データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 京都議定書に関する日本の立場

[場所] 東京
[年月日] 2010年12月
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

・真の地球益を考えれば,京都議定書で削減義務を課されていないが世界の排出量の40%を占めている米中を含む主要経済国が参加する,新たな法的な国際枠組みの構築が最善の道。そのため,排出量の80%以上をカバーすると思われるカンクン合意を発展させ,あくまで米中等の主要経済国が参加する公平かつ実効的な新たな国際枠組みを構築すべし。こうした新たな枠組みの構築に向け,日本は粘り強く尽力。

・京都議定書は世界全体の排出量の27%しかカバーしていない,公平性,実効性に欠ける枠組であり,こうした枠組みの中で第二約束期間を設定することは,上記のような新たな国際枠組みの構築につながらない。

・かかる立場は,日本のみの狭い利益やビジネス上の利害でとっているのではない。日本の意欲的な排出削減の取組はもちろん2013年以降も継続する。京都議定書の下での削減義務を続けることは,カバー率の低い国際枠組みを固定化することであり,カバーされていない地域での排出拡大を助長するメカニズムとなりかねず,かえってマイナス。

・米中ともに,近い将来法的拘束力のある枠組みに参加する見込みはほぼ無い。米国は内政事情により極めて困難な状況にあり,中国は,自国の経済成長が阻害されるような国際枠組みは当面受け入れない姿勢。

・ここで第二約束期間のみを受け入れれば,2013年以降,京都議定書締約国は京都議定書で拘束され,米国や中国等の主要経済国は何も拘束されないという不公平かつ排出削減の観点から極めて効果的でない枠組みが固定化されることになる。いったん第二約束期間を設定してしまうと,米中等の主要経済国を含む真に公平で実効性のある新たな法的枠組み構築への圧力が弱まり,現在のモメンタムを失ってしまう(まず先進国が早急に義務を負えば,米,中などもついてくるというのは全くの幻想)。

・短期的な「ディール」をして,今後10年間の問題をなおざりにすることはできない。そうしたディールは日本の国益のみならず,地球温暖化問題の解決そのものにとってもマイナス。