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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2023年APEC閣僚共同声明

[場所] 
[年月日] 2023年11月15日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1. 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚は、2023年11月14日から15日まで、アントニー・ブリンケン米国国務長官及びキャサリン・タイ米国通商代表を議長として、カリフォルニア州サンフランシスコ市に集まった。我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋経済協力会議(PECC)、世界貿易機関(WTO)及び世界銀行の代表者の参加を歓迎した。我々は、サンフランシスコ市のホスピタリティに感謝する。

2. 我々は、全ての人々及び未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋共同体を実現するAPECプトラジャヤ・ビジョン2040に向けたコミットメントを再確認する。これには、アオテアロア行動計画(APA)及びバイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標の実施が含まれる。APEC2023のテーマである、「全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造」の下、我々は、本年、「相互連結(interconnected)、革新的(innovative)、包摂的(inclusive)」という3つの政策優先課題を通じた作業を進めた。我々は、全ての作業部会における本年のAPECの作業に貢献した全ての人々に感謝する。

相互連結したAPEC地域を推進する

3. 我々は、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性があり、包摂的かつ予見可能な貿易・投資環境の実現に向けて協働する決意を改めて表明する。我々は、貿易・投資が世界経済の成長を推進する上で不可欠な役割を果たし、全ての人々の生活及び経済的繁栄の増進において肯定的に貢献しうることを認識する。我々は、中小・零細企業や女性、必要に応じて、先住民、障害者、農村地域や遠隔地の人々等、未活用の経済的潜在性を有する人々を含む全ての人々及び全てのエコノミーに対して公平に恩恵をもたらすような貿易・投資を推進するためのAPECにおける作業の重要性を強調する。この目的のために、我々は、包摂性及び持続可能性を貿易政策に統合するための本年の作業を歓迎し、また、経済・技術協力及び能力構築の重要性を強調する。我々は、アジア太平洋モデルEポートネットワーク、サプライチェーン連結性に関するAPEC同盟、規制調和運営委員会、APEC保健科学アカデミー、APEC調和センターの取決め事項の更新を支援するAPECにおける進行中の作業に留意する。また、我々は、2024年初めにおけるこれらの取決め事項の承認を期待し、関連の作業を継続する。

4. 我々の地域の経済成長は、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制によって引き続き支えられている。その重要な役割の継続を確保するため、我々は、メンバーがWTOの基本的な目標を達成し、既存及び新たに生じる世界貿易上の課題により良く対処できるよう、WTOの全ての機能を向上させるために必要な改革を支援する。我々は、第12回WTO閣僚会議(MC12)で合意された改革の方針へのコミットメントを改めて表明する。2024年までに全てのWTO加盟国がアクセス可能な完全かつ十分に機能する紛争解決システムを有することを視野にいれた議論を行うことにコミットする。APEC各参加エコノミーは、電子商取引に関する共同声明イニシアティブ(JSI)に具体的な進展があったこと、開発のための投資円滑化に関するJSIの交渉が実質的に妥結したこと、そして、サービスの国内規制に関するJSIの実施努力を歓迎する。我々は、10のAPECエコノミーによるWTO漁業補助金に関する協定の受諾を歓迎する。また、我々は、他のエコノミーに対し、漁業補助金協定の受諾と発効の節目として第13回WTO閣僚会議(MC13)に取り組むことを要請する。また、我々は、MC12の成果文書に沿った更なる規則に関する第二ラウンドの交渉の妥結に向けて努力する。WTO加盟国が、WTO改革を含めたMC13における前向きな成果を確保するために建設的に取り組むよう、我々のリーダーシップとアイデアのインキュベーターとしての役割を通じて、引き続き支援していく。

