約国に対しては、開発途上締約国に対する強化された支援がその行動を一層野心的なものにすることを可能にするとの認識の下で、この条の規定を実施するための支援を第九条から第十一条までの規定に従って提供する。

6 後発開発途上国及び開発途上にある島嶼{嶼にしよとルビあり}国は、自国の特別な事情を反映する温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略、計画及び行動を作成し、及び通報することができる。

7 締約国の適応に関する行動又は経済の多角化に関する計画により副次的に生ずる緩和に関する利益は、この条の規定に基づく緩和の成果に寄与することができる。

8 全ての締約国は、国が決定する貢献の通報に際し、締約国会議第二十一回会合における決定第一号(第二十一回会合)及びこの協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議における関連の決定に従い、明確性、透明性及び理解のために必要な情報を提供する。

9 各締約国は、締約国会議第二十一回会合における決定第一号(第二十一回会合)及びこの協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議における関連の決定に従い、国が決定する貢献を五年ごとに通報する。第十四条に規定する世界全体の実施状況の検討の結果については、各締約国に対し、情報が提供される。

10 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第一回会合において、国が決定する貢献に係る共通の期間について検討する。

11 締約国は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の採択する指針に従い、野心の水準を高めるため、既存の国が決定する貢献についていつでも調整することができる。

12 締約国が通報する国が決定する貢献については、事務局が管理する公的な登録簿に記録する。

13 締約国は、国が決定する貢献の計算を行う。締約国は、国が決定する貢献に係る人為的な排出量及び除去量に関する計算に際し、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の採択する指針に従い、環境の保全、透明性、正確性、完全性、比較可能性及び整合性を促進し、並びに二重の計上を回避することを確保する。

14 締約国は、国が決定する貢献の文脈において、人為的な排出及び除去に係る緩和に関する行動を確認し、及び実施する際には、13の規定に照らして、適当なときは条約に基づく既存の方法及び指針を考慮に入れるべきである。

15 締約国は、この協定の実施に際し、対応措置により最も影響を受ける経済を有する締約国(特に開発途上締約国)の懸念を考慮に入れる。

16 2の規定に基づいて共同して行動することについて合意に達した締約国(地域的な経済統合のための機関及びその構成国を含む。)は、国が決定する貢献を通報する際に、事務局に対し、当該合意の条件(各締約国に割り当てられた該当する期間内の排出量の水準を含む。)を通報する。事務局は、条約の締約国及び署名国に対し、当該合意の条件を通報する。

17 16に規定する合意に達した各締約国は、13及び14の規定並びに第十三条及び第十五条の規定に従い、当該合意に定める自国の排出量の水準について責任を負う。

18 共同して行動する締約国がこの協定の締約国である地域的な経済統合のための機関の枠組みにおいて、かつ、当該地域的な経済統合のための機関と共に行動する場合には、当該地域的な経済統合のための機関の構成国は、個別に、かつ、当該地域的な経済統合のための機関と共に、13及び14の規定並びに第十三条及び第十五条の規定に従い、16の規定に基づいて通報した合意に定める自国の排出量の水準について責任を負う。

19 全ての締約国は、各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力を考慮しつつ、第二条の規定に留意して、長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略を作成し、及び通報するよう努力すべきである。

  第五条

1 締約国は、条約第四条1(b)に規定する温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫(森林を含む。)を保全し、及び適当な場合には強化するための行動をとるべきである。

2 締約国は、開発途上締約国における森林の減少及び劣化から生ずる排出の削減に関連する活動並びに開発途上締約国における保全、持続可能な森林経営及び森林の炭素蓄積の向上が果たす役割に関する政策上の取組及び積極的な奨励措置並びに総合的かつ持続可能な森林経営のための緩和及び適応の一体的な取組等の代替的な政策上の取組のための既存の枠組みであって、条約に基づいて既に合意された関連の指針及び決定に定めるものを、これらの取組に関連する非炭素の便益を適宜奨励することの重要性を再確認しつつ、実施し、及び支援する(成果に基づく支払により行うことを含む。)ための行動をとることが奨励される。

