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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第24回APEC首脳宣言 質の高い成長と人間開発

[場所] リマ
[年月日] 2016年11月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

我々,APEC首脳は,「質の高い成長と人間開発」というテーマの下,自由で開かれた貿易・投資及び持続可能な経済成長並びにアジア太平洋において我々が共有する繁栄を支える取組を継続するため,リマに集まった。このビジョンの中で,2016年我々は,次の主要な優先課題における我々の努力に焦点を当ててきた。すなわち,地域経済統合と質の高い成長,地域食料市場の強化,アジア太平洋地域零細・中小企業の近代化及び人材開発である。

ペルーがAPECを初めて主催してから8年が経ち,世界経済の回復は進んでいるが,ますます広範囲,かつ,相互に関連する諸課題に直面している。いくつかのエコノミーにおける不平等,同等でない経済の成長とが重なったこと並びに環境の悪化及び気候変動に伴うリスクが相まって,持続可能な発展への展望に

影響を与え,将来への不確実性を高めている。さらに,グローバリゼーションや関連した統合プロセスには,ますます疑問の目が投げ掛けられ,保護主義的な傾向が台頭する一因となっている。

これらの諸課題が,我々共通の野心と目標にリスクを及ぼす可能性がある一方で,我々は,協力を通じて,喫緊の課題に取り組み,将来のアイディアを生み出すインキュベーターであり続けることのできるフォーラムとして,APECがグローバルなリーダーシップを維持できるよう努力することを再度コミットする。

この意味において,我々は,国際協力のためのバランスの取れた,包括的な多国間の枠組みを代表するものとして,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実施に引き続きコミットしている。我々はまた,「パリ協定」の最近の発効を歓迎し,低炭素で気候変動に強じんな経済への移行のため,同協定の透明性のある,効果的な実施にコミットする。

質の高い成長及び人間開発

我々は,「APEC首脳の成長戦略2010」で描かれた質の高い成長を追求することの重要性により焦点を当てるため,「革新的な発展,経済改革及び成長に関するAPECアコード(2014年首脳宣言附属書C)」及び2020年を期限とする「質

の高い成長を強化するためのAPEC戦略」に反映されたように,APEC地域における,均衡ある,包摂的で,持続可能で,革新的で,安全な成長に向けた野心を再確認する。

我々は,また,質の高い成長を達成することの重要性を強調しつつ,我々の政策と戦略が具体的な意味において人々の生活の質の向上及び地域における社会的平等の促進に寄与するべく,取り組むことを約束する。したがって我々は,APECの目的及び目標を達成するための我々の取組を,人々の生活改善に資するべく集中させなくてはならないことを認識する。

我々は,全ての年齢の人々がグローバル化した世界の課題に対応できるよう,包摂的な教育に関するアジェンダに向けて努力し続けることの死活的な重要性を認識する。さらに,質の高い教育及び訓練への公平なアクセスが,幼児期から一生涯を通して人々が技能や能力を高めることを可能にするとの認識の下,我々は,雇用主との協力及び対人的スキル開発を含め,教育の質,移動性及びアクセス向上に焦点を当てなくてはならない。

我々はエコノミーに対し,「APEC教育戦略」で定められた原則の下,アジア太平洋地域における教育向上のために協働することを奨励する。この戦略は,持続可能な経済成長と社会福祉を支え,能力を強化し,イノベーションを加速さ

せ,雇用適性を向上させる包摂的で質の高い教育に特徴付けられる,強じんで一体性のあるAPEC教育共同体を達成する道筋の概略を示すものである。

全ての人口グループの完全かつ生産的な雇用が,その地域における人間開発にとって不可欠であることから,我々はまた,質の高い成長及び人間開発を促進するためのAPECアジェンダの下では,女性,青年及び障害者の経済的なエンパワメントが優先課題であるべきと認識する。