5. 我々は、リマ宣言に沿ったAPECのアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)アジェンダに関する作業等を通じて、市場主導による地域の経済統合を更に進める。この目的のため、我々は、質の高い包括的な地域事業に参加するエコノミーの準備を支援する能力構築及び技術協力の取組を強化し、また、本年のFTAAPアジェンダ行動計画における進展を歓迎する。これに関連して、我々は、APECによるFTAAPアジェンダ推進の作業に対する政策サポート・ユニット(PSU)によるレビューに期待し、地域内の関連する貿易合意文書の全ての章における共通点・相違点について研究する。また、我々は、FTAAPアジェンダを推進する上で、ABAC及びPECCによる支援及び調査に感謝する。

6. 我々は、ビジネスが安全で、強靱で、持続可能かつ開かれたサプライチェーンを確立できるようにする、貿易・投資環境の促進におけるAPECの努力を称賛する。我々は、APECサプライチェーン連結性枠組行動計画(2022年~2026年)で特定された障壁に対処する取組を継続する。我々は、好ましい貿易・投資環境を促進し、公平な競争条件を確保するための努力を継続し、また、開かれた市場を維持し、サプライチェーンの混乱に対処するためのコミットメントを再認識する。我々は、新しい技術の使用及び革新的な解決策の模索を含め、港湾及び国境における協力及びシングル・ウィンドウの相互運用性に関する作業を更に進め、通関及び税関手続の改善及び簡素化を図る。更に、我々は、これまでの取組に基づいた、持続可能で包摂的な成長を達成する手段として、イノベーション及び創造性を進める政策とプログラムを通じて、知的財産権を促進することにコミットする。

7. 我々は、WHOと協力して、健康と経済に関する第13回ハイレベル会合(HLMHE)で議論されたように、強靱で、公平で、持続可能かつ包摂的な保健システムを確保する上で、感染症予防、準備、対応(PPR)及び経済成長のための保健システム強化の重要性を再確認する。また、我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けたHLMHEにおけるコミットメントを改めて表明する。これには、保健サービスへのアクセスを強化するプライマリー・ヘルス・ケアの向上、有能で熟練した人材に支えられた強固で強靱な保健システム構築を支援するための保健分野の投資及び資金調達が含まれる。我々は、デジタル保健を含む革新的なイニシアティブが、感染症PPR強化及びUHC達成の上で、極めて重要であることを確認する。

8. 我々は、経済が安全、包摂的、強靱かつ持続可能な回復を続ける中、交通が果たす非常に重要な役割に関する第11回交通大臣会合の議論を歓迎する。交通は、経済成長・機会を推進し、低・ゼロ排出輸送への移行を促進し、貿易・投資を円滑化し、開かれた、安全かつ強靱なサプライチェーン維持努力を継続し、アジア太平洋地域全体における連結性を向上させる。我々は、途切れのない移動を容易にする上でAPECビジネストラベルカード(ABTC)が有する重要性を認識する。我々は、地域の企業がパンデミック前の活動に戻ることを支援するため、ビジネス旅行の円滑化を推進する努力を評価する。また、我々は、より包摂的なABTC、そして、より途切れがなく、包括的に連結し、かつ統合されたアジア太平洋地域に向けた進捗を歓迎する。我々は、物理的、制度的及び人と人とのつながりを強化することにより、APEC連結性ブループリント(2015-2025)の実施に引き続きコミットする。我々は、地域、準地域、遠隔地の連結性を推進する努力を強化する。これに関し、我々は、質の高いインフラ開発・投資の重要性を再確認する。

革新的で持続可能なAPEC地域を啓発する

9. 我々は、地域社会がその過程で担う主要な役割を認識しつつ、アジア太平洋地域が将来の災害により良く備えるため、気候に対する強靱性、リスク削減、緊急管理における包摂性を推進する防災担当高級実務者会合における議論を歓迎する。我々は、APECエコノミーが益々複雑化する自然災害状況に備える上でAPEC災害リスク削減枠組み及び行動計画が果たす重要な役割を再確認し、防災担当高級実務者及び緊急事態対応作業部会に対し、APECエコノミーが直面する課題に対処する能力構築を改善するために行動することを奨励する。気候変動に対して強靱な世界経済に移行するAPEC首脳のコミットメントを促進するため、我々はまた、第37回APEC自動対話による主要政策提言に留意する。我々は、包摂的で、安全で、強靱かつ持続可能な都市に向けた継続中の作業に期待する。