  第六条

1 締約国は、一部の締約国が、国が決定する貢献の実施に際し、緩和及び適応に関する行動を一層野心的なものにすることを可能にし、並びに持続可能な開発及び環境の保全を促進するため、任意の協力を行うことを選択することを認識する。

2 締約国は、国際的に移転される緩和の成果を国が決定する貢献のために利用することを伴う協力的な取組に任意に従事する際には、持続可能な開発を促進し、並びに環境の保全及び透明性(管理におけるものを含む。)を確保するものとし、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が採択する指針に適合する確固とした計算方法(特に二重の計上の回避を確保するためのもの)を適用する。

3 この協定に基づく国が決定する貢献を達成するための国際的に移転される緩和の成果の利用は、任意で行い、参加する締約国が承認する。

4 この協定により、温室効果ガスの排出に関する緩和に貢献し、及び持続可能な開発を支援する制度を、締約国が任意で利用するため、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の権限及び指導の下で設立する。当該制度は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が指定する機関の監督を受けるものとし、次のことを目的とする。

 (a) 持続可能な開発を促しつつ、温室効果ガスの排出に関する緩和を促進すること。

 (b) 締約国により承認された公的機関及び民間団体による温室効果ガスの排出に関する緩和への参加を奨励し、及び促進すること。

 (c) 受入締約国(他の締約国が国が決定する貢献を履行するために用いることもできる排出削減量を生ずる緩和に関する活動により利益を得ることとなるもの)における排出量の水準の削減に貢献すること。

 (d) 世界全体の排出における総体的な緩和を行うこと。

5 受入締約国は、4に規定する制度から生ずる排出削減量について、他の締約国が国が決定する貢献を達成したことを証明するために用いる場合には、当該受入締約国が国が決定する貢献を達成したことを証明するために用いてはならない。

6 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、4に規定する制度に基づく活動からの収益の一部が、運営経費を支弁するために及び気候変動の悪影響を著しく受けやすい開発途上締約国が適応するための費用を負担することについて支援するために用いられることを確保する。

7 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第一回会合において、4に規定する制度に関する規則、方法及び手続を採択する。

8 締約国は、持続可能な開発及び貧困の撲滅の文脈において、調整が図られた、かつ、効果的な方法(適当な場合には、特に、緩和、適応、資金、技術移転及び能力の開発によるものを含む。)により締約国による国が決定する貢献の実施について支援するための締約国が利用することができる総合的及び全体的な並びに均衡のとれた非市場の取組の重要性を認める。この取組は、次のことを目的とする。

 (a) 緩和及び適応に関する野心の向上を促すこと。

 (b) 国が決定する貢献の実施への公的部門及び民間部門の参加を促進すること。

 (c) 手段及び関連の制度的な措置に関する調整のための機会を与えること。

9 8に規定する非市場の取組を促進するため、この協定により、持続可能な開発のための非市場の取組に関する枠組みを定める。

  第七条

1 締約国は、第二条に定める気温に関する目標の文脈において、持続可能な開発に貢献し、及び適応に関する適当な対応を確保するため、この協定により、気候変動への適応に関する能力の向上並びに気候変動に対する強靱{じんとルビあり}性の強化及びぜい弱性の減少という適応に関する世界全体の目標を定める。

2 締約国は、気候変動の悪影響を著しく受けやすい開発途上締約国の緊急かつ即時のニーズを考慮しつつ、適応が地区、地方、国及び地域の規模並びに国際的な規模で全ての者が直面する世界全体の課題であること並びに適応が人、生活の手段及び生態系を守るための気候変動に対する長期的な世界全体による対応の重要な構成要素であり、かつ、当該対応に貢献するものであることを認識する。

3 開発途上締約国の適応に関する努力については、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が第一回会合において採択する方法に従って確認する。

4 締約国は、現時点における適応の必要性が顕著であること及び一層高い水準の緩和が適応に関する追加的な努力の必要性を低減し得ることを認識し、並びに一層高い適応の必要性が一層高い適応に係る費用を伴い得ることを認識する。