これに関して,我々は質が高く包摂的な教育及び職業訓練へのアクセスを提供し,起業家精神を高め,社会的な保護を改善し,また地域間の協力を促進することによって,全ての人々,特に社会的にぜい弱な人々のためのディーセント・ワーク及び労働生活の質を確保することにコミットする。

我々は,経済・社会開発における女性の極めて重要な貢献を認識し,APECの取組全てにおける男女平等及び女性のエンパワメントの主流化を支援するべく我々の努力を強化すること並びに女性による質の高い教育及び経済的資源への平等なアクセスの享受を確保することにコミットする。我々は,女性の起業家精神を支援し,女性主導の零細・中小企業を成長させ,女性のデジタル・リテラシーを強化させ,女性のキャリア開発を促進し,科学,技術,工学,数学(STEM)教育及び女性の職業へのアクセスを強化し,また女性の経済参画にあたっての保健関連の障壁に対処する努力を歓迎する。我々は,情報通信技術(ICT)の発展が人間開発において極めて重要な役割を果たすことを信じており,我々は,2020年までに次世代ブロードバンドを実現する意思を再確認する。

保健が経済繁栄及び人間開発の基礎であることを認識し,我々は,強じんで,持続可能で,アクセス可能で,かつ,質の高い成長及び人間開発を促進するための現在及び将来のニーズに対応するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた保健システムの促進の重要性を強調する。我々は,不健康が財政及び経済に与えるインパクトへの対処方法に係る更なる取組に期待する。

現在の世界状況下における自由貿易・投資の課題と機会

我々は,2008年の経済・金融危機からの回復は遅く,ばらつきがあり,世界経済の成長の低下,変動しやすい金融環境,商品価格の低下,不平等の拡大,雇用上の課題及び近年の国際貿易拡大の大幅な減速をもたらしていると認識する。

我々は,世界的な需要を強化し,供給上の制約に対処するため,引き続き全ての政策手段,即ち金融,財政政策及び構造改革を個別及び統合的に用いることをコミットする。我々は,強じんで持続可能でバランスの取れた包摂的な成長を達成するための我々の努力を補強する,相互強化的な政策の重要な役割を再確認する。我々は,金融政策と為替政策に関する我々の従来のコミットメントを再確認する。我々は,通貨安競争を控え,あらゆる形態の保護主義に抵抗し,競争のために為替レートを目標としない。我々は,為替レートの過度の変動と無秩序な動きは,経済及び金融の安定性に悪影響を及ぼしかねないことを再確認する。

この複雑な国際経済環境は,我々の作業の枠組みを規定し続ける。一方,自由で開かれた貿易と投資を再確認し,地域経済統合を加速し,競争的な市場を推進し,経済及び技術協力を奨励し,また良好で持続可能なビジネス環境を促進することによって,革新的な発展,相互作用する成長及び共有された利益に特徴付けられるアジア太平洋における,躍動的で,調和し,開かれた経済を構築するため,全ての人に雇用の機会を積極的に付与するというコミットメントを再度強調する機会ともなる。

これらの全般的な原則は,今後も我々を共通の道に導くものである。また同時に我々は,貿易,投資及び開かれた市場の恩恵をより良く説明するため,さらに,これらの恩恵が幅広く行き渡ることを確かなものにするため,エコノミーが我々の社会のあらゆるセクターに働きかける必要性を認識する。

成果を収めたバリ及びナイロビでのWTO閣僚会議に基づき,また閣僚共同声明に含まれる全ての要素を認識し,我々は,バリ及びナイロビの成果を実行し続けることにコミットし,残されたドーハ開発アジェンダの課題についての交渉を優先事項として進める。我々はまた,アジア太平洋地域における今日のエコノミーにとって共通の関心と重要性を有する一連の問題は,WTOにおいて論じるに値する争点となり得ることに留意する。したがって,我々は実務者に,緊張感と全てのWTOメンバーとの連帯感をもって,2017年のWTO閣僚会議までに,更にはその先に向けて,積極的で意義のある成果を達成できるよう,共に方向性を定めることを指示した。