10. 我々は、気候に対する強靱性及び生物多様性等に対する努力を支援するため、農業、海洋資源、漁業、林業における天然資源の保全、回復、持続可能な利用・管理を推進し、違法伐採及び関連する取引対策に係る努力を強化するコミットメントを再確認する。我々は、万能の解決策はないことを認識しつつ、第8回APEC食料安全保障担当閣僚会合の議論、そして、APEC域内における持続可能な農業・食料システムを通じた食料安全保障実現のための原則に関する政策パートナーシップを歓迎する。我々は、2030年に向けた食料安全保障ロードマップ及び食料不安に対処する取組を実施する上で、APECエコノミーが果たす役割を強調する。。このため、我々は、MC13でWTOにおける農業に関する有意義な成果を得る必要性を認識する。この目的のため、我々は、より持続可能で、公平かつ強靱な農業・食料システムを実現する上で、持続可能な生産性成長、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性があり、包摂的かつ予見可能な貿易・投資環境、食品ロスと廃棄物の予防・削減、そして、気候変動の緩和・適応を推進するために協働する重要性を強調する。

11. 我々は、世界の食料安全保障を確保して気候変動に対処する上で、漁業及び養殖業が果たす不可欠な役割を認識する。我々は、持続可能な水産養殖、沿岸部の強靱性、そして、漁業、海洋生態系資源、関連の物品・サービスの持続可能な管理を推進するための確固たるコミットメントを強調する。我々はまた、安全で持続可能な漁業・養殖業が世界の食料安全保障に貢献することを確保するため、違法・無報告・無規制(IUU)漁業と闘うためのAPECロードマップ、海洋ごみAPECロードマップ、そして、零細漁業・養殖業APECロードマップの実施に引き続きコミットする。我々は、IUU漁業を防止、抑止、排除するためのPSMAの実施原則に基づき、より強固で効果的な措置を実施していく。

12. デジタル経済は、持続可能で、包摂的かつ革新的成長を推進する。我々はまた、整備され、包摂的で、開かれた、公正で、無差別なデジタル・イノベーションの環境を達成するためのコミットメントを再確認する。我々は、シアトルで開催されたAPECデジタル月間を歓迎し、ステークホルダーの参加や人口知能に関する議論等を通じたデジタル経済推進のイニシアティブに留意する。我々は、APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップの実施を促進するためのコミットメントを再確認する。我々は、エコノミーに対して、デジタル革新・相互運用性を促進し、能力構築を強化し、ペーパーレスな貿易促進措置の開発及び実施を通じた貿易手続きのデジタル化を推進し、また、デジタル時代の労働能力構築のためのデジタル・リテラシー及びスキルの促進努力を強化することを奨励する。我々は、デジタル技術等を通じ、あらゆる分野にわたって、持続可能で、クリーンで、低炭素の成長を推進することを期待する。この点において、我々は、地域におけるクラウド・コンピューティング技術の利用を推進するAPECクラウド変革のための勧告に留意する。また、我々は、中小・零細企業が国境を越えた電子商取引とデジタル貿易に関与するため、中小・零細企業の世界市場への参加を推進する努力を継続する。我々は、デジタル・インフラの強化、デジタル連結性の向上、情報通信技術の物品・サービスへのアクセス促進によって、あらゆる形態のデジタル格差を解消する重要性を強調する。我々は、インターネット及びデジタル経済、そして、デジタル環境における消費者保護及び個人情報の保護に関する規則的アプローチにおける協力等を通じ、データの流れの円滑化やデジタル取引における企業及び消費者の信頼の強化に関して協力する。我々は、包摂的なデジタル経済の開発促進のために協力する分野を共同して特定し、優先分野を推進するための議論及び協力を奨励するAPECエコノミーの取組に感謝する。