5 締約国は、適応に関する行動が、影響を受けやすい集団、地域社会及び生態系を考慮に入れた上で、各国主導の、ジェンダーに配慮した、参加型の及び十分に透明性のある取組に従うべきであること並びに適宜適応を関連の社会経済及び環境に関する政策及び行動に組み入れるため、利用可能な最良の科学並びに適当な場合には伝統的な知識、先住民の知識及び現地の知識の体系に基づき、及び従うべきであることを確認する。

6 締約国は、適応に関する努力に対する支援及び適応に関する努力についての国際協力の重要性並びに開発途上締約国(特に気候変動の悪影響を著しく受けやすいもの)のニーズを考慮に入れることの重要性を認める。

7 締約国は、カンクン適応枠組みを考慮に入れつつ、次のことを含む適応に関する行動を強化する協力を拡充すべきである。

 (a) 情報、良い事例、経験及び得られた教訓(適当な場合には、適応に関する行動に関連する科学、計画、政策及び実施に関するものを含む。)を共有すること。

 (b) 関連の情報及び知識の統合並びに締約国に対する技術的な支援及び指針の提供を支援するための制度的な措置(条約に基づく措置であって、この協定のためにその役割を果たすものを含む。)を強化すること。

 (c) 気候サービスに情報を提供し、及び意思決定を支援するような方法で、気候に関する科学上の知識(研究、気候系の組織的観測及び早期警戒体制を含む。)を拡充すること。

 (d) 開発途上締約国が、奨励される良い事例に適合する方法で、適応に関する効果的な事例、適応のニーズ、優先事項、適応に関する行動及び努力のために提供され、及び受領される支援並びに課題及び隔たりを特定することができるよう支援すること。

 (e) 適応に関する行動の有効性及び耐久性を向上させること。

8 国際連合の専門機関は、5の規定を考慮しつつ、締約国が7に規定する行動を実施するために行う努力を支援することが奨励される。

9 各締約国は、適当な場合には、適応に関する計画の作成の過程及び行動の実施(関連の計画、政策又は貢献の作成又は強化を含み、及び次の事項を含むことができる。)に関与する。

 (a) 適応に関する行動、取組又は努力の実施

 (b) 自国の適応に関する計画を作成し、及び実施する過程

 (c) 自国が決定する優先的な行動を作成するための気候変動の影響及び気候変動に対するぜい弱性の評価(影響を受けやすい人々、場所及び生態系を考慮に入れたもの)

 (d) 適応に関する計画、政策、プログラム及び行動のモニタリング及び評価並びにこれらからの学習

 (e) 社会経済システム及び生態系の強靱{じんとルビあり}性の構築(経済の多角化及び天然資源の持続可能な管理によるものを含む。)

10 各締約国は、適当な場合には、開発途上締約国に追加の負担を生じさせることなく、適応に関する情報(自国の優先事項、実施及び支援の必要性、計画並びに行動を含めることができる。)を定期的に提出し、及び更新すべきである。

11 10に規定する適応に関する情報については、適当な場合には、他の情報若しくは文書(自国の適応に関する計画、第四条2に規定する国が決定する貢献又は自国の情報を含む。)の構成要素として又はこれらと併せて、定期的に提出し、及び更新する。

12 10に規定する適応に関する情報については、事務局が管理する公的な登録簿に記録する。

13 開発途上締約国に対しては、7及び9から までの規定を実施するための継続的であり、及び強化された国際的な支援を第九条から第十一条までの規定に従って提供する。

14 第十四条に規定する世界全体の実施状況の検討においては、特に、次のことを行う。

 (a) 開発途上締約国の適応に関する努力を確認すること。

 (b) 10に規定する適応に関する情報を考慮しつつ、適応に関する行動の実施を促進すること。

 (c) 適応及び適応のために提供された支援の妥当性及び有効性を検討すること。

 (d) 1に規定する適応に関する世界全体の目標の達成に向けた全体の進捗状況について検討すること。

  第八条

1 締約国は、気候変動の悪影響(気象についての極端な事象及び緩やかに進行する事象を含む。)に伴う損失及び損害を回避し、及び最小限にし、並びにこれらに対処することの重要性を認め、並びに損失及び損害の危険性を減少させる上での持続可能な開発の役割を認識する。

