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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米科学技術高級委員会 プレス声明

[場所] 東京
[年月日] 2010年6月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 科学技術における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(日米科学技術研究開発協力協定)に基づく第11回合同高級委員会は,2010年6月12日に,東京の外務省で開催された。日本側は,川端達夫文部科学大臣兼内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が議長を務めた。米国側は,ジョン・P・ホルドレン科学技術担当大統領補佐官・大統領府科学技術政策局長が共同議長を務めた。

 合同高級委員会は,科学技術それ自体及び日米関係の一層の深化・発展のために科学技術協力を強化することが重要であることを冒頭に確認した。そして,両国の科学技術政策に関わる様々な課題について議論し,経済成長を達成し,気候変動,環境,エネルギー,自然災害などの国際社会が直面する地球規模課題に取り組むためには科学技術が重要であると認識した。また,研究者交流,環境とエネルギー,民生宇宙協力と地球観測,地球科学,健康科学,防災,核不拡散及び保障措置,計量と計測科学を含む様々な分野における二国間の協力活動についても議論した。

 合同高級委員会は,文部科学省によって実施される世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI),「安全・安心な社会のための科学技術」分野において科学技術振興機構(JST)と全米科学財団(NSF)により支援される研究交流プログラム並びに日本学術振興会(JSPS)とNSF及び全米科学アカデミー(NAS)等の米国側カウンターパートにより支援される様々な国際研究協力及び研究奨励制度等のプログラムを通じ,両国が一層研究者交流を推進していくことを確認した。

 環境とエネルギーに関し,合同高級委員会は,環境とエネルギー分野における協力活動が両国にとって非常に重要であることを確認し,さらなる協力拡大の可能性を議論し,両国間で「低炭素社会のためのバイオテクノロジー(メタボロミクスに焦点をあてるもの)」の分野でJSTとNSFによる新たな共同研究支援プログラムを立ち上げることを決定した。

 合同高級委員会は,低炭素社会の実現と持続可能な社会の推進につき,両国が関心を共有していることを認識した。文部科学省とNSFは,低炭素社会の実現に向けたシナリオ研究とSEES(持続可能な社会のための科学,工学,教育)において多大な共通性があることを確認した。合同高級委員会は,日米国立研究所間の共同活動の加速化を含む「日米クリーン・エネルギー技術協力」の目覚ましい進展を歓迎した。また,合同高級委員会は,長期のエネルギー供給の観点から,ITER計画に関する多国間での協力を含む核融合エネルギーに関する日米協力を推進することが大変重要であることを確認した。合同高級委員会は,この重要なプロジェクトの進展のため,ベースライン文書の合意に向けて,他のITER参加極とともに引き続き両国が協力していくことを決定した。

 合同高級委員会は両国の宇宙政策につき定期的に情報交換することの有用性及びこの分野における日米協力の重要性について確認した。民生宇宙活動につき,合同高級委員会は,米国の新しい宇宙探査計画及び日本の宇宙政策に関する最近の進展につき留意した。加えて,合同高級委員会は,有人宇宙探査,宇宙科学及び衛星航行等の活動において両国の強い絆及び協力を両国が継続していく広範囲にわたる潜在的な機会を認識した。また,合同高級委員会は,気候変動に取り組むにあたり,調整され包括的で持続的な地球観測の果たすべき役割の重要性を認識し,今後も引き続き両国は全球地球観測システム(GEOSS)における取組について協力を続けていくことを確認した。

 合同高級委員会は,統合国際深海掘削計画(IODP)を日米研究協力の代表的成功例として認め,IODP及び次期枠組みを,両国が引き続き協力し主導していくことを決定した。特に,参加国からの貢献の拡大,運営体制の効率化等,科学的成果を上げるのにふさわしい枠組とするための重要な課題について,日米が共同して取り組むことを決定した。 合同高級委員会は,地球科学及び地球環境リエゾン会合において,多くの研究協力プロジェクトを継続し,2つの地球変動研究ワークショップの開催を計画し,相互に関心を持つ可能性がある分野を探ることの価値があることにつき共通の理解に達するなどの進展があったことを歓迎した。合同高級委員会は,地球科学及び地球環境分野における協力の重要性を認識し,引き続き協力を強化していくとの決意を確認した。

 合同高級員会は癌の臨床試験における協力を認識し,それが癌の罹患率や死亡率を低下させる新薬及び装置の開発や評価を促進することに留意した。

 合同高級委員会は,自然災害の軽減に向けた協力を行うことが重要であることを再確認し,地震の被災後に建物の機能の保持が重要であるとの認識のもと,両国はE-ディフェンスを活用した新たな研究協力を開始することを決定した。また,合同高級委員会は,地震災害リスクの評価手法に関する研究協力の可能性について検討することを決定した。

 合同高級委員会は,2009年11月13日の日米首脳による,核兵器のない世界に向けた共同ステートメント,2010年4月13日の核セキュリティ・サミットで採択されたコミュニケ及び作業計画並びに,同年4月14日に署名された文部科学省と米国エネルギー省との核不拡散,保障措置及び核セキュリティに関する協力覚書に基づき,核不拡散及び核セキュリティの分野における技術開発や人材育成等について引き続き協力を行っていくことを確認した。また核鑑識及び使用済燃料に含まれるプルトニウムを直接測定するための技術開発についてのさらなる議論の重要性を認識し,このような技術の試験計画の策定に着手することについて合意した。

 合同高級委員会は,計量及び計測科学が,産業,科学技術に対し,そして最終的には我々の経済を向上させることに対し与える影響につき認識した。両国は,米国国立標準技術研究所(NIST)と産業技術総合研究所(AIST)の計量標準総合センター(NMIJ)との間の低炭素社会に向けた国際標準化を支援する研究プロジェクトを行うことを盛り込むため,協力の拡大を検討することにつき認識を共有した。

 合同高級委員会は,第12回合同高級委員会は,約2年後を目途に米国において開催されることを決定した。