我々は,2020年末まで延長することに合意した,スタンドスティルへのコミットメントを通じた,保護主義に反対する我々の約束を再確認することによって,我々の市場を開かれたものとして維持し,かつあらゆる形態の保護主義と闘い,また,貿易を弱め国際経済の前進と回復を減速させるような,貿易保護論者主

義的でと貿易歪曲的な措置をロールバックするという,我々のコミットメントを再確認する。

我々は,エコノミーによる「WTO貿易円滑化協定」の受諾の通告における進捗を歓迎し,同協定の可能な限り早期の発効を支持する。我々は,残りのAPECエコノミーと他のWTOメンバーに,本年中に貿易円滑化協定の受諾書を寄託するため最大限努力するよう求める。

我々は,WTOと矛盾せず,幅広い参加を得た複数国間(プルリ)の貿易協定は,グローバルな自由化イニシアティブを補完する上で,重要な役割を果たすことを認識する。この観点から,「情報技術協定」とその拡大,「新サービス貿易協定」,また「環境物品協定(EGA)」のような,現在進められている,または既に締結された複数国間の協定は,そのような複数国間の協定や交渉の目的を共有する全てのWTOメンバーに参加が開かれるべきである。

加えて我々は,「情報技術協定」(ITA)の拡大の実施を歓迎し,また2016年7

月1日までの実施にコミットしている者には,可能な限り早く実施することを求める。

EGA交渉に参加しているAPECエコノミーは,ギャップを埋め,交渉参加エコノミーの主要な懸念に対処する有効な方法を見いだした後,2016年末までに,幅広い環境物品に対する関税を撤廃することを目指す野心的で未来志向のEGA

の妥結に向けて更に努力することを再確認する。

我々は,経済成長と雇用創出の触媒としての投資の重要性を強調する。我々は,投資を可能にするような環境を整えるため,具体的な措置をとることにコミットする。

我々は,世界経済の減速に直面する中で,経済効率性の向上,生産性と競争性の向上,雇用創出及び革新的な成長の推進のためには,構造改革が極めて重要であることを認識する。この点において,我々は,国境を越えた貿易,金融及び投資を不必要に妨げ,ビジネスを行う上での国内での障壁をつくり出す,構造上また規制上の障害を取り除くことの重要性を強調する。我々は,「構造改

革のためのAPEC改訂アジェンダ」(RAASR)に沿った努力を深化させるため,エコノミーによる具体的な行動を奨励する。それにより,我々は,全てのメンバー・エコノミーが作成した「RAASR個別行動計画」の完了に留意し,それらの重

要な国内の構造改革に対するコミットメントを歓迎する。同時に,我々は,構造改革は,国内状況とマクロ経済状況に応じて,柔軟に適用され得ることを認識する。我々はまた,これまでのビジネス環境整備イニシアティブの進捗を歓迎する。

我々は,財務大臣プロセス近代化戦略及びセブ行動計画実施戦略を歓迎する。これは我々のエコノミーの,その発展段階と国内状況を考慮した,意味ある改革の実行を円滑化する具体的な成果を確信するための基礎となるものである。

2014年の「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けたAPECの貢献のための北京ロードマップ」において定められた道筋に従い,我々は,APECの地域経済統合のアジェンダをさらに深めるための主要な手段として,FTAAPの最終的な実現への我々のコミットメントを再確認する。このビジョンを持って,我々は,「FTAAPの実現に関連する課題にかかる共同の戦略的研究」とそのエグゼクティブ・サマリーを承認する。さらに我々は,同研究に係る提言を「FTAAPに関するリマ宣言」として承認する。