2 気候変動の影響に伴う損失及び損害のためのワルシャワ国際制度(以下「ワルシャワ国際制度」という。)は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の権限及び指導に従うものとし、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の決定するところに従って改善し、及び強化することができる。

3 締約国は、気候変動の悪影響に伴う損失及び損害に関し、協力及び促進に基づき、適当な場合には、例えばワルシャワ国際制度を通じ、理解を増進し、並びに行動及び支援を強化すべきである。

4 3に規定する理解の増進並びに行動及び支援の強化のための協力及び促進の分野には、次のものを含むことができる。

 (a) 早期警戒体制

 (b) 緊急事態のための準備

 (c) 緩やかに進行する事象

 (d) 回復不可能な及び半永久的な損失及び損害を伴い得る事象

 (e) 包括的なリスクの評価及び管理

 (f) リスクに対処する保険の制度、気候リスクの共同管理その他保険による解決

 (g) 経済外の損失

 (h) 地域社会、生活の手段及び生態系の強靱{じんとルビあり}性

5 ワルシャワ国際制度は、この協定の下にある既存の機関及び専門家団体並びにこの協定の外にある関連の機関及び専門家団体と協力する。

  第九条

1 先進締約国は、条約に基づく既存の義務を継続するものとして、緩和及び適応に関し、開発途上締約国を支援するため、資金を供与する。

2 他の締約国は、任意に、1に規定する支援を提供すること又は引き続き提供することを奨励される。

3 先進締約国は、世界全体の努力の一環として、開発途上締約国のニーズ及び優先事項を考慮しつつ、公的資金の重要な役割に留意して、種々の行動(各国主導の戦略を支援することを含む。)により多様な資金源、手段及び経路から気候に関する資金を動員することを引き続き率先して行うべきである。そのような気候に関する資金の動員については、従前の努力を超える前進を示すものであるべきである。

4 規模を拡大した資金の供与については、適応のために公的なかつ贈与に基づく資金が必要であることを考慮しつつ、各国主導の戦略並びに開発途上締約国(特に、気候変動の悪影響を著しく受けやすく、及び著しく能力に制約があるもの。例えば、後発開発途上国及び開発途上にある島嶼{嶼にしよとルビあり}国)の優先事項及びニーズを考慮に入れて、適応と緩和との間の均衡を達成することを目的とすべきである。

5 先進締約国は、適当な場合には、1及び3の規定に関連する定量的及び定性的に示す情報(可能な場合には、開発途上締約国に供与される公的資金の予定された水準を含む。)を二年ごとに通報する。資金を供与する他の締約国は、任意に当該情報を二年ごとに通報することが奨励される。

6 第十四条に規定する世界全体の実施状況の検討においては、気候に関する資金に関連する努力に関し、先進締約国又はこの協定の機関が提供する関連の情報を考慮する。

7 先進締約国は、第十三条13に定めるところによりこの協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が第一回会合において採択する方法、手続及び指針に従い、開発途上締約国のために提供され、及び公的な関与を通じて動員された支援に関する透明性及び一貫性のある情報を二年ごとに提供する。他の締約国は、同様に当該情報を提供することが奨励される。

8 条約の資金供与の制度(運営組織を含む。)は、この協定の資金供与の制度としての役割を果たす。

9 この協定のためにその役割を果たす組織(条約の資金供与の制度の運営組織を含む。)は、開発途上締約国(特に後発開発途上国及び開発途上にある島嶼{嶼にしよとルビあり}国)の気候に関する戦略及び計画の文脈において、簡素化された承認の手続及び受入準備のための強化された支援により、当該開発途上締約国のための資金を効率的に利用する機会を確保することを目的とする。

  第十条

1 締約国は、気候変動に対する強靱{じんとルビあり}性を向上させ、及び温室効果ガスの排出を削減するために技術開発及び技術移転を十分に実現することの重要性に関する長期的な展望を共有する。