13. 我々は、現代サプライサイド経済学、デジタル資産、持続可能な金融、世界及び地域の経済・財政見通しに焦点を当てた、第30回財務大臣会合における議論を歓迎する。我々は、セブ行動計画の継続的実施にコミットし、エコノミーによるこれまでの進捗を歓迎する。

14. 我々は、開放性、均衡、透明性、包摂性を追求し、サービス業界の構造改革におけるAPECの作業部会間の協力、そして、サービスの国内規制に関連する作業を歓迎する。我々は、サービス貿易環境規制に関するAPEC指標の作成、また、2025年までの目標達成のためAPECサービス競争ロードマップ(ASCR)の実施における、全てのAPECエコノミーの努力による本年の成功の重要性を強調する。また、我々は、相互承認協定ツールキットの完成並びに環境及び環境関連サービス参考リストの見直し完了を歓迎し、2025年における次回の同リストの見直しに期待する。APECは、環境物品サービスの貿易促進に関する取組を推進する上で引き続き重要な役割を果たす。また、我々は、APEC環境物品作業計画の実施における現行の作業、そして、勧告に沿った新たな環境物品の自主的かつ拘束力のないAPEC参考リストの作成を支持する環境物品のAPEC参考リスト作成のための議論の枠組みの設置における現行の作業を認識する。我々は、公衆衛生上の緊急事態における必需品の流通を支援する物流関連サービスに関するAPEC非拘束ガイドライン(附属書)を歓迎する。我々は、グリーンサプライチェーンに関するAPEC協力ネットワーク(GSCNET)の取決め事項の更新に留意し、GSCNET参加者に対してアジェンダを進めることを奨励する。

15. 我々は、構造改革のためのAPEC促進アジェンダ(EAASR)中間レビュー及びEAASR中間レビューレポートの成果と勧告を歓迎する。これには、サービス業界に焦点を当てたビジネス規制環境の改善に関する勧告、イノベーションの発展と促進に資する環境の構築に関する勧告、そして、APECメンバーによるイニシアティブ等を通じたグリーン経済への移行に関する勧告が含まれる。我々は、EAASRを継続実施すること、また、エコノミーに対して個別行動計画の実施を奨励することにコミットする。また、我々は、エコノミーが、構造改革と包摂的で強靱かつ持続可能なビジネスのための環境整備に関する2023年APEC経済政策レポート(AEPR)の勧告を実施することを奨励する。我々は、構造改革と金融包摂に関する2024年のAEPRに期待する。我々は、APEC経済委員会、女性と経済に関する政策パートナーシップ、そして、APEC財務大臣プロセスとの間でより緊密に強調することにコミットする。また、我々は、規制環境における透明性及び予見可能性の向上を支援する優れた規制慣行(GRP)の重要性、そして、GRPブループリントがいかに同分野におけるAPECの作業を推進できるかを認識する。

16. 汚職がもたらす深刻な脅威を認識し、我々はまた、APECの腐敗防止及び透明性のアジェンダを更に推進し、国連腐敗防止条約の履行を更に促進するため、APEC腐敗防止分野別枠組み2023-2026を歓迎する。我々は、国内法に従って汚職犯罪者とその不正な資産に対する安全な避難所を拒否する我々のコミットメントを再確認する。我々は、APEC腐敗防止・法執行機関ネットワーク(ACT-NET)が、国境を超えた汚職との闘い、そして、アセット・リカバリー等関連のマネーロンダリングとの闘いにおける協力強化のために法執行機関を団結させる上で果たす役割を支持する。我々は、エコノミーにおける強靱性を構築するため、腐敗との闘いに関する北京宣言及び腐敗との闘い及び透明性の確保に関するサンチアゴ・コミットメント並びに贈収賄の防止及び贈収賄防止法の執行に関するAPEC原則を更に実施することにコミットする。我々は、フォーラム間の協力を奨励し、相互に学び、必要に応じて、マルチステークホルダーと他の国際機関、民間部門、市民社会との協力等を通じて、実践的な行動及び統一したアプローチを取ることにコミットする。