我々は,共同の戦略的研究の完成に向けたAPECの実務者の尽力を称賛する。我々は,実務者に「FTAAPに関するリマ宣言」の実施,特にFTAAPの実現に向けた作業計画の策定と実施を指示する。我々は,作業計画の実施と,FTAAP実現に向けた能力構築のためのAPEC全体としての準備状況に関する定期的な進捗報告に期待する。さらに,この研究と他のAPECの成果物を基礎として参照しつつ,我々は実務者に対し,FTAAPの最終的な実現に向けて取り得る次のステップを検討することを指示する。

我々は,APECの歴史において最も重要なマイルストーンの一つとして,アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易と投資に関する「ボゴール目標」が,エコノミーに持続可能な開発と公平な成長の追求への動機を与えていることを認識する。我々は,エコノミーが,より低い実行関税率,より多くの地域貿易協定や自由貿易協定,海外貿易と投資への開放性の向上及び貿易・投資の円滑化向上を含め,「ボゴール目標」に関する多くの分野で,実質的な進捗を見せていることを認識する。同時に,我々は,既存の貿易・投資条件を向上させる

ためには,進捗が地域全体ではばらつきがある中,より多くの取組の実施が必要であることを認識する。

したがって,我々は,「ボゴール目標に向けたエコノミーの進捗に関する第二期レビュー」を歓迎するとともに,非関税措置,APEC域内の貿易の停滞や失業を含む,アジア太平洋地域における進捗にばらつきのある分野について,作業を追求することを実務者に指示する。

「ボゴール目標」の達成目標年を4年後に控え,APEC域内外で大きな発展が見られる中,我々は,「APECポスト2020ビジョン」を熟慮するプロセスを開始することが適切だと考える。したがって,我々は,2020年,そしてその後のAPECに関する一連のハイレベル対話を2016年に開始したペルーのイニシアティブを

称賛し,このプロセスを2020年まで毎年継続することを実務者に指示する。

我々は,サービス分野がAPEC内の生産性と成長に対する主要な貢献要因であることを認識する。サービスにおける競争力向上とサービスへのアクセスのための開かれた予見可能な環境を通じたサービス貿易の成長は,APECの経済成長を加速させるための鍵となる要素の一つである。我々はまた,我々のビジネスのサービス市場における競争,または取引を妨げる障壁に取り組む必要があることを認識する。我々は,したがって,「APECサービス競争力ロードマップ」(付属書)を承認し,貿易の成長を制約する要素に対処しつつ,またエコノミーにまたがる経済・社会状況の違いを考慮しつつ,具体的な方策を取り,サービス

貿易と投資を円滑化しサービス分野の競争力を強化するために互いに合意した目標を追求しつつ,ロードマップの実施における進捗を管理し評価するよう,実務者に指示する。

我々は,イノベーションが質の高い成長の鍵となる原動力であることを認識する。この観点から,我々は,新たな成長の原動力を特定する努力を奨励し,インターネットやデジタル経済といった分野から生み出される機会を進んで活用する。

我々は,デジタル貿易に関する我々の取組を前進させる次のステップの承認とインターネット経済に関する協力の進捗を歓迎する。我々は,閣僚に承認された合意済みの作業計画に沿い,取組の前進を継続するよう実務者に指示する。我々はまた,閣僚により特定されたようなデジタル貿易分野及び関連する事項において経済成長の潜在性がある新たな分野を探るエコノミーのイニシアティブとリーダーシップを歓迎する。

我々は,2011年のホノルルAPEC首脳宣言を想起し,参加者が,システムに参加するエコノミー,企業及び認証機関の数を増やすことを追求する「APEC越境プライバシールールシステム(CBPR)」の実施の重要性を確認する。

我々は,デジタル経済の潜在性を解き放つために協力し,また,経済成長と繁栄の不可欠な基礎として,アクセス可能で,開かれ,相互利用可能で,信頼性があり,安全な,情報通信技術(ICT)環境を強く支持する。我々は,相互利用可能で柔軟な枠組みの作成により,情報セキュリティ,データ及びプライバ