2 締約国は、この協定に基づく緩和及び適応に関する行動の実施のための技術の重要性に留意しつつ、技術の導入及び普及に関する既存の努力を認識して、技術開発及び技術移転に関する協力的な行動を強化する。

3 条約に基づいて設立された技術に関する制度は、この協定のためにその役割を果たす。

4 1に規定する長期的な展望を達成するに当たり、この協定の実施を支援するため、技術開発及び技術移転に関する強化された行動を促進し、及び円滑化するための技術に関する制度における活動に包括的な指針を与える技術に関する枠組みを、この協定により、設定する。

5 イノベーションを加速し、奨励し、及び可能にすることは、気候変動に対する効果的及び長期的な世界全体による対応並びに経済成長及び持続可能な開発の促進のために不可欠である。このような努力に対しては、適当な場合には、研究及び開発に関する協調的な取組のため並びに開発途上締約国が特に技術の周期の初期の段階において技術を利用する機会を得やすくするため、支援(技術に関する制度による支援及び条約の資金供与の制度による資金上の手段を通じた支援を含む。)を行う。

6 開発途上締約国に対しては、緩和のための支援と適応のための支援との間の均衡を達成することを目指して、この条の規定の実施(技術の周期の種々の段階における技術開発及び技術移転に関する協力的な行動の強化を含む。)のための支援(資金上の支援を含む。)を提供する。第十四条に規定する世界全体の実施状況の検討においては、開発途上締約国に対する技術開発及び技術移転のための支援に関する努力についての入手可能な情報を考慮する。

  第十一条

1 この協定に基づく能力の開発については、効果的な気候変動に関する行動(特に適応及び緩和に関する行動を実施するためのものを含む。)をとるため、開発途上締約国、特に最も能力に制約がある国(例えば、後発開発途上国)及び気候変動の悪影響を著しく受けやすい国(例えば、開発途上にある島嶼{嶼にしよとルビあり}国)の能力を向上させるべきであり、並びに技術開発、技術の普及及び導入、気候に関する資金を利用する機会、教育、訓練及び啓発の関連の側面並びに情報の透明性のある、時宜を得た、及び正確な通報を容易にすべきである。

2 能力の開発については、各国主導であり、各締約国のニーズに基づき、かつ、対応し、及び締約国、特に開発途上締約国の当事者意識(国、地方及び地区の段階におけるものを含む。)を育成するものであるべきである。能力の開発については、得られた教訓(条約に基づく能力の開発に関する活動から得られたものを含む。)を指針とすべきであり、並びに効果的及び反復的な過程であって、参加型の、横断的な及びジェンダーに配慮したものであるべきである。

3 全ての締約国は、この協定を実施するための開発途上締約国の能力を向上させるために協力すべきである。先進締約国は、開発途上締約国における能力の開発に関する行動に対する支援を強化すべきである。

4 この協定を実施するための開発途上締約国の能力の向上(地域的な取組並びに二国間及び多数国間の取組によるものを含む。)に取り組む全ての締約国は、能力の開発に関する行動又は措置について定期的に通報する。開発途上締約国は、この協定を実施するための能力の開発に関する計画、政策、行動又は措置の実施に関する進捗状況について定期的に通報すべきである。

5 能力の開発に関する活動は、この協定の実施を支援するための適当な制度的な措置(条約に基づいて設けられた適当な制度的な措置であって、この協定のためにその役割を果たすものを含む。)により促進する。この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第一回会合において、能力の開発のための最初の制度的な措置に関する決定を検討し、採択する。

  第十二条

 締約国は、この協定に基づく行動の強化に関して、気候変動に関する教育、訓練、啓発、公衆の参加及び情報の公開を強化するための措置の重要性を認識しつつ、適当な場合には、当該措置をとることについて協力する。

  第十三条

1 相互の信用及び信頼を構築し、並びに効果的な実施を促進するため、この協定により、行動及び支援に関する強化された透明性の枠組みであって、締約国の異なる能力を考慮し、及び全体としての経験に立脚する内在的な柔軟性を備えるものを設立する。