包摂的なAPEC地域を育成する

17. 我々は、女性が所有、主導、管理する中小・零細企業含め全ての人々に明白な恩恵、健康増進及び幸福をもたらす成長を促進することにコミットする。中小・零細企業は、我々の経済のGDPに大きく貢献し、必要不可欠な雇用及び経済成長の基盤となっている。我々は、第29回APEC中小企業大臣会合における議論を歓迎する。また、我々は、中小・零細企業が競争し、革新し、専門化し、地域・世界市場への参加を拡大し、また、グローバルなサプライチェーン及びバリューチェーンへの統合を拡大する機会を向上させるために協働することにコミットする。我々は、中小・零細企業の経済・技術協力、金融、資本へのアクセスの向上に引き続きコミットし、中小・零細企業が大企業と協力することにより、その革新性や競争力を向上できることを認識する。我々は、中小・零細企業のデジタル革新と非公式から公式経済への移行を促進する、使いやすく費用対効果の高い製品及び解決策の開発を奨励する。また、我々は、エコノミーに対して、国内事情に応じて、経済的なエンパワーメント及び包摂に向けた取組に関する情報を提供するため、中小・零細企業に関するデータの改善を奨励する。

18. 我々は、女性と経済に関するハイレベル政策対話(HLPDWE)及びAPEC女性と経済フォーラム(WEF)の議論を歓迎する。この成果は、HLPEDWと中小企業大臣会合の合同開催につながり、女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ(2019-2030)に沿った、あらゆる経済活動における女性の完全かつ平等で有意義な参加、リーダーシップ及び意思決定を通じたジェンダーの主流化の重要性が強調された。我々は、女性を気候変動政策に包摂するためのベストプラクティス及び勧告の作成におけるエコノミーの作業を評価する。我々は、ジェンダーの平等と気候変動の相互連結、そして、強靱なアジア太平洋共同体を構築する重要性を認識し、地域における経済活動、リーダーシップ及び意志決定における女性の参加を推進するため、デジタル包摂性とイノベーションを推進し、グローバル・バリューチェーンにおけるジェンダーの平等を進め、ケア・インフラに適切に投資する。我々は、多様な背景を持つ女性及び女子、そして、必要に応じて、先住民、障害者、農村・遠隔共同体の人々等、未活用の経済的潜在性を有するその他の人々の障壁を減らし、社会的、経済的、財政的な包摂を促進することにコミットする。我々は、STEM原則及び行動におけるAPEC女性を通じた、包摂的で持続可能な経済成長のためのSTEM分野における女性の参加とリーダーシップを支援する重要性を認識する。また、我々は、焦点を絞った投資等を通じ、STEM分野における女性の労働参入、教育、リテンション、昇進における主要障壁に対処することにコミットする。我々は、「2023年女性と経済のダッシュボード報告書」に留意し、ジェンダーの平等のために細分化されたデータを統合することを奨励する。我々はまた、女性の貢献を評価し、地域における女性の起業家精神とイノベーションの発展を示す、APECイニシアティブ及び賞の重要性に留意する。我々は、WEFにおけるジェンダーに係る予算配分に関するAPEC大臣の議論に留意する。我々は、全ての経済部門におけるジェンダーの平等に焦点を当てることを確保する支援を行うため、必要に応じて、ジェンダーに係る分析を計画及び国内予算に適用する重要性を認識する。

19. 人々は、技術進歩の恩恵を十分に享受するために、働き方の未来に備える必要がある。我々は、質の高い教育及び職業訓練への包摂的で公平なアクセスを推進し、雇用と働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を促進し、技能の再習得と技能向上の取組を強化し、生涯学習の機会を奨励して、熟練し、生産性及び敏捷性が高い労働力を生み出す必要性を認識する。これに関し、我々は、教育、訓練及び雇用における平等と包摂のための人材養成作業部会デトロイト非拘束原則と勧告を歓迎する。これら原則は、包摂的な人材育成及び経済・技術協力を推進する。