シー保護の確保のための政策及び規制環境を引き続き向上させる。我々はまた,エコノミーは,競争優位性を企業や商業セクターに与える意図で,知的財産や他の秘匿されたビジネス情報の,ICTを用いた窃盗を行い,また支援すべきではないことを確認する。我々はまた,バランスのとれた知的財産システムと能力

構築を含む,効果的で包括的な方法を通じて,競争性,企業家精神及びイノベーションを促進することの重要性を確認する。

我々は,エコノミーにとって零細・中小企業が,質の高い成長と繁栄を達成するために,不可欠の構成要素であることを認識する。イノベーションと雇用の源として,零細・中小企業は,関連の政策,戦略及びベストプラクティスの効果を最大化させつつ,起業家精神を推進し,構造改革から恩恵を受け,また,エコノミーにおける持続可能性を高めるために良い位置づけにある。零細・中小企業の強化は,知的財産権の商業化を含むそれらのイノベーション能力と競争性の向上,金融手段と能力構築へのアクセスの保障への取組,電子商取引を通じたインターネット及びデジタル経済への参加拡大,技術格差の縮小,零細・中小企業の成長と国境を越えた取引を支える倫理的なビジネス活動の強化,よ

り持続可能で環境に優しくグリーンな生産への移行の漸進的な誘導及びICTの手法も含めた国際化への支持についての具体的な進捗を意味する。

我々は,「裾野産業イニシアティブ」を歓迎し,同イニシアティブの2017年における実施を期待する。我々は,APECの持続可能な発展のために,零細・中小企業をグリーン化することの潜在性を認識し,また,実務者に対し,本件についての追加的な作業を来年実施するよう,実務者に指示する。

我々は,グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)の発展,サプライ・チェーン連結性及びその強じん性を推進することを決意する。我々は,「APEC付加価

値貿易データベース」の2018年までの完成に向けた,着実な進歩を称賛する。我々は,「APEC途上エコノミーのグローバル・バリュー・チェーンへのより良い参加に関する報告」を歓迎し,また,グローバル・バリュー・チェーンにお

ける途上エコノミー及び零細・中小企業の更なる参加,より大きな付加価値及び地位の向上を可能にする,さらなる努力を歓迎する。我々は,サプライ・チェーンの連結性についてのより高い効率性,強じん性及び協力を達成するために新しい技術を活用する価値を認識し,閣僚により特定されたように,この目的に向けた現在及び未来のイニシアティブを模索する努力を奨励する。我々はまた,「サプライ・チェーン枠組み行動計画フェーズ2(SCFAP)2017-2020」

を承認し,また,APEC地域における貿易円滑化とサプライ・チェーンの連結性

を強化する努力を継続するため,来年同プランを実施することを歓迎する。

我々は,エネルギーへのアクセスとエネルギー安全保障が,地域共通の繁栄と将来にとって非常に重要であることを認識する。我々はまた,安定的で透明性のある世界のエネルギー市場の重要性を強調する。我々は,貿易,投資及び経済成長に必要な条件を創り出す再生可能エネルギーやエネルギー効率といった分野を含め,さらにエネルギー協力を進める用意があることを再確認するとともに,地域の全てのエコノミーがエネルギーにアクセスできることを確保する。

我々は,エネルギー集約度を2035年までに45%減少させ,また地域のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーを2030年までに倍増させるという,

我々の野心的な目標を再確認する。我々は,非効率な化石燃料補助金を合理化し段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認し,現在進められているピアレビューと能力構築活動を歓迎し,補助金改革の円滑化における更なる努力を奨励する。