2 透明性の枠組みは、開発途上締約国が自国の能力に照らしてこの条の規定の実施において柔軟性を必要とする場合には、当該開発途上締約国に対して当該柔軟性を与えるものとする。13に規定する方法、手続及び指針には、当該柔軟性を反映する。

3 透明性の枠組みについては、後発開発途上国及び開発途上にある島嶼{嶼にしよとルビあり}国の特別な事情についての認識の下で、条約に基づく透明性に関する措置に立脚し、及び当該措置を強化するものとし、各締約国の主権に敬意を払いつつ、促進的であり、干渉的でなく、及び懲罰的でない方法で実施し、並びに締約国に対して過度の負担を生じさせることを回避する。

4 条約に基づく透明性に関する措置(各締約国による自国の情報、二年ごとの報告書及び二年ごとに更新される報告書、国際的な評価及び検討並びに国際的な協議及び分析を含む。)は、13の規定に基づく方法、手続及び指針を作成するために活用する経験の一部を構成する。

5 行動に関する透明性の枠組みの目的は、次条の規定に基づく世界全体の実施状況の検討に情報を提供するため、条約第二条に規定する条約の目的に照らして、気候変動に関する行動についての明確な理解(締約国による第四条の規定に基づく個別の国が決定する貢献及び締約国による第七条の規定に基づく適応に関する行動(良い事例、優先事項、ニーズ及び隔たりを含む。)の達成に向けての明確性の確保及び進捗状況の追跡を含む。)を提供することである。

6 支援に関する透明性の枠組みの目的は、次条の規定に基づく世界全体の実施状況の検討に情報を提供するため、第四条、第七条及び第九条から第十一条までの規定に基づく気候変動に関する行動の文脈において個別の関連の締約国によって提供され、及び受領される支援に明確性を与え、並びに可能な範囲で、提供された資金上の支援の合計についての十分な概要を提供することである。

7 各締約国は、定期的に次の情報を提供する。

 (a) 温室効果ガスの人為的な発生源による排出及び吸収源による除去に関する自国の目録に係る報告書であって、気候変動に関する政府間パネルが受諾し、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が合意する良い事例に基づく方法を用いて作成されたもの

 (b) 第四条の規定に基づく国が決定する貢献の実施及び達成における進捗状況を追跡するために必要な情報

8 各締約国は、更に、適当な場合には、第七条の規定に基づく気候変動の影響及び適応に関する情報を提供すべきである。

9 先進締約国は、第九条から第十一条までの規定に基づいて開発途上締約国に提供される資金上の支援並びに技術移転及び能力の開発に関する支援についての情報を提供する。また、支援を提供する他の締約国は、当該情報を提供すべきである。

10 開発途上締約国は、第九条から第十一条までの規定に基づいて、必要とし、及び受領した資金上の支援並びに技術移転及び能力の開発に関する支援についての情報を提供すべきである。

11 各締約国が7及び9の規定に基づいて提供する情報は、締約国会議第二十一回会合における決定第一号(第二十一回会合)に従って技術専門家による検討を受ける。能力の開発のニーズを特定するための支援を開発途上締約国が自国の能力に照らして必要とする場合には、当該検討の過程には、当該支援を含む。さらに、各締約国は、第九条の規定に基づく努力に関する進捗状況並びに国が決定する貢献の実施及び達成についての促進的な多数国間の検討に参加する。

12 この12の規定に基づく技術専門家による検討については、該当する場合には締約国が提供する支援に関する検討並びに国が決定する貢献の実施及び達成に関する検討によって構成する。また、当該技術専門家による検討については、2の規定に基づいて当該締約国に与えられる柔軟性を考慮しつつ、当該締約国が改善すべき分野を特定するものとし、7及び9の規定に基づいて提供する情報と13に規定する方法、手続及び指針との整合性に関する検討を含む。当該技術専門家による検討においては、各開発途上締約国の能力及び事情に特別の注意を払う。