20. 我々は、ステークホルダーと有意義に関与するAPECエコノミー内のエネルギー移行促進の努力を推進する、エネルギー作業部会による公正なエネルギー移行イニシアティブの作成を期待する。また、我々は、これら取組を促進できる公正なエネルギー移行におけるAPEC協力非拘束原則を歓迎する。2021年のAPEC首脳宣言において、APECにおける気候変動に関する横断的な作業の更なる統合を求めていることを想起し、我々は協働して、最新の科学の発展と様々な国内事情を考慮し、地域におけるエネルギー安全保障、強靱性及びアクセスを確保しつつ、今世紀半ばまで又はその頃の温室効果ガス排出のグローバルネットゼロ又はカーボンニュートラル目標に沿って、温室効果ガス排出を削減する多様な道筋を通じて、持続可能なエネルギー転換を引き続き支援する。我々は、不可欠なエネルギーサービスを必要としている人々に提供する重要性を認識しつつ、無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を合理化し、廃止するというコミットメントを想起する。我々は、未来の課題として、アジア太平洋地域においてゼロ・低排出技術から製造される水素を一貫して開発し導入するベストプラクティスを特定する意志を歓迎する。

組織としてのAPECを推進する

21. 我々は、プトラジャヤ・ビジョン2040に沿って、地域経済協力のプレミア・フォーラムとして、そして、近代的で、効率的かつ効果的なアイデアのインキュベーターとしてのAPECの独特な立場を維持するため、APECを更に改善していく。このため、我々は、作業部会間の協力及びマルチステークホルダーとの関係構築強化の重要性を強調する。我々は、サブフォーラム・レベルのものを含め、APECのガバナンスと組織構造を改善する努力を継続し、全てのメンバーの利益のためAPECエコノミー間の能力構築及び経済・技術協力の努力を強く支持する。

22. 我々は、APECの作業を支援するため、PSUが引き続き証拠に基づいた調査と分析を提供する重要性に留意する。我々は、ABACに対してその協力と勧告に感謝し、エコノミー対してABACとビジネス界との関与を深めることを求め、そして、将来、包摂的にその作業の円滑化を確保する重要性を強調する。我々は、官民パートナーシップが経済的課題に対処する上で資する方策に焦点を当てた、第一回持続可能な未来フォーラムを開催したABACに感謝する。我々は、PECC、ASEAN、PIF、APECスタディセンター・コンソーシアムの貢献に留意する。我々は、持続可能で包摂的な地域の成長促進における貢献を評価するAPECのバイオ・循環型・グリーン賞を初めて受賞した個人及び団体に祝意を表する。我々は、NGO、市民社会、青少年を含む経済的ステークホルダーとのより広範な関係構築を奨励する。

23. 我々は、2023年APEC高級実務者会合(SOM)議長報告書を歓迎し、留意する。また、経済・技術協力に関するSOM運営委員会による作業に留意する。我々は、貿易・投資委員会による、閣僚に対する年次報告書を承認する。我々は、APA実施の評価を認識し、また、APA推進におけるエコノミーの進捗を認識する。我々は、ABAC議長報告書にも留意する。我々は、2024年のAPEC事務局会計予算と、それに対応するメンバーの拠出金を承認する。また、我々は、各メンバーの対応する拠出金に感謝する。

24. 我々は、米国のAPECへの強いコミットメントに謝意を表し、2023年APECを主催した米国に感謝する。我々は、ペルーが主催する2024年APECの準備を歓迎し、韓国が2025年APECを主催することを改めて歓迎する。我々は、APEC会合及びその関連の会合を主催するガイドラインに沿い、コンセンサスに基づく多国間主義の精神の下で、全てのメンバーが首脳週間を含む全ての行事において平等な立場で参加するためのAPECの継続的な協力を非常に重視する。

[附属書]

1.公衆衛生上の緊急事態における必需品の流通を支援する物流関連サービスに関するAPEC非拘束ガイドライン