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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 気候変動及び持続可能な開発に関するデリー閣僚宣言

[場所] デリー
[年月日] 2002年11月1日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

 気候変動枠組条約第8回締約国会議に出席した閣僚及びその他の代表団長は、

 条約の目的、原則及び約束を想起し、

 経済社会開発と貧困の撲滅が、開発途上国の第一の最優先事項であることを 再確認し、

条約の究極の目標を達成するためには地球規模で排出の大幅な削減が必要で ある旨を確認する IPCC 第3次評価報告書の知見、及び当該報告書の示唆に関 し SBSTA で進行中の検討を関心を持って認識し、

付属書I国及び非付属書I国の両方で緩和行動が現在実施されていることに 注目し、そして気候変動を防止するための温室効果ガス排出の緩和は、条約の 諸条項の下で高い優先課題であり続け、かつ同時に、適応措置を進めるために 緊急の行動が求められることを強調し、

気候変動は、すべての地域において将来の福利、生態系及び経済成長を危険 にさらすことを認識し、

すべての国、特に後発途上国及び小島嶼国開発途上国を含む開発途上国は、 気候変動の負の影響による増大するリスクに直面していることを深く憂慮し、

アフリカは気候変動と貧困の複合影響を最も被る地域であることから、「ア フリカ開発のための新パートナーシップ」等の開発イニシアティブは、持続可 能な開発の文脈の中で支持されるべきであることを認識し、

貧困の撲滅、消費・生産パターンの変更、経済社会開発の基盤である自然資 源の保全及び管理が、持続可能な開発の目的とそのための不可欠な要件との間 の橋渡しをするという、持続可能な開発に関する世界首脳会議の見解を繰り返し、

現在及び将来に直面する挑戦に対応するため、気候変動とその悪影響は、持 続可能な開発の要請に合致しつつ、対処されるべきことを決議する。このため、 我々は、次のことを要請する。

(a) 京都議定書を締結した締約国は、未だ締結していない国に対し、京都議 定書の時機を得た批准を強力に要請すべきである。

(b) 締約国は、持続可能な開発を促進する権利を有し、そして持続可能な開 発を促進すべきである。経済開発が気候変動に対処するための措置を採 るために不可欠であることに鑑み、気候システムを人為的な変化から保 護するための政策と措置は、締約国ごとの固有の状況にふさわしいもの であるべきものであり、また、国家開発計画と統合されるべきである。

(c) 持続可能な開発の国家戦略は、水、エネルギー、保健、農業及び生物多 様性等の鍵となる分野において、さらに十分に気候変動の目的を統合さ せ、かつ WSSD の成果に立脚して構築すべきである。

(d) すべての締約国は、共通であるが差異のある責任、それぞれの能力、並 びにそれぞれの国家的・地域的な開発優先事項、目的及び事情を考慮し、 持続可能な開発を達成するため、気候変動及びその悪影響に対処するた めの条約に基づく約束の実施を継続的に進めなければならない。

(e) 気候変動の悪影響に適応することはすべての国にとって高い優先課題で ある。開発途上国、とりわけ後発途上国及び小島嶼開発途上国は特に脆 弱である。適応には、すべての国の緊急的な配慮と行動が必要である。 すべてのレベルにおける脆弱性と適応に関するアプローチの開発のため、 また、持続可能な開発戦略に適応の問題意識を統合することを目的とし た能力開発のために、効果的で結果指向型の措置が支持されるべきであ る。これらの措置は、条約及びマラケシュ合意に基づく既存の約束の完 全な実施を含むべきである。

(f) 締約国は、締約国が気候変動に対する効果的で適切な対応を発展させ続 けることを支援するため、緩和及び適応に関連する行動についての非公 式の情報の交換を促進すべきである。

(g) 気候変動の悪影響と対応措置の実施による影響から生起する、開発途上国の固有ニーズと懸念に十分な考慮が払われるべきである。

(h) エネルギー部門を始めとする開発の鍵となる分野、及び民間部門の参画、 市場指向型アプローチ、公共支援政策等を通じた投資の分野における革 新的な技術を開発し、普及するための国際協力が促進されるべきである。

(i) エネルギー、輸送、産業、保健、農業、生物多様性、林業、廃棄物管理 を含むすべての関連する部門における具体的なプロジェクト及び能力開 発を通じ、技術移転が強化されるべきである。研究開発、経済の多様化、 関連する地域、国及び地方における持続可能な開発のための組織の強化 を通じ、技術的進歩が促進されるべきである。

(j) 各国の特性及び事情を考慮し、様々な措置を通じて、信頼でき、入手可 能で、経済的に実施可能で、社会的に受容可能で、環境上健全なエネル ギーサービス及び資源へのアクセスの向上が図られるべきである。

(k) 先進的、より清浄、より効果的、入手可能で費用対効果に優れた、化石 燃料技術や、水力を含む再生可能エネルギー供給を多様化するとともに、 相互に合意された優遇条件で途上国に移転するため行動が求められる。

(l) 国家的な、及び自発的で地域的な目標とイニシアティブの役割を、これ らが存在する場合は認識し、エネルギー政策が開発途上国の貧困撲滅に 向けた努力を支持するものであることを確保しつつ、総エネルギー供給 における貢献度を増大することを目的として、すべてのレベルにおいて 再生可能なエネルギー資源の割合を実質的に増加させる緊急の行動が求 められる。

(m) 附属書I国は、付属書II国については資金、技術移転及び能力開発に関 する条項を含め、条約に基づく約束をさらに実施するとともに、気候変 動を緩和するための国家政策及びその関連措置の採択を通じ、条約の究 極の目的に従って、人為的な温室効果ガス排出の長期的な推移を改変す るために主導的に取り組んでいることを例証すべきである。すべての国 は、デリーの COP8 で達成された良好な協力関係、特に技術的作業の進 展とここで行われた建設的な論議を歓迎するとともに、バールー大臣及 びインドの政府と国民の親切なもてなしに対し感謝の意を表する。