13 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第一回会合において、適当な場合には、条約に基づく透明性に関する措置から得られた経験に立脚し、及びこの条の規定を十分に考慮しつつ、行動及び支援の透明性のための共通の方法、手続及び指針を採択する。

14 開発途上締約国に対しては、この条の規定を実施するための支援を提供する。

15 開発途上締約国に対しては、また、その透明性に関する能力を開発するための支援を継続的に提供する。

  第十四条

1 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この協定の目的及び長期的な目標の達成に向けた全体としての進捗状況を評価するためのこの協定の実施状況に関する定期的な検討(この協定において「世界全体の実施状況の検討」という。)を行う。この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、包括的及び促進的な方法で、緩和、適応並びに実施及び支援の手段を考慮して並びに衡平及び利用可能な最良の科学に照らして、世界全体の実施状況の検討を行う。

2 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が別段の決定を行わない限り、最初の世界全体の実施状況の検討を二千二十三年に行い、その後は五年ごとに行う。

3 世界全体の実施状況の検討の結果については、各締約国が、この協定の関連の規定に従い自国が決定する方法によって自国の行動及び支援を更新し、及び強化するに当たり並びに気候に関する行動のための国際協力を強化するに当たり、締約国に対し、情報が提供される。

  第十五条

1 この協定により、この協定の実施及び遵守を促進するための制度を設立する。

2 1に規定する制度は、専門家による促進的な性質を有する委員会であって、透明性があり、敵対的でなく、及び懲罰的でない方法によって機能するものから成る。当該委員会は、各締約国の能力及び事情に特別の注意を払う。

3 2に規定する委員会は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が第一回会合において採択する方法及び手続に基づいて運営し、及びこの協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議に毎年報告を行う。

  第十六条

1 条約の最高機関である締約国会議は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす。

2 条約の締約国であってこの協定の締約国でないものは、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合の審議にオブザーバーとして参加することができる。締約国会議がこの協定の締約国の会合としての役割を果たす場合には、この協定に基づく決定は、この協定の締約国のみによって行われる。

3 締約国会議がこの協定の締約国の会合としての役割を果たす場合には、締約国会議の議長団の構成員であってその時点でこの協定の締約国でない条約の締約国を代表するものは、この協定の締約国により及びこの協定の締約国の中から選出される追加的な構成員に交代する。

4 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この協定の実施状況を定期的に検討するものとし、その権限の範囲内で、この協定の効果的な実施を促進するために必要な決定を行う。この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この協定により課された任務を遂行し、及び次のことを行う。

 (a) この協定の実施に必要と認められる補助機関を設置すること。

 (b) その他この協定の実施のために必要な任務を遂行すること。

5 締約国会議の手続規則及び条約の下で適用する財政手続は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議がコンセンサス方式により別段の決定を行う場合を除くほか、この協定の下で準用する。

6 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の第一回会合は、この協定の効力発生の日の後に予定されている締約国会議の最初の会合と併せて事務局が招集する。この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議のその後の通常会合は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が別段の決定を行わない限り、締約国会議の通常会合と併せて開催する。

7 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の特別会合は、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が必要と認めるとき、又はいずれかの締約国から書面による要請のある場合において、事務局がその要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。

8 国際連合、その専門機関、国際原子力機関及びこれらの国際機関の加盟国又はオブザーバーであって条約の締約国でないものは、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この協定の対象とされている事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは民間のもののいずれであるかを問わない。)であって、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席については、5に規定する手続規則に従う。

  第十七条

1 条約第八条の規定によって設置された事務局は、この協定の事務局としての役割を果たす。

2 事務局の任務に関する条約第八条2の規定及び事務局の任務の遂行のための措置に関する条約第八条3の規定は、この協定について準用する。さらに、事務局は、この協定に基づき及びこの協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議によって課される任務を遂行する。

  第十八条

1 条約第九条及び第十条の規定によって設置された科学上及び技術上の助言に関する補助機関並びに実施に関する補助機関は、それぞれこの協定の科学上及び技術上の助言に関する補助機関並びに実施に関する補助機関としての役割を果たす。これらの二の機関の任務の遂行に関する条約の規定は、この協定について準用する。この協定の科学上及び技術上の助言に関する補助機関並びに実施に関する補助機関の会合は、それぞれ条約の科学上及び技術上の助言に関する補助機関並びに実施に関する補助機関の会合と併せて開催する。

