データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ憲章

[場所] シドニー
[年月日] 2006年1月12日
[出典] 環境省
[備考] 
[全文]

 我々豪州、中国、インド、日本、韓国、米国の政府代表(まとめて“参加国”と称する)は、2006年1月12日豪州シドニーに集い:

 本憲章の必要不可欠な要素である2005年7月28日付けの新たなクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(附属書I)のビジョンステートメントに基づき;

 パートナーシップの目的が、京都議定書を代替するものではなく補完するものであり、気候変動に関する国際連合枠組条約と他の関連する国際文書の原則に則ったものである事を配慮し;

 クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(“パートナーシップ”と称する)を創設し、法的拘束力を持たない次の憲章を示す事を決定する。本パートナーシップは、開発、エネルギー、環境、気候変動の目的を達成するために、鋭敏で建設的、生産性のある国際協力を参加国間で支援する枠組としての役割を果たす。

1. 共通ビジョン

1.1. 開発や貧困撲滅は、喫緊で優先的な国際的目標であるという認識を持ちながら、我々は協力してクリーン開発と気候の基本方針に向かって自発的に前進してきた。二国間及び多国間のイニシアティブを基盤に、増加するエネルギー需要、大気汚染、エネルギー安全保障、温室効果ガス濃度等の課題に対処すべく、国別の状況に応じて協力を強化していく。諸国の一層の努力がパートナーシップの共通ビジョンを達成するために必要であることも、我々は認識している。

2. 目的

2.1. 本パートナーシップの目的は:

2.1.1. 参加国同士の具体的及び実質的な協力の下で、現実的な成果を得るべく、従来及び開発過程にある長期的費用効果のある、クリーンな技術等の開発、普及、展開、移転に、自主的で法的拘束力を持たない国際協力の枠組を構築し;

2.1.2. このような取組を支援できる環境を促進・整備し;

2.1.3. 各国の汚染物質削減、エネルギー安全保障、気候変動の目的達成を促し;

2.1.4. クリーン開発の目標という文脈において、参加国が相互に関連ある開発、エネルギー、環境、気候変動問題の対処に関係する政策手法を探り、各国の開発とエネルギー戦略の発展・実施の経験を共有するためのフォーラムを用意する。

3. 機能

3.1. 本パートナーシップを通じて、参加国が協力する事は:

3.1.1. クリーン開発の文脈において、他の分野と同様に、参加国の政策手法における間隙や重複箇所を含め、参加国が相互に関連ある開発、エネルギー、環境、気候変動問題を対処する政策手法に関する情報を交換し、

3.1.2. 経験を共有し、クリーン開発の戦略の発展と実施に関する情報と、温室効果ガス排出原単位の削減活動に関する情報を交換し;

3.1.3. 参加国の優先事項を踏まえて、既存及び開発過程にある長期的費用効果のある、クリーンで、より有効な変換技術等の開発、普及、展開、移転を促進する環境整備の障壁を特定、査定、対処し;

3.1.4. 参加国の優先事項を踏まえて、既存及び開発過程にある長期的費用効果のある、クリーンで、より有効な変換技術等の開発、普及、展開、移転のために、参加国の間で二国間及び多国間の共同作業を特定、遂行し;

3.1.5. 従来の二国間及び多国間のイニシアティブで協力を促し、各参加国の気候関連技術の情報共有化を奨励し;

3.1.6. 共同努力を強化する手段として、必要に応じて人的及び組織的能力開発の要素を組み入れ;

3.1.7. パートナーシップの共同作業の不可欠な要素として民間セクターを関与させるとともに開発銀行、研究所、政府、政府間、等も含め、;

3.1.8. 参加国が決定した作業計画を策定し、実施させ;

3.1.9. パートナーシップの実効性を確実なものにするために、その進捗を定期的に査定する。

3.2. 各参加国は法律、規則、政策及び当事国である国際機関等に従って、本憲章で検討された活動を約束する。

4. 組織

4.1. パートナーシップの遂行促進のために、政策実行委員会と管理支援グループを設ける。

4.2. 政策実行委員会はパートナーシップの枠組、政策、進展の全体を管理し、定期的に連携の進捗状況を調査し、管理支援グループへ指示を行う。また、パートナーシップの共同作業の実施を運営し、民間セクターや開発銀行、研究所、政府、政府間、NGO等の代表の関与を図る責任を有する。さらに、参加国同士で促進的な環境を整備するための活動を、国内レベルのクリーン開発目的達成に沿って進める。政策実行委員会は、その作業を補助するため、必要に応じて適切なタスクフォースやサブグループを設置する。政策実行委員会は、業務を遂行するために委員会メンバーが必要と判断する度に開催され、また、必要に応じて政策問題か技術問題、或いは両問題に議題を集中する。政策推進委員会の決定は、委員会の参加国の合意によってなされる。

4.3. 管理支援グループは、パートナーシップ間の連絡や活動の主要な調整役を行う。(1)パートナーシップ会合の企画(2)テレビ会議やワークショップ等の専門活動のアレンジ(3)パートナーシップ活動に関する調整と情報のやりとり(4)パートナーシップに関する情報交換所としての役割(5)政策実行委員会に承認された鍵となる機能の進行と責任の維持(6)運営委員会が指示する作業の実施、について責務を負う。管理支援グループは事実上、管理業務の役割を果たす事になるが、政策実行委員会による特別な指示を除き、具体的な内容は含まれない。

4.4. 政策実行委員会は参加国からの代表者により構成される。附属書IIを含む各参加国は、政策実行委員会の会議への代表者を上限3名まで指名する。

4.5. 運営委員会はその決定権において、他の専門家が会議に出席する事を許可する。

4.6. 米国は初めにパートナーシップの管理支援グループとしての役割を果たす。この取り決めは2年おきに見直しを行い、政策実行委員会の決定により変更する。各参加国は管理支援グループの主たる接点としての役割を果たす管理連絡窓口を任命する。

4.7. 管理支援グループは要求に応じて、参加国の採用した人材サービスを活用する。参加国による別段の決定がない限り、かかる要員には各自の雇用主から報酬が出され、その雇用主の雇用条件に引き続き従うものとする。

4.8. 各参加者はパートナーシップ活動において、どの様な参画をするかについて個々に決定する。

5.資金提供

5.1. パートナーシップ参加は自主ベースである。参加国は各自の裁量のもと、国内の法律・規則・政策に基づき、資金・人員その他の資源を提供することが可能である。当憲章に盛り込まれた活動により生ずるコストは、他の取り決めが存在しない限り、参加国が負担する。

6. 知的所有権

6.1. 知的所有権、および参加国の協力活動に起因する処置に関するすべての事項は、それらが存在する特定の状況の範囲内で、パートナーシップの目的を考慮しつつ、ケースバイケースにて対処する。

7. 修正

7.1. 政策実行委員会はいかなる時も憲章(および付属書II)を委員会における参加国の同意のもとに修正することが可能である。

8. 憲章の期限

8.1. 憲章に基づく協力は2006年1月12日に開始する。参加国は脱退の90日前までにその意思を書面にて通知の上、脱退することが出来る。