APEC地域で真に機能する連結性に向けて

強化された連結性は,経済成長の新しい源を開き,包摂的で相互連結した開発を促進し,地域経済統合を推進し,APECエコノミーがコミュニティとしてより

緊密になることに貢献する。この関連で,我々は,サブ・リージョナルな連結

性強化のための支援を含む地域における連結性の推進において,様々なAPECフォーラ及び作業部会によって行われた重要な取組に感謝するとともに共に留意する。しかしながら,依然として課題は残っている。

我々は,したがって,2025年までの,継ぎ目なくかつ包括的に連結・統合されたアジア太平洋の全体的な目標への我々のコミットメントを再確認し,「2

015−2025年APEC連結性ブループリント」の実施におけるAPECメンバーの努力と成果に謝意を表し,関連するトピックについてのベストプラクティスと情報の交換を行うためにブループリントの中で言及された政策対話の利用を奨励する。

我々は人と人との連結性の重要性を再確認し,特に更なる観光開発,文化交流,ビジネス関係者の移動,越境教育および渡航円滑化を通じた改善に引き続きコミットする。

我々は,質と量の両方の観点から,インフラに焦点を当てた投資促進へのコミットメントを確認する。我々は,持続可能な経済成長にとっての質の高いインフラの重要性を再確認する。我々は,「2015−2025年APEC連結性ブループリント」及びそれに続く取組において特定された質の高いインフラを実現するための重要な要素を認識し,その後の作業で我々は,このコンセプトを情報通信技術(ICT),エネルギーや交通を含む行動に移すことにコミットする。

我々は,進捗を歓迎し,民間部門の資金調達や官民パートナーシップ(PPP)を通じたものを含む,インフラ・ファイナンスの更なる検討の継続に期待する。我々は,投資機会の質の向上を追求する更なる取組を奨励する。我々は,地域における様々なインフラの連結性プログラムの間でのシナジーと協力の強化にコミットし,「APEC加盟エコノミーとグローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)との間の協力行動計画」を歓迎する。我々は,効果的な廃棄物管理インフラの欠如が大きな社会・経済及び環境コストを課していることを認識し,我々は本件に関する更なる作業を奨励する。

我々は,全ての利益に合致するように,協議を通じて共同で築かれている,包括的な地域の連結性を達成するエコノミーのイニシアティブを歓迎する。我々は,地域における,政策調整の促進,ファシリティの連結性,妨げられない貿易,金融統合及び人と人とのつながりの観点からこれらのイニシアティブの更なる実施を奨励し,アジア太平洋地域の地域経済統合及び共通の開発を推進するためにイニシアティブの間での更なる協力を奨励する。

食料安全保障,気候変動への適応,水資源へのアクセス

我々は,持続可能な農業,食料,森林管理,漁業及び養殖を更に推進し,食料市場を更に強化し,食料生産者を国内及びグローバルな食料サプライチェーン/バリューチェーンへの統合等,食品ロスと廃棄を削減し,インフラ格差から生じるチョークポイントに対処し,「APEC食料安全保障に関するピウラ宣言」に記されたとおり,煩雑で不必要に制限的な貿易措置を削減し,また,ICT及び関連技術の利用等イノベーションの促進を含む能力構築を強化する手段を講じることによって,天然資源を保護すると同時に,APECが食料安全保障における課題への対処に貢献可能であると認識する。我々はAPEC地域における農業の持続可能な開発を推進する努力を奨励する。

我々は,APEC地域において持続可能な経済開発と国際貿易を補完するような方法での取組の進捗に期待する。経済統合を拡大するAPECの取組は,科学的根拠に基づく規制やWTOが認証した国際食品関連基準と共に国際貿易を通じて安全な食料供給の向上に貢献する。

気候変動は,食料生産および食料安全保障にとって主要な課題の一つである。我々は,各エコノミーにおける様々な状況に配慮した方法で食料安全保障と気候変動の関係に対処する政策実施に関する協力の強化にコミットし,「食料安全保障と気候変動に関するAPECプログラム」を歓迎する。我々は,干ばつ,洪水や気候変動に関連する災害が食品生産及び食料安全保障に与える影響を軽減する努力の強化にコミットする。