2 条約の締約国であってこの協定の締約国でないものは、補助機関の会合の審議にオブザーバーとして参加することができる。補助機関がこの協定の補助機関としての役割を果たす場合には、この協定に基づく決定は、この協定の締約国のみによって行われる。

3 条約第九条及び第十条の規定によって設置された補助機関がこの協定に関係する事項に関して任務を遂行する場合には、補助機関の議長団の構成員であってその時点でこの協定の締約国でない条約の締約国を代表するものは、この協定の締約国により及びこの協定の締約国の中から選出される追加的な構成員に交代する。

  第十九条

1 条約によって設置された補助機関又は設けられた他の制度的な措置であって、この協定に規定する補助機関又は他の制度的な措置以外のものは、この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の決定に基づき、この協定のためにその役割を果たす。この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、当該補助機関又は措置によって遂行される任務を特定する。

2 この協定の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、1に規定する補助機関又は制度的な措置について追加的な指針を与えることができる。

  第二十条

1 この協定は、条約の締約国である国及び地域的な経済統合のための機関による署名のために開放されるものとし、批准され、受諾され、又は承認されなければならない。この協定は、二千十六年四月二十二日から二千十七年四月二十一日までニューヨークにある国際連合本部において、署名のために開放しておく。その後は、この協定は、この協定の署名のための期間の終了の日の翌日から加入のために開放しておく。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

2 この協定の締約国となる地域的な経済統合のための機関であってそのいずれの構成国も締約国となっていないものは、この協定に基づく全ての義務を負う。この協定の締約国である一又は二以上の構成国を有する地域的な経済統合のための機関がこの協定の締約国となる場合には、当該地域的な経済統合のための機関及びその構成国は、この協定に基づく義務の履行につきそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該地域的な経済統合のための機関及びその構成国は、この協定に基づく権利を同時に行使することができない。

3 地域的な経済統合のための機関は、この協定の規律する事項に関するその権限の範囲をこの協定の批准書、受諾書、承認書又は加入書において宣言する。また、当該地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

  第二十一条

1 この協定は、五十五以上の条約の締約国であって、世界全体の温室効果ガスの総排出量のうち推計で少なくとも五十五パーセントを占める温室効果ガスを排出するものが、批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 専ら1の規定を適用する限りにおいて、「世界全体の温室効果ガスの総排出量」とは、条約の締約国がこの協定の採択の日以前の日に通報した最新の量をいう。

3 この協定は、1に規定する効力発生のための要件を満たした後にこれを批准し、受諾し、若しくは承認し、又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は地域的な経済統合のための機関による批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

4 地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1の規定の適用上、その構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。

  第二十二条

 条約の改正の採択に関する条約第十五条の規定は、この協定について準用する。

  第二十三条

1 条約の附属書の採択及び改正に関する条約第十六条の規定は、この協定について準用する。

2 この協定の附属書は、この協定の不可分の一部を成すものとし、「この協定」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。附属書は、表、書式その他科学的、技術的、手続的又は事務的な性格を有する説明的な文書に限定される。

  第二十四条

 紛争の解決に関する条約第十四条の規定は、この協定について準用する。

  第二十五条

1 各締約国は、2に規定する場合を除くほか、一の票を有する。

2 地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この協定の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。地域的な経済統合のための機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

  第二十六条

 国際連合事務総長は、この協定の寄託者とする。

  第二十七条

 この協定には、いかなる留保も付することができない。

  第二十八条

1 締約国は、この協定が自国について効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この協定から脱退することができる。

2 1に規定する脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。

3 条約から脱退する締約国は、この協定からも脱退したものとみなす。

  第二十九条

 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの協定の原本は、国際連合事務総長に寄託する。

 二千十五年十二月十二日にパリで作成した。

 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けて、この協定に署名した。