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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「緑の気候基金」移行委員会第2回会合における伴野外務副大臣冒頭挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2011年7月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 本日、国連大学と御一緒に、「緑の気候基金」移行委員会第2回会合を開催できますことを、まずもって感謝申し上げます。共同議長でいらっしゃる南アフリカのマニュエル大臣、メキシコのコルデロ大臣、ノルウェーのルンド副大臣をはじめ、御出席の皆様を心より歓迎申し上げます。

御列席の皆様

 1990年には、世界の温室効果ガス排出量の65%を先進国が占めていましたが、2007年には49%となり、今後さらにその割合は減少していく見込みです。

 もちろん、先進国が率先して気候変動対策を進めるべきことは論を待ちません。しかし同時に、新興国を始めとする途上国にも、積極的なアクションを取っていただきたいと思います。そのために、カンクン合意を発展させ、すべての主要排出国が参加する、各国の取組の透明性が確保された、一層の取組を促す、新しい一つの包括的な枠組みを構築する必要があります。それこそが、地球温暖化問題の解決に向けての、最短の道であると確信いたします。

御列席の皆様

 気候変動問題を解決するためには、このような枠組みのもとで、世界全体を低炭素成長に向かわせる大きな流れを作っていかなければなりません。緑の気候基金は、この流れを財政面で後押しするものです。我が国としても、途上国のニーズに迅速に対応できる実効的な制度の設計に積極的に貢献してまいります。

 その際、公的資金か民間資金かという単純な二分論に陥ることなく、公的資金を初期投資として活用しつつ、いかに民間資金を呼び込む仕組みとするかという観点が特に重要であります。

御列席の皆様

 3月11日、私たちの地球は、東日本大震災という、我が国にとって千年に一度の試練をもたらしました。この間,御出席の各国を始め,国際社会からいただいた温かい御支援に改めて感謝申し上げます。

 私は、この震災の後、次の3つのことを痛感しました。第一に、人は「生きている」のではなく「生かされている」のであり、自然に対して謙虚であらねばならないということ。第二に、人は人の中でしか生きられないということ。第三に、このようなとてつもない試練の時にこそ、ピンチをチャンスに変えなければならないということです。

 いま考えますに、この三点は、気候変動を始めとする地球環境問題に取り組む姿勢とも共通するのではないでしょうか。特に、我が国は、第三の点、ピンチをチャンスに変えることによって、環境やエネルギーにかかわる問題を乗り切ってまいりました。高度成長期における環境汚染や石油危機は、日本にとって大きなピンチでしたが、徹底した省エネ対策や技術革新を通じてこれを乗り切り、その中で得られた知見や技術がまたあらたな成長の原動力となりました。

 今また、我が国は、震災の教訓を踏まえ、将来のエネルギー政策に向けた「新たな挑戦」を開始しようとしています。すなわち、5月25日に菅総理がパリで表明した、これまでの「原子力エネルギー」と「化石エネルギー」という二つの柱に加え、「自然エネルギー」と「省エネルギー」という新たな二つの柱を育てるという「四つの挑戦」であります。

 中でも、化石燃料の効率的利用の徹底、自然エネルギーの実用性の向上、そして、既に世界の最先端にある我が国の省エネルギーの更なる可能性を追求することは、温室効果ガスの排出削減にも直結します。我が国は、震災の教訓から生まれてくる技術や経験を世界と共有し、地球規模の環境対策への貢献を一層高める決意であります。

 最後に、本日の会合が、「緑の気候基金」の制度づくりにかかわる議論を通じて、COP17におけるカンクン合意の着実な実施を促進し、ひいては、将来の包括的な気候変動対策枠組みの構築につながることを祈念して、私からの挨拶といたします。