データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] COP9閣僚級円卓会合 議長総括の要約

[場所] ミラノ
[年月日] 2003年12月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1. セッション1:気候変動、適応、緩和及び持続可能な開発

(1)多くの締約国が、気候変動は人類にとって最も重要な地球規模の課題であると強調した。気候変 動に関する政府間パネル(IPCC)第3次評価報告書の結果は、行動を起こすのに十分な科学的根拠 を提供している。気候変動の悪影響は世界のいたる所で現実のものとなっている。すべての国による 緊急かつ調和のとれた行動が求められている。

(2)議定書の早期発効への強い支持が表明された。京都議定書は枠組条約の究極の目的に向けた 重要な第一歩であるとの締約国からの発言もあった。議定書に規定された事項を実施するためのあ らゆる努力を講じなければならないと多くの国が付け加えた。緩和措置及び適応措置の実施は、持 続的な開発に向けた国内政策において、経済成長、衡平性、貧困の解消と環境保護の間の相乗効 果と補完し合う関係の実現を含んでいる。

(3)キャパシティ・ビルディングの手段そして将来的なパートナーシップ構築の一手法として CDM の 重要性が強調された。また、多くの締約国が CDM の早期実施を求めた。

(4)複数の国が適応措置への需要の高まりについて言及した。地域社会が気候変動の悪影響に対 処する能力を向上させることの重要性が繰り返し指摘された。後発途上国及び小島嶼国の特別な事 情及びニーズが強調された。非付属書I国における適応及び緩和に関するイニシアティブを支援す るため、先進締約国から更に多額の資金が提供される必要があるという点もまた強調された。この点 に関し、適応を優先した、特別気候変動基金及び後発開発途上国基金の次段階の早急な運営開始 の必要性については何度も言及された。

2. セッション2:技術(技術の利用と開発)、技術移転

(1)持続可能な開発の文脈において緩和及び適応に関する技術革新、開発、普及を進めるとともに 既存の技術をいかに活用するかの問題は、各国間の対話の中心となる。既存の技術の利用と移転 及び新技術の推進はともに進められるべきであり、補足し合うべきである。多くの国が既に省エネル ギー技術、再生可能なエネルギー源の利用を拡大する技術を利用していると述べた。しかしながら、 特に途上国、後発途上国及び小島嶼国において、取組の速度を速め、既存技術の理解を加速化す る必要がある点についても述べられた。枠組条約と京都議定書及びそのメカニズム(共同実施、クリ ーン開発メカニズム等)が技術の開発、普及、投資及び移転において重要な役割を果たすことについ て言及された。

(2)将来有望視される技術の中で、水素関連技術、再生可能エネルギー源及び炭素隔離・貯留技術

について言及された。

(3)研究開発を促進し最先端の技術に対する資金を支援する政府の触媒的な役割について言及さ れた。民間企業の重要性が認識されたが、技術の移転、開発、協力は民間企業の活動力だけに任 せることはできないことについて言及された。

3.セッション3:科学、情報、政策及び資金の観点等気候変動に関する合意における約束及び目標 について国、地域及び国際的レベルでの進捗の評価

(1)多くの国や地域において既に取組が実施されていることがわかった。一様ではないが、実際に進 展がある。政治的なポジションを繰り返すことを止め、代わりに言葉から具体的な行動へ移ることが 求められている。気候システムに危険な人為的な干渉を防止するレベルに温室効果ガスの大気中濃 度を安定化するために、より多くの行動が求められている。

(2)しかし、いくつかの国は、附属書I国が気候変動対策や温室効果ガスの排出抑制に向けたリー ダーシップを実際に示していないことに対して不満を表明した。附属書I国は、枠組条約と京都議定 書全ての条項を実施するための先導的役割を継続することを求められた。

(3)気候変動を緩和する国の政策と措置の重要性が強調された。その例として、環境税、エネルギー 税、環境に有害な補助金の削減、炭素の隔離、各分野の政策の構造的な変化、新しい技術への投 資、エネルギー効率化プロジェクト及び都市計画が挙げられる。

(4)各国は、協力と分野横断的パートナーシップなどの将来の行動のための進展や実践的な手段を 議論する中で、成功させるためには、協力が、前向きな雰囲気の中で、明確なルールと責任を基礎と すべきであることを述べた。特に、全ての国に適用可能なルールの確立が重要であることが強調された。

(了)