データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 労災保険におけるHIV感染症の取扱いについて(通知)

[場所] 
[年月日] 2010年9月9日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成22年9月9日)

(健疾発0909第1号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局疾病対策課長通知)

 労災保険におけるHIV感染症の取扱いについては、平成5年10月29日付け基発第619号「C型肝炎、エイズ及びMRSA感染症に罹る労災保険における取扱いについて」により、事務処理を行っているところであるが、今般、平成22年9月9日付け基発0909第1号厚生労働省労働基準局長通達「労災保険におけるHIV感染症の取扱いについて」により、抗HIV薬の投与について、針刺し事故等の受傷後からの一連の処置として、今後、労災保険の保険給付として認めることとされたので、別添のとおり通知する。

 ついては、その取扱いに遺漏のないよう、貴管下関係機関に対し、本通知の周知をお願いする。

 また、エイズ患者等が安心して医療を受ける体制の整備について、平成11年8月30日付け健医疾発第90号・医薬安発第105号厚生省保健医療局エイズ疾病対策課長・厚生省医薬安全局安全課長通知「針刺し後のHIV感染防止体制の整備について」により取組をお願いしているところであるので、引き続き、緊急措置としての抗HIV薬の予防服用を含め、感染予防のための対策が円滑に行われるよう、関係機関との連携を進められたい。

 なお、医療従事者に発生した針刺し事故後のHIV感染防止に関しては、「医療事故後のHIV感染防止のための予防服用マニュアル」(2007年7月改訂版。国立国際医療センター病院エイズ治療・研究開発センター)及び「抗HIV治療ガイドライン」(2010年3月。平成21年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究(研究代表者:白阪琢磨)」)を参考にされたい。


(参考)

「医療事故後のHIV感染防止のための予防服用マニュアル」及び「抗HIV治療ガイドライン」の入手方法について

 上記マニュアル及びガイドラインについては、エイズ予防情報ネット(API―Net)ホームページから入手可能である。

 1 エイズ予防情報ネットホームページ(http://api-net.jfap.or.jp)にアクセス

 2 ホームページ右上の「資料室」を選択し、資料室画面の「マニュアル・ガイドライン」を選択

 3 次のとおりホームページからダウンロード

  (1) 「医療事故後のHIV感染防止のための予防服用マニュアル」を入手したい場合

   「医療事故後のHIV感染防止のための予防服用マニュアル(2007年7月改訂版)」からダウンロード

  (2) 「抗HIV治療ガイドライン」を入手したい場合

   「抗HIV治療ガイドライン(2010年3月)」からダウンロード



○労災保険におけるHIV感染症の取扱いについて

(平成22年9月9日)

(基発0909第1号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

 標記について、平成5年10月29日付け基発第619号「C型肝炎、エイズ及びMRSA感染症に係る労災保険における取扱いについて」(以下「感染症通達」という。)をもって指示したところであるが、今後、医療従事者等に発生した針刺し事故後、HIV感染の有無が確認されるまでの期間に行われた抗HIV薬の投与については、労災保険の療養の範囲に含めることとし、下記のとおり感染症通達を改正するので、事務処理に当たっては適切に対応されたい。


   記

 感染症通達の記の2の(3)のイの(ロ)のbの後に次を加える。

  受傷等の後HIV感染の有無が確認されるまでの間に行われた抗HIV薬の投与は、受傷等に起因して体内に侵入したHIVの増殖を抑制し、感染を防ぐ効果があることから、感染の危険に対し有効であると認められる場合には、療養の範囲として取り扱う。



○労災保険におけるHIV感染症の取扱いに係る留意点について

(平成22年9月9日)

(基労補発0909第1号)

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知)

 標記について、平成22年9月9日付け基発0909第1号「労災保険におけるHIV感染症の取扱いについて」(以下「局長通達」という。)をもって指示されたところであるが、その留意点は下記のとおりであるので、この取扱いに留意の上、円滑な事務処理をお願いする。


   記

1 局長通達の背景

 医療従事者に発生した針刺し事故後のHIV感染防止に関しては、平成11年8月30日付け健医疾発第90号、医薬安第105号「針刺し後のHIV感染防止体制の整備について」で示されている「医療事故後のHIV感染防止のための予防服用マニュアル」(2007年7月改訂版。国立国際医療センター病院エイズ治療・研究開発センター。以下「マニュアル」という。)及び「抗HIV治療ガイドライン」(2010年3月。平成21年度厚生労働科学研究費補助事業HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班。以下「ガイドライン」という。)において、HIVに汚染された血液へのばく露後、可及的速やか(可能であれば2時間以内)に抗HIV薬の投与を開始し、以後4週間程度投与を継続することとされている。

 当該投与が針刺し事故に際してHIV感染のリスク軽減を図るための必要な対応として記載されていることにかんがみ、HIV感染の有無が確認されるまでの期間に行われた抗HIV薬の投与を療養の範囲に含めて取り扱うこととしたものである。

2 局長通達の記の「感染の危険に対し有効であると認められる場合」について

 (1) 抗HIV薬の投与が認められる期間

  マニュアル及びガイドラインによれば、針刺し事故等の受傷後、可及的速やか(可能であれば2時間以内)に投与することを推奨し、4週間程度の服用が有効とされていることから、原則として、受傷後4週間まで投与を認めるものである。

  なお、受傷後4週間を超える期間の抗HIV薬の請求がなされた場合には、医学的必要性を確認の上判断すること。

 (2) 抗HIV薬の範囲

  療養の範囲に含めるのは、原則として、マニュアル及びガイドラインに記載されている抗HIV薬の投与に限るものとする。

  なお、具体的な薬剤選択及び投薬量については、マニュアル及びガイドラインの例示を参考に受傷等の程度を踏まえた上で判断すること。

3 その他について

 (1) 医療従事者以外の針刺し事故等

  マニュアル及びガイドラインは、医療現場における医療従事者に限定したものであるが、HIVに汚染された血液にばく露する可能性のある労働者は医療従事者に限定されるものではないことから、局長通達においては、「医療従事者等」としているものである。

  したがって、感染性廃棄物を取り扱う労働者がHIVに汚染された血液等により受傷した場合においても、局長通達は適用されるものである。

 (2) 医療機関への積極的な周知

  局長通達による取扱いは、(社)日本医師会にも周知しているところであるが、都道府県労働局においても、都道府県医師会、郡市区医師会、その他医療関係者等へ積極的に周知すること。