我々は,水はAPEC地域にわたり農業開発の鍵となる推進力であり,社会経済開発のための基本的な要素であることを認識する。それゆえ,我々は多様なセクター・多様なレベルでの考え方を考慮し,水の供給量を確保し,水の効率的な利用を向上する水管理のベストプラクティスを共有するようエコノミーを奨励する。我々は,水資源の持続可能な利用及び統合的管理のためにAPECの協力を促進する。

農村・都市コミュニティおよび脆弱なグループにおける食料の安全保障の根底にある社会経済的な要因の重要性を認識し,我々は,農村・都市の発展に関する包括的なアプローチに向けた取組を目指す。我々は,APEC地域における都市

化と食生活の多様化が持つ重要な含意を認識するとともに,都市と農村地域が

相互に利益をもたらす食料安全保障と経済成長を推進するために,APECエコノミーの間で共有された経験とベストプラクティスを踏まえ,新しく策定した「食料安全保障と質の高い成長の強化のための農村都市開発に関するAPEC戦略的枠

組」を含む,新しく統合されたアプローチを検討するAPECの努力を支持する。我々は,食料安全保障及び貧困削減のため,関連する数々の持続可能な開発目

標(SDGs)に留意する。「持続可能な開発目標」への支持の一環として,我々は,野生動物の不法取引との闘いのための努力の拡大に引き続きコミットする。

今後に向けて

アジア太平洋地域における持続可能な成長を実現するために,我々は,我々のコミットメントの実施と我々の目標達成において,新たなる緊急性の認識と,

相互尊重と信頼,包摂性及びウィン・ウィン協力に特徴付けられるアジア太平洋パートナーシップの精神を通じて,引き続き取り組まなければならない。

我々は,女性,高齢者,若者,農村コミュニティ及び先住民や障害者を含む不利な立場もしくは脆弱なグループを効果的に経済,金融及び社会に包含することを求める。

我々は,あらゆる形態のテロ行為を強く非難する。我々は,自由で開かれた経済を支える我々の基本的な価値に対してテロ行為がもたらす深刻な脅威を認識する。我々は,「APECのテロ対策及び安全な貿易についての統合された戦略」の4つの横断的分野において,エコノミーが行動を継続し,ベストプラクティスを共有することを奨励する。

我々は,「腐敗との闘いに関するリマ声明」を歓迎し,全てのエコノミーが,APEC腐敗対策機関や「APEC腐敗対策取締り協力ネットワーク(ACT-NET)」を含む関連する全てのステークホルダーの効果的な参加と共に国内及び外国公務員の賄賂の授受に特定の焦点を当てた重要な腐敗行為防止の行動を実施することを奨励する。

我々は「2016年APEC閣僚共同声明」を承認し,分野別大臣会合,ハイレベル政策対話,財務大臣プロセス,高級実務者会合の委員会及び作業部会及び全

ての関連するメカニズムの成果に反映されているとおり,閣僚及び実務者の取組を賞賛する。我々は,閣僚及び実務者に対して,本宣言及び我々の過去の会合に含まれるビジョンを念頭に置き,2016年の分野別大臣会合及びハイレベル政策対話の成果文書にある提言,作業計画,イニシアティブ及び行動計画の実施を含め,取組を継続することを指示する。

我々は,APECビジネス諮問委員会(ABAC)による我々の作業への貢献並びに太平洋経済協力会議(PECC),国際及び地域機関,民間部門,地方政府幹部,学術界及びその他の関連ステークホルダーからの貢献を歓迎する。

我々のアジェンダの継続性はAPECの関連性への鍵であることを認識し,我々は,過去のAPEC議長のビジョン及び取組に基づいた本年のペルーのリーダーシップに感謝する。

我々は,2017年にベトナムで再会することを期待する。