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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岸田外務大臣臨時会見記録

[場所] ペルー共和国・リマ・IMC
[年月日] 2016年11月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

▶冒頭発言

【岸田外務大臣】本日午前中,APEC閣僚会議に出席し,地域経済統合等について議論行いました。私からは,保護主義的な世論が高まる中,自由貿易の重要性を訴えるとともに,FTAAP構想の将来的な実現に向けて,TPP,RCEPを着実に推進する必要性等について発言をいたしました。

その後35分間,米国のケリー国務長官と会談を行いました。ケリー長官の任期も残り二ヶ月と迫る中,我々の目前には待ったなしの課題がますます多いという認識を共有し,地域・国際社会の平和と繁栄に向けて日米同盟をさらに強化していくことを確認いたしました。同時に,私からは,今回が国務長官としての最後の会談になるかもしれないが,G7外相会合の成功や,オバマ大統領の広島訪問を始め,日米同盟がこれまでにない高みにあることはケリー長官のおかげであり,この4年間の協力を基に,引き続き日米同盟を強化していくとの私の決意を伝えました。ケリー長官からは,この4年間に至る協力の軌跡を誇りに思う,これからも友人として付き合っていきたい旨の発言がありました。短時間の会談ではありましたが,ケリー長官とは長年の付き合いであり,心が通っていることから,東アジア情勢,TPP等の幅広いテーマについて,密度の濃い意見交換ができたと感じています。

その後,30分間,カナダのディオン外相と会談を行いました。私からは,まず外相就任1周年をお祝いする,お慶び申し上げるという祝意をお伝えし,ディオン外相とは,「日加協力新時代」の具体化に向け安全保障,経済,科学技術協力等の分野で日加協力を進めることを確認しました。また,東アジア情勢,国際条理での課題等について協議を行い,引き続き日加で連携して協力していくことを確認いたしました。

秋葉外務審議官の訪米についてですが,私の指示で訪米している秋葉外務審議官は,14日から16日にかけてワシントンで個別に複数の関係者と面会をいたしました。滞在中,同外務審議官は,政権移行チームのエグゼクティブ・コミッティーに名を連ねる複数の関係者と面会し,16日に面会した共和党の有力議員,コリンズ下院議員,ブラックバーン下院議員の2名からは,同盟国である日本との関係を重視しており,安全保障,経済を含む様々な分野で対話を深めていきたいとの考えが示された,との報告を受けています。さらに同外務審議官は,政権移行チームに加わっている複数の専門家,および閣僚候補と目されている関係者とも面会し,揺るぎない日米同盟の下で,地域と世界の平和と繁栄のために一層協力を強化していく必要性について一致をしたところであります。

▶質疑応答

【記者】まず日米外相会談ですけれども,今回大統領選後初めてとなりますが,特にTPPを巡ってオバマ政権,最後どのような方針で臨むか,相手方からは何か考え示されたのでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,TPPにつては我が国の今の取り組み,今国会で承認を得るべく努力を続けている,こういった情勢について,米側に説明を行いました。そしてTPPにつきましては,ケリー長官からは,自分たちはあきらめていない,また米国の経済界は強く期待をしている,こうした説明がありました。引き続き努力をしていく,こういったことであったと思っています。

【記者】今の政権内で議会内の努力を続けていくという意味でしょうか。

【岸田外務大臣】そのように受け止めました。自分たちはあきらめていないとはそういう意味だと思います。

【記者】トランプ次期政権を巡る意見交換というのはどのような形だったのでしょうか。

【岸田外務大臣】新しい政権の下においても日米同盟の重要性は変わらないという我が国の考え方を説明いたしました。ケリー長官からは,まず,本日行われます,トランプ次期大統領と安倍総理の会談,世界の指導者の中で最も早くトランプ次期大統領と会談する安倍総理の会談でのやりとりに注目をしている,そして是非よい会談になることを期待するという言葉がありました。カナダのディオン外相からも同様の発言がありました。

【記者】大臣今夜リマを発たれて,ニューヨークでの日程も予定されていますが,その会談での意義,あるいはどのような意味合いで相手方と話をされるのか。

【岸田外務大臣】今のところ,ハース外交問題評議会会長と会談することを,今予定をしています。ハース外交問題評議会会長,これはトランプ次期大統領が,信頼できる国家安全保障の専門家の一人としてあげている人物です。この機会に日米同盟の重要性,あるいは今後の日米関係の強化の方途,こういったものにつきまして,意見交換を行いたいと考えております。

【記者】安倍総理とトランプ次期大統領との会談について,先ほどケリー長官の方からは大変注目しているというお話があったということなんですけども,各国の首脳に先駆けてトランプ次期大統領に日本の総理がお会いになると,この日本の姿勢については何かケリー長官からお話はあったのでしょうか。

【岸田外務大臣】そういう言い方で何かコメントはありませんでした。会談をやるということについて,是非よい会談になることを期待している,そういう趣旨の発言がありました。

【記者】大臣自身は安倍総理とトランプ次期大統領との会談にどのような期待をお持ちでしょうか。

【岸田外務大臣】やはり首脳間の信頼関係というのが何事においても基本,基礎でありますので,我が国の外交にとって基軸であります日米同盟において,両国のトップの信頼関係というものは大変重要であると考えます。しっかりとした信頼関係を築く第一歩になることを強く期待いたします。併せて,新政権につきましては,選挙期間中のトランプ次期大統領の発言もあり,いろいろなことが言われています。是非,日本の立場,考え方,これをしっかりと伝えさせていただく機会になればとも期待しております。

【記者】二人のケミストリーは合うと思われますか。

【岸田外務大臣】合うことを期